賃貸物件選びにおいて、下がり天井はインテリアの雰囲気や使い勝手などにさまざまな影響を与えます。邪魔なものというマイナスイメージがありますが、プラスに活用されているケースも多いです。
今回は、下がり天井のメリットや注意すべきポイントについて詳しく解説します。下がり天井について知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
下がり天井とは?
下がり天井とは、言葉の通り、ほかの部分より低く下がっている天井のことです。アパートやマンションでは、キッチンや廊下の天井が下がっていたり、部屋の隅の部分だけが低くなっていたりすることがあります。
以下では、下がり天井の定義や役割、基準について解説します。
下がり天井の定義
アパートやマンション、戸建て住宅のリビングや寝室などの天井の高さは、一般的に2.3〜2.5m程度です。それに対して、部分的に低くなっている部分を下がり天井といいます。下がり天井の高さは2.0〜2.2m程度のことが多く、一般的な天井よりも0.3〜0.5mほど下げられています。
下がり天井の理由と役割
下がり天井には必ず理由があります。キッチンの排気ダクトや空調設備、上階の給排水管などを埋め込むために必要であったり、構造体の梁型を隠すためであったり、空間デザインのために下げられている場合もあります。
天井高さの法律的な基準
建築基準法により、居室の天井の高さは2.1m以上と定められています。しかし、これは一部屋の全体を平均して計算されるため、部分的であれば2.1mより低い天井も認められるのです。なかには、頭が当たるような低さの下がり天井もあります。
下がり天井と折り上げ天井との違い
下がり天井とは反対に、折り上げ天井という用語もあります。天井に高低差がある点では、下がり天井と似ています。折り上げ天井は、部屋全体の天井が一般的な高さ(2.3〜2.5m)を確保しているうえで、一部分がさらに高くなっている(折り上げられている)形態のことです。
下がり天井の種類と特徴
下がり天井にはいくつかの種類があり、それぞれ異なる理由や特徴、注意するポイントがあります。
一般的な下がり天井
一般的な下がり天井は、キッチンの排気ダクト、上階の給排水配管などを覆うために、部屋の一部の天井が低くなっています。アパートやマンションの場合、キッチンなどの水回りや廊下部分などが、下がり天井になっていることが多いです。この場合は、低い部分でも一般的に2.1m以上の高さが確保されています。
壁際の下がり天井
部屋の壁際の隅が低くなっているような下がり天井もあります。これは、鉄筋コンクリート造や鉄骨造の物件における構造体の梁型や、外へ向かうダクトが通っている部分です。下がっている範囲が狭く、空間への影響は少ないものの、ときには1.8mくらいまで低くなっている場合もあります。家具の配置などには、注意が必要です。
斜めの下がり天井
建築基準法の高さ制限の関係で、建物の外壁が斜めになっており、そのままの形で部屋の天井が斜めに下がっている場合があります。最も低い部分は、頭が当たるほどの高さになっていることもあり、ときにはユニークなデザインとして活用されていることもあります。
下がり天井のメリット
下がり天井は、構造や設備などの必要性に応じて設けられ、それがメリットになる場合もあります。
落ち着いた空間を演出できる
天井が高ければ高いほど、よいとは限りません。低い天井からは、包まれるような落ち着きを得られるため、部分的に低くなった下がり天井によって、むしろ居心地のよい快適な空間になることがあります。
空間をゆるやかに区切れる
天井が高い部分と低い部分に分けられていることで、空間がゆるやかに区切られます。例えば、リビングに対してキッチンやダイニングが下がり天井になっていると、くつろぎのスペースと調理・食事のスペースがゾーニングされて、空間がすっきりと見えます。
照明に変化を与えられる
高い天井にシーリングライト、下がり天井にダウンライトを設けるなど、光の強弱やまわり方にも変化が出ることで、バランスのよい灯りが得られます。
