都会のど真ん中、新宿「誰もが1人で生きるこのまちの人を繋ぐのはマルシェ」
大企業のオフィスが数多く集まり、歌舞伎町を始めとする歓楽街や繁華街として賑わう新宿は、住んでいる人の62.6%が単身世帯、3万5000人の外国人が住んでおり、居住者の単身世帯率と外国人登録者数はいずれも23区1位となっています。
多様な人、あまりにも多くの人が行き交うことから人々は自然と他人から目をそらし、なるべく他者と関わらないように生活してしまいがちなのが新宿なのです。
これは都会の人が冷たいという話ではなく、ストレスを避けるための自然な反応なのですが、そんな新宿駅の目の前にできたマルシェが今まで無かった交流の場を生み出しています。
新宿の新南口改札を出てすぐにあるSuicaのペンギン広場で、日本各地の生産者から直接野菜や果物を購入することができる「ルミネアグリマルシェ」が4/6〜5/6(※2018年当時)まで毎日開かれていて、これはゴールデンウィーク後も定期的に開催されるそうです。
私たちの生活が日々便利になる一方で、自分が食べようと手に取ったものが誰によって作られたのかということはあまり考えられなくなってしまいましたが、そんな都会の真ん中でアグリマルシェは作り手と顔の見える関係を築くことのできる場を作り出しています。
マルシェ(marche)は言葉の通りもともとフランスで発達した文化で、豊かな食文化を持つフランスではマルシェはただ買い物をするための場ではなくて、店の人や他の客と交流をする「社交の場」であると考えられているそうです。
新宿は大規模店舗の数とその年間販売額の合計でも23区で1位を記録していて、極端な話、そういった大型店では自分の欲しいものをカゴに入れてレジでお金を払いさえすれば一言も言葉を発しなくても買い物をすることができてしまいます。
スーパーに行くときは特売日やタイムセールなどを利用して1円でも安く買おうといったことばかり考えられてきた結果、大量に仕入れた商品を特売で売りさばくといったことが多くのスーパーで行われるようになり、食べる人と作る人の距離は遠く離れてしまいました。
新宿は外食市場が首都圏で最も大きい街で、単身世帯も多いことから普段は外食で済ませる人の割合が高くなっていますが、丁寧に作られた食材を生産者から直接買うことは、他では決して感じることのできない安心感があります。
その食べ物の一番おいしい食べ方を知っている生産者の人から「春先のアスパラガスは柔らかくて味も濃いから丸ごと素揚げにして塩を振って食べるのが美味しいよ」といった話を聞きながら食材を手にすることは、今まで以上に丁寧に、そして楽しみながら食事をすることにつながるのではないでしょうか。
LUMINEは「食文化を提案する」というコンセプトの下でアグリマルシェを開催していますが、マルシェに来れば人とつながる温かさや、生産者の思いに触れることでいつもの食事がより充実したものに変わるのでしょう。
新宿の駅前にできたマルシェの存在は今まで効率ばかり重視して、せかせかと生きてきた都会の人たちに、次の新しい生き方のヒントを与えてくれているのかもしれません。
著者:天野盛介 2018/5/7 (執筆当時の情報に基づいています)
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