「備蓄の重要性はわかるけど、なかなか始められない」「一度備蓄品を購入したけど、ずっと収納に置きっぱなしで賞味期限が切れてしまった」などの悩みを抱えていませんか?
こういった悩みを解決する手段として、ローリングストックが注目されています。聞きなれない言葉かもしれませんが、これを知ると簡単かつ継続的に備蓄できるようになります。今回は、ローリングストックのすべてを解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
ローリングストックとは
ローリングストックは、食料や飲料水などを普段より多めにストックしておくことで、家の中に常に一定量の食料や飲料などを備蓄し、災害時の備蓄品として活用する方法です。
備蓄は一般的に、最低でも3日間分が必要と言われています。1日3食とすると、1人あたり9食分の備蓄が必要です。例えば、普段食べているレトルト食品を9食分買い、普段の食事の中で賞味期限の短いものから食べていき、食べた分を新たに買い足します。そうすれば、賞味期限を切らすことなく、必要な備蓄品を確保することが可能です。
このように、賞味期限があるものなどを効率的に備蓄する方法をローリングストックと言います。
ローリングストックをすすめる理由
日本は、誰もが知る災害大国です。世界のほかの国と比較して、大きな地震が発生する確率が高いだけでなく、津波、火山噴火、台風、洪水、土砂災害、豪雪など、さまざまな災害に頻繁に見舞われます。
一方で、普段から災害に対する備えをしっかりとしておけば、災害時に生活困難に陥るリスクを低減することが可能です。普段からの備えの最たるものが備蓄であり、その方法としてローリングストックが注目されています。ここでは、具体的にローリングストックのおすすめのポイントを見ていきましょう。
普段の生活と切り離した備蓄をしなくて良い
「備蓄品を普段の生活とは別に確保しておかなければいけない」と考えている人も多いでしょう。しかし、一般家庭の場合、平均的に数日分の食料が冷蔵庫や戸棚などに入っていると言われています。つまり、普段の生活でストックしているものをもう少し追加で買っておけば、それだけで十分な備蓄量を確保できる可能性があります。
ローリングストックはその考え方を応用したものであり、普段の生活と切り離した備蓄をする必要はありません。普段の生活のストックを少し多めにしておくだけで達成できるご家庭も多く、習慣化することで無理なく続けられます。
災害時にいつもの食事が食べられる
災害が発生すると、ニュースなどで避難所の様子がよく映し出されます。その中では、行政などから支給されたパンやおにぎりなどを食べる姿を見ることが多いため、避難生活中は食べたいものが食べられないと思っている人も多いかもしれません。
しかし、ローリングストックで、普段から食べたり飲んだりしているものをストックしておけば、災害時にも同じ生活ができます。避難生活中にはさまざまな不安やストレスがありますが、普段と同じものが食べられると安心でき、ストレスの軽減につながる可能性もあります。
ローリングストックで最低限確保したい量
災害時に必要な備蓄量をご存じでしょうか。3日間分が必要という人もいれば、1週間分が必要という人もいます。いろいろな数字があると、実際にどれだけ必要なのか迷ってしまうかもしれません。
一般的には、各ご家庭で最低3日間、できれば1週間は過ごせるよう、備蓄をしておくことが推奨されています。災害が発生したとき、人命救助は最初の72時間が重要という話を聞いたことはありませんか?消防や警察などは、最初の3日間(72時間)は救助・救命を最優先にします。少なくともこの3日間は、誰かの救助を待つのではなく、自力で生活できるようにしておくことが重要です。
また、過去の被災事例では、ライフラインの復旧までに1週間以上かかるケースもありました。この間は、電気やガス、水道が使用できなくなる可能性がありますので、政府や多くの自治体は1週間以上の備蓄を推奨しています。
つまり、ローリングストックで確保しておきたい最低限の備蓄量としては、3日間が目安です。ここでは具体的に、世帯ごとに最低限確保したい食料と飲料水の備蓄量を紹介します。なお、ここで紹介する水の備蓄量は、あくまで飲料水だけの量です。このほかにも、トイレなどで使用する生活用水が必要になりますので、ご注意ください。
一人暮らし
一人暮らしの場合は、食料は9食分(=3食/日×3日分)の備蓄をしましょう。また、飲料水は一般的に、大人1人あたり1日に3リットル必要と言われています。9リットル(=3リットル/日×3日)を備蓄しておくようにしましょう。
