木造住宅に対して「騒音が気になる」「地震に弱い」など、ネガティブなイメージを持っている人も多いでしょう。しかし近年では、建築技術が向上しているため、性能の良い木造住宅が多く建てられています。
今回は、木造住宅の種類やメリットについて詳しく解説していきます。この記事を読むことで、木造住宅が理由で候補から外れていた物件を、あらためて検討できるでしょう。
木造住宅とは?

木造住宅とは、壁や柱などの主要な部分の建材に、木材を利用した住宅を指します。日本では、古来より木造住宅が主流です。その理由として、木材は通気性や吸湿性に優れているため、日本の高温多湿な気候にマッチしていることが挙げられます。
現在でも、住宅の建築に木造が多く採用されており、賃貸住宅でも木造物件が多く建築されています。木造住宅の特徴は、以下のとおりです。
<木造住宅の特徴>
・断熱性が良い
・通気性と吸湿性に優れている
・建築コストが低い
木造住宅は火に弱い、耐震性が低いイメージがありますが、技術の発展とともに性能が良くなっています。現在では、木造ビルの建築がグローバルなブームとなっていることからも、木造住宅が注目されていることがわかります。
木造住宅の主な工法3つ
一言で木造住宅といっても、さまざまな工法があります。ここからは、木造住宅の種類を3つ紹介します。
①木造軸組み工法
木造軸組み工法は、日本で古くから採用されている工法です。木造軸組み工法とは、木材の柱や梁を用いて骨組みを作り、筋交いや耐力壁で補強しながら建築する工法を指します。
木造軸組み工法のメリットとして、自由度が高い間取りを設計できる点が挙げられます。木造軸組み工法は、他の工法に比べて建築上の制限が少ないため、間取りの自由度が高いのです。
さらに柱で建物を支えているので、間仕切りの壁を抜けるためリフォームがしやすいことも、木造軸組み工法の特徴です。
②ツーバイフォー工法
ツーバイフォー工法とは、厚さ2インチと幅4インチの木製パネルを組み合わせて建築する工法です。ツーバイフォー工法は木造枠組工法とも呼ばれ、北米から伝わった工法だとされています。
ツーバイフォー工法は、柱ではなく、パネル自体が柱の役割を果たすため、強度が高いことがメリットです。そのため、木造住宅の中でも、耐震性にこだわりたい方に人気の工法だといえます。また、木造軸組み工法に比べて工期が短い特徴もあり、短期間で建築が可能です。
一方、ツーバイフォー工法のデメリットとしては、壁全体が柱の役割を果たすため、間取りの自由度が比較的低いことです。間取りに強いこだわりを持っている方には、向いていない工法といえます。
③木造ラーメン工法
木造ラーメン工法とは、柱と梁を鋼板やボルトで接合して建築する工法です。もともとは、鉄骨造で採用されていたラーメン工法を応用したものです。
木造ラーメン工法は、耐力壁や筋交いが不要なため、間取りの自由度が高いことがメリットです。また、建物の耐久性も高まる工法です。
ただし、木造ラーメン工法は特殊な工法のため、施工できる建築業者が少ないことがデメリットだといえるでしょう。
木造住宅のメリット

木造住宅には、多くのメリットがあります。代表的なものを見ていきましょう。
家賃がお手頃&駅チカの物件が多い
木造で建築されたアパートは、お手頃な家賃の物件が多く存在します。木造住宅は、鉄骨造や鉄筋コンクリート造に比べて建築費が安価なため、比較的安い家賃が実現できるのです。
さらに木造住宅は、建築できる土地の制限が少ないので、狭い土地にも建てられます。そのため、広い土地が空いていない駅チカでも、物件が見つかりやすいメリットがあります。
築浅の物件が多い
木造アパートは、大手ハウスメーカーが建築している物件が多く存在しています。大手ハウスメーカーは建材を大量発注できるため、建築コストを下げてアパートを建てられるのです。つまり、ハウスメーカーが建築した築浅物件が多いことが、木造アパートのメリットです。
またハウスメーカーは、注文住宅で培ったデザイン力や間取りの豊富さから、おしゃれな物件が多い点も特徴といえます。
独立性が高い
木造アパートは、規模が小さい建物が多い傾向があります。そのため、建物の中でも角部屋や最上階など、独立性の高い部屋が多いことがメリットです。
部屋の独立性が高いと、面している部屋が少ないので、他の部屋からの騒音によるストレスが軽減されます。また、角部屋は風通しや日当たりが良い場合が多いので、快適に生活できるでしょう。
メリットとあわせて確認したい木造住宅の注意点

