家庭の停電対策と言われても、忙しくてそこまで手が回っていないという方も多いのではないでしょうか。停電による生活への影響は、想像以上に大きいものです。
今回は、防災士として日々さまざまな災害への対策を伝えている私が、停電対策のノウハウをご紹介。停電の原因や実際の停電時の動き、防災グッズなどを知り、あなたの大切な家族や家財を守りましょう。
停電が起こる原因
停電の原因は、実は自然災害だけではなく、意外と多いことを知っていますか?
対策のポイントは以下の3つです。
・停電の原因を知ること
・停電に耐える住宅を選ぶこと(住宅にすること)
・自分でできる対策を行うこと
まず、停電の原因を見ていきましょう。
原因①:風水害
風水害とは、風や雨で被害が出る自然災害のことを指します。ポイントは停電だけでなく、建物にも被害が及ぶことです。被害が大きいと、電力会社の電気復旧作業が遅れます。蓄電池、太陽光発電も視野に入れた住宅を選び、自分でも備える必要があります。
原因②:雷
雷害とも呼ばれる停電は数秒から長時間にわたるものがあり、7~8月に集中するのが特徴です。多い年には、100回以上の被害が発生します。直撃した場合と、雷サージ(雷によって発生する電気系統への異常)が発生する2つの違いを意識する必要があります。
<雷害による主な被害>
・直撃雷として建物や電柱に直撃し、被害が甚大になる
・雷サージが誘導雷で発生し、家の中に侵入し家電が壊れる
建物被害を防ぐために、耐震構造・免震構造・制震構造の建物を選びましょう。金属を使った建物は、必然的に地面に雷を逃がす構造になります。入居時に分電盤の避雷器確認し、ない場合は購入し設置しましょう。
原因③:雪
停電の要因となるのは、ぼたん雪と呼ばれるくっつきやすい雪です。雪が電線に付着することで電線が切れ、停電が起きます。あまり雪が降らない地域の方がぼたん雪になりやすく、危険度が高いです。
ポイントは積雪による荷重で、住宅に被害が出ることもある点が挙げられます。停電をやり過ごせても、住宅に被害が出ると大変です。ここでも、耐震構造、免震構造、制震構造などの建物である住宅を選択しておくことが重要です。
原因④:地震
地震による停電は、被害の大きい地域周辺の停電が長引くことも考えられます。被害の大きい地域から外れても、余震や液状化による家屋の倒壊などで電線が切れ、電柱の倒壊による停電が起こる可能性もあるのです。
なお、家屋の倒壊でドアや窓が壊れると、鍵をかけて出かけることが難しくなります。片づけをしながら、残った部屋で居住する場合もあるかもしれません。お部屋探しの際には、制震構造・免震構造・耐震構造で強さをチェックしてみてください。
原因⑤:蛇やカラスの巣
カラスは、3月から4月にかけて巣を作ります。針金や金属ハンガーなどを使うため、それが電線に接触し停電になるのです。さらに、5月頃に巣の卵を狙ったほかの動物が設備に接触することもあります。巣を見つけたら電力会社に連絡しましょう。
蛇による停電は2つに分かれます。1つ目は、変電所や電気設備に入り込んだのち、設備に接触してしまうことです。変電所でショートが起こると、地域全体が停電してしまうことがあります。2つ目は、蛇が電線に巻き付いてしまうことです。
原因⑥:電気の使用量
最近、聞くことが増えた計画停電ですが、電力不足が起きそうなときに事前に決めた範囲で停電していくので、いつ起こるかわかるのが特徴です。生活サイクルの調整とともに、冷蔵庫の開閉を少なくする、食事を済ませておくなどの対応が求められます。
もしも停電してしまったら何をすべき?
