賃貸物件では物件の立地や家賃、室内を確認して納得の上で契約しますが、どうしても完璧に確認できないものがあります。それは”お隣さんがどのような人か”ということです。
昨今は個人情報の兼ね合いもあり、隣人がどのような方なのかということを知る術は基本的にありません。場合によっては、様々な嫌がらせを受けてしまうことも考えられます。
しかし、どのような隣人であれ嫌がらせをするにはそれ相応の理由が存在しています。そこで今回は賃貸物件で隣人から嫌がらせを受けたとき、その原因と対処方法について解説いたします。
現在、賃貸物件で嫌がらせに悩んでいる方も、これから賃貸物件に住もうと思っていて不安な方にも有益な情報ばかりです。ぜひ最後までお読みください。
隣人の嫌がらせを受けるきっかけになってしまう原因
賃貸物件において隣人が嫌がらせを受けたとき、何の理由も原因もなく嫌がらせが始まる、ということはあまり考えにくいです。逆にいえば、何か理由があるから嫌がらせという行為を通じて是正を促している、と捉えることができます。
主に知らず知らずにうちに、誰かに迷惑をかけてしまっていることが大きな原因として考えられますので、いくつか原因として考えられることを確認しましょう。
また、賃貸物件であっても自分の家であっても、自分は何も思わなくとも違う人からみると迷惑に思われることも考えられます。賃貸物件は様々な常識と感覚を持ち合わせた人たちが同じ建物内に居住している、ということを大前提として理解しましょう。
知らず知らずのうちに立ててしまっている騒音
賃貸物件は集合住宅であり、部屋と部屋が壁や柱を介して接しています。そのため、ちょっとした物音や話し声が気になるようになり、嫌がらせに発展するケースが考えられます。
騒音と言ってもかなり多数の種類のものがあります。
ドアの開閉などの生活音
ドアを開けたり閉めたりするときの「バタン」という音も、気になる人からするとストレスに感じることがあります。また、普通に歩いているにも関わらず、階下の人からは「ドタバタ歩いている」と思われることもあるでしょう。
話し声
同居されている人との話し声や、電話での話し声などもある人からすれば騒音になります。音量の問題もありますが、時間帯によっては静かに話していても騒音と捉えられてしまうかもしれません。
音楽やテレビの音量
最近ではテレビのみならず、パソコンやインターネットでさまざまなコンテンツを視聴することができますが、これらの音量も騒音問題の一因です。夜間や早朝などの時間帯は音量に気を付けたり、イヤホンを利用するなどの配慮が欠かせません。
ペットの鳴き声
ペット飼育可能な賃貸物件であったとしても、全ての入居者がペットの行ったことなら何でも許せるというわけではありませんし、そもそもペットを飼育していない可能性もあります。しつけの問題もあり解決は難しいですが、可能な限り静かに過ごせるような配慮を心がけましょう。
子どもの生活音
赤ちゃんの泣き声や、子どもたちが走り回る音なども、時間帯や程度によっては騒音トラブルの引き金になるものです。
深夜に家事をすることによる生活音
普段何気なく利用している洗濯機やお風呂上がりのドライヤーも、時間帯によっては騒音と捉えられかねません。
楽器演奏
趣味や練習で行う楽器の演奏も問題になりがちなポイントです。
楽器利用が認められている賃貸物件であっても、時間帯や音量には気を付けるべきです。また、そもそも認められていない賃貸物件のときは、状況によっては契約解除などの扱いを受けるかもしれません。
楽器を演奏しようとするときは、事前に楽器の演奏が可能かどうかを確認しておくのが良いでしょう。
共用部の使い方に問題がある
「騒音」という形でお部屋の中における使い方に原因が考えられるほか、廊下やバルコニーの共用部分の使い方が原因になることも考えられます。
具体的な例を確認していきましょう。
バルコニーにゴミを放置している
バルコニーは専用的に使用する権利がある「共用部分」です。このバルコニーに大量のゴミを放置していたりすると、隣人よりクレームが発生することがあります。
