ハンバーガー不毛の地、綾瀬にバーガー文化を根付かせる挑戦

2015年ごろから熱を帯び始めたハンバーガー業界。同年、アメリカの人気ハンバーガー店が日本初上陸し、雑誌でもハンバーガー特集が組まれるなど、ハンバーガー業界は少しずつ盛り上がりを見せつつあります。

東京都心では個性的なハンバーガーショップが立ち並ぶ光景をよく目にするようになりましたが、まだまだ郊外ではその姿をみる機会は多くありません。

ハンバーガー文化の過渡期にある今、ハンバーガーをラーメンと同様な国民食として浸透させることを目標に営業しているのが東京・綾瀬に拠点を構えるBurgHack(バーグハック)です。

しかし、BurgHackが拠点を構える綾瀬は駅前に大手ハンバーガーチェーン店が1店舗あるだけのハンバーガー不毛の地。

綾瀬を拠点にいかにハンバーガーを新しい食文化の一つとして根付かせていくのか。今回はバーグハック共同創業者の一人、山崎さんにお話を伺ってきました。

▼ 綾瀬でハンバーガーを始めたワケ

ラーメン店で同僚だったキッチン担当の山﨑豪介さん(左)サービス担当の高野将弘さん(右)

高橋:BurgHackさんはレトロな店が目立つ綾瀬では少し異端な存在ですよね。こういったお洒落なお店は都心ではよく見かけますが、なぜ綾瀬の街でハンバーガー屋をやろうと思ったのでしょうか?

山﨑:二人とも新しいことを始めたかったということもあり、それぞれ別のハンバーガー屋で修行しました。退職後、物件探しをしていた時に見つけたのがこの店舗だったのです。直前で入居していたテナントさんがハンバーガー屋さんだったのも理由の1つでした。

写真提供:BurgHack

写真提供:BurgHack

高橋:それにしてもどうして独立される際、ラーメンではなくハンバーガーを選んだのでしょうか?綾瀬は美味しいラーメン屋が集まるラーメン激戦区だと聞いています。(参照:隠れラーメン激戦区「北綾瀬」に知る人ぞ知る名店が集まる理由)

山﨑:ラーメンも選択肢の一つとしてありましたが、個性的で面白いラーメン屋さんはすでにたくさんありますし、だったらハンバーガーの方が面白い取り組みを行う余地があるのではと考えました。

高橋:ハンバーガーといえば、2015年ごろから急激に熱を帯び始めましたよね。アメリカの人気ハンバーガーショップ「シェイクシャック」の日本上陸も2015年でしたし、その頃から街中でこだわりのハンバーガーを提供する個人店が増えてきた印象です。

山﨑:確かにその頃からハンバーガーが話題になり始めましたね。「グルメバーガー」という言葉がSNS等を中心に浸透したのが業界としては大きかったのではと思っています。

写真提供:BurgHack

写真提供:BurgHack

高橋:最近、雑誌でグルメバーガー特集をやっていたりしますよね。でも、大手チェーンのハンバーガーとグルメバーガーとでは具体的に何が違うのでしょうか?

山﨑:ファストフードではない、1000円以上する高級バーガーとか様々な見方がありますが、明確な定義はないと思っています。強いて言えば、写真通り、あるいはそれ以上に見栄えのする作り込んだハンバーガーのことを指すと思います。

また、バンズのこだわりもグルメバーガーの特徴かもしれません。バーグハックではバンズをしっかりと焼いています。チェーン店と差別化を図るために、口に入れたときのバンズの食感にこだわっています。

人が何に魅力を感じるのかと言えば、味は当然のことながら、手に取った時の重さだったり、口に運んだ際の食感だと考えています。

▼ BurgHackのミッションはバーガー文化をつくること

写真提供:BurgHack

高橋:バンズに力を入れているということは、食材にもすごくこだわりがありそうですね。

山﨑:よく聞かれるのですが、実は食材に対するこだわりは強くはありません。

先ほどお伝えしたように、我々は綾瀬の街に縁もゆかりもなく、たまたま物件が見つかったからこの街に飛び込みました。綾瀬で商売を始めるにあたって、周りの店を何軒か回ってみると、どこも美味しいのは前提でその上で安くて量が多いんですよ。

グルメバーガーは一般的には高価な食べ物ですが、綾瀬という街で受け入れられるには、まずはこの街の文化に合わせて量は多く値段を下げるところから始めなければならないと感じました。そうするために食材のこだわりより、いかに味を落とさずに値段を下げられるかが課題でした。

写真提供:BurgHack

高橋:実際に値段を下げて営業してみて、お客様の反応はいかがでしたか?