停電の原因を把握したところで、次に実際に停電が発生した場合の動きについて説明していきましょう。
手順①:まずは水が出るかを確認し、貯水する
停電は地震のときと違い、水が出なくなることを予想していない方も多いですが、浄水場の発電機が停止すると配水が停止します。そのため、停電したらまず最優先で水が出るかどうか確認しましょう。出る場合には今後の断水に備え、空のペットボトルやタンク、鍋などに水を貯めます。
手順②:停電の範囲を確認する
貯水と並行して、停電している範囲を調べることも重要です。ネット接続が可能な場合は、通知をオフにして情報を検索しましょう。電力会社や市町村のサイトを見て広範囲の停電なのか、いつまでに解消するかチェックしましょう。
自分の家だけが停電している場合
停電しているのが我が家だけの場合は、漏電の可能性があります。一度に使った消費電力が多すぎてブレーカーが落ちる場合とは違うものです。漏電遮断器は、一般的にはブレーカーと一緒に付いています。
漏電が起きたときには、ブレーカー内の漏電遮断器レバーが下がっているかを確認しましょう。対処法は事前に調べて、プリントアウトしてブレーカーの近くに置いておくことをおすすめします。懐中電灯もしくはヘッドライトを持っていると、作業がスムーズになるでしょう。
近所も停電している場合
災害ではない場合、停電が近所にも及んでいるときはネットで電力会社の情報を見ましょう。停電情報は、比較的早く載っています。載っていない場合は自宅近くの引き込み線による停電なども考えられますが、電力会社に問い合わせてみましょう。
手順③:コンセントから電源プラグを外す
コンセントは、家電によって外すのか付けておくのかを判断します。自宅にいる場合は、エアコンや冷蔵庫のコンセントはそのままに、起動時に電気消費量が大きい家電はコンセントから抜いておきましょう。アイロン、電気ストーブなどには、とくに気を付ける必要があります。
手順④:避難する際はブレーカーを落とす
避難するときには、ブレーカーを落としましょう。東日本大震災ではっきりわかっている火災で、108件のうち58件が電気関係の出火でした。シューズボックスなどに非常時の持出袋を置いて、すぐに避難できるようにしておくと安心です。
手順⑤:避難時・待機時問わずトイレを確保しておく
タンクレストイレなどは電気を使うので、停電時には使えません。レバータイプは設備に損傷がなく、水があれば流せます。簡易トイレに使う場合は使ってしまうので、ガムテープでレバーを固定しましょう。どのタイプも、復旧時に様子を見てから流してください。
簡易トイレや凝固剤(ペットシーツやおむつ、生理用品を割いても使えます)を使用する場合は、市町村のごみ出しの基準で密封し、廃棄しましょう。ごみ収集が止まっている場合には、再開までベランダなどに置くことになります。
停電時のトイレ対策は、逆流を防ぐことが必須条件です。水があればビニールに入れて、口をしっかり閉じて作った水嚢で塞げます。トイレの周辺は、とくに丁寧に破損や漏れがないかチェックしましょう。
停電に備えて日頃からしておくべき対策
次に、突然の停電に備えるために日頃から準備できることを紹介します。
具体的な準備を紹介する前に、心構えとして、長引く停電のときには命を優先してください。水、食べ物、薬や自分の弱いところを守るものが必須です。また、できる限りの寒暖対策も行いましょう。銀行のATMが使えず、スマホやカードでの決済ができない場合に備え、現金を小銭と1,000円札で用意しましょう。
防災グッズを用意しておく
年配の方や小さなお子さんは、蓄光テープを貼って転倒を防ぐことが可能です。USBと電池兼用の懐中電灯やヘッドライト、ランタンなども注目されています。使用期限があるガスボンベも消費できるので、ボンベを使うストーブも一案です。
停電対策は、断水の可能性も踏まえ、用意する必要があります。水やジュース、ミルク、誤嚥防止のゼリー、洗い物を出さずに食べられる食べ物、簡易トイレやペットシーツなど汚物を処理できるものと廃棄用のビニールは必要です。
災害時は辛い思いが募りがちなので、好きな飲み物やお菓子を準備しておくのもいいでしょう。我が家は、ゼリー飲料を置いています。赤ちゃんは、液体ミルクを飲む練習をしておくのがおすすめです。廃棄用のビニール袋は密封でき、黒っぽい色だといいかもしれませんね。
割りばしや紙コップ、ウエットティッシュ、トイレットペーパーなど、生活必需品は多めに用意しましょう。小さなお子さんがいるご家庭やマンションの方は運ぶのが大変になるので、食べる、飲む、出す、気を紛らわせることについて準備が必要です。
