洗濯機の設置に欠かせない「防水パン」の役割をご存じでしょうか?普段あまり意識することのない防水パンですが、実は洗濯機の水漏れ防止や排水口の位置調整に欠かせない重要なアイテムです。しかし、それだけにこの防水パン及びその周辺のスペースのサイズで、設置できる洗濯機の大きさに制限がかかることもあります。
今回は、家電製品アドバイザーの視点から、正しい防水パンのサイズや測り方、そして役割を詳しく解説します。さらに、防水パンを掃除する際のポイントや設置時の注意点もご紹介します。
適切な防水パンのサイズを把握することで、大きな買い物となる洗濯機購入で失敗するリスクを減らすことができます。あなたのお部屋に最適なサイズの洗濯機を選んで、安心・快適な洗濯を始めましょう。
洗濯機の防水パンとは
「防水パン」は、洗濯機の下に設置される受け皿のようなアイテムです。洗濯機が故障したときの水漏れや排水の際に漏れ出た水を受け止めてくれるので、床や建物への水ダメージを防いでくれます。
また、排水ホースと排水口の位置を調整する役割も持っていて、洗濯機の設置をスムーズにするための重要な部品です。
以下のメリットがあることから、賃貸物件ではほとんどの場合で最初から設置されています。
防水パンを設置する意味(メリット)
防水パンを設置することで得られるメリットとして代表的なものを、3点ご紹介します。
水漏れ防止になる
洗濯機が故障して水漏れを起こした場合、防水パンがあれば漏れた水をしっかりキャッチし、床下への浸水被害を最小限に抑えることができます。
特にマンションやアパートなどでの水漏れは下の階に大きな影響を与える可能性があり、防水パンはそのようなリスクを軽減する重要な役割を果たします。
排水口と排水ホースの接続を楽にする
例えば排水溝が洗濯機の真下にある場合、排水ホースの接続が難しく、無理な取り付けでホースが曲がったり詰まったりすることがあります。
防水パンを設置することで、排水経路の調整が容易になり、スムーズに接続できるようになります。これにより、排水トラブルのリスクを減らし、日常の洗濯作業をより快適に行うことができます。
床の保護ができる
洗濯機の重量や運転中の振動は、フローリングや床材に大きな負担をかけ、場合によっては床に傷をつけたり劣化を早めたりします。防水パンはその衝撃を吸収し、床材をしっかり守ってくれます。また、防水パンが湿気の影響を軽減することで、カビの発生を防ぐ効果も期待できます。
床を長持ちさせ住まい全体を清潔に保つために、防水パンは非常に役立ちます。
洗濯機の防水パンのタイプとサイズ
防水パンにはさまざまなタイプとサイズが存在します。設置できる洗濯機の大きさを求めるためには、その種類や測り方をしっかり理解しておく必要があります。
防水パンの形は3種類
・フラット薄型タイプ
最も薄型で、軽いので自分でも設置が楽にできるタイプ。洗濯機本体との間にすき間がないので、洗濯機の下を掃除するのには不向き。
・フチありかさ上げタイプ
洗濯機を乗せる台が4箇所にあり、それ以外のくぼんだ部分が掃除しやすいようになっているタイプ。フチがあるので若干小さめ。
・フチなしかさ上げタイプ
同じく洗濯機を乗せる台が4箇所にあり、それ以外はくぼみがあり床とフラットになっているタイプ。排水ホースの取り回しがしやすい。
防水パンの主なサイズと測り方
賃貸物件では最初からその物件のスペースに合った防水パンが設置されている傾向にありますが、設置自体自分で行わなければならない場合もあります。その場合、防水パンのサイズは洗濯機のサイズに合わせて選ぶ必要があります。主なサイズとしては、500mmから800mm程度までさまざまです。
(例:幅640mm×奥行640mmや幅740mm×奥行640mm、幅800mm×奥行640mmなど)
以下に、サイズの測り方をご紹介します。
①外寸を測る
