賃貸住宅に住んでいると、隣の部屋から気になる臭いが漂ってくることがあります。料理の匂い、ペットの臭い、生活臭など、その種類はさまざまです。
「窓を閉めても臭いが消えない」「臭いが気になって洗濯物が干せない」など、日常生活に支障が出てしまうほど困っている人もいるかもしれません。
そこで今回は、賃貸住宅で隣の部屋の臭いに悩んでいる人のために、臭いの種類別の原因・対処法・家主さんや管理会社への相談の仕方など、解決に向けて役立つ情報をまとめました。この記事を読めば、今抱えている問題を解決するためのヒントが見つかるはずです。ぜひ最後までお読みいただき、臭いトラブルにお役立てください。
【臭いの種類別】集合住宅で隣の部屋が臭い場合の原因
マンションやアパートで気になる臭いには、どのような種類があるのでしょうか。まずは、集合住宅でよくある臭いトラブルの原因を知りましょう。
臭いの原因を知ることで、逆に自分が臭いの発生源となることを防ぐことにも繋がります。ぜひチェックしてみてください。
タバコの臭い
タバコの臭いは、非喫煙者にとってとてもストレスに感じるものです。少なくとも副流煙に良い印象を持っている人はいないでしょう。
周りの人の迷惑にならないようにバルコニーではなく換気扇の下で吸っているから、と安心してはいけません。換気扇で吸った空気は室外に排出されるため、廊下やバルコニーにタバコの臭いは漏れなく届いています。
タバコの臭いは、臭いそのものが嫌がられることはもちろん、健康被害や洗濯物に臭いがつくため、クレームの温床になりやすい傾向にあります。
料理の臭い
焼き魚のような煙の出やすい料理で発生する臭いも、クレームに発展する可能性が否めません。
タバコに比べればクレームになる可能性は低いですが、頻度や状況によっては対応を迫られることがあるかもしれません。また、最近では外国籍の人が住んでいるために、スパイスの臭いなどが気になるというリクエストも増加してきています。
ゴミの臭い
集合住宅では、ゴミの臭いに関するトラブルも後を絶ちません。なぜなら、室内にゴミを置きたくない人がバルコニーにゴミを仮置きすることがあるからです。
きちんとゴミ箱に袋詰めされていればよいのですが、袋ごと捨てている、封をきちんとしていないなどの理由により臭いが漏れることによってクレームに発展しがちです。
ペットの臭い
ペットの臭いも、ときにはクレームに至ることがあります。
排泄物の処理・共用部やバルコニーでの粗相など、ペットの臭いトラブルの原因はさまざまです。しかし、いずれのケースも飼い主の対応によって防ぐことができます。
ものが腐敗した臭い
なにかが腐っているような臭いが漂うことがあります。
臭いが一時的なものであれば気にすることはありませんが、数日にわたって腐敗臭が漂うときは、近隣の住戸で住民が孤独死が発生している可能性があります。そのときは、家主さんや管理会社にすぐに報告しましょう。
集合住宅で隣の部屋が臭い場合の相談先
集合住宅で生活していて臭いに悩まされているとき、誰にどのように相談すればよいのでしょうか。ここでは、相談先や相談方法を解説します。
家主さんや管理会社
最初に相談すべきは、家主さんや管理会社です。フラストレーションがたまればたまるほど直接もの申したい気持ちがあるかもしれませんが、あとあとトラブルに発展する可能性もありますので、初動は家主さんや管理会社に報告して対応を一任しましょう。
このとき、臭いの種類・頻度・原因と考えられるものなどを具体的に示すことで、家主さんや管理会社はスムーズに対応することができます。
また、実際に臭い被害にあっている状況ではあるものの、家主さんや管理会社も報告だけを頼りに対応することはできません。独自に調査を行ったうえで対応するため、どうしても時間がかかることは理解しておきましょう。
直接話をしてみる
臭いの程度がひどく、生活に支障をきたすレベルであれば直接話をする方法も考えられます。
