新たな場所で新たな生活が始まる引っ越し。近隣とのお付き合いが大切だとは感じつつも、挨拶に行くとなるとマナーも気になり、なかなか踏み出せない…そんな方もいらっしゃるのではないでしょうか？
そこで今回は、引っ越し挨拶のタイミングや訪問方法、集合住宅、一軒家など住宅の種類に応じた挨拶先の範囲など解説していますので、引っ越し前後にぜひチェックしてみてください。
引っ越しの挨拶はしなくてもマナー違反ではない？
ひと昔前の日本では、「遠くの親類より近くの他人」ということわざがあるように、近所付き合いを大切に考え、引っ越しの挨拶はマナーとされていました。
現代では、生活の多様化や集合住宅の増加なども背景に、挨拶をしなくてもマナー違反でないケースも増えています。
例えば女性一人暮らしの場合、引っ越しの挨拶に行くことで、一人暮らしであることが知られてしまい、防犯面のリスクが高まってしまいます。また単身者向けのマンションなどで生活時間が合わず、引っ越しの挨拶自体が迷惑になるような場合も。そういったケースではマナー違反にはなりません。
逆に、引っ越しの挨拶をしておくことで、大きなメリットもあります。隣近所との無用なトラブルを回避できたり、お互いに安心を得られたり、災害時など助け合いが必要な場面でのスムーズな協力関係が築けたりします。ファミリー世帯や高齢者世帯にとっては、メリットが大きいと言えるでしょう。
それでは、どの様に挨拶に行くのがマナーなのか、次項から以下の7つのポイントに分けて解説していきます。
①引っ越し挨拶をするタイミング
②引っ越し挨拶をする時間帯
③引っ越し挨拶をすべき範囲
④第一印象を良くする引っ越し挨拶の仕方と伝えるべき内容
⑤引っ越し挨拶に伺った先が不在だった場合の対応
⑥引っ越し挨拶で渡すおすすめの手土産と金額
⑦引っ越し挨拶で渡す手土産の熨斗のかけ方
引っ越し挨拶をするタイミング
鍵の受け渡しが終わると、引っ越し自体はまだ先でも、家具の検討をするためや、水道・ガスの開栓に立ち会うためにと、新居に出向くことも増えてきます。そんな様子を、ご近所さんや管理人も気になって見ているものです。
引っ越し作業前に挨拶を済ませるのがベスト
引っ越し作業時は共有スペースである自宅前の道路や廊下、エレベーターなどを独占したり、家具や家電などの搬入で騒音を出したりすることが考えられます。引っ越し前に挨拶を済ませておくことで、当日の引っ越し作業もスムーズに行うことができるでしょう。
特に家具搬入の前に、くん煙剤で部屋の害虫予防をしたり、リフォームを行う予定がある場合などは、両隣のお宅や管理人には早めにご挨拶をして、ひと言説明をしておくことで印象も良くなります。
事前に伺えない場合は「引っ越し当日」か「翌日から1週間以内」に挨拶しよう
遠方や仕事の都合などで事前にご挨拶に伺えない場合は、引っ越し作業が終わった当日や翌日にはご挨拶に伺いましょう。
生活がスタートしていることを伝えておくと、集合住宅の場合は共有スペース（ゴミステーションやエレベーター、廊下）などで顔を合わせても気まずさがありません。遅くとも引っ越し1週間以内には挨拶しておきたいものです。
引っ越し挨拶をする時間帯
基本的には早朝や夜を避け、日中を選んだほうが良いでしょう。食事の時間帯や団らんの時間はご遠慮するのがマナーです。
引っ越し挨拶をすべき範囲
挨拶回りをすることは決めたものの、どこまでの範囲で挨拶に行くのが良いのかは、地域の慣習でも違ってきます。一般的なマナーとして、集合住宅の場合と一戸建ての場合で解説していきます。
マンション・アパートに住む予定の場合
マンションやアパートに住む場合は、自分の部屋から見て上下左右の位置にあたる部屋への挨拶が必要でしょう。左右は両隣ですから顔を合わせる回数も多くなります。
