賃貸物件に二重窓を設置しよう!その手順と、設置できない場合の代用アイテムとは?

目次

賃貸物件に住んでいて、「夏は暑くて冬は寒い」「高額な光熱費をなんとかしたい」といった悩みを抱えた経験はありませんか?

今回は、賃貸物件で悩みがちな断熱性能に焦点を当て、そのなかでも断熱性能を効果的にアップすることができる「二重窓」について解説します。

二重窓には馴染みがない人が多いほか、賃貸物件で二重窓が設置されているケースもそんなに多くありません。しかし、後付けで二重窓を設置したり、その断熱性能の仕組みを知ることで夏も冬も快適に過ごすことが可能です。

二重窓とその断熱効果を知り、賃貸でも一年中快適に暮らす方法とアイデアを紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

二重窓とは?

二重窓とは、窓の内側にさらに窓が設置されている窓を総称した呼び方です。二重サッシ・インナーサッシ・内窓と表現することもあります。二重窓では、お部屋の外側にある窓を「外窓」、内側にある窓を「内窓」と呼びます。

二重窓の定義は特に決められていませんが、外窓と内窓の間が広いと二重窓としての効果が十分に発揮されません。その点から外窓と内窓の間は50cm以下であることがほとんどです。

窓が二重に設置されていることで断熱性・防音性・防犯性が高まり、快適に生活することができるのです。

複層ガラス(ペアガラス)との違い

二重窓に似た設備に複層ガラス(ペアガラス)があります。複層ガラスとは窓自体は一つしかありませんが、窓ガラスが二重以上なっている窓のことです。

複層ガラスでは複数枚のガラスがあることで、断熱性能が高くなることが期待できます。なお、ペアガラスによる断熱性能は、ガラスの枚数・中間層に注入するガスの種類・サッシの素材などによって変わります。

賃貸物件における二重窓のメリット

賃貸物件において二重窓が設置されていると多くのメリットを享受することができます。

ここでは二重窓のメリットについて解説します。

断熱性が高い

二重窓の最大のメリットは、断熱性が高くなることです。室内の空気と室外の空気の間に二つの窓が存在するため、中間にある空気層によって外気の影響を受けにくくなるからです。

空気層の断熱効果は、冬に着るダウンジャケットをイメージしてみてください。ダウンジャケットは分厚いですが、押せばへこませることができます。つまり、ダウンジャケットの内部には羽毛などのほか空気層があり、その空気層にこそ断熱効果があるため冬にダウンジャケットを着ると寒さを感じないのです。

遮音性が期待できる

二重窓が設置されていることで、外からの音が室内に入りにくくなり静かに暮らすことができます。なぜなら、窓が二重であるため防音性能が物理的にアップしているからです。

二重窓は外窓と同じサイズで内窓が作成されるため、隙間から音が入ってくる心配もありません。外の音に悩みを持つ人には二重窓は強い味方となりそうです。

結露が発生しにくい

二重窓では、室内側の内窓に結露が発生しにくいことがメリットとして挙げられます。外窓と内窓の間に空気層があることで、外気が内気に触れづらいからです。

ただし、外窓側には結露が発生する可能性があるほか、外気温が下がりすぎた日や室内の湿度が高すぎるときは結露が発生することもあります。

結露が発生したら換気を行い、室内の湿度を適切に保つように心がけましょう。また、結露を拭き取っておくことも忘れないでください。カビの発生を防ぐこともできるほか、水滴が床や窓枠に付着することによって変色すると、借主に原状回復義務が発生することがあるからです。

出典:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」

光熱費が節約できる

二重窓では光熱費の削減効果も期待できます。なぜなら断熱性能が高いため、エアコンなどを過度に稼働させる必要がないからです。省エネにも役立ちますので、これからの時代には重要な設備と位置づけることができそうです。

防犯性が高い

二重窓は防犯性能が高いことも特徴の一つです。なぜなら、泥棒がわざわざ窓を二つ壊さないといけない部屋を選んで侵入するとは考えにくいからです。

ただし、二重窓だからと過信することはおすすめできません。少しの間であっても、外出時の施錠は必ず行いましょう。

賃貸物件における二重窓のデメリット・注意点

一方、二重窓のデメリットや注意点は以下のようなものです。

定期的なメンテナンスを行う必要がある

二重窓ではカビや結露のチェックのほか、埃が溜まっていないかなど、定期的なチェックが欠かせません。外窓と内窓の間は死角になりがちですので、定期的に全ての窓を開けて掃除を心がけましょう。

