賃貸住宅のなかには、床全体にカーペットが敷かれた物件があります。カーペット床には、安全性が高い、騒音対策にも優れているなど複数のメリットがあるため、気になる方もいることでしょう。反対に「ダニが繁殖しやすそう」「手入れが大変そう」といった理由で、カーペット床を選びたくないという方もいます。
そこで今回は、カーペット床の賃貸物件のメリットや注意点、原状回復の基準、お手入れ方法まで詳しく解説します。ぜひ物件を選ぶ際の参考にしてみてください。
カーペット床の賃貸物件のメリット
賃貸物件のなかには、初めから部屋の床にカーペットが設置された(床自体がカーペット生地となっている)部屋があります。最近ではフローリングの床が主流となっており、数はそこまで多くはありませんが、一部の賃貸物件では新旧問わず存在します。
カーペット床の賃貸物件には、メリットが複数あります。
・滑りにくいクッション性があり安全性が高い
・下の階に音が響きにくい
・冬場でも暖かい
・ほこりが舞い上がりにくいので部屋の空気をきれいに保てる
まずは、カーペット床のメリットをひとつずつ見ていきましょう。
滑りにくくクッション性があり安全性が高い
床カーペットは滑りにくく、転倒のリスクを大幅に軽減できます。クッション性があるため、万が一の転倒時にも衝撃を吸収し、ケガの防止に役立ちます。小さな子どものいる家庭や、お年寄りのいる家庭など、安全性を重視したい方におすすめです。
また、モノを落としたときに壊れにくいこともカーペットの利点です。
下の階に音が響きにくい
カーペット床には優れた防音効果があります。柔らかい繊維が音を吸収するため、フローリングと比べて足音や物音が伝わりにくくなるのです。
マンションやアパートでの快適な暮らしには、防音対策が欠かせません。とくに小さな子どもがいる家庭や夜型の生活をされている方には、おすすめの床材であるといえます。
カーペットで全く音が響かなくなるわけではありませんが、近隣トラブルを避けたい方は、カーペット床の物件を選んでみるとよいでしょう。
冬場でも温かい
カーペット床は冬場の防寒対策にも役立ちます。
フローリングの賃貸住宅では、気温が下がると床がひんやりと感じるため、室内でも靴下を履いたり、スリッパを使う人も多いことでしょう。カーペットは繊維の間に空気を含むため、断熱材のような働きをして、床下からの冷気を遮断してくれます。
冷え性の方や、床に座ることが多いライフスタイルの方、光熱費を節約したい方におすすめです。
ほこりが舞い上がりにくいので部屋の空気をきれいに保てる
カーペット床は、部屋にほこりが舞いにくいという特徴もあります。
フローリング床の場合、ほこりが床の上に「乗っている」状態となり、少しの風や人の移動によりほこりが舞い上がります。カーペット床であれば、繊維がほこりを吸着するため、空気中に舞い上がりにくくなるのです。
ただし、掃除をしなければカーペットにほこりが徐々に蓄積していきます。きれいな空気を保つためにも、定期的に掃除をしましょう。
カーペット床の賃貸物件の注意点

カーペット床にはメリットがたくさんありますが、注意点も存在します。
・掃除やメンテナンスに手間がかかる
・家具の跡が残りやすい
・ダニが発生しやすい
カーペット床の賃貸物件を選ぶ際には、これらの注意点をしっかり把握しておきましょう。それぞれ詳しく解説していきます。
掃除やメンテナンスに手間がかかる
カーペット床は繊維の間に汚れが溜まりやすく、フローリングと比べてメンテナンスに時間がかかります。溜まったほこりや髪の毛を取り除くためには、しっかりと掃除機をかけたり、粘着シートを使って掃除をしなければなりません。
また、ジュースやコーヒーをカーペットの上にこぼしてしまった場合、すぐに拭き取ってもシミが残ってしまうこともあります。できる限り液体類はカーペットの上にこぼさないよう、注意が必要です。
家具の跡が残りやすい
カーペットは、重い家具の跡が残りやすい特徴があります。同じ場所に長期間家具を置いていると、繊維が潰れて跡形が残ってしまうのです。重い家具を置く際には、クッションとなるマットやシートなどを敷くといった対策を考えましょう。