ただし、入居者同士の直接対決は実務では大きなトラブルに発展することが多いため、決しておすすめはしません。しかしながら「どうしても直接」とお考えのときは、少なくとも以下の要件のいずれかを満たしているときに、丁寧な対応を心がけたうえで話し合いの場を持たれてください。
・臭いの発生元と顔見知り、もしくは人間関係がある
・臭いの発生原因が確定しており、証拠も存在している
・過去に臭いの件で家主さんや管理会社を交え話し合いをし、相手方が認めた過去がある
くれぐれも一方的に正義を振りかざすのではなく、対応をお願いするというスタンスを崩さないようにしましょう。
自治体や警察など
臭いトラブルが一向に解決の兆しを見せないときは、第三者に相談することも視野に入れましょう。相談できる先として、以下の窓口を参考にしてみてください。
弁護士
法的な視点から解決に向けた具体策の提示が期待できます。ただし、弁護士に相談すると費用がかかるため、自治体が開催している無料相談会などを利用するとよいでしょう。
自治体
自治体ではゴミの収集や適切な分別を担っているため、相談に乗ってくれることがあります。直接的に自治体が動いてくれる可能性は低いかもしれませんが、自治体名が入ったパンフレット・書類・注意文書を投函することで、改善が見られるかもしれません。
公害等調整委員会
公害等調整委員会とは、公害と思しき案件の紛争処理を行う行政機関です。臭いトラブルで公害と思われるかもしれませんが、近隣にある工場や施設からの臭いや、1階にある飲食店の臭いなども公害であるため、相談窓口としては適任でしょう。
実務では、お住まいの自治体にある公害苦情相談窓口に問い合わせすることから始めるのが一般的です。
※参照:総務省「公害等調整委員会」公害苦情相談窓口
警察
臭いの発生が嫌がらせ目的であったり、孤独死の可能性があるなど、事件性があるときは警察への相談も有効です。民事不介入であるため「お隣さんの魚の臭いがひどい」という理由では警察は対応してくれません。しかし、事件性があるときは家主さんや管理会社へ報告のうえ警察へ相談することも有効です。
隣の部屋の臭いトラブルを解決する流れや手順
臭いトラブルを解決するためには、必要な箇所に相談することが重要です。そのうえで、具体的な解決手順についてここから解説します。
特に、臭いを出している当事者が悪意がないときなどは解決に時間を要することも珍しくありません。さらに、料理の臭いなどの生活臭は注意するだけで人間関係の悪化を招きます。隣人との関係を悪化させないためにも、流れや手順を間違わないようにしましょう。
STEP①家主さんや管理会社に相談する
臭いが気になったら、まずは家主さんや管理会社に報告・相談してください。
ここで注意することは、「すぐに解決しろ」と威圧的にならないことです。威圧的な態度を示すと家主さんや管理会社は問題の解決ではなく、クレームを抑えることに時間と労力を割くことになるからです。
あくまでもお願いベースで事実を淡々と説明し、調査を含めて対応を依頼しましょう。
また、原因が特定できていない段階では誰かを犯人と断定するのは避けてください。実務では、隣からの臭いと思っていたら実は別の部屋だった…ということがよくあります。勘違いで家主さんや管理会社経由で注意されると、決して良い気分はしません。このような点からも、お願いベースで調査を依頼することをおススメします。
STEP②相談した結果を踏まえ様子を見る
家主さんや管理会社へ相談したあとは、一旦対応の結果報告を待つことになります。しかし、ただ待つのではなく、臭いの変化がないかなどは気にかけておいてください。
そして、臭いや臭いの発生源となる行動などに改善が見られたら、注意が功を奏したと考えてよいでしょう。そのときは、家主さんや管理会社にお礼の連絡を入れておくと、今後の賃貸生活で良い関係を築くことができます。
STEP③改善が見られなければ、証拠を押さえる
家主さんや管理会社に連絡・相談しても改善がみられないときは、臭いが出ていることについて証拠を集めましょう。なぜなら、第三者への相談や係争を考える必要があるからです。