二人暮らし
二人暮らしの場合は、単純に上で紹介した一人暮らしの倍の量を備蓄するようにしましょう。つまり、食料は二人で18食分、飲料水は18リットルが必要です。
ファミリー(例:4人家族、夫婦+子ども2人)
ここでは、4人家族(夫婦+子ども2人)を例にご紹介します。子どもは年齢にもよりますが、基本的には子どもも大人と同じ量を備蓄するようにしましょう。つまり、上で紹介した一人暮らしの備蓄量の4倍になります。
食料は4人で36食分、飲料水は36リットルです。飲料水は、2リットルペットボトル18本とかなり量が多くなりますが、大きな災害では水道が止まってしまうこともあります。飲料水は命を守るためにも重要ですので、ローリングストックを活用して必要量を備蓄するようにしましょう。飲料水の備蓄法としては、ウォーターサーバーを活用する方法もあります。
なお、ここではある程度成長した子どもを前提にしていますが、離乳食開始前の赤ちゃんであれば、液体ミルクなどの備蓄が必要になります。各ご家庭の事情に合わせて、3日間生活するために必要なものをリスト化しておくと良いでしょう。
ローリングストックで備蓄したい食品
ローリングストックでは、普段から食べられるような美味しいもの、調理不要で簡単に食べられるもの、できるだけ賞味期限が長いものを選ぶのがおすすめです。昔は、非常食と言えば乾パンのイメージでしたが、今では多種多様な美味しい非常食が売られています。ここでは、いくつかおすすめの食品を具体的に紹介します。
主食としておすすめの食品
主食の例としては、アルファ化米やレトルト食品、缶詰などがあります。
アルファ化米は、水を加えるだけで食べられ、長期保存ができる食品です。味の種類も豊富で美味しいため、普段の食事としても問題なく食べられます。
また、避難生活中は栄養が偏りやすくなりますので、栄養のあるレトルト食品や缶詰も用意しておくのがおすすめです。これらも美味しいだけでなく、長期保存可能なものが豊富にありますので、ぜひローリングストックのリストに入れてみてください。
そのほか、カップ麺も非常食として活用できます。しかし、食べるには熱湯が必要であり、賞味期限が非常食と比較して短いことが多いため、注意が必要です。
お菓子や甘味としておすすめの食品
避難生活中は不自由なことが多く、ストレスが溜まる可能性があります。ストレス発散のためにも、お菓子や甘味を用意しておくのがおすすめです。備蓄用に販売されている甘味としては、5年程度の長期保存が可能なようかんや、水に浸すだけで食べられるきなこ餅などがあります。
赤ちゃんに必要な食品
災害時に困ることの1つが、赤ちゃんのミルク不足です。避難生活による母親のストレスで、母乳が出にくくなることもあると言われています。そのため、離乳食開始前の赤ちゃんがいるご家庭は、ミルクを備蓄しておくのがおすすめです。今はそのまま飲める液体ミルクがありますので、普段からローリングストックで一定量を確保しておくと良いでしょう。
また、離乳食開始後の赤ちゃんがいるご家庭は、そのまま食べられる離乳食を一定量備蓄しておく必要があります。
ローリングストックで備蓄したい生活用品
災害時には、物資の供給が止まることにより、お店で生活用品を買えなくなるリスクがあります。そのため、特に普段の生活でよく使用する消耗品は、ローリングストックで備蓄しておくことをおすすめします。
消費量が多くて優先度が高い生活用品
食料や飲料ほどではないものの、例え数日間であってもないと困る生活用品は多くあります。特に、日常的に消費量が多い生活用品については、災害時にストックを切らしてしまうことが十分に考えられます。以下で紹介するものは、意識的にローリングストックで備蓄しておくようにしましょう。
・トイレットペーパーやティッシュ、ウェットティッシュ、アルコール除菌
・生理用品
・常備薬
・乾電池
・使い捨ての食器、ポリ袋、キッチンペーパーなどのキッチン用品
・ビニール袋、洗剤などの清掃用品
消費量は少ないものの意識しておきたい生活用品
消費量がそれほど多くなく、数日間であれば日常的なストックで賄える可能性が高い生活用品についても、タイミングが悪くストックを切らしてしまうこともあるでしょう。そのため、ローリングストックで意識的に備蓄しておくのがおすすめです。例としては、以下のような生活用品が挙げられます。
・シャンプーやボディーソープなどのお風呂周りの消耗品
・歯ブラシと歯磨き粉
・洗濯用洗剤や柔軟剤、食器用洗剤などの各種洗剤
赤ちゃんに必要な生活用品
