万が一の場合に備えて、家庭に救急箱の用意をしておくことは必須です。しかし、何を入れておけば安心なのか、わからないという方も多いでしょう。
そこで今回は、救急箱の中身を「ファミリー向け」と「一人暮らし向け」に分けてリスト化しました。登録販売者としてドラッグストアでの長年の勤務と、主婦・母としての経験から、意外と知られていない必須アイテム、気を付けるべき注意点、収納場所についても詳しく解説します。
これから救急箱を準備する方、今ある救急箱を見直す方は、ぜひ参考にしてみてください。
家庭で救急箱を置いておくメリット
救急箱を準備する前に、救急箱を置いておくメリットを知っておきましょう。必要性が明確になると、救急箱の中身も変わるかもしれません。
急な病気やケガに対応できる
救急箱は、予期せぬ病気やケガの「応急手当」として役立ちます。例えば、急に高熱が出たとき、うっかり包丁で手を切ってしまったとき、お店に薬や衛生用品を買いに行くのは困難です。家に救急箱として必要なものを準備しておけば、その場ですぐに対応できます。
それらの手当は、病院に行くほどではない場合のセルフケアと、病院に行きたいけれどすぐに行けない場合の一時対応、両方の役割を果たしてくれます。
どんな生活にも予期せぬ病気やケガはつきものなので、家に救急箱があると安心です。
災害時の応急手当に役立つ
救急箱は、実は災害時にも大きく役立ちます。災害時は社会全体が混乱しており、病院に行くことが困難になるでしょう。地震による落下物でケガをしたり、不安から胃腸が弱ったりしたときのセルフケアは、とても大切です。
救急箱の中身は、災害時も想定しながら選ぶことをおすすめします。
【ファミリー向け】救急箱の中身リスト

まずは、ファミリー向けの救急箱の中身リストを紹介します。
<常備しておきたい薬>
・解熱鎮痛薬
・風邪薬
・胃薬
・痒み止め塗り薬
・外用消炎鎮痛薬(湿布)
・日頃から服用している薬
<常備しておきたい衛生用品>
・体温計
・絆創膏
・包帯/ガーゼ/テープ
・はさみ
・ピンセット・毛抜き
・アルコール
どういった効果があり、どのように役立つのかをひとつずつ解説します。ご家族が利用する場面を想定しながら、確認してみてください。
解熱鎮痛薬
解熱鎮痛薬は、痛みを抑えたり、熱を下げたりする効果があります。歯や頭が痛いとき、月経痛がつらいとき、発熱したときなどに利用できます。
痛みと高熱は最初に取り除きたい症状なので、解熱鎮痛薬は必ず常備しておきましょう。お子様がいらっしゃる場合は、お子様の年齢に合わせた薬も、忘れずに準備してください。
風邪薬
風邪薬は、風邪そのものを治すものではなく、鼻水や咳、発熱などの諸症状を緩和する目的の薬です。
救急箱に入れておく風邪薬は、鼻水やのどの痛みなど各症状に特化したものではなく、さまざまな症状に対応したオールマイティなタイプを選ぶと良いでしょう。また、お子様の年齢に合わせた薬も準備しておきましょう。
胃薬
胃薬は、胃痛・胸やけ・むかつき・胃もたれなどのつらい症状を和らげます。
胃酸を抑えるタイプや、粘膜を守るタイプなどさまざまな商品が流通していますが、複合的な効果がある商品を選びましょう。消化剤や生薬などが配合されていると、より幅広い症状に対応できます。
痒み止め塗り薬
抗ヒスタミン剤や抗炎症剤配合の塗り薬は、湿疹や虫刺されなどの痒みを抑えてくれます。痒みは睡眠を妨げることもあり、可能な限り抑えたい症状です。
適切に活用できるなら、ステロイド剤や抗生剤配合の薬も準備すると、より早く症状を抑えられます。ただし、これらは症状に合った利用でなければ効果が得られなかったり、悪化したりします。知識がなく、適正利用が難しい方は、救急箱に入れるのは控えておきましょう。
外用消炎鎮痛薬(湿布)
外用消炎鎮痛薬とは、消炎鎮痛剤が配合された湿布のことです。捻挫や腰痛の炎症を鎮め、痛みを和らげてくれます。
痛みが発生した直後は冷やすことが重視されるため、救急箱には温感タイプではなく、テープタイプや冷感タイプがおすすめです。
日頃から服用している薬
日頃から定期的に服用している薬があれば、救急箱にも入れておきましょう。蕁麻疹や花粉症などのアレルギー薬や、お通じを良くする便秘薬などが挙げられます。
通常であれば、症状が出てから買いに行けますが、災害時は手に入らないかもしれません。救急箱に、家族分を準備しておきましょう。
体温計
体温計は、必ず救急箱に入れておきましょう。もし日常的に使うために救急箱から出している場合は、災害時を想定して、救急箱にも別で入れておくことをおすすめします。発熱の把握は、体調管理においてとても重要です。
絆創膏