木造住宅には、さまざまなメリットがある反面、気をつけるべきポイントもあります。ここからは、木造住宅の注意点を紹介します。
定められている耐用年数が22年と短い
木造住宅の耐用年数は22年と定められており、比較的短いことが注意点です。耐用年数とは、資産が本体の役割を果たすとみなされる期間です。一方、鉄骨造の耐用年数は34年と定められており、木造住宅より長く設定されています。
ただし、耐用年数は決算書類の経費計上で使用される年数のため、木造住宅が22年で使えなくなるわけではありません。実際に使用できる年数は、建物の品質や工法、規模によって異なるので、木造住宅では物件の見極めが重要だといえます。
害虫被害が発生するかもしれない
木造住宅は鉄骨造や鉄筋コンクリート造と違い、自然素材を建材としているため、害虫被害が発生するかもしれません。木造住宅で発生する害虫のひとつとして、シロアリが挙げられます。シロアリは湿度の高いところを好み、木材を侵食するのです。
そのため、木造住宅では、害虫を発生させない対策が重要です。たとえば、窓サッシの隙間など、外からの侵入経路を防ぐことを心がけましょう。また、ゴミを溜めずにこまめに捨てたり、湿気が溜まらないよう常に換気したりすることが重要です。
木造住宅に関するよくある質問

上記の注意点以外にも、木造住宅にはさまざまなネガティブな印象が聞かれます。ここからは、不動産営業歴12年の私が、木造住宅の疑問に答えていきます。
「木造住宅は音が漏れやすい」って本当?
木造住宅は音が漏れやすいという話をよく聞きますが、実際はどうなのでしょうか。
これは、「物件によって変わる」というのが正直なところです。たとえば、築年数が40年以上経っている木造住宅は、音が漏れやすい構造になっていることが多いといえます。一方で築年数の浅い木造住宅は、防音対策もしっかりしています。
このように、木造住宅は音が漏れやすいかどうか、というのは一概にはいえません。しかし、近年の木造住宅は、建築技術が飛躍的に進歩していることは間違いないといえるでしょう。
具体的には、壁の中に設置する断熱材や、壁材に使用される石膏ボードの進歩により、防音性が劇的に改善されています。また、木造住宅は上階からの足音が気になりますが、近年は遮音性の高い床材が登場しているため、足音などが気にならなくなりました。
どうしても不安なら防音対策をしよう
これは木造住宅だけに限りませんが、どうしても他の部屋からの騒音や生活音が気になることもあるでしょう。その場合は、自分でできる防音対策を行ってみてはいかがでしょうか。
防音対策の代表的なものとして、以下が挙げられます。
<防音対策の例>
・家具を防音壁代わりにする
・壁や床に防音シートを貼る
・ベッドの位置を変えてみる
・遮音カーテンを活用する
少し工夫するだけで、自分でも防音対策を行えます。防音対策についてさらに詳しく知りたい方は、こちらを参考にしてみてください。
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・隣の部屋の騒音がうるさい!家庭でできる防音対策を1級建築士が教えます
木造住宅は地震に弱い?
木造住宅は、耐震性に劣っている印象もあるでしょう。しかし、耐震基準が新しくなり、近年は建築技術が向上しているため、木造住宅でも耐震性が高い物件が多く建てられています。そのため、木造住宅だから地震に弱いとは、一概にいえません。
耐震基準の変遷と「耐震等級」や「構造」
建物を建築するための法律である建築基準法は1950年に制定され、耐震基準は1971年、1981年、2000年に大きな改正が行われました。その中でも代表的なものは、1981年6月1日以降に確認申請を受けた建物を「新耐震」と呼ぶことになった改正です。この改正により、耐震基準が大幅に厳しくなりました。
また、耐震性能を知るためには、耐震等級を理解しましょう。耐震等級は、以下のとおりに定められています。
・「耐震等級1」:建築基準法で定められた最低限の基準。震度6強から7の、数百年に一度起こる大地震に耐えうる強度を持つよう構造計算されています。
・「耐震等級2」:耐震等級1の1.25倍の耐震強度がある耐震性能。
・「耐震等級3」:耐震等級1の1.5倍の耐震強度がある耐震性能。
このように、耐震性は木造住宅という構造だけで判断せず、性能や築年数を重視することが重要だといえます。
木造住宅は寒さに弱いって本当?
木造住宅は自然素材を使用しているため、調湿性や通気性に優れています。それにより、居住環境が整いやすく、快適に過ごせる構造だといわれています。
ただし、断熱材の性能や工法によっては、鉄骨造や鉄筋コンクリート造に比べて気密性が低いことも考えられます。気密性が低いと暖房が効きにくくなるので、窓断熱シートや遮熱カーテンで対策すると良いでしょう。
木造住宅のメリットをあらためて確認したうえで、後悔のないお部屋探しをしよう
今回は、木造住宅の構造やメリットを解説しました。木造住宅のメリットは、家賃が安い物件が多いことや、独立性が高い部屋が見つかりやすいことです。木造住宅の悪いイメージにとらわれることなく、しっかり物件を見極めることで、後悔のないお部屋探しを実現しましょう。