茶道がある暮らしを始めよう!修道歴25年の私が教える、初心者向けの作法まとめ

目次

「茶道」と聞くと細かい手順や決まりごとがあって、ハードルが高いものだと思っていませんか?実は最近は「ビジネス茶道」という言葉が出るほど、社会人の間で茶道の良さが見直されています。

今回は、裏千家で修道歴25年以上の私が、茶道を習うメリットや初心者向けの作法、おうち時間で茶道を取り入れる方法などを分かりやすくご紹介します。普段の生活で、茶道を楽しむときの参考にしていただければうれしいです。

茶道とは

茶道とは何かを、ひとことで表した言葉があります。利休百首歌の一つで「茶の湯とはただ湯をわかし茶をたててのむばかりなる事と知るべし」という言葉があり、茶の湯の大成者である千利休が示した茶道の心や作法を和歌のかたちでまとめたものです。

茶道の基本は、美味しくお茶を点てて飲むことだと書かれています。言葉ではとても簡単ですが、実際にお客様を招いてやってみるとなかなか思うようにできません。作法を正しく覚えることだけが注目されていますが、茶道の根本は美味しくお茶を点てて飲むことにあって、大切なのはそのために力の限り尽くすことだと千利休は教えています。

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茶道を学ぶことで身につくこと

茶道で受け継がれてきた作法の意味を一つひとつ紐解いていくと、現在の日常生活に活かせることばかりです。数日間で身につけるのは難しいかもしれませんが、修道歴25年以上の私が茶道を習って良かったと感じたことをご紹介します。

おもてなしの心が身につく

茶道で身につくおもてなしの心とは、決して特別なものではなく、相手を思い敬う心です。

例えばお客様にお茶を差し上げるときは、さまざまなところに気を配ります。道具の取り合わせや部屋のしつらえ、お出しするお菓子やお料理など、お招きする目的や趣向に合わせて準備し、自分の心も整えるのです。そこでは常に、お客様への思いやりが先に立つようにします。

茶道を学んでいくと、相手を思いやる気持ちを自然と意識するようになり、人間性が高まります。

美しい所作が身につく

茶道の作法には、お茶を点てる手順だけではなく、立ち振る舞いも含まれています。茶道の所作が身につくと、いつもの生活がシャキッと引き締まりますよ。

一番分かりやすいのは姿勢です。背筋を伸ばして正座をしていると、体幹の筋肉が鍛えられて安定するため、日常の姿勢も見ちがえるように美しくなります。

また、茶道ではあらゆる道具に触れる機会が多いです。大切な道具を傷つけないように指先まで意識を集中させているので、知らず知らずのうちに丁寧な物の扱い方ができるようになります。

コミュニケーション力が身につく

茶道でのコミュニケーションは、会話だけではありません。所作や道具など言葉に頼らなくても、心を交わせることが可能です。

茶席において、主催者側の亭主はおもてなしによって客を敬う気持ちを表し、客は亭主の心尽くしに対して五感を使って感じ取り、所作で感謝の気持ちを伝えます。会話を楽しむ場面では、やり取りに決まり文句はありません。自分の言葉で感謝や感想を伝えます。

茶道で身につくコミュニケーション力とは、相手の機微を読み取ったり、自分の考えを表現したりする能力です。人付き合いが円滑になり、仕事の効率化にも役立ちます。

日本文化(花や禅語など)に詳しくなる

茶道には、日本のいろいろな伝統文化が集結しています。茶室に生けられた花、掛軸に書かれた禅語、茶碗などの工芸品といった幅広い分野と関わりがある点が特徴です。これらに触れることで教養がつき、審美眼が養われ、日常生活がより心豊かになります。

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初心者でもできる!茶道の基本的な流れとお作法の意味

茶室に入ったらどんなことが行われているのか気になりますよね。はじめに、客から見たお点前の流れをおおまかに説明します。

1.客が茶室に入る

2.お菓子が運ばれてくる

3.亭主が茶室へ道具を運び出す

4.亭主が道具を清めてからお茶を点てて、客がいただく

5.亭主が道具を片づけて、お点前が終わる

6.客が茶室から退出する

お点前を丁寧に行うのは、亭主が心を込めて美味しいお茶を点てるため、客がお茶をいただくにあたって心を整えるためという二つの理由からです。次から、初心者でも分かりやすい作法について解説します。