カーペットに跡がついてしまった場合、スチームやブラシを使って目立たなくする方法がありますが、素材によっては効果的ではない場合もあります。
ダニが発生しやすい
カーペットは、ダニが住み着きやすい環境を作ります。保温性・保湿性に優れていることから、繊維の隙間がダニの繁殖に適した環境となってしまうのです。アレルギー体質の方はとくに注意が必要です。
また、小さな子どもやペットがいる家庭では、より徹底した対策が求められます。定期的な掃除と換気を心がけ、快適な環境を保ちましょう。
賃貸のカーペット床で原状回復の対象になるダメージや汚れの種類

賃貸のカーペット床を汚してしまったり、傷つけてしまったりした場合、退去時の請求が気になることでしょう。基本的に、経年変化や通常損耗によるダメージでは、原状回復の対象にならないことがガイドラインで定められています。
ここからは、カーペット床における原状回復の対象になるダメージや汚れについて見ていきましょう。
貸主(大家さん)負担になるカーペット床のダメージ
通常の使用による劣化やダメージは、大家さん側の負担となります。経年劣化は避けられないものとして、修繕費用は家賃に含まれているのです。
具体的には以下のようなケースが該当します。
・日光による色褪せ
・家電や家具を置いたときにできた凹み・跡
・入居時よりついている傷や汚れ
・古くなったことによる劣化
入居時よりついている傷や汚れは、修繕費用を求められません。入居の時点でしっかりとダメージの箇所や程度を写真におさめておきましょう。
借主(あなた)負担になるカーペット床のダメージ
使用上の不注意や管理不足によって発生したダメージは、借主の負担となります。たとえば次のケースは、借主負担になる可能性が高いでしょう。
・飲み物や食べ物による汚れを放置してできたシミ
・タバコの跡
・雨が吹き込んだ事による変色
・家具を移動させた際にできた傷 など
不動産には「建物や設備は使用期間が長くなるほど価値が低下する」という減価償却の考え方があります。たとえば、カーペットに傷や汚れを付けてしまった場合でも、長年使用していれば、その分だけあなたの負担額は少なくなります。
退去時に修繕費用を請求された際は、使用年数による減価償却を考慮しているか確認することをおすすめします。
【毎日のメンテナンス】カーペット床を清潔に保つ方法

カーペット床の部屋で快適に過ごすためには、日々のメンテナンスがかかせません。正しいお手入れ方法を知り、清潔で快適な空間を維持しましょう。
ここからは、カーペットの具体的なメンテナンス方法を紹介します。
毎日掃除機をかける
カーペットの繊維に入り込んだ埃や髪の毛を除去するには、掃除機がけが基本です。効果的な掃除機がけのポイントを押さえておきましょう。
・ゆっくりと丁寧に掃除機を動かす
・方向を変えて複数回かける
・部屋の隅や壁際も丁寧に掃除する
・掃除機のヘッドを定期的に掃除する
カーペットにはダニが発生しやすいため、アレルギー対策という面でも毎日の掃除機がけが大切です。
粘着カーペットクリーナーで髪の毛や埃をとる
掃除機をかけても、繊維に入り込んだ埃や髪の毛が取れないこともあります。週に2〜3回、粘着カーペットクリーナーを使うとより清潔を保てます。
粘着シートを使うと汚れの程度を確認できるので、掃除機でカーペットの汚れがどの程度取れているのか、確認にもなります。
スリッパを履いている場合は裏側の汚れをとる
スリッパの外側は、意外と汚れが付着しています。日常的にスリッパを使用している方は、裏側の汚れをチェックしておくことをおすすめします。
スリッパの材質にもよりますが、定期的に裏側を拭く、洗濯するなど素材に合った方法でお手入れしましょう。
臭いが気になる場合は重曹を使う
長期間使用しているカーペットは、臭いが気になることがあります。ここでは、重曹を使った消臭方法を紹介します。
①カーペット全体に重曹を振りかける
②ゴム手袋で生地に重曹をなじませる
③数時間から半日ほど放置する
④掃除機で吸い取る