証拠として、以下のようなものが考えられます。
・ゴミやゴミ袋などの散乱状況
・タバコの吸い殻
・ペットの排泄物
・家主さんや管理会社への相談履歴、または家主さんや管理会社の対応履歴
・専門家により測定した臭気
・健康被害があるときは診断書
これら客観的な証拠を、より多く収集しておきましょう。
STEP④家主さんや管理会社に証拠を提出し、再度注意してもらう
収集した証拠を家主さんや管理会社に見てもらい、状況を理解してもらったうえで引き続き対応を依頼してください。
証拠を家主さんや管理会社に見てもらうことには、二つの狙いがあります。一つは、家主さんや管理会社の担当者を味方につけること。もう一つは、早期解決に向けてよりスピーディに対応してくれる可能性が期待できることです。
ほとんどの場合は、このあたりで解決することが考えられます。もし、この状況でも何ら改善が見られないときは、第三者へ相談してみてください。このとき、家主さんや管理会社も同席してもらうとスムーズに話が進むでしょう。
STEP⑤臭いが原因で生活できないと判断したら引っ越すのも一つの手段
第三者への相談などは心理的なハードルが高いもの。賃貸の利点として引っ越してしまうのも一つの有効な手段です。
費用がかかる点は大きなデメリットですが、臭いのストレスを抱えながらの生活から離脱できる点はメリットと考えることもできます。家主さんや管理会社に相談していれば、退去費用を考慮してくれることもありますので、早期解決の一つの手段として引っ越しも検討してみてください。
また、実務では同じマンションの他の部屋に移る、ということも珍しくありません。問題の根本的な解決には至りませんが、他の賃貸物件に引っ越すことを考えれば少しの労力と安い費用で問題から離れることができます。こういった事例もあることを踏まえ、家主さんや管理会社とコミュニケーションをとっておきましょう。
また、昨今は引っ越しに要する費用も安くなっています。悩みを抱えているのであれば、一度不動産会社に相談してみるのもよいでしょう。
隣の部屋の臭いで体調を崩したら慰謝料を請求できる?
賃貸住宅で隣の部屋からの異臭に悩まされ、体調を崩してしまったら、慰謝料を請求できるのか気になる人も多いでしょう。結論、状況によっては慰謝料請求が認められる可能性があります。
まず、慰謝料の請求先が臭いを発生させている隣人であるときは、具体的な健康被害や精神的な苦痛を根拠として慰謝料の請求が認められることがあります。また、家主さんや管理会社が対応を怠ったときなどは、家主さんらに対しても慰謝料を請求できる可能性があります。
ただし、これら慰謝料が認められるにはいくつかの要件が必要です。
・客観的な証拠があるかどうか
・臭いが「受忍限度」(我慢できる限界)を超えているかどうか
・健康被害や精神的苦痛と臭いに関係性があるかどうか
臭いは感じ方や好みに個人差が生じやすいため、慰謝料が認められるかどうかは個別のケースにより異なります。過去、野良猫に餌付けをするなどして近隣住民へ損害賠償の支払が認められた判例がありますので、参考にしてください。
また、裁判に至るまでにもさまざまな対応が必要となりますので、弁護士など専門家へ相談のうえ対応することを心がけてください。
隣の部屋から臭いがしたら早めに相談しよう
賃貸住宅で暮らしていて隣の部屋から気になる臭いが漂ってきたときは、早めの相談が大切です。なぜなら、放置しておくとトラブルに発展し、快適な生活を送ることが難しくなる可能性があるからです。
また、臭いトラブルを避けるためには内見時の対策も欠かせません。
・隣室のバルコニーは綺麗に掃除されているか
・ゴミ出しのマナーは守られているか
・ペットの臭いや汚れが共用部分にないか
これらは、内見時に確認できるため、ぜひ押さえておきたいところです。ぜひこの記事を参考に、臭いトラブルとは無縁の快適な生活を送ってください。