約3年前から、新型コロナウイルスの影響でおうちの中で過ごす時間が急激に増えたことで、おうちでの過ごし方の変化を感じている方が多いのではないでしょうか。仕事で在宅勤務が始まったり、趣味でZoomなどのオンライン活動を始めたりするなど、「おうち時間」を快適に過ごせるよう、工夫をしている方が増えました。
そこで今回は、そんなおうち時間をさらに充実させる「スタディスペース」についてご紹介。概要から工夫するポイントまで、丁寧にお伝えします。「快適なスタディスペース空間」とは、具体的にどのように作ればいいのか、快適おうち空間アドバイザーの私が解説していきましょう。
スタディスペースとは
スタディスペースとは、スタディコーナーやワークスペースと呼ばれており、勉強や読書、仕事などができる作業用のスペースのことを指します。
スタディスペースと似たような言葉に「書斎」や「勉強部屋」があります。書斎や勉強部屋との大きな違いは、個室を持たないことと、今あるお部屋のスペースに簡単に作れることです。
個室を持たないスタディスペースですが、書斎や勉強部屋と同じように集中しやすい空間が作れたり、生活にメリハリをつけたりすることができるなどメリットが多くありますよ。
次項以降で、スタディスペースを設けるメリットや気を付けるべき注意点を解説していきますので、それらを踏まえつつお部屋への設置を検討してみましょう。
スタディスペースを設けるメリット
まずは、おうちの中にスタディスペースを設けることで得られる3つのメリットについて解説します。
メリット①作業に集中しやすい
おうちで短時間の作業しか行わない場合、スタディスペースの必要性をあまり感じないかもしれませんが、在宅勤務が週に1〜2回以上ある方の場合は、集中できる環境を整えることで作業が捗るようになるでしょう。
緊急事態宣言が発令された時期は、急遽1日の多くの時間をおうちの中で過ごすことになってしまったため、おうちの環境や家族構成によって快適性・集中しやすさに大きな違いが出たようです。
スタディスペースを作ることにより集中力が高まるので、作業効率を上げられます。
後ほど具体的なレイアウトを紹介しますが、例えば作業に集中しやすい空間を作るために、テレビや本棚が見えない位置に設置するとよいでしょう。テレビや本棚を見えない位置に設置するのが難しい場合は、間仕切り家具で部屋の空間を仕切ったり、布を被せたりするだけでも集中しやすい環境を作ることができます。
メリット②ダイニングテーブルを汚さないで済み、生活にメリハリが付く
スタディスペースを設置することで、ダイニングテーブルやリビングに置いているテーブルを、勉強をするときに出てしまうケシカスやペンのインクで汚す心配がなくなります。
ダイニングテーブルは「食事」をする場所として、スタディスペースは「勉強」や「作業」をする場所として用途を分けることで、生活にメリハリをつけやすくなります。ダイニングテーブルでの勉強や作業を止めることで、食後にだらだら過ごしてしまうなどの悪習慣を断ち切り、気分を切り替えて勉強や作業を始めることができるでしょう。
メリット③書斎を作るよりも費用がかからない
スタディスペースと似たような空間として「書斎」が挙げられます。書斎とは、勉強や読書などを行うための専用の部屋です。スタディスペースは、書斎を作るよりも費用をかけないで簡単に作れます。書斎とスタディスペースの設置にかかる費用を、以下の表で比較しました。
書斎 | スタディスペース | |
---|---|---|
空間・間取り | 最低でも2~3帖ほど必要 | 他の空間と共有して作れる |
ドア | 必要 ※2万~3万円程度 | 不要 |
窓 | 必要 ※2万~3万円程度 | 不要 |
カウンター・机 | 必要 ※2万~5万円程度 | 必要 ※2万~5万円程度 |
イス | 必要 | 必要 |
本棚・本 | 必要に応じて用意 | 必要に応じて用意 |
上記の表から分かるように、スタディスペースは書斎に比べて費用がかかりません。手軽に勉強や作業空間を用意したいのであれば、スタディスペースの設置がおすすめです。
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スタディスペースを設けるデメリット・注意点