ゴミは悪臭の原因となるほか、害虫発生の原因にもなり衛生的に決して褒められるものではありません。さらに、バルコニーは火災が発生したときの避難通路としても利用することが一般的です。そんなときに通路として利用できないようなことがあると、隣人からクレームが発生するのは必然といえるでしょう。
廊下に私物を置いている
共用廊下に傘やコンテナボックス、果ては植木鉢や子どもの遊び道具などを大量に置いていたりと、私物の放置も問題です。
そもそも往来の邪魔になるほか、ルールを守っていない人とみなされますので、文句を言われても仕方ない状況といえるでしょう。
駐輪場や駐車場の使い方が悪い
駐輪場や駐車場の使い方も、意外と人は見ているものです。きちんと枠線内に駐輪・駐車しているかどうか、勝手に開いている駐車場の区画に車を停めていないか、などが問題の原因となる行動といえるでしょう。
バルコニーで煙草を吸う
意外と思われるかもしれませんが、かなりの確率でクレームに発展するのがべルコニーでの煙草です。洗濯物に臭いがつくなどの理由から、かなり嫌われる行為だということを認識しておきましょう。
宅配ボックスの長期占有
大型マンションでは宅配ボックスが設置されていますが、宅配ボックスは数に限りがあるため使いたいときに使えない、ということが発生します。
宅配ボックスの種類によっては、何号室の人がボックスを利用しているかがわかります。そのため、宅配ボックスに届いた荷物をすぐに引き取らずに長期にわたって占有していたりすると、他人のことを考えない人と思われることがあるでしょう。
宅配ボックスはECサイトの普及もあって、非常に便利な存在です。また、宅配して頂ける方の負担を考えても社会的に有用な設備といえます。
便利な宅配ボックスだからこそ、ルールを守って利用しましょう。また、宅配ボックスに興味のある方は一度どのような物件があるか確認してみてください。
隣人からの嫌がらせに該当する行為の具体例
嫌がらせの原因が自分にあるとしても、妥当な方法であれば受け止め方も違いますが、ときとして嫌がらせという悪質な方法をとられることがあります。ここでは、悪質な嫌がらせと思われる行為や内容を確認しましょう。
なお、相手方の言い分に妥当性があれば良いのですが、いわれなき誹謗や中傷にはなんら屈する必要性はありません。後述しますが、嫌がらせの程度がひどい場合は別の方法で対応すべきでしょう。
自分宛てに手紙が届く
嫌がらせの内容としてはまだ控えめですが、被害を受けている人から手紙が投函されることがあります。
この場合、匿名でなされることが多いと考えられます。内容をみて思い当たることがあれば是正しておきましょう。
ただし、脅迫や身の危険を感じるような内容が記載されている場合は、迅速に後述する「隣人からの嫌がらせを受けたらどうする?」の内容を実行してください。
壁を「ドン!」と叩かれる
賃貸管理の現場から見ていて最も多いのはこのパターンです。階下の方や隣室の方から、何か事あるごとに「ドン!」とされてしまいます。
主に騒音に対する意思表示としてなされることが多いこの壁ドンですが、おおむね音がなるとほぼ同時に壁ドンされることがほとんどです。
振り返って思うところがあれば気を付けましょう。
隣人から直接文句やクレームを言われる
直接インターフォンが鳴ったり、ひどいときはドアをドンドンと叩かれてクレームを言われるパターンです。
こうなると隣人の怒りは沸点まで達していることが多いため、ドアを開けてしまうのは危険です。インターフォン越しに悪い点があれば素直に謝罪しましょう。
管理会社に過剰な要求をされる
隣人の怒りの矛先が家主や管理会社に向かうパターンがこれにあたります。家主や管理会社からすると、住みよい環境を提供したい気持ちはもちろんありますが、過剰な要求をする隣人もごくごく少数ながらいることも事実です。
中には「引っ越し費用を出せ」や「賃料を払わない」などと、法外な要求をするケースもあるようです。
隣人からの嫌がらせを受けたらどうする?