上下の部屋は、生活音が響きやすいためです。小さなお子様がいらっしゃる場合などは、騒音トラブルを回避するためにも事前にお伝えしておくと安心です。
また、管理員さんや管理組合の理事長さんにも挨拶をしておくと、地域や集合住宅内に関する役立つ情報を教えてもらえるかも知れません。
一戸建てに住む予定の場合
一戸建ての挨拶では「向こう三軒両隣」にあたるご近所さんに加え、裏のお宅にもお伺いしましょう。向こう三軒とは向かいの3軒のお宅のことです。
一戸建ての場合、長いお付き合いが考えられるケースが多いです。自治会や町内会、子ども会など地域の情報を聞いておくことができれば、新生活もスムーズにスタートさせることができます。
第一印象を良くする引っ越し挨拶の仕方と伝えるべき内容
第一印象が悪いと、その後の近所付き合いにも影響を与え兼ねません。感じの良い挨拶と、伝えておくべきポイントを知って、安心して挨拶に伺いましょう。
第一印象を良くする挨拶の仕方
まずは明るい声と笑顔が大切です。「今後よろしくお願いします」の気持ちを持ち、誠実なお辞儀も忘れずに。
また、インターフォンを鳴らすところから挨拶は始まっていますので、インターフォンのカメラで、相手からどう見えているか意識しておくことも大切です。自宅のインターフォンで確認し、ちょうど良い距離を知っておくと、訪問の際に便利です。
挨拶の際に伝えておくべき事項
引っ越し作業の日程に加え、騒音の可能性や共有スペースを利用すること、リフォームなどをする際は、そのことによってご迷惑をおかけすることを先に伝えておきます。
また、ペットを飼っている・小さな子どもが何人いるなど、トラブルの元になりそうなことは「ご迷惑をおかけしないように心がけますので」という言葉と共にお伝えすると安心していただけるでしょう。
引っ越し挨拶に伺った先が不在だった場合の対応
何かと忙しいご時世、ご挨拶に伺っても留守をされている場合もあります。そんな場合の対処法も考えておきましょう。
不在の場合は2〜3回ほど訪問してみる
お留守の場合はすぐに諦めず、訪問の時間帯を変えて何度か伺ってみます。少なくとも2〜3回は訪問するのが良いでしょう。お顔を知っているのであれば、共有スペース（ゴミステーションやエレベーターなど）でお会いした時などに、「今からご挨拶にお伺いしても大丈夫ですか？」と声をかけても良いでしょう。
ただし、急いでおられたり、疲れておられる場合もあるので、雰囲気を察して声をかけることが大切です。
2～3回ほど訪問しても不在だったら「挨拶状」と「粗品」を置いておこう
2〜3回ほど訪問しても不在だった場合には、郵便受けに「挨拶状」と「粗品」を入れて、ご挨拶に代えさせていただきましょう。粗品だけを郵便受けに入れるのではなく、挨拶状を添えることで丁寧な印象になり、何度か訪問をしたことも文面から知っていただけます。
ご挨拶状に記しておきたい事柄とは？
ご挨拶状の内容としては、何度か訪問したが、留守だったため対面での挨拶が叶わず申し訳ないというお詫びと、トラブルになりそうな事柄をさらっと盛り込んで書いておきます。
例えば、ペットを飼っている、小さな子どもが何人いる、仕事の都合で深夜や早朝に出入りをする、車いすを使っているなどです。先にさらっと伝えることで、今後のトラブル防止にも繋がります。
ご挨拶状の例文
ご挨拶状は手書きでもパソコンでも大丈夫ですが、手書きのほうがより丁寧な印象になります。また、封筒は白封筒を使用するのが無難でしょう。簡潔で丁寧な文章にまとめることが大切です。
＜例文1＞