防水パンの外枠の幅と奥行きを図ります。まだ防水パンがない場所の場合は、設置予定の場所の幅と奥行きを正確に図りましょう。
②内寸を測る
次に防水パンの内側の幅と奥行きを測ります。これは洗濯機が実際に収まるスペースを確認するために重要です。
③洗濯機のサイズ確認
洗濯機本体の幅、奥行き、高さを正確に測定します。特に排水ホースや給水ホースの位置も考慮に入れます。
④すき間の確保
洗濯機と防水パンの間には、少なくとも左右と後方に数センチの余裕を持たせることが望ましいです。これにより、洗濯機が動いているときの振動や騒音を抑えられますし、メンテナンスもしやすくなります。
洗濯機を設置する際に防水パン以外に測っておきたいサイズ
防水パンのサイズだけでなく、洗濯機を設置する際には他にも確認すべきポイントをご紹介します。これらを事前に測定しておくことで、設置後のトラブルを防ぐことができますので、しっかり確認してくださいね。
給水蛇口の高さ
給水蛇口の高さは、洗濯機の背面からの距離やホースの長さに影響します。
一般的には床から約1,000mmから1,200mmの高さが適切とされています。蛇口が低すぎる場合、洗濯機に接続する給水ホースが曲がって水流が悪くなる可能性があります。
排水口の位置
排水口の位置は、洗濯機の排水ホースが無理なく接続できるかどうかに関わります。
排水口が防水パン内にあるか、もしくは近くにあるのかを確認しましょう。位置によっては洗濯機のかさ上げ台や、排水ホースの延長が必要になる場合があります。
壁からの距離
洗濯機の背面や側面と壁との距離も重要です。壁にぴったりと設置すると、振動や騒音が増加するだけでなく、通気性が悪くなり機器の寿命を縮める可能性があります。
少なくとも後方に5cm、側面に3cm程度のスペースを確保するのがおすすめです。
脱衣所間口の広さ
洗濯機を設置する際、搬入経路の幅も確認が必要です。特にドラム式洗濯機はサイズが大きいため、玄関や廊下、脱衣所の入口が十分な幅であるか事前に測定しましょう。
搬入時に通れないといったトラブルを防ぐためにも、最小でも洗濯機の幅+10cm以上の余裕があることが推奨されます。もし、ご自身で測定が難しい場合には、購入した(する)店舗やお部屋の管理会社へ相談しましょう。
【洗濯機のタイプ別】適切な防水パンサイズ
洗濯機のタイプによって、適切な防水パンのサイズは異なります。ここでは一般的なサイズを紹介しますが、モデルによって異なるため、必ず実機のサイズを確認してください。
縦型洗濯機
縦型洗濯機は比較的コンパクトなものが多く、一般的な防水パンサイズで対応できます。標準的なサイズは640mm×640mmですが、小型のものでは600mm×600mmの防水パンでも設置可能です。
ただし、上部に蓋が開閉するスペースが必要なため、蛇口の位置や天井の高さ、棚の位置も確認しましょう。
ドラム式洗濯機
ドラム式洗濯機は横幅や奥行きが大きいモデルが多いので、防水パンのサイズはしっかり確認しましょう。機種によっては800mm×800mmの大型防水パンが必要になる場合もあります。
また、扉の開閉スペースが前面に必要なため、設置場所の奥行きにも注意が必要です。扉の開き方(左開き、右開き)も確認し、壁や家具に干渉しないかをチェックしましょう。
二槽式洗濯機
二槽式洗濯機は横長の特殊な形状であり、標準的な防水パンでは収まらないことがあります。防水パンのサイズや形状をよく確認し、必要であれば特注の防水パンを検討することも必要です。
防水パンを使わない設置方法
防水パンを使用せずに洗濯機を設置する方法も存在しますが、その場合はリスクと対策を十分に理解しておく必要があります。それぞれ詳しく解説します。
床に直に置く
防水パンを使用せずに床に直接設置する方法です。この場合、防水マットや防振ゴムを使用して床へのダメージを軽減するのがおすすめです。