山﨑:オープンしてまだ2ヶ月ですが、分かったことは「綾瀬のお客様は本当に美味しいものはお金を払って買い支えてくださる」ということです。綾瀬は単価が低い街ではなくて、自分たちが納得しないものにお金を払いたくない、と考える人が多いだけだと思うんです。



高橋:綾瀬の方に受け入れられるバーガー作りに力を注いでいるとのことで、実際に来店されるお客様は綾瀬の方が多いのでしょうか?最近はインスタグラムなどを見て遠方からグルメバーガーを求める方が少なくないと聞きました。

山﨑:確かにインスタグラムを見てご来店くださるお客様も少なくありませんが、来店されるお客様はリピーターの方が多く、お話しを伺うと近所から来てると仰られる方がほとんどです。

注文の半数はテイクアウトと話す山﨑さん。事前注文したお客さんが自転車でピックアップに訪れると言う。

高橋:綾瀬という街はすごく横の繋がりが強いと聞いたことがあるのですが、口コミの力がお店の営業にすごく影響を与えそうですね。

山﨑:確かに口コミの力は絶大だと思います。ここまでネットの評価が反映されない街も珍しいと思います。例えば、食べログなどで評価が低いお店でも、実際にお店に行ってみたら常連客の方で繁盛しているなんてことがよくあるのが綾瀬の店の特徴だと感じました。

地元の方同士の情報共有ネットワークがすごく発達していて、一度、口コミでダメと判断されたらそこから挽回することは難しいかもしれません。しかし一度気に入ってもらえれば長いお付き合いができる街なのだと思います。

▼ グルメバーガーをラーメンのような国民食にしたい



高橋:先日お店に伺った際、平日にも関わらず店の外まで行列ができていました。綾瀬の方にとってBurgHackさんはグルメバーガーが食べられる店として認知されているように見えました。ちなみに、来店される方の年齢層は若い方がメインなのでしょうか?

山﨑:このような店なので最初は若い客層を想定していたのですが、蓋を開けてみると、30代〜60代くらいの年齢層がメインでした。もちろん若いお客様がお見えになることもありますが、全てのお客様が50代〜60代なんて日もあったりするなど、他の店では見ない光景が広がっています。

店名の「BurgHack」はライフハックからとっていて、我々の目的はグルメバーガーをもっと身近な食べ物にすることなんです。その意味では若者向けと考えられているハンバーガー屋に中高年のお客様が大勢いらっしゃるということはある意味本望だと言えますね。

高橋:グルメバーガーを国民食にと言うと一見突飛なアイデアに聞こえますが、ラーメンがここまでの国民食になったのも最近の話ですよね。そう考えればグルメバーガーにも十分そのポテンシャルはありそうですし、ちょうどバーガーショップも増えているので今は過渡期と言えるかもしれませんね。

山﨑:日本ではアメリカ等に比べハンバーガーを食べる食文化はまだそこまで根付いてないと感じます。ファストフード店がこれだけ身近にあってもなおラーメンと同列で語られる事はありません。しかしそれはグルメバーガーが身近になかったからだと考えています。

高橋:グルメバーガーは都心に集中していて、郊外にはあまりありませんよね。綾瀬に関しては駅前にバーガーキングがあるのみで、ハンバーガー不毛の地ですが、そんな街でグルメバーガーを広める活動をするというのはすごく先駆的だと感じました。

山﨑:恐らく都心でこの理念を持って経営しても埋もれてしまうと思うんです。新しい食文化を根付かせるという意味では綾瀬という街は我々に合っていると感じます。

まだまだ世間ではグルメバーガーとファストフードのハンバーガーは混同されがちです。グルメバーガーはしっかりとバンズを焼いたりと提供までにお時間を頂くことがあるんです。なので、注文してすぐに受け取れるファストフードのハンバーガーに馴染みのある方は違和感を覚えるかもしれません。

だからこそ、時間をかけてグルメバーガーとはこういうものだとお客様に感じてもらわなければなりません。時間はかかると思いますが、長く続けて新しいハンバーガー文化を綾瀬の街から発信できればと思っています。



◆取材協力

BurgHack(バーグハック)

◆営業時間

平日:11時〜15時・18時〜22時

土日祝:11時〜16時・18時〜21時

※30分前LO、月曜定休日

◆アクセス

千代田線綾瀬駅徒歩2分


著者:高橋将人 2020/8/28 (執筆当時の情報に基づいています)
※本記事はライターの取材および見解に基づくものであり、ハウスコム社の立場、戦略、意見を代表するものではない場合があります。あらかじめご了承ください。