開閉に手間がかかる

二重窓は窓が二つあるため、外気の取り込みやバルコニーへの出入りに手間がかかる点もデメリットです。特に、掃き出し窓(窓の下面が床まである窓のこと)が二重窓のときは、バルコニーでの物干しなど出入りに不便さを感じることがあるかもしれません。

視覚的に圧迫感を感じることがある

二重窓は室内側に窓部分がせり出してくるため、圧迫感を覚える可能性も否定できません。内窓の設置により少なくとも10cmは室内側に窓がせり出すことになります。さらにカーテンがさらに内側に設置されることになるため、圧迫感を覚えることがあるでしょう。

賃貸物件で二重窓が設置されている割合

賃貸物件で二重窓が設置されている割合を示す正しいデータは存在していません。賃貸仲介営業を20年以上している私の経験上、二重窓のある賃貸物件数はかなり少なく、分譲マンションの一室や一戸建てが賃貸として募集されているとき、たまに見かける程度の頻度です。賃貸物件において二重窓が設置されているケースは希少といえるでしょう。

なお、総務省のデータによれば「二重以上のサッシ又は複層ガラスの窓」が設置されている家は全戸数のうち約29%だそうです。都道府県別にみると北海道や東北地方などの寒い地域でその割合は高くなっています。このことからも、二重窓や複層ガラスは断熱性に大きく関係していることがわかります。

出典:総務省「都道府県別でみる住宅状況

賃貸物件に二重窓は後付けできる?

賃貸物件に二重窓を後付けで設置することは可能です。ただし、必ず家主さんや管理会社に事前に相談を行い、許可を得たうえで設置してください。

二重窓を設置するにあたって、家主さんや管理会社と協議すべき内容は以下のとおりです。

・設置して良いかどうか

・退去するときに原状回復が必要かどうか

・借主の費用負担となるか、一部でも貸主が負担してくれるか

以上の内容を協議の上、書面の取り交わしもしておけば後でトラブルになることもありません。

ここからは、許可がおりたときの二重窓の設置方法について解説します。

専用の二重窓を設置する

二重窓は、専門業者に専用のものを設置するように依頼することが必要です。なぜなら、窓のサイズや室内の換気方法などによって適した二重窓の仕様が変わるため、十分な断熱効果を得るためには経験と実績のある専門業者への依頼が欠かせないからです。

もちろん、二重窓にするだけでもある程度の断熱効果などを得ることは可能です。ただし、効果を最大限に発揮させたいときは、施工実績のある専門業者へ依頼するようにしましょう。

管理会社や家主さんに相談してみる

業者を知らなかったり、どのようなものを設置してよいかわからないときは、家主さんや管理会社に相談するのも方法の一つです。

家主さんや管理会社に相談するメリットは以下のようなことが挙げられます。

・窓のサイズや建物の仕様を熟知しているため、間違いがない商品を提案してくれる

・過去に同じ賃貸物件内で設置した実績がある可能性があり、安心感がある

・家主さんが費用の一部を負担してくれることがある

内窓の設置は断熱性能が高くなることから省エネにつながるため、補助金が適用される工事です。家主さんとしても補助金で工事費用の一部が軽減され、かつ、部屋の設備がグレードアップできるとなれば、協力してくれる可能性も十分にあるでしょう。

補助金の内容を確認する

二重窓の設置は補助金が適用される可能性が高いため、補助金の適用是非についてもチェックしておきたいところです。

環境省が実施している「先進的窓リノベ2024事業」では、賃借人による施工であっても補助金の申請適用が可能です。

補助金の適用要件は以下のとおりです。

・工事内容が補助金の適用事業かどうか

・施工する商品が補助金の適用商品かどうか

・施工する業者が補助金の適用業者かどうか

詳しくは下記サイトよりご確認ください。

出典:環境省「断熱窓への改修促進等による住宅の省エネ・省CO2加速化支援事業(先進的窓リノベ2024事業)

賃貸物件でもできる、二重窓のDIY手順

二重窓は自分で設置することも可能です。ここでは、二重窓をDIYで設置する手順について解説します。ただし、DIYで設置するときも家主さんや管理会社へ事前の相談を怠らないようにしましょう。

窓枠を採寸して内窓キットを購入する

二重窓を設置したい窓枠を採寸し、サイズに合う内窓キットを購入しましょう。内窓キットはおもにホームセンターで販売されています。

採寸する箇所は全部で7箇所です。縦は両端と真ん中、横は上下、対角線2箇所を採寸します。このとき、縦同士・横同士・対角線同士で5mm以上のずれがあるときは補正が必要になります。そのため、どの箇所が何cmだったかはメモをとっておいてください。