重曹は安価で手に入りやすいうえ、安全な成分であるため小さな子どもやペットのいる家庭でも安心です。ぜひ試してみてください。
定期的な換気を行う
カーペットの清潔さを保つには、換気も効果的です。新鮮な空気を取り入れることで湿気を防ぎ、カビやダニの発生を防げます。夏場や冬場など、1日中エアコンを使用している時期であっても、時間を決めて定期的に空気を入れ替えましょう。
シミの落とし方、メンテナンス方法
カーペットについたシミは、正しい対処方法で効果的に除去できます。シミの種類によって最適な処理方法が異なるため、汚れのタイプ別に解説します。
水溶性のシミの落とし方
コーヒーやワインなどの水溶性のシミは、比較的落としやすい汚れです。一番重要なのは、こぼしたらすぐに拭き取ること。時間が経つと範囲が広がり、色素が定着しやすくなってしまいます。
シミを落とす手順は以下のとおりです。
①こぼしたらすぐに拭き取る
すぐに拭き取ることが基本です。
②ぬるま湯を染み込ませた布で叩く
つまみ取るように拭くのも効果的です。
③取れない場合は中性洗剤を水で薄めたもので拭く
ぬるま湯だけで汚れが取れない場合には、薄めた中性洗剤を布に塗布し、拭いてみましょう。
④乾燥させる
濡れた部分をしっかりと乾かします。
掃除の際には、シミの範囲が広がらないよう、外側から内側に向かって拭くこともポイントです。
油性のシミの落とし方
ソース・ケチャップなどの調味料、クレヨンや油性ペンの落書きなどは油性のシミです。油性の汚れは、水拭きでは落ちにくいため、難易度が上がります。ここでは、酸素系漂白剤と重曹を使用した掃除方法を紹介します。
①固形成分を取り除く
調味料の固形成分が残っている場合は、まずはきれいに取り除きます。
②酸素系漂白剤と重曹を混ぜた洗浄液をかける
液体の酸素系漂白剤20mlと重曹大さじ1を入れて混ぜた洗浄液を作ります。汚れのついた部分に洗浄液をかけましょう。
③水拭きする
洗浄液をかけて数分放置したら、濡らした雑巾で叩くように拭き取ります。
④乾かす
しっかりと乾かしましょう。
ただし、この方法は色の薄いカーペットのみ使用しましょう。色の濃いカーペットで漂白剤を使用すると、色落ちのリスクがあります。色の濃いカーペットについた油性の汚れを落としたい場合には、アルコールをスプレーして拭き取ってみましょう。
なお、これらの掃除を試しても、シミを完全に除去できない場合もあるのは留意しておきましょう。
カビの落とし方、メンテナンス方法
カーペットが黒ずんでいる場合、カビが発生している可能性があります。放置するとカビが広がり、健康に影響を及ぼす場合もあるため、見つけたらすぐに対処しましょう。
カビが発生した場合の対処方法について紹介します。
カビに掃除機はNG
カーペットに黒いカビを見つけたら、カビが発生した部分に掃除機をかけることは避けましょう。目には見えないカビの胞子を吸い込んでしまうためです。
掃除機に吸い込まれたカビの胞子は、排気口から部屋中に撒き散らされます。また、掃除機の中にもカビの胞子が溜まるため、掃除機自体にカビが発生するリスクが高まります。
黒カビの落とし方
カーペットの一部に黒カビが繁殖していた場合、部分洗いを行いましょう。手順を解説します。
①アルコールスプレーを吹きかける
カビの繁殖した部分にアルコール除菌スプレーを吹きかけます。
②こする
ブラシやスポンジでこすります。生地を傷めないよう、優しくこするようにしましょう。
③水拭きして乾かす
カビがある程度落ちたら、雑巾で水拭きし、乾かします。
なお、カビの範囲が広いと家庭での除去は難しくなります。その場合は部屋の管理者に相談し、カーペットの張り替えを検討しましょう。
カーペット床の賃貸物件はメンテナンスで過ごしやすくなる!
今回は、カーペット床のメリットや注意すべきところ、お手入れの方法を紹介しました。
カーペット床の賃貸物件は、安全性や防音性、保温性など、多くのメリットがある一方、適切なメンテナンスが欠かせません。カーペット床の物件を検討している方は、これらを理解したうえで、自身のライフスタイルに合っているかどうかを判断することをおすすめします。