地球温暖化に伴い、「脱炭素」に注目が集まっています。温室効果のある二酸化炭素が温暖化を引き起こす原因であるため、二酸化炭素排出量をゼロにすることが求められているのです。パリ協定やSDGsには、地球温暖化を阻止するための目標が含まれています。
二酸化炭素排出量をゼロにする「脱炭素」は、どうしたら達成できるでしょうか?今回は、私たち一人ひとりが家庭でできることをご紹介していきます。
脱炭素とは
脱炭素とは、地球温暖化の影響を軽減するために、二酸化炭素の排出をゼロにすることです。現在、地球温暖化が進んだことで気候変動が起こり、さまざまな問題を引き起こしています。解決するためには、一人ひとりが行動することが大切です。
低炭素との違い
脱炭素に似ている概念として、低炭素があります。脱炭素は、二酸化炭素の排出を実質ゼロにすることを目指しています。一方で、低炭素とは、二酸化炭素の排出を少なくすることを目指し、地球温暖化を緩和することが目的です。
カーボンニュートラルとの違い
カーボンニュートラルとは、二酸化炭素排出量と吸収量のバランスを取る状態を指します。人間が排出した二酸化炭素の量と、植物が吸収した二酸化炭素が同じになり、相殺される状態です。
脱炭素は二酸化炭素の排出量をゼロにすることを目的としていますが、一方のカーボンニュートラルは全体の二酸化炭素の量を”実質ゼロ”にすることを目指しています。
なぜ脱炭素やSDGsが注目されている?
なぜ、世界中で脱炭素が注目されているのでしょうか?その背景には、地球温暖化による気候変動や化石燃料の枯渇などがあります。詳しく見ていきましょう。
地球温暖化による気候変動
二酸化炭素の排出量が増え、地球温暖化が加速すると、さまざまな気候変動を引き起こします。例えば、海面上昇、熱波、干ばつ、豪雨、洪水などです。近年の日本でも、巨大台風や豪雨が襲うことが以前より多くなりました。
化石燃料の枯渇
18世紀に産業革命が起こり、人類は石油・石炭を利用して経済を回すようになりました。石油や石炭は炭素を含む有機物で、燃やすと二酸化炭素が発生します。中でも石炭は大量に採掘できるので、産業革命で大量に使われるようになってから、地球上での二酸化炭素の排出量が増え始めました。
しかし、このままのペースで行くと、化石燃料は近い将来に枯渇すると予測されています。
世界的な動き
世界中で脱炭素の動きが強まっています。2015年、パリで開催されたCOP21ではパリ協定が合意され、「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする」という目的を掲げ、加盟国へ二酸化炭素排出量の削減目標や実施状況の提出を促しています。
さらに、2015年の国連サミットでは、SDGsが採択されました。SDGsとは「Sustainable Development Goals」の略で、持続可能でよりよい社会を目指すための国際目標です。17の目標が掲げられ、2030年までの達成を目指しています。SDGsの目標の中で、脱炭素に関わる目標は次の3つです。
・目標7:エネルギーをみんなに、そしてクリーンに
・目標12:つくる責任、つかう責任
・目標13:気候変動に具体的な対策を
日本では脱炭素社会に向けて、2020年に当時の菅首相が「2050年カーボンニュートラル宣言」を発表し、温室効果ガスの排出をゼロにすると掲げています。
【エネルギー編】脱炭素やSDGsに向けて個人でできること
電気や水道は家庭に届くまでに、大量の二酸化炭素を排出します。家庭でできる脱炭素の工夫を見ていきましょう。
再生可能エネルギーを供給する電力会社と契約する
家や会社で契約する電力会社は、再生可能エネルギーを供給する会社を選ぶとよいでしょう。再生可能エネルギーとは、太陽光・風力・地熱・バイオマスなどを指し、電気を作るときに温室効果ガスを排出しません。
2016年の電力自由化以降、消費者が電力会社を自由に選べるようになりました。各社のホームページでは、どのように電気を作っているかが記されています。再生エネルギーを活用している電力会社を積極的に選びましょう。電力会社の変更はとても簡単で、ウェブ上で完結するケースも多いです。
再生可能エネルギーの電力会社と契約したら、オール電化の住まいも検討してみてください。IHクッキングヒーターでキッチン周りのお手入れが楽になったり、お湯や暖房が安く使えたりといったメリットがありますよ。
節水・節電を心がける
節水・節電をすると、脱炭素につながります。浄水場や下水処理場、家庭へ水を送る際に、大量の電気が使われているからです。電気を生み出す過程では、二酸化炭素が発生します。できるだけ節水することで、二酸化炭素排出量を減らせるでしょう。
電気についても同様で、電気をできるだけ使わないことにより、二酸化炭素排出量を減らせます。例えば、エアコンの使い方次第で、次のような効果があります。
・エアコンの温度を1℃上げると、二酸化炭素排出量は1.2kg減る
・エアコンの運転を1時間短縮すると、二酸化炭素排出量は2.5kg減る
エアコンを使う時期は、ぜひ温度や時間帯を工夫してみてください。
【移動編】脱炭素やSDGsに向けて個人ができること
移動手段の工夫で、脱炭素に貢献できます。詳しく見ていきましょう。
徒歩・自転車・公共機関で移動する