ガスコンロや給湯器の種類によっては、停電時に使えないものがあるので調べておきましょう。どなたにもカセットコンロとガスボンベは役に立ちますが、ボンベは消費期限に気を付けましょう。寒暖差があるときは、カイロやアルミシートが役に立ちます。
防災グッズのしまい方と保管方法
防災グッズの準備をしたときに大切なのは、古いものから使っていく配置で置いておくことです。ウォークインクローゼットやシューズボックスなどの収納があると、出し入れもスムーズにできます。手が届くところに収める、念のため各部屋に置くことも秘訣です。
最近の製品は、大型のボディシートやおしりふきも大判のものがあります。それらをうまく活用して、衛生を保つことも必要です。このような情報をしっかりキャッチして、少しずつ買い足していってください。わかりやすく保管できる場所も必要ですね。
ポータブルバッテリーや発電機を準備しておく
発電機の種類も増え、家庭での利用が手軽になってきました。ガスやガソリンで発電できるものや、車内でも利用できるものがあります。USBとコンセントが挿せるものを選びましょう。置き場所として、ウォークインクローゼットを選ぶ方もいます。
家庭用蓄電器や太陽光発電(ソーラーパネル)、発電機などを備えておく
家庭用蓄電器や蓄電池を備える方も増えており、太陽光発電システムと同時に導入することが多くなっています。内見際に使える電気の量を把握しておくと、家電選びのヒントになりますね。家庭用蓄電器や蓄電池のある家だと安心です。
家庭用蓄電器や蓄電池は、据え置き型で大型になります。頑丈で家庭用蓄電器や蓄電池、太陽光発電ソーラーパネルなどの設備が整っている物件は人気が高いので、心配な方は早めにチェックしましょう。
また発電機の種類も増え、家庭での利用も手軽になってきました。ガスやガソリンで発電できるものや、車内でも利用できるものがあります。USBとコンセントが挿せるものを選びましょう。なお、大きい発電機を用意する場合、置き場所としてウォークインクローゼットを選ぶ方もいます。
太陽光発電(ソーラーパネル)
太陽光発電(ソーラーパネル)があると、停電時には心強いでしょう。発電した際の電力が残っていると、停電時にも利用できます。太陽光発電によっては、ブレーカーと運転切り替えをしてコンセントに挿すなどの必要がありますので、取扱説明書を読んでおいてみてください。
モバイルバッテリー
最近では、モバイルバッテリーを何本も持っている方も多く見るようになりました。スマホだけでなく、上着や毛布につないで暖をとる製品も販売されています。しかし、移動中に充電される方は車中爆発する危険性があるので、持って降りるようにしましょう。
モバイルバッテリーは、USBで使えるランタンやライト、扇風機などにも利用可能です。USB電源で稼働するグッズは、意外と増えています。防災用品をそろえる際には、供給電源や互換性、収納しておく場所も視野に入れてください。
デスクトップPCとUPS(無停電電源装置)を接続しておく
無停電電源装置UPSも以前は商業用製品が主流でしたが、手軽に利用できる小型製品が増えています。これらの製品は家庭にも備えておけますが、職場にも備えておくといいかもしれませんね。
無停電電源装置と書くと難しく感じますが、停電時にパソコンのデータの紛失を防ぐリスクを減らす優れものです。テレワークが進んでいる現代での必須グッズといえます。編集中の家族の大切な写真データなども、停電から守ってあげましょう。
カセットコンロ使用や乾電池で動く冷暖房機を用意しておく
カセットコンロを使わない理由に、収納できないことが挙げられることも多いのですが、カセットコンロを第二のコンロにして日常使いする方法もあります。それはできないと思う方は、キッチンのシンク下や床下収納にするなど工夫を行ってみてください。
比較的安価で乾電池によって動くクーラーもあり、充電式の冷風器やミニクーラーとして販売されています。冬は電気がなくても、昔ながらの電池で動くファンヒーターや灯油ストーブなどもあります。
停電で起こりうる主な事故
停電時に起きる事故には、主なもので火災や一酸化炭素中毒などが挙げられます。もちろん、足元が見えにくいため躓いてケガをすることや、低体温症や熱中症などにも気を付けなくてはなりません。年代によっては、家族の温かい配慮が必要になります。
通電火災
停電は、通電火災の原因になります。配線や設備に何かが起きたときに、電力復帰させると火災が発生することもあるのです。電化製品の近くに燃えやすいものが落ちて、通電時に引火することもあります。怖いのはガス引火ですが、雨などの水分も火災の原因になるので注意が必要です。