茶室(和室)の座り方

茶室へ通されたら、畳のへりを踏まないようにして歩きましょう。

自分の席についたら正座をします。流派によって異なりますが、女性の場合、両膝は握りこぶし一つ分ほど、男性の場合は握りこぶし二つ分ほどあけましょう。

足裏は両足の親指が軽く重なるように組んであるとしびれにくく、美しく見えますよ。座っているときの上半身の姿勢は、背筋を伸ばしてあごは軽く引き、両手を軽く重ねて太ももの付け根と膝の間におきます。

もし途中で足がしびれそうになったら、重ねた足の親指を上下で入れ替えてみるとやわらぎます。それでもつらいときは、しびれていない方の足に重心を移してください。様子を見ながら、交互に重心を移しかえて足を休ませるとだいぶ楽になります。

お菓子のいただき方

茶席で出されるお菓子には、主菓子と干菓子の2種類があります。

主菓子は、上生菓子や薯蕷饅頭など餡を使ったものが中心となるお菓子です。干菓子は、落雁やせんべい、飴などの乾いたお菓子を指します。それぞれのお菓子のいただき方があるので、順番に見ていきましょう。

主菓子のいただき方

主菓子をいただくときには、懐紙と楊枝を準備しましょう。

1.自分の前にお菓子の盛られた器がきたら、左隣のお客に「お先に」とご挨拶する

2.お菓子が盛られた器を両手で持ち、軽くおしいただいてから懐紙を取り出す

3.器に添えられた黒文字(箸)を取って、お菓子を懐紙に乗せる

4.黒文字の先を懐紙の右端で清めてから、元に戻す

黒文字の先を清める理由は、お菓子を取ったときにかすが付いたままにしないようにするためです。ほかのお客様が気持ちよく使えるように、清めておきます。食べるときは懐紙ごと手のひらに乗せて、楊枝で一口大に切ってからいただきましょう。

干菓子のいただき方

干菓子をいただくときには、懐紙が必要です。

1.亭主から「お菓子をどうぞ」とすすめられたら、先に亭主に一礼してから、左隣の客に「お先に」とご挨拶する

2.干菓子器を両手で持ち、軽くおしいただいてから懐紙を取り出す

3.右手で干菓子を懐紙に取る

干菓子の場合はたいてい2種類用意されているので、両方とも一つずつ取りましょう。食べるときは懐紙ごと手のひらに乗せて、一つずついただきます。

お茶のいただき方

茶席で出される抹茶には濃茶と薄茶がありますが、ここでは世間でもよく知られる薄茶のいただき方を解説します。

1.自分の前にお茶が運ばれてきたら、運んできてくれた人に一礼

2.右手でお茶碗を取り、畳のへりの内側で左隣のお客と自分の間に置いて、「お先に」とご挨拶する

3.右手でお茶碗を取り、畳のへりの内側で自分の正面に置き、「頂戴いたします」と亭主にご挨拶する

4.右手でお茶碗を取り左の手のひらに乗せて、右手を添えながらおしいただく

5.お茶碗の正面を避けるため、右手で手前に2度回してから、静かにいただく

6.飲み終えたら、人差し指と親指で飲み口を清めて、その指を懐紙で清める

7.お茶碗を手前から向こう側に2度回し戻して、畳のへりの外側に置く

お茶をいただくときの作法でお客はお茶碗を回しますが、これには理由があります。

お茶碗には正面があり、客から見て一番美しく見える位置です。亭主は客を敬う気持ちを持って、お茶碗の正面を客に向けて出します。客は亭主の気持ちを受けて、へりくだる心で正面からいただくことを避けるためにお茶碗を回すのです。