二酸化炭素を排出する自動車を使わずに、徒歩・自転車・公共機関で移動するとよいでしょう。脱炭素への貢献はもちろん、自転車や徒歩はちょっとした運動にもなります。運動がてらに、一駅分歩いてみることから初めてはいかがでしょうか。
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カーシェアリングを活用する
最近ではマイカーを持たずに、カーシェアリングを利用する人たちが増えています。カーシェアリングとは、車を共同で使用するサービスのことです。
利用者が自動車を必要なときにだけ使うので、過度な自動車の使用を抑えられます。保有にかかる費用もかからなくなるので、家計にも優しいですよ。
【食事編】脱炭素やSDGsに向けて個人ができること
私たちの食事と、二酸化炭素排出は大きく関わっています。詳しく見ていきましょう。
食品ロスを減らす
食品を作るのにはたくさんのエネルギーが必要です。生産・保管・加工・輸送・消費・廃棄のすべてで、二酸化炭素が排出されます。それにも関わらず、世界で生産される食料の約3分の1にあたる約13億トンが、毎年消費されずに破棄されているのが現状です。人類が食べられる分だけの食品が生産されれば、二酸化炭素排出量も減らせるでしょう。
具体的には、家庭で次のような工夫ができます。
・無駄なものを買わないように、買い物前に冷蔵庫の中をチェックする
・コンビニやスーパーの商品は手前取りを意識する
小さな工夫で、食品ロスは減らせます。
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地産地消を心がける
地元で作られた食品を消費することで、脱炭素につながります。配送の際に排出されるはずの二酸化炭素がなくなるからです。食品を選ぶ際は、地元で作られているか確認してみてください。
【衣類編】脱炭素やSDGsに向けて個人ができること
アパレル業界は、実は二酸化炭素を多く排出する業界として有名です。衣類で私たちができることをご紹介します。
持っている服を長く着る
洋服を作るのにも、たくさんのエネルギーが必要です。原料の生産、紡績、染色、裁断、縫製、輸送、販売、破棄などの工程で、二酸化炭素が発生します。
長く大切に着られる服を買うこと、適切なケアをして長く着ることが大切です。
環境に配慮した服を買う
環境に配慮した服は、素材が主に2種類あります。天然素材とリサイクル素材の2種類です。
天然素材の中でもリネンは、脱炭素の観点で優れた素材といえます。肥料や農薬を使わなくてもぐんぐん育つ、とても強い植物だからです。コットンと比べて成長に必要な水の量は少なく、短い間に勢いよく成長します。手間がかからないと、生産の際の二酸化炭素排出量が少なくて済むのです。
リサイクル素材では、リサイクルポリエステルが脱炭素につながります。ペットボトル、工場から出る廃プラスチック・合繊、裁断くずなどを原料にした素材です。化学繊維の元になる石油の使用量と、二酸化炭素排出量を減らせます。
洋服選びの際は、素材に注目してみてください。
お気に入りの服はウォークインクローゼットに収納すると便利です。持っている洋服が一目瞭然で、毎日の洋服選びが楽しくなるでしょう。
【ゴミ出し編】脱炭素やSDGsに向けて個人ができること
ゴミ出しの工夫で脱炭素につながります。具体的に見ていきましょう。
ゴミの分別
ゴミの分別を行うことで、二酸化炭素排出量を減らせます。その理由は主に2つです。
1つ目は、分別を行うことでリサイクル可能な資源を確保し、限られた資源の有効活用ができることが挙げられます。2つ目は、分別によって焼却や埋め立てが必要なゴミの量を減らせるからです。ゴミの焼却時には二酸化炭素が排出され、プラスチックを燃やすと有害物質のダイオキシンが発生します。
ゴミを分別すると、二酸化炭素やダイオキシンの発生を減らせるでしょう。
修理や補修をして長く使う
今持っているものが壊れたら、修理や修繕をして長く使うことも有効です。例えば、洋服や靴下が破れたら、ダーニングという道具でお直しできます。ダーニングとは、ヨーロッパで伝統的に行われている、衣類の穴あきやすりきれた箇所を修繕する方法です。あえてカラフルな糸を用いることで、デザイン性を加えられます。自分で修繕することで、愛着が増しますよ。
もしゴミが発生したら、24時間ゴミ出しOKの物件だと便利です。ゴミを家に溜め込まないので、部屋を衛生的に保てます。
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脱炭素やSDGsに向けて生活の中で実践しよう
家庭でできる脱炭素に向けた工夫を見てきました。ご紹介した工夫は、次のとおりです。
・再生可能エネルギーを供給する電力会社と契約する
・節水・節電を心がける
・徒歩・自転車・公共機関で移動する
・カーシェアリングを活用する
・食品ロスを減らす
・地産地消を心がける
・持っている服を長く着る
・環境に配慮した服を買う
・ゴミの分別
・修理や補修をして長く使う
脱炭素への取り組みが、SDGsにおける次の目標の達成につながります。
・目標7:エネルギーをみんなに、そしてクリーンに
・目標12:つくる責任、つかう責任
・目標13:気候変動に具体的な対策を
小さなことから積み上げていきましょう。