また、万が一の水漏れに備えて給水蛇口に水漏れ防止ストッパー機能をつけておくと安心ですよ。
かさ上げ台の上に置く
洗濯機をかさ上げ台の上に設置することで、排水ホースの取り回しを容易にし、床への直接的な負荷を軽減できます。かさ上げ台は通気性も確保できるため、湿気対策にもなります。
ただし、かさ上げ台自体の耐荷重や安定性を確認し、安全に設置することが重要です。
洗濯機の防水パン自体を掃除する方法
防水パンは見えにくい場所であるため、汚れやカビが溜まりやすくホコリも多くなりがちです。定期的な掃除で清潔に保ちましょう。
必要な道具と準備
まず掃除を始める前に、以下の道具を用意しましょう。
・ゴム手袋
・中性洗剤
・柔らかいブラシやスポンジ
・雑巾やタオル
・汚れ落とし洗剤(必要に応じて)
防水パンの基本的な掃除手順
防水パンの掃除は3ヶ月に1回程度行うことが適切ですが、設置場所の環境や洗濯機の使用頻度によっては、よりこまめに掃除してカビの発生を防ぎましょう。
おすすめの掃除方法は以下の手順です。
①洗濯機の電源を切る
安全のため、必ず電源をオフにします。電源コンセントやアース線もいったん抜き、配線が邪魔にならないようにまとめておきましょう。
②洗濯機を移動する
可能であれば洗濯機を防水パンから取り外します。重い場合は無理して動かさずに、手の届く範囲で掃除します。
③汚れを除去する
まずは防水パンのホコリやゴミをほうきなどで取り除きます。さらに中性洗剤を溶かした水でブラシやスポンジを使い、汚れを丁寧に落とします。
④水拭きと乾拭き
洗剤が残らないように水拭きをし、その後乾いたタオルでしっかりふき取り乾燥させます。
⑤正しく設置し直す
洗濯機の位置を正しく元に戻して電源コードとアース線をつなぎ直して完了です。
頑固な汚れやカビの落とし方
久しぶりに掃除をする場合、こびりついた頑固な汚れが発生している場合があります。
まず防水パンを傷めずに汚れ落としをする際は「中性洗剤」を使用しましょう。もし、それでも汚れが残る場合には、洗浄力の強い「弱アルカリ性の洗剤」を使用しましょう。
また、黒カビが発生している場合は「クエン酸・重曹」を使用してつけおきするのもおすすめです。
掃除時の注意点とポイント
洗浄力の強い「塩素系洗剤」を使用して防水パンを一気に掃除する場合、防水パンの素材が傷んでしまう可能性があるため注意が必要です。使用前に洗剤の注意書きをよく読んで、正しい用法容量で使用してください。
また、洗浄力の高い洗剤は刺激が強いものがあります。使用する前には、しっかりと洗濯機置き場の換気をして、体調に十分注意をしましょう。
防水パンを清潔に保つためのコツ
本格的な掃除ができなくても、月に1回は見えるところを水拭きしたり掃除機でホコリを吸い取っておくと汚れが溜まらず安心です。
また、室内洗濯機置場があるお部屋では、カビ予防に置き型の除湿剤を設置したり、防水パンの周辺の通気性を良くして湿気の予防をするのがよいでしょう。
防水パンを正しく選んで快適な洗濯環境を作ろう
今回は防水パンの重要性やその選び方について、詳しく解説しました。
防水パンは、水漏れ防止や床の保護といった役割をもち、洗濯機を正しく使う上で重要なアイテムです。洗濯機のタイプや設置場所に合わせて最適な防水パン及び洗濯機を選ぶことで、安全で快適な洗濯環境を実現できます。
また、定期的なメンテナンスを行うことで、防水パンを清潔に保ち、トラブルを未然に防ぐことが可能です。さらに室内洗濯機置き場付きのお部屋を選べば、適切に設置された防水パンを活用できるため、さらに安心感が増すでしょう。
快適な洗濯環境は、暮らしの利便性を向上させるだけでなく、心のゆとりを生み出し、日々の生活の質を向上させてくれます。今回の内容を参考に、ぜひあなたに合った洗濯環境を整えてみてくださいね。