絆創膏はちょっとした傷のカバーに最適なので、さまざまな大きさのものを準備しておくと良いでしょう。
ハイドロコロイド材などの湿潤療法ができるタイプも常備しておくと、傷の治りを早めたり、防水効果により水仕事ができたりするなど、とても便利です。
包帯/ガーゼ/テープ
絆創膏では対応できないような大きなケガをしてしまったときに備え、包帯・ガーゼ・テープはそろえておきましょう。
長期保管される可能性が高いので、ガーゼは滅菌加工した個包装タイプが衛生的でおすすめです。また、傷に付きにくいガーゼも準備しておくと、不慣れなセルフケアに役立ちます。
はさみ
湿布やガーゼなどを切るために、はさみも一緒に保管しておきましょう。テープの粘着物質が付きにくいタイプが使いやすくて、おすすめです。
ピンセット・毛抜き
ピンセットは、ガーゼなどを衛生的に扱いたいとき、毛抜きはトゲが刺さったときなどに必要です。創傷部分の応急処置にも役立つので、サビなどがない衛生的なものを入れておきましょう。
アルコール
アルコールは、ケガの手当をする手指、器具などの消毒に利用します。傷の手当は、清潔さがとても重要なので、必ず準備しておきましょう。
【一人暮らし向け】救急箱の中身リスト

一人暮らしの場合は、使う頻度も量も少ないため、可能な限りアイテムを絞りたいところです。今回は、最低限必要なものをピックアップしました。アイテム数を最小限に抑えた紹介なので、上記ファミリー向けアイテムも確認し、ご自身に必要なものは加えるようにしてみてください。
<常備しておきたい薬>
・解熱鎮痛薬
・胃薬
・塗るタイプの外用消炎鎮痛薬
・日頃から服用している薬
<常備しておきたい衛生用品>
・体温計
・ガーゼ/テープ
・はさみ
・毛抜き
・アルコール
一人暮らしの場合、ファミリー向けとは選び方が少し異なります。
解熱鎮痛薬
解熱鎮痛薬は、痛みを抑えて、熱を下げる効果があります。痛みは、歯痛、頭痛、月経痛などに共通して使うことが可能です。
風邪の場合は、高熱が一番に体力を奪います。アイテムを絞る場合は風邪薬を控えて、解熱鎮痛薬を入れておくことがおすすめです(風邪薬の中の解熱成分は解熱鎮痛薬の成分と同じ)。
胃薬
胃薬は、胃の痛みやむかつき、吐き気などさまざまな不快感を改善してくれます。胃の不調はとてもつらく、冷静さを失いやすい症状です。万能タイプの胃薬を準備しておきましょう。
塗るタイプの外用消炎鎮痛薬
外用消炎鎮痛薬は、急な腰痛や捻挫など、痛みを伴う諸症状に有効です。
一人暮らしの場合は、貼るタイプ(湿布)ではなく、塗るタイプの外用消炎鎮痛薬をおすすめします。患部を覆う湿布のほうが効果を得やすいのですが、背中などに自分で貼ることは困難です。背中にも届く形状になっている、塗るタイプを選ぶと良いでしょう。
日頃から服用している薬
日頃から定期的に服用しているアレルギー薬などがあれば、救急箱に入れておきましょう。
通常であれば発症時に購入すれば良いですが、災害時などは入手が困難になる可能性があります。忘れずに準備しておきましょう。
体温計
発熱の把握は体調管理の重要項目なので、必ず準備しておきましょう。
一人でゆっくりと計測できるのであれば、実測タイプ(測定時間が長いけれど正確性が高い)にしておくと、より正確に測れるのでおすすめです。
ガーゼ/テープ
ケガをしてしまったときに備え、ガーゼ・テープは準備しておきましょう。くっつきにくいガーゼを準備しておけば、テープと組み合わせることで、絆創膏の代用として活用もできます。
はさみ
ガーゼやテープを切るために、はさみを一緒に入れておきましょう。粘着テープ用のはさみを選ぶと、使いやすいです。
毛抜き
毛抜きは、ケガの手当やトゲ抜きに必要です。ピンセットの代用としても使えることが多いので、常備しておくことをおすすめします。
アルコール
ケガの手当をする際、手指や器具の消毒にアルコールが有効です。災害時には、手当以外にもさまざまな用途に使えるので、必ず入れておいてほしいアイテムです。
私が実際に救急箱に入れていて良かったと思ったアイテム

ここからは、登録販売者としての接客と主婦・母歴の経験を通じてわかった、救急箱に入れておきたい意外なおすすめアイテムを紹介します。一般的な救急箱リストには掲載されていませんが、実生活に基づいて必要と感じたものなので、ご自身に当てはまる場合はぜひ準備してみてください。
防水フィルム
ドラッグストアなどに市販されている防水フィルムは、ケガをしたときにとても便利です。ガーゼを貼っている負傷箇所の上から防水フィルムで覆うと、一時的に水を使えるようになります。しっかりと防水してくれるので、食器洗いや入浴など、日常生活で大いに役立ちます。