赤ちゃんがいるご家庭は、普段の生活で使用している消耗品を必ずストックしておくようにしましょう。赤ちゃんの成長状況により必要なものは異なりますが、代表例としては次のものがあります。
・オムツやおしり拭き、使用済みオムツを入れる袋
・ノンアルコールのウェットティッシュ
・歯磨きナップ
ローリングストックにおすすめの収納方法
ローリングストックを続けていくためには、継続的な備蓄品の消費・購入を繰り返し、習慣化する必要があります。そのためには、収納方法を工夫することも重要です。ここでは、おすすめの収納方法を具体的に紹介します。
取り出しやすい場所に収納する
普段から使用しない戸棚などに備蓄しておくと、消費し忘れてしまい、気付いたときには賞味期限が切れていたという事態になる可能性もあります。日常生活の中で忘れずに消費するため、備蓄品は普段から使用する取り出しやすい場所に収納するようにしましょう。例えば、キッチンやリビングの収納、ウォークインクローゼット、床下収納などです。
できるだけ分散して収納する
もし備蓄品を1か所にまとめて置いておくと、例えば災害時に扉が開かなくなることで、備蓄品を取り出せなくなる可能性もあります。そのため、可能な範囲で備蓄品を分散しておきましょう。
賞味期限が短いものを手前に置く
ローリングストックは、賞味期限が短いものから消費していくことが鉄則です。これらを手前に置いておくと、賞味期限を確認する手間が省けるようになります。
ローリングストックの始め方
ここまで読み進めていただければ、ローリングストックについての必要な知識が一通り身に付いたと思いますので、あとは実践するのみです。ここからは、ローリングストックを具体的に始めるステップを紹介します。
【ステップ1】ローリングストックで備蓄するものを把握する
避難生活は大きく分けて、在宅で避難する場合と、学校の体育館などの避難所に避難する場合があります。避難所で避難生活をおくる場合は、持ち出し用のバッグやプライバシーを守るグッズが必要になるなど、どこで避難するかによって必要なものが異なります。
まずは、避難生活で必要になるものを想像して、備蓄するものをリスト化してみましょう。それができれば、リストの中から、ローリングストックにより備蓄できるものをピックアップできます。基本的には、これまでに紹介した食料や飲料水、トイレットペーパーなどの生活用品がローリングストックの対象になるでしょう。
【ステップ2】ローリングストックで必要な備蓄量を把握する
必要な備蓄量は、各ご家庭の家族構成により異なります。上で紹介した家族構成ごとの必要備蓄量を参考にしていただき、どれぐらいの備蓄量が必要なのかを把握するようにしましょう。
【ステップ3】ローリングストックを始める
ローリングストックで備蓄するものと備蓄する量がわかれば、あとはその量になるように追加購入(ものによっては新規購入)をするだけで始められます。必要な備蓄品を個別にそろえるのが大変と感じる場合は、必要なものがセットになった防災セットがおすすめです。こちらはより低いハードルで始められますので、検討してみてください。
【ステップ4】ローリングストックを習慣化する
備蓄品を購入したあとは、賞味期限切れにならないよう、継続的に消費と購入を繰り返していきましょう。習慣化にあたり重要なことは、必要な備蓄量が確保できているか、賞味期限切れになっていないかの2点の確認です。例えば、1か月に1回のペースで、確認する日を決めておくと良いでしょう。
ローリングストックを行う際の注意点
ローリングストックは、継続することが何より大事です。定期的に消費をしていかないと、賞味期限が切れてしまい、災害が発生したときに食べられなくなってしまいます。これまでに紹介した収納方法を参考にしていただき、取り出しやすい場所に収納するなど、継続できる工夫をしましょう。
また、備蓄量は最低3日間、できれば1週間と紹介しました。1週間分の備蓄が理想的ではありますが、最初から1週間を目指すと想像以上に備蓄量が多くなり、管理が大変で継続できなくなる可能性もあります。初めは無理をせず、3日間の備蓄から始めて、慣れてきて余裕があれば1週間の備蓄を目指すというステップもあります。無理なく始めて、継続できる方法を探してみましょう。
ローリングストックの習慣を取り入れてスマートに備蓄しよう!
日本は世界的に見ても災害が多い国であり、どこに住んでいても被災するリスクがあります。もし災害に遭ってしまったとき、備蓄ができている場合とできていない場合とでは、避難生活の困難度がまったく違ってきます。スマートに備蓄する方法として、ローリングストックをぜひ実践してみてください。