抹茶の点て方

自分がお客のときは抹茶を点てることはありませんが、飲む練習をしたい人やおうちで抹茶を楽しみたい人に、美味しい薄茶の点て方をご紹介します。

薄茶を点てるのに必要な道具

薄茶を点てるのに必要なお道具は、次の5つです。

・抹茶

・茶筅

・茶碗

・茶杓

・茶こし

抹茶と茶筅は、茶道用のものを選ぶようにしましょう。どちらもお茶専門店で扱っており、店員さんに目的や予算を相談すると適切なものを教えてもらえますよ。

茶碗と茶杓に茶道用のものがなければ、おうちにあるカフェオレボウルとティースプーンでも代用できます。抹茶は静電気などでダマになりやすく、茶筅を使ってもダマが残りやすいので、点てる前に茶こしを使ってふるっておくと良いです。

薄茶の点て方

道具の準備ができたら、さっそく薄茶を点ててみましょう。

点てる前の準備で、茶碗にお湯を入れて温めておいてください。茶碗が温まったらお湯を捨てて、ふきんで茶碗を拭き、水気をしっかり取ります。茶筅はお湯で穂先をよくぬらしてから、軽く水を切っておきます。

1.茶碗に抹茶を入れる

茶杓なら2杯、ティースプーンなら1杯(どちらも約1.5~2g)です。抹茶はあらかじめ茶こしでふるっておくか、茶碗に入れるときに茶こしでふるいながら入れるようにしましょう。ダマをなくすことが大切です。

2.80~90℃のお湯約70mlを静かに茶碗に入れる

沸騰させたお湯を一度ほかの茶碗などに入れて、それを注ぐとちょうど良い湯加減になります。

3.茶筅で抹茶とお湯をなじませるようにやさしく混ぜる

手首を数字の「1」を書くように、前後に素早く振っていきます。手首のスナップをきかせるようにすると良いです。

4. 泡の表面をなでるように動かし、大きな泡を細かくする

泡が立ったら茶筅の先を浮かせて、泡の表面をなでるように動かし、大きな泡を細かくします。最後に「の」の字を書くように茶筅を回して、茶碗の中央から茶筅を静かに引き上げると薄茶の完成です。

泡をふんわり立てるのは裏千家流の点て方で、流派によっては泡をあまり立てない薄茶の点て方もあります。

茶道の流派「裏千家」と「表千家」にはどんな違いがある?

茶道の流派は数多くありますが、千利休直系の流派に「表千家」「裏千家」「武者小路千家」があります。

千利休の孫の宗旦には、4人の子どもがいました。長男は早くに家を出て、次男は他家の養子になっていたため、三男が千家の当主となり、茶室の不審庵を譲り受けたことから「表千家」が始まります。宗旦が隠居するときに茶室の今日庵を建て、四男とともに移り住んだことから始まったのが「裏千家」です。その後、次男が千家に戻って茶室の官休庵を建てたことから「武者小路千家」が始まりました。

千利休直系の流派はあわせて「三千家」と呼ばれていて大筋は同じですが、流派によって特徴があります。大きく異なる点を次から見ていきましょう。

お茶の点て方の違い

茶道では濃茶と薄茶がありますが、流派によって薄茶の点て方が異なります。

テレビや雑誌で見かけるようなお茶の表面全体が泡で覆われているのは裏千家の点て方で、表千家と武者小路千家ではあまり泡を立てません。

お道具の違い

お点前で使うお道具の種類は基本的に同じようなものを使いますが、流派によって異なるのが特徴です。

抹茶を点てる茶筅は、三千家でそれぞれ違います。裏千家はお点前によって違う場合がありますが、原則は白竹を使います。白竹は淡竹を切り出して煮沸したあと、日光に晒して乾燥させたものです。表千家では古民家の屋根や天井に使われていた煤竹が使われ、武者小路千家では表面が黒紫色になる品種の紫竹が使われます。

ほかにも道具を清めるのに用いる帛紗の色や、主菓子を盛る器にも違いがありますよ。

正座の仕方の違い

正座の仕方も流派で違いがあります。裏千家と表千家では両膝の間を広げて座り、武者小路千家では両膝の間はあまり広げません。

裏千家では、女性は膝の間をこぶし一つ分、男性はこぶし二つ分です。表千家では女性は膝の間をこぶし一つ分、男性は女性より広めで姿勢が安定する間隔にあけて座ります。武者小路千家では、女性は膝を開かずに座り、男性はこぶし一つ分程度あけて座ります。