ろうそく火災
ろうそく火災は引火するのはもちろんですが、水分があるろうそく立てを使用し、芯が飛び散って火災になる例が報告されています。停電時にはろうそくを使うことも多いため、目を離さず消すときは水で消すことはやめましょう。
転倒事故
夜に停電が起こると、暗闇に目がある程度慣れるまで真っ暗なことが多いです。そのため、転倒事故には注意しましょう。
また停電になっても点く非常用の中にはいつもと違う電気の供給減から切り替わるときに、警告音が鳴るものもありますが、焦って転倒しないよう移動しましょう。
一酸化炭素中毒
一酸化炭素中毒は、寒い冬場に換気をしないでガスを燃やしているときや、火災の起きたときのストーブの不完全燃焼などで起こります。窓が複数あったり、24時間換気システムのある住宅選びをすることで、換気できる安心な状態を作ることが可能です。
熱中症
夏場に停電した場合、温度・湿度・無風が原因で熱中症となる危険性があります。停電時に天候が許す際には窓をあけ風を通しましょう。服装を薄着や軽装にして、体の熱を逃がす工夫をしてください。水道が出る場合は、体を水につけて冷やすのもおすすめです。
部屋に窓が2つある場合は風を通しやすく、時間によって開ける窓も変えられます。風が通る道をイメージしながら、お部屋選びができると素敵ですね。さらにバルコニーがあれば、雨が降っていても窓を開けられるかもしれません。
防災士が答える!停電中ありがちな不安・心配ごと
停電中の不安として、冷蔵庫の中のものやスマホのバッテリー、エアコンはどうなるのなどの質問をうけることがあります。断水する可能性もあることを知ったみなさんは、トイレの水が流せない不安も出てくると思いますので、合わせて記載します。
トイレの水は普段通り流せる?
残念ながら流せないうえに、さらに溢れてくる可能性もあります。停電時に水が出ない状態でそれらを片づけることは非常に困難であるため、簡易トイレがおすすめです。タンク式トイレは、水を足せば流せることはありますが、いったん様子を見てからにしましょう。
離れ離れになっているお子さまが、自宅で過ごせるように工夫することも重要です。例えば、クイズでトイレは停電でも使える?などの工夫で、断水するかもしれない・溢れるかもしれないことを伝え、簡易トイレの使い方を家族で練習するのもおすすめです。
冷蔵庫の中身はどうしたら良い?
冷蔵庫の中の食べ物も気になりますよね。もちろん、生もの、傷むものから食べましょう。冷凍物は意外とすぐには溶けないので、クーラーボックスに入れて氷代わりに利用するのも手です。冷凍食品の中には自然解凍で食べられるものもあるので、注意書きで判断しましょう。
スマートフォンのバッテリーを少しでも長持ちさせるには?
モバイルバッテリーを準備できていないときは、電力会社の情報などを入手したら電源を切ってしまうのも手です。復旧の様子を見ながら、可能な限り残バッテリーを使わず乗り切るしかありません。低電力モードやバッテリーセーバーを使いながら、必要最低限の情報をとりましょう。
画面の明るさを低くすることも、電池の消耗を防ぎます。家族などでいる場合は、それぞれのスマホを順番に利用することも可能です。停電地域にいない家族などに情報を伝えて連絡係になってもらうと、情報も安心も入手できます。
なお、アルミホイルを巻くと電波を遮断するといいますが、電話と通信の電波が別の場合はどちらかの遮断しかできないことがあるので、普段の生活ができている今の状態で一度試しておくといいですね。大きな災害時は充電カーが回ってきますので、活用しましょう。
オートロック物件のドア開閉はできる?
オートロック付きの物件の場合、施錠される場合があります。非接触型キーを使っている場合にはそれが使えなくなることがあるため、お手持ちの鍵を使って出入りすることも多くなります。常に鍵本体も持っておくようにしましょう。
解錠されるタイプの場合、いつもよりセキュリティに気を付ける必要があります。広域に防犯カメラが作動していない場合もあるので、住人以外の出入りに目を光らせましょう。エレベーターが動かない場合は、夜中の階段の昇り降りなどにも気を付けましょう。
停電があっても落ち着いて対処しよう
災害時の停電は怖いものです。しかし、一番怖いのは停電ではなく、慌てた行動や知識のない行動です。あなたを守ってくれるのは「強い住宅」「防災グッズ」「知識ある行動」だと私は思います。
丈夫な建物、風を通せる窓、備えたものを使いやすく保管できる収納スペース、停電でも使える設備など、そこにご自身でプラスした防災に役に立つグッズをそろえて、災害が起きても何とかなる・何とかできる人になりましょう。