賃貸でお部屋探しをするうえで、優先順位は人それぞれ異なります。さまざまな項目を気にする人が多いなか、最近注目を集めているのは「省エネ」など住宅性能に関する項目です。
住宅の性能を可視化する規準など今まで存在していませんでしたが、最近住宅の省エネ性能を星で表示する制度ができました。それが今回のテーマである「BELS」です。
BELS認定の賃貸物件を選ぶことで、電気代が安くなったり、室温が安定したりと、快適な暮らしが期待できます。ぜひ、省エネで地球とお財布に優しい賃貸生活にお役立てください。
BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)とは
BELS(Building-Housing Energy-efficiency Labeling System)とは、建築物省エネルギー性能表示制度の略で、建物の省エネ性能を示すためのいわば「お墨付き」のようなものです。
新築やリフォームした建物について、専門家がその建物のエネルギー消費量を計算し、5段階の星の数で評価します。星の数が多いほど、省エネ性能が高いことを意味します。
BELSの表示は、建物の販売や賃貸の際に、購入や賃借を検討する人たちが省エネ性能を比較検討するうえで役立つほか、建物を建てたり改修したりする人にとっても、より省エネな建物を作るための指針となります。
※参考:環境省「「BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)」ってなに!?」
ZEHとの違い
ZEH(ゼッチ)とは、Net Zero Energy Houseの略で、日本語ではネット・ゼロ・エネルギー・ハウスと呼ばれています。
簡単にいうと、ZEHは「年間の消費エネルギー量が、太陽光発電などで創出されるエネルギー量を下回るか、同じになる住宅」のことです。つまり、住まいの中で使うエネルギーを、太陽光発電などの再生可能エネルギーでまかなうことで、エネルギーの収支をゼロに近づけることを目指した住宅をいいます。
BELSが、建物の省エネ性能を評価する「お墨付き」のようなものであるのに対し、ZEHは、BELSの評価基準をクリアし、さらに再生可能エネルギーで消費エネルギーをまかなう高性能な住宅であることの証明といえるでしょう。
BELSがレストランで提供される食事のカロリー表示とすれば、ZEHは自給自足の野菜や魚を提供し、さらに建物で使う電気も太陽光で自家発電している、というイメージです。
BELSとZEHは、どちらも建物の省エネ性能を示す指標ですが、評価の基準や目指すところが異なります。ご自身のライフスタイルや予算に合わせて、最適な住宅を選ぶための参考にしてください。
BELSの省エネ性能ラベル表示項目と評価レベル

BELSの省エネ性能ラベルは、建物の「お墨付き」のようなもの。新築やリフォームした建物のエネルギー消費量を星の数で評価し、その建物の省エネ性能をひと目でわかるように表示しています。
BELSの省エネ性能ラベルには、建物のさまざまな省エネ性能に関する情報が記載されています。このラベルを見ることで、建物の省エネレベルを客観的に評価することが可能です。ここでは、ラベルに表示される主な項目とその意味について解説します。
エネルギー消費性能
エネルギー消費性能は、建物全体で消費するエネルギーの量を示す指標です。
BELSでは、このエネルギー消費量を基準値と比較し、5段階の星で評価しています。星の数が多いほど、エネルギー消費量が少なく、省エネ性能が高いことを意味します。
断熱性能
断熱性能は、建物が熱をどれだけ逃がさず、室内温度を一定に保てるかを示す指標です。
この項目は7段階の星で評価され、断熱性能が高いほど、暖房や冷房にかかるエネルギーを削減できるため、省エネで快適な暮らしが実現します。
ZEH評価
建物が再生可能エネルギー(太陽光発電など)でどれだけ自給自足できるかを示す指標です。ZEHは、ほぼすべてのエネルギーを自給自足できる住宅のことです。