では、このような隣人からの嫌がらせを受けたときはどのように対応するのが良いのでしょうか。
相談先や対応方法を確認しましょう。
まずは適切な場所に相談をする
最も避けなければいけないことは、直接話をするということです。昨今は物騒なニュースも珍しくないように、些細なことが身の危険につながるような大きな事件に発展することも考えられます。
そういったことに巻き込まれないためにも、まずは誰かに相談することを考えましょう。
相談先①管理会社や大家さん
まずは管理会社や大家さんに相談してみましょう。
ここで重要なことは、嘘をついたり自分に非がないことを誇張したりすることです。ありのままのことを正直に伝えることを心がけてください。
自分に非があってもそうでなくとも、正直に伝えることで管理会社や大家さんはほとんどの場合、親身になって相談に乗ってくれるはずです。
特に管理会社の方へは怒りの矛先を向けるのではなく、相談することから始めてください。世の中の管理会社で入居者を敵に回して良いと思っている管理会社など存在していません。
管理会社や大家さんに状況を報告し相談することで、間に入って解決に向けて動いてもらえることがほとんどです。自分で相手と話そうと思うのではなく、管理会社や大家さんにまずは相談しましょう。
相談先②市区町村の自治体
市区町村などの行政を頼るのも良い方法です。
行政機関に頼る、というのは2つの意味があります。1つは、管理会社や大家さんが動いてくれないときの相談窓口として。もう1つは、嫌がらせによって被害を受けたときの相談窓口になります。
管理会社が動いてくれないときは、宅建協会への相談や、日本賃貸住宅管理協会への相談が適切でしょう。また、本当に隣人からの嫌がらせにより心身に被害が生じているときは、国民生活センターへの相談も可能です。
各種連絡先は以下の通りです。
<不動産ジャパン:住まいの相談窓口>
様々な行政機関の連絡先が一覧のように記載されています。国民生活センターから法テラスまで幅広く網羅されています。
https://www.fudousan.or.jp/trouble/soudan/index.html
<日本賃貸住宅管理協会:賃貸住宅に関するご相談>
平日の10時から17時限定ですが、相談をすることができます。
https://www.jpm.jp/consultation/
相談先③警察
上述した直接の訪問被害を受けているときは、警察へ必ず相談してください。
一般的に考えてですが、よほどの迷惑を被っていない限り、誰が住んでいるかわからない隣戸へ直接訪問して文句を言うというのは、少々やりすぎと言わざるを得ません。どのような人であれ、恐怖を覚えて当然でしょう。
またこのような嫌がらせ行為が夜間に起こった場合、すぐに管理会社や大家さんに繋がるとは考えにくいので、即座に警察へ連絡してください。
その後の対応ですが、管理会社や大家さんに警察に介入してもらった旨もきちんと報告するようにしてください。
それでも再三にわたって訪問して玄関先で大声で怒鳴るようなことがあれば、それはもはや立派な事件です。動画を撮影しておくなど、証拠を残すことも状況によっては必要といえるでしょう。
なお、防犯カメラの映像を入居者の立場で管理会社に閲覧を申請しても、基本的には断られます。これは個人情報保護の観点からそのように判断されるのです。
どうしても防犯カメラの映像を確認したいというときは、警察へ被害届を提出し、警察が立ち合いのもと警察がデータを受領するという形でないと確認は不可能です。一般的に防犯カメラの映像データの保存期間は2週間程度になりますので、嫌がらせ被害の証拠を抑えるためには早期の対応が必要ということを覚えておいてください。
相談先④弁護士
心身に被害がでているようであれば、弁護士への相談も検討しましょう。