メリットの多いスタディスペースですが、ここからはスタディスペースがあることによるデメリットや注意点をお伝えします。スタディスペースを設置してから後悔することがないように、事前にデメリットについても把握しておきましょう。
注意点①部屋が狭くなる
スタディスペースとは、おうちの中になくても困らないスペースではあるため、新たにスペースを作ることで部屋が狭くなり、不便に感じる可能性があります。
お部屋の間取りや設置するスタディスペースの広さにもよりますが、スタディスペースの必要性を実感できていない場合、自由に使えるお部屋のスペースが減ってしまい、ストレスを感じるかもしれません。このようなときは、スタディスペースの家具を折り畳みできるものにしたり、移動できるものにしたりすることで、気分に合わせてお部屋の使い方を変えられるでしょう。
注意点②複数人で同じお部屋で過ごすときに不都合に感じる
同じお部屋で複数人が過ごす場合、一緒にくつろいだり作業したりするときもありますが、別々の行動をしたいと考えることもあるでしょう。しかし、同じお部屋の中にくつろぐ場所とスタディスペースを設けている場合、くつろぎにくく作業しにくい環境になることがあります。
間仕切り家具を設置したり、部屋を仕切ったりするだけでは音や匂いを遮断することはできないため、お互いに相手を尊重した行動を意識する必要があります。スタディスペースを設置する前に、スタディスペースの設置場所や使用する時間帯を検討したり、お互いが優先したい部屋の用途について話し合ったりすることが大切です。
注意点③使わなくなってしまう可能性がある
スタディスペースを作ってみたにも関わらず、使い勝手が悪かったり、机の上が物置になってしまったりすると、使わなくなってしまう可能性があります。
せっかくスタディスペースを作るのであれば、継続的に利用したくなるような工夫が必要です。具体的には、スタディスペースが生活動線を邪魔していないことを確認したり、スタディスペースで使ったものをすぐに片づけられる場所を準備しておいたりするとよいでしょう。
勉強が捗るスタディスペースの特徴
ここからは、どのようなスタディスペースであれば、勉強や作業が捗るのかお伝えします。
簡易間仕切り等でスペースを分けている
オープンなスペースで集中できる方も中にはいると思いますが、私のように区切られたスペースの方が集中できるという方も多いのではないでしょうか。スタディスペースとくつろぐスペースとの間に簡易的な間仕切りを設置することで、場所を移動することになるので気持ちを切り替えやすく、集中しやすい環境を作れます。
様々な誘惑が見えない様に遮断できている
テレワークに集中できない原因の1つに、テレビを見てしまうことが挙げられます。そのため、スタディスペースからはテレビが視界に入らないように家具を配置しましょう。その他にも、漫画やゲームなど、目に入るとつい集中力が切れてしまうようなものがある場合、誘惑が視界に入らないように工夫をしてみてください。
自分らしいスペース作りや気分が上がる照明や小物を使う
観葉植物や照明器具、お気に入りの文房具を使用することで、部屋がおしゃれになるだけでなく、モチベーションという心の面でもスタディスペースの快適性が増します。作業中に視界に入ってくる景色や明るさ、小物を工夫することで、反射的にくつろぎモードから作業モードにスイッチを切り替えられます。
今回ご紹介したように、簡単に集中できるような仕組みを取り入れてみてください。
インテリアコーディネーターが提案するスタディスペース作り
ここからは、インテリアコーディネーターの私が、今までの経験を元にスタディスペース環境の作り方を解説します。簡単に取り入れられる内容もありますので、実際に試してみるのもおすすめです。
南側設置で手元が明るいスタディスペース
最初にご紹介するのは、南側で手元に明るさが届くスタディスペースです。窓が視界に入る位置に机を設置し、明るさや時間の変化を感じられます。壁に向かって黙々と作業する方が集中できるという方もいらっしゃると思いますが、ときどき窓の外を見ていると、気分転換になるのでおすすめです。
勉強に集中できる個室にあるスタディスペース
在宅勤務がほとんどの人はスタディスペースではなく、思い切って個室を利用してスタディルームを設けてみてはいかがでしょうか。家族全員がおうちの中で過ごす場合でも、部屋を分けることでお互いの作業時間やくつろぐ時間を邪魔することなく、家族それぞれにとって快適なおうち時間を確保することができます。