さまざまな基準のほか、消費エネルギーに対して作成するエネルギーの割合によって3つのランクで評価されます。
なお、ZEHの評価を証明する方法はBELS以外には存在していません。BELSを見ればZEHもわかる、というイメージです。
目安光熱費
目安光熱費は、その建物で1年間にかかる光熱費の概算額を示します。この数値を見ることで、建物のランニングコストを比較検討することが可能です。
BELSの評価を受けたマンションを購入するメリット
高い省エネ性能を持つBELSのお墨付きを得た物件を購入すると、どのようなメリットを享受できるのでしょうか?ここでは、BELSの評価を受けたマンションを購入するメリットについて解説します。
お得に購入が可能
BELS評価物件を購入する最大のメリットの一つとして、補助金やフラット35Sのような住宅ローン金利優遇を受けることができる点が挙げられます。
これらの制度を活用することで、住宅購入にかかる初期費用を軽減し、経済的な負担を減らすことができます。補助金については国や地方自治体がさまざまな形で提供されているほか、フラット35S(ZEH)では金利が0.75%の引き下げ、さらに長期優良住宅であれば1.00%の引き下げになるなど、住宅取得にかかる経済的なメリットはかなり大きいといえるでしょう。
マンションの中でも「より性能が良い部屋」を選ぶことができる
BELSは一棟のみならず一室から性能評価をすることが可能です。そのため、同じマンションの中でも特に性能が良い部屋を見つけることができます。
BELSを活用することにより、その住宅の性能をより詳細に把握することができます。この点、BELSは最適な住まいを選ぶための強力なツールと言い換えることができるでしょう。購入者のみならず、不動産業者や建築業者にとっても、より的確な提案を行うための重要な情報源となるでしょう。
BELSの評価を受けた賃貸マンションを選ぶメリット

まだまだ数は少ないですが、BELSで評価性能を約束された賃貸マンションを選ぶことについて、どのようなメリットがあるでしょうか?今までは注目されなかった住宅性能が、賃貸マンション選びに与える影響について考えます。
第三者による評価があるため信頼性が高い
BELSの客観的な規準に基づいた住宅性能評価があることにより、賃貸物件に関する情報の信頼性・信ぴょう性が高くなることがメリットです。
賃貸仲介会社は地域にある多くの賃貸物件情報を有していますが、物件のマイクロな部分や建築性能まで把握できているわけではありません。もちろんお客さんを騙すような賃貸仲介会社がいる、というわけではありませんが、借主からすれば賃貸仲介会社の紹介内容や物件のスペックだけでなく、客観的な性能評価も物件選びの参考材料にできるようになるといえます。
断熱性能の高さから光熱費の節約につながる
断熱性能が高いと、建物内の温度が安定しやすく、冷暖房の使用頻度が減ります。その結果として、光熱費を大幅に節約することが可能です。
物件を購入するときに必要な知識が手に入る
断熱性能や省エネを意識した賃貸物件に住むことで、物件購入に役立つ知識を多く手に入れることも大きなメリットです。
断熱性能は、窓枠や窓ガラスの性能が大きく影響します。BELSで断熱性能が高いとされている物件では、ペアガラスであったり、樹脂製の窓枠が利用されていたりと、その特徴を随所に確認することができるでしょう。
また、断熱の仕組みも内断熱や外断熱など、さまざまな種類の断熱工法が存在しています。これらの知識は将来一戸建てを建築するときなどに役立つことは間違いありません。
断熱工法の違い、ひいては断熱性能の違いは暮らしに大きな影響を与えます。冷暖房を過度に稼働させる副作用として結露やカビの発生が考えられます。ひいては健康被害にも影響を与えるでしょう。
将来のことを考え、BELSで性能評価認定を受けた賃貸物件に住んでみてはいかがでしょうか。
BELSの評価を受けた賃貸マンションの探し方

BELSの性能評価を受けた賃貸物件は、まだまだ数が少ないのが現状です。なぜなら、BELSを用いて住宅の省エネ性能を消費者へ告知するよう努力義務が定められたのは2024年4月以降だからです。そのため、今後増加することは間違いありませんが、なかなか見つかりにくい状況は当面続くことが予想されます。