育児・介護で休めない方、一人暮らしで助けがない方など、幅広い方の助けになるでしょう。さまざまな部位に対応できるよう、カットして使う幅広のロールタイプをおすすめします。
ラップ
ラップは、災害時のケガの応急処置に大きく役立ちます。例えば傷の止血後、清潔な水で洗い流してラップで覆うだけで、湿潤療法という手当ができます。捻挫や骨折の固定としても活用可能です。
ラップはケガの手当だけでなく、保温や水・食料の保管など、災害時に多様な使い道があるので、救急箱に入れておきたいアイテムです。
ワセリン
ワセリンは皮膚の保護の役割を果たします。乾燥対策や服の擦れ予防、オムツかぶれなど、皮膚のトラブルに万能に使えるアイテムです。特に皮膚が弱いお子様や高齢者がいらっしゃるご家庭は、ぜひ入れておきましょう。
次亜塩素酸・ゴム手袋
次亜塩素酸とゴム手袋は、感染力の強いノロウイルスなどの消毒用です。家庭内感染を防ぐためには、正しい消毒が欠かせません。
ノロウイルスなどの食中毒はいつ発症するかわからないので、急な発症時でも対応できるように、常備しておくことをおすすめします。大きくて救急箱に入らない場合は、救急箱と同じ場所に保管しておきましょう。
救急箱に入れるのはあまりおすすめしないアイテム
緊急時が心配で、たくさんのものを網羅的に準備しておきたくなりますが、救急箱に入れるには適さない薬などもあります。
下痢止め薬
下痢止め薬は、使い慣れていない方は救急箱に入れなくて良いでしょう。急な激しい下痢の場合、すぐに下痢止め薬を服用するのは控えてください。感染性であれば、体内の菌やウイルスを排出しようとしている状態であり、下痢を止めるのはよくありません。
原因のわからない激しい下痢の場合は、まず受診して原因を判明させてから薬を使うようにしましょう。軟便などが心配であれば、下痢止め薬ではなく、整腸薬を入れておくと安心です。
消毒薬
救急箱に必要不可欠なイメージが強い消毒薬ですが、実は必要ありません。昨今は「傷は消毒しない」という治療が主流であり、消毒をすることで傷の治りが遅くなるとされています。傷は衛生的な水でしっかりと洗い、乾燥させないような手当をしましょう。
もし衛生的な水の確保を心配されるのであれば、飲み水とは別に、救急箱にペットボトルなどで清潔な水を用意しておくと良いでしょう。
救急箱を準備する際の注意点(期限や保管場所など)

救急箱を準備する際にはいくつか注意することがあるので、事前に確認しておきましょう。
定期点検(使用期限の確認など)は必須
救急箱は、使用期限の確認と状況に合わせたアイテム見直しのため、定期的に点検するようにしましょう。意外と知られていませんが、使用期限が設定されている衛生用品もあります。薬だけでなく、衛生用品の期限にも注意してください。
また、家族構成や体調によって必要なものは変わるので、定期的な救急箱の中身の見直しは必要です。
薬は個包装タイプを常備
利用頻度の少ない薬は、個包装タイプがおすすめです。瓶などに入った大容量タイプは安価で人気ですが、一度開封すると使用期限に関わらず、短期間で利用できなくなります。あまり使わない薬は、個包装タイプを選ぶようにしましょう。
箱は蓋と持ち手つき
可能であれば、蓋と持ち手つきの救急箱にしましょう。災害時は、緊急で持ち出す可能性があります。日常であれば不要ですが、災害時のために蓋と持ち手つきの救急箱だと安心です。
保管場所は冷暗所・子どもの手が届かないところ
救急箱の保管場所は、薬の劣化を防ぐために高温多湿を避けましょう。また、子どもが口に入れる危険を考慮して、子どもの手の届かないところでなければなりません。さらに、災害時に持ち出す可能性があるので、取り出しやすい場所が理想です。
各家庭の状況や家の配置によって、場所は変わるはずです。しっかりと検討し、涼しくて湿気が少なく、子どもの手が届かない、すぐに取り出せる定位置を決めましょう。
いざというときに困らないために、しっかり救急箱の中身を準備しておこう
登録販売者、主婦、母の経験から、日常と災害時両方において、本当に必要と思われる救急箱の中身を紹介しました。
家族の状況や個々の体調に合わせて、必要なものをそろえましょう。薬を選ぶのは難しいので、可能であれば、店頭で薬剤師や登録販売者に相談することをおすすめします。
中身をそろえた救急箱は適切な場所に保管し、使用期限の確認、家族の構成や状況に合わせた中身の見直しを定期的に行うことが重要です。
救急箱は、日々の暮らしの緊急時だけでなく、災害時にも大きく役立ちます。しっかりと準備しておくことで、いざというときに、救急箱はあなたと家族を守る大きな存在となるでしょう。