振る舞い方の違い

お辞儀の仕方や茶室での足の進め方も、流派で違いがあります。

お辞儀の仕方の違い

裏千家ではお辞儀に「真」「行」「草」の3種類があります。真はもっとも丁寧なお辞儀で、深く上体を下げまるものです。行は客同士の挨拶で使うお辞儀で、真より浅めに上体を下げます。草は亭主がお点前の途中で行うお辞儀で、会釈をするように軽く上体を下げるのが特徴です。

表千家では両手を八の字につき、男性は20cmほど、女性は7~8cmほど手の間隔をあけて、背筋を伸ばしながら上体を30度くらいの角度に倒します。武者小路千家では、左手が前になるように膝の前で両手を軽く合わせ、指先が畳につくようにしながら背筋を伸ばし上体を下ろします。

足の進め方の違い

どちらの流派でもお点前や畳の場所によって違いはありますが、目安は次の通りです。裏千家では茶室に入るときは右足から入り、半畳を2歩で歩きます。表千家では左足から入り、半畳を3歩で歩きます。武者小路千家では柱寄りの足から入り、半畳を3歩で歩くのが特徴です。

修道歴25年以上の私が語る、茶道がある暮らし

茶道は茶室がなくても、いつでもどこでもお茶を楽しむことが可能です。私がお茶を楽しむおすすめのシーンをご紹介します。

お茶と季節の和菓子を堪能する

家族や友人と集まる季節のイベントのときにお茶を点てると、いつもより特別感のある時間を過ごせます。お正月なら「花びら餅」、ひな祭りは「桜餅」、端午の節句には「柏餅」など、その季節しか味わえない和菓子も用意すると周りからとても喜ばれますよ。

茶道では、季節の草花もお茶を楽しむためのごちそうといわれているので、外の景色を楽しめる庭付きのお部屋を検討してみてはいかがでしょうか。

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季節に合わせた茶道具を用意して過ごす

お茶を点てるときに、季節に合わせた茶道具を取り合わせると見た目にも楽しめます。時季の草花が描かれたものでも良いですし、行事を連想させるようなものでも良いです。直径約30cmの丸いお盆の中に、棗(抹茶を入れる蓋つきの容器)・茶碗・茶筅・茶杓・茶巾(茶碗を清める白色の小さな布巾)をセットしてみましょう。

もちろん大切な人にお茶を点てても良いのですが、贅沢にひとりの時間を過ごすときに季節のお道具でお茶を点ててみてください。慌てずにゆっくりとお茶を点てていくと、だんだんと集中力が高まり、瞑想しているような気分が味わえます。せっかくなので、落ち着いて正座しながらお茶を楽しめる、和室のあるお部屋を検討してみてはいかがでしょうか。

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屋外で野点(のだて)を楽しむ

野点とは、簡単にいうと茶室ではなく、屋外でお茶を点てることです。ピクニックやお花見でお茶を点てると、自然の景色も楽しめるので、ひと味もふた味も違います。野点ができる正式なお点前はありますが、あまり気取らず自由に楽しんでみましょう。

野点にはお茶を点てるのに必要なお道具(抹茶・茶碗・茶杓・茶筅・抹茶を入れる容器)とお菓子、お湯を入れた保温性の水筒があれば大丈夫です。道具が割れたり傷ついたりしないように、ケースやタオルなどでしっかり保護しましょう。お茶を点てる道具が置けるように、ランチョンマットか小風呂敷があるとさらに良いです。

道具をコンパクトにまとめても水筒やお菓子もあるので、いざ出かけるときには意外と荷物がかさばります。駅から近い物件なら持ち運びが楽になるので、検討してみてはいかがでしょうか?

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趣深い日本文化「茶道」をご自宅でも楽しんでみては?

茶道は日本の伝統文化で、多くの作法やしきたりがありますが、学ぶことでおもてなしの心が身につく・所作が美しくなる・教養が身につくなど日常生活に役立つメリットがたくさんあります。

本格的に茶道教室へ行くのはまだ抵抗がある人も、今回の記事を参考にして、はじめは美味しいお茶とお菓子でゆっくりした時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。