スタディスペースに置いておくといいアイテム3選
スタディスペースに置いておくといいアイテムは、以下の3つです。
・観葉植物
・スタンドライト
・文具
アイテム①:観葉植物
観葉植物を1つ置くだけで、デスク周りがおしゃれになります。長時間の作業に疲れたときに植物を見ていると、気持ちが癒やされます。
デスク上に観葉植物を置くなら、頻繁に水をあげる必要のない「サボテン」や「盆栽」がおすすめです。ガーベラのようなお花が咲く観葉植物の場合、手入れが大変なうえに、デスク上の環境からお花が枯れやすくなるので避けましょう。
アイテム②:スタンドライト
スタディスペースを作ったら、スタンドライトを設置しましょう。照明を設置することで手元が明るくなるので、作業に集中しやすくなります。
基本的に集中力が高まる照明の色は「白色」です。落ち着いた雰囲気で本を読みたいときや就寝前の読書は、「赤みがかったオレンジ色」の照明がおすすめです。
<「白色」の照明がおすすめの場面>
・パソコン作業をしているとき
・勉強をしているとき
・昼間に読書をしているとき
<「赤みがかったオレンジ色」の照明がおすすめの場面>
・就寝前に読書をしているとき
・休憩をしているとき
・目を休めたいとき
自分がしている作業にあわせて照明の色が変えられるスタンドライトを選ぶことで、自然に気持ちも切り替えられます。
アイテム③:文具
書き物に欠かせない文具を用意するときは、おしゃれなペンやノートを使うことで、作業のモチベーションを上げられます。現在は、おしゃれな文具以外にも、作業効率があがる便利なグッズも多いです。
例えば、一見普通のペンケースなのですが、ファスナーを半分開けてバナナの皮をめくるように布をひっくり返すと、ペンケースが筆立てに早変わりするものがあります。使いたいペンや道具が普通のペンケースよりも早く見つかるので、便利です。
作業のモチベーションを高めたり、作業を効率化できたりする文具をそろえて、環境を整えましょう。
一級建築士 × インテリアコーディネーターである私の自宅のスタディスペース
現在、私は自宅のダイニングテーブルで、食事に使わない側の列をスタディスペースとして使用しています。私の場合、在宅勤務の日数は少ないですが、最近まで育児休業を取得しており、オンラインレッスンや打合せ・本の執筆をスタディスペースで行っていました。
ダイニングテーブルのサイズは、縦85cm・横140cmで、作業に使用しているスペースは、縦50cm・横140cm程度です。天井にはスポットライトを使用し、くつろぎたいときは電球色(オレンジ色)に、作業中は昼白色(白色)に切り替えることで、それぞれの用途に適した明るさを得られています。
わが家のルールとして、『食事の際には、基本的にテーブルに作業中のPCなどは置かないこと』と決めています。食事の直前まで作業していたときも、座ったままで置ける範囲内に作業関連グッズ専用の収納スペースを設置しているため、すぐに片づけることが可能です。
スタディスペースからテレビは見えにくいので誘惑を遮断できていますし、すぐ横にある腰高のキッチンカウンターが間仕切りの役目を果たしています。椅子の背後にはすぐ壁があるので視界に余計なものが入りにくく、集中して作業をしやすい環境となっています。
私には1歳のわんぱくな娘がいるため、彼女の遊ぶスペースを視界に入れて安全性を保ちつつ、スタディスペースとLDK空間をゆるやかに仕切ることでお互いのパーソナルスペースを保てる、快適な環境ができました。
スタディスペース設置で集中できる環境を整えよう
スタディスペースは、別名 スタディコーナー、ワークスペースとも呼ばれ、勉強・読書・仕事などをするための作業用のスペースを指します。スタディスペースを設置する場所を工夫したり、便利アイテムを使ったりすることで、作業効率が高まるでしょう。
またスタディスペース作りで意識したいポイントは「手元に明るさが届くかどうか」や「誘惑が見えない様になっているかどうか」などが挙げられます。南向き物件やスタンドライトの活用で手元が明るいお部屋にしたり、気分が上がる文房具を取り入れたりするなど、勉強が捗るスタディスペースを作ってみてはいかがでしょうか。