| はじめまして。ご不在のようでしたので書面でのご挨拶にて失礼いたします。 〇月〇日に〇〇〇号室に引っ越して参りました〇〇と申します。 現在、子ども一人と夫婦の家族三人で暮らしております。 子どもが〇歳のため、騒音などご迷惑をおかけすることもあると思いますが、 少しでも気になることがあれば、ご遠慮なくお知らせください。 気持ちばかりではございますが、ご挨拶の品を一緒に入れさせていただきました。 ご笑納くださいませ。 これからお世話になります。どうぞよろしくお願いいたします。 |
＜例文2＞
| はじめまして。〇月〇日に〇〇号室に引っ越して参りました〇〇と申します。 何度かお伺いしましたがお留守だったため、ポストに投函させていただく失礼をお許しください。引っ越し作業の際はお騒がせし、申し訳ございませんでした。 心ばかりでございますが、ご挨拶の品を入れさせていただきました。 今後ともよろしくお願いいたします。 |
良好な関係を築くため「よろしくお願いします」という気持ちをこめて書くことで、印象も良くなります。
引っ越し挨拶で渡すおすすめの手土産と金額
引っ越しの挨拶では、今後よろしくお願いしますという意味合いで、相手が負担に感じない程度の手土産を持参するケースがほとんどです。
500円から1000円くらいまでの邪魔にならない日用品などがおすすめです。お菓子など食品については、好みや賞味期限の問題もあるため、あまりおすすめとは言えません。
手土産は相手が留守の場合も考えたものを選ぶようにしよう
万が一、2〜3回訪問しても会えない場合は、郵便受けに挨拶状とお土産を入れる場合があることを考慮して、最初から薄いもの（タオルやふきん、除菌シートなど）を用意すると買いなおしの手間も省けて安心です。
引っ越し挨拶で渡す手土産の熨斗のかけ方
手土産には紅白蝶結びの熨斗をかけ、上書きは「御挨拶」と、下は自分の名前（苗字）を記しておきます。それによって名前を覚えて頂けるメリットもあります。
旧居近隣への手土産の熨斗は「御礼」が適切
終わり良ければ全てよし。お世話になった旧居近隣のお宅や親しくお付き合いさせていただいた方へは、引っ越しのご挨拶とお世話になったお礼があると丁寧です。
その場合の熨斗は、上書きが「御挨拶」より「御礼」が適切となりますので、ご挨拶の品を用意する際に、転居先の熨斗と混同しないよう注意が必要です。
マナー講師の私が体験した、失敗経験と解決するために実践したこと
以前、私が住んでいた古参の住民が多いマンションでの苦い経験なのですが、上下左右のお宅にご挨拶を済ませ安心していたら、数週間後にマンションの同じフロアの方が「うちには挨拶にこなかった」とマンションの古参の住民に話し、噂になっていたことを知りました。
恥ずかしいという思いと、「マナー通りに行っていたのに…」という思いでショックでしたが、すぐに同フロアの全てのお宅に挨拶に伺いました。その後は古参の住民の方々からも受け入れてもらうことができ、そのマンションから引っ越すまで、仲良く快適に暮らすことができました。近所付き合いの難しさを経験でき、今では良い勉強になったと思っています。
もちろん、全ての集合住宅がこの体験のように挨拶に重きを置いているわけではなく、マンションごと、アパートごとに雰囲気は変わってきます。もし不安であれば、上下左右以外にも挨拶を検討してみてはいかがでしょうか。
引っ越し挨拶を済まして、新居での生活を気持ちよくスタートさせましょう
手土産の用意や挨拶に伺う時間の捻出など、手間に感じる引っ越し挨拶ですが、近隣トラブルなどが発生してしまうと生活している間ずっと悩まされ続けてしまうことにもなりかねません。引っ越し挨拶を気持ちよく済ませて、新居での新生活をスタートさせたいものです。