フレームの組み立て

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フレームとは、窓枠やガラス枠に該当する部品をいいます。

最初に組み立てるのは窓枠のフレームです。縦・横のフレームを採寸したサイズに基づいてカットし、既存の窓枠に両面テープで貼付していきましょう。

これで、新しく設置する窓枠側の作業は終わりです。

窓ガラスをカットする

窓ガラスをサイズに合わせてカットします。ただし、本物のガラスではなくポリカーボネート板を窓ガラス代わりに利用します。

ポリカーボネート板は温度差にも強く、加工も容易、さらには衝撃にも強い便利な部材です。カーポートの屋根に使われているといえばイメージしやすいでしょう。

カットしたポリカーボネート板はそのままでは窓枠にはまらないので、四方をさらにフレームで囲えば、窓ガラス面の作業は完了です。

窓ガラスををセットして完了

カットしてフレームで四方を囲んだポリカーボネート板を窓枠にはめ込めば、DIY二重窓の完成です。

内窓キットのほか、雑材を含めても2万円を下回る金額で二重窓を設置することが可能です。また。フレームの色も白色やブラウンなどお部屋のイメージに合わせて選ぶことができますので、ぜひ一度チャレンジしてみてください。

二重窓の代用になるアイテム5選

賃貸物件で二重窓を借主が自ら設置するのは、やはり少々ハードルが高いもの。そこで、ここでは二重窓の代用となって断熱効果や防音性能を高めることができるアイテムを紹介します。

ぜひ参考にしていただき、快適なお部屋づくりにお役立てください。

断熱シートや断熱フィルム

窓ガラスに断熱性能のあるシートやフィルムを貼る方法があります。

シートやフィルムと聞くと薄いものをイメージしがちですが、可能な限り「分厚いもの」を選ぶようにすると効果を実感しやすいでしょう。なぜなら、断熱性能には空気層の存在が欠かせないからです。

さまざまなデザインのものや、夏用・冬用・オールシーズン利用可能なものなど、幅広い商品が展開されていますので、悩みと好みに合わせてお選びください。

遮熱・保温仕様のカーテン

窓ガラスではなくカーテンを変えるのも断熱・防音性能をアップさせる良い方法です。

カーテンにもさまざまな種類があり、それは見た目のデザインに留まりません。遮熱性能・防音性能などさまざまな効果が期待できるものが販売されています。断熱や防音にお困りの人は、カーテンを見直してみるのもよいでしょう。

隙間をふさぐテープ

築年数が経過した賃貸物件では、ドアやサッシに隙間が発生し、その隙間から外気が入ってくることによって室内が暑くなったり寒くなったりすることがあります。そのようなときは、隙間を塞ぐテープを貼ることで問題が改善することがあります。

隙間テープは、ドアやサッシに限らず、エアコンのドレンホースの隙間にも簡単に施工することが可能です。また、ドアやサッシの枠には木材やアルミなど異なる種類の素材が使われていますが、素材ごとにテープが準備されていますので、ほとんどのドアやサッシに対応することが可能です。

ハニカムシェード

ハニカムシェードとは、六角形の空気層を要したロールスクリーンのことです。ハニカムシェードをカーテン代わりに設置することで、空気層を得ることができるため断熱性能が期待できます。

ハニカムシェードはカーテンレールに設置するのが一般的な施工方法ですが、突っ張り棒で施工することができる商品もあるため、賃貸物件でも安心して利用が可能です。さらに、デザインも豊富であるため、内装やインテリアとの相性も抜群です。

プチプチ

梱包のときに同封されているプチプチを窓に貼る方法もおすすめです。プチプチの中身は空気ですから、空気層を窓に貼れば断熱効果を簡単に得ることが可能です。

簡単で費用もかからないこの方法は本当におすすめなのですが、見た目が悪くなることがデメリット。カーテンをあまり開けない窓やトイレの小窓などから始めてみてください。

二重窓の住まいを検討してみよう

賃貸物件のお部屋探しでは、断熱性能を気にする人はあまり多くないように思います。しかし、夏は暑くて冬は寒い、などの悩みを抱えている人は少なくありません。

さらにいえば、実際に自分が住宅を購入するときには断熱性能は大きなチェックポイントであり、性能の差によって数百万円も価格が変わることもあります。

賃貸物件ではできることはどうしても限られてしまいますが、工夫次第で快適な生活を進めることは不可能ではありません。工夫とアイデアで快適な毎日を送ってください。