そこまで悪質な嫌がらせが発生しているとき、相手方に対して抑止と損害の賠償を求めるためには弁護士が最も効果的な方法です。少なくとも弁護士から内容証明などで隣人に書面を出すだけでも、かなりの抑止力になります。
弁護士に相談するレベルか否かは個人の判断によりますが、度重なる突撃訪問で玄関先で大声を出されたり、壁ドンが頻繁に起こっているようであれば、相談しても良いレベルだと考えます。
隣人の要求を伺い、できることや譲歩できるポイントを探し実践する
これは隣人が話し合いに応じることができ、間にきちんと管理会社や警察が入ることを前提として進める内容ですが、相手方の話を聞いて対応する、という前向きな方法です。
本当に隣人に迷惑をかけている状況があるのであれば対応をすべきですし、それによって嫌がらせがなくなるのであれば、ひとまずは円満解決と言えるでしょう。
階下からの騒音トラブルであれば、床面にマットを敷いてみたり、ドアの開閉を静かにするように心がけてみたりしましょう。どうしても子どもたちが音を立てるようであればドアや戸に消音テープを貼ってみる、音楽はヘッドフォンや局所的なスピーカーで音量を調整する、バルコニーにゴミを放置せず室内にゴミ箱を設置する…など、できることはたくさんあります。
隣人の嫌がらせがひどい場合は引っ越しも検討する
隣人からの嫌がらせが酷く、大家さんや管理会社、行政機関に相談をしているものの進捗や改善がみられないときは、いっそのこと引っ越しをするというのも一つの方法です。
そもそも自宅はくつろげる場所であるべきで、自宅に帰るのが怖い、という状況になるほどの嫌がらせを受けてまでそこに住み続ける理由などありません。
また、そのような事情で引っ越しを余儀なくされるときは、管理会社にその旨も相談してみましょう。何かしらのサービスや配慮をしていただける可能性もあります。ただし管理会社から見て無理難題だととられるような要求はやめましょう。
引っ越し先候補①防音効果が期待できる物件
上述のとおり、嫌がらせの原因の多くは騒音に起因しています。そのため、防音効果が期待できる賃貸物件に移転するのがよいでしょう。
楽器演奏可能な賃貸物件であれば、建物自体に防音性能が含まれている可能性が高いほか、お住いの方々においてもある程度の音を許容してもらえるかもしれません。
引っ越し先候補②角部屋の物件・一戸建の物件
角部屋や一戸建の賃貸物件であれば、そもそも隣接している居室が少ない、もしくはいない、という可能性が考えられます。
騒音問題の火種となる隣人が少ない、もしくはいないので、非常に気楽に過ごせるのではないでしょうか。とはいえ、隣人が少ないからといって騒がしくしてよい、ということではないので、その点はご注意ください。
引っ越し先候補③ペットと一緒に暮らせる物件
ペット飼育を容認している賃貸物件であれば、ペットの鳴き声について理解が得られるかもしれません。
引っ越し先候補④棟内で他の部屋に移動する
移転したくはないが、部屋は気に入っている…という方は、棟内移動という方法もあります。家主さんや管理会社に対して、棟内移動したい旨を申し伝えておくことで、退去の予定が出たときに教えてくれることでしょう。
隣人から嫌がらせを受けたら我慢せずに、まずは相談をしよう
賃貸物件において隣人とのトラブルは無いに越したことはありません。万が一にも隣人とのトラブルに巻き込まれ、嫌がらせを受けてしまったときは、まずは相談をするようにしてください。間違っても自分一人の力で解決しようとしてはいけません。
これは自分の身を守ることも意味していますし、周りを味方につけるということも意味しています。大家さんや管理会社を味方につけて、非がない嫌がらせには正々堂々と対峙しましょう。
また、どうしてもお金がかかりますが、引っ越しを検討されるときは引っ越し先でも同じようなことにならないように、現在巻き込まれているトラブルの状況をきちんと仲介業者に伝えることも重要です。
隣人からの嫌がらせを受けることなく平和な生活を送るためにも、早期の相談と対応を心がけましょう。