※出典:国土交通省「新しい「建築物の省エネ性能表示制度」が始まります!」
もっとも簡単な探し方は、ポータルサイトで検索をする方法です。しかし、上述のとおり絶対数が少ないため、希望する地域内で物件が見つからないこともあるでしょう。
そのときは、物件を探す地域にある不動産会社に相談してみてください。新築物件やハウスメーカーの物件が中心になることが予想されますが、思い当たる物件を提案してくれるでしょう。
そのほか、ハウスメーカーのサイトを確認する方法も効果的です。ハウスメーカーからすれば、BELSの評価を受けていることが自社の住宅性能が高いことを示す証拠になるため、積極的に掲載・広告している可能性が高いからです。
これらの方法を駆使して、BELSの評価を受けた賃貸物件を探してみてください。
BELSの評価を受けたマンションの注意点
BELSの評価があればすべて安心、というわけでもありません。万能に思えるBELSの評価を受けた賃貸マンションであっても、注意すべきポイントは存在しています。
ここでは、見落としがちなポイントを紹介します。興味がある人ほどかならず押さえておきたいポイントですので、ぜひチェックしておくようにしましょう。
BELSの評価が「いつされたか」を確認する
BELSの評価は永久不変なものではありません。そのため、いつ評価されたかという時点は非常に重要なポイントになります。
一般的にBELSの評価は新築時にされます。しかし、現在では中古物件をリノベーションをしたときに評価を改めて受けるケースも散見されるようになりました。
建物は時間が経過するにつれて性能は下落すると考えるのが自然です。そのため、新築時の性能評価を信じて購入・賃借したとき、経年により評価どおりの性能が発揮されないことが懸念点といえるでしょう。
BELSの性能評価を見るときは、いつ評価されたのかも合わせてチェックしておくようにしてください。
家賃が高くなる傾向にある
BELSで性能を評価されるためには、さまざまな断熱仕様を施す必要があります。また、BELSの取得にも当然コストがかかります。そのため、建築コストや評価認定コストがかかることによって、これらコストが家賃に転嫁される点も要注意です。
性能が良いため家賃が高くなる…これは避けられないことです。しかし、どのようなメリットを享受できるのかは、ライフスタイルや家族構成などによって変わります。例えば、単身で平日は深夜に帰宅してほとんど寝るだけの生活で、土日は外出して家にいない、など。このようなケースではBELSの性能の恩恵を十分に受けられるとは言い難いでしょう。
これらを鑑みると、住宅性能とコストパフォーマンスの両方においてメリットを享受できるかどうかを考えたうえで、BELSの住宅を選択する必要性があるかを選択するのがよいでしょう。
もちろん、ライフスタイルよりもファッション的にBELSの賃貸物件を選ぶことも間違いではありません。省エネ性の高い住宅ストックの拡充はまさに国策であり、その性能を体感することは決して無駄ではないからです。
業界20年以上の経験からですが、住宅性能の高い物件に一度住むと、通常の物件との違いに感動する人は非常に多いです。百聞は一見にしかず、ぜひ体験してみてください。
BELSについて知って後悔のない物件選びをしよう
BELS評価は、住まいの省エネ性能を客観的に評価する指標です。BELS評価が高い物件は、光熱費の削減・快適な住環境の実現・環境負荷の軽減など、多くのメリットをもたらすでしょう。
しかし、BELS評価が高い物件は、一般的に家賃も高くなる傾向があるため、すべての賃貸希望者にとって最適な選択肢になるとは限りません。賃貸物件を選ぶときは、BELS評価だけでなく、家賃・立地・設備・ライフスタイルなどを総合的に検討することが重要です。
BELS評価を参考に、ご自身の価値観やライフスタイルに合った、快適で持続可能な住まいを見つけてください。