空間のアクセントとなり、広く見せられる
下がり天井があることで空間に変化が生まれ、全体が同じ高さになっているより、広く見える場合があります。広いスペースには高い天井がふさわしく、狭いスペースは低い天井が落ち着きをもたらします。これらの組み合わせによって、変化に富んだ豊かな空間をつくることが可能です。
下がり天井の仕上げに、木目や色付きのクロスが貼られているなど、インテリアのアクセントとしても有効です。
天井にエアコンや換気設備を設置できる
下がり天井のなかに、天井カセット型エアコンや、換気扇などが埋め込まれている場合があります。壁や天井からの出っ張りがなく、シンプルですっきりとした空間になります。
下がり天井の注意点
物件探しにおいて、下がり天井には注意すべきポイントも多くあります。
圧迫感を覚えることがある
下がり天井の部分の面積が大きかったり、極端に低くなっていたりすると、空間に圧迫感を覚えることがあります。部屋の半分以上が下がり天井になっているか、高さ2.1m以下の部分がある場合には、強い圧迫感があるでしょう。
家具や家電製品の高さに注意する必要がある
下がり天井が、家具や家電製品の置き方に影響することがあります。壁際が低くなっている場合は特に注意が必要で、家具や家電の置き方に制約があったり、エアコンを取り付ける際に邪魔になったりする場合もあります。高めの家具や家電製品を置く予定がある場合は、必ず寸法を確認しましょう。
掃除がしづらいことがある
下がり天井が複雑な形状になっていて、特に間接照明が入っている場合などは、段差部分がホコリだらけになり、掃除がしづらい場合もあります。
天井裏の配管から音がすることがある
下がり天井は、何らかの設備スペースになっていることが多いです。なかでも、上階の給排水管がある場合には要注意です。上階からの排水や水道の音が聞こえやすい場合があります。
下がり天井の賃貸物件を選ぶときのポイント
下がり天井には、さまざまなメリットと注意点があります。賃貸物件での下がり天井について、以下のポイントに注意しましょう。
必ず現地で確認をするようにする
物件情報の間取り図や写真では、下がり天井の有無や程度がわからないことがほとんどなので、必ず内見して現地を確認しましょう。圧迫感が強くないか、不自然な空間になっていないか、置きたい家具や家電製品の配置に影響はないかなどを詳しく確認し、気になる場合は下がり天井の高さ寸法を測ってみてください。
下がり天井にしている理由を確認する
下がり天井には必ず理由があるので、可能な限り確認しましょう。理由が排気ダクトや梁型であれば、見た目や家具配置の影響だけで済みます。しかし、上階の排水管が通っている場合は、音の問題が発生しやすいです。
なお、分譲賃貸などのハイグレードなマンション物件では、音の問題によく配慮されており、問題が起こりにくいといえます。
階高がどのくらいか確認する
階高とは、階〜階の高さの差です。ここから、コンクリートスラブや天井の下地、仕上げ、床仕上げを引いたものが天井の高さとなります。配管などを無理なく処理して、2.4m程度の天井高さを確保するためには、2.8m以上の階高が必要です。階高がこれより小さい場合、排気ダクトや上階の給排水配管を処理するために、多くの下がり天井ができます。
また階高が低い場合は、必要な天井高さを確保するために、天井や床を二重構造にすることが難しくなり、「直床」や「直天井」にせざるを得ないことがあります。この場合、生活音が聞こえやすくなる点に注意が必要です。
下がり天井の活用事例
本項では、下がり天井の活用事例をご紹介していきます。
キッチンの下がり天井を利用して、暖かい雰囲気の空間をつくり出す
キッチンの下がり天井部分にスポットライトやダウンライトを設置し、テーブルなどを置いてみてはいかがでしょうか。
キッチンでの作業がしやすくするとともに、暖かみのある雰囲気を演出し、家族が集まる心地よい空間をつくることができます。
リビングの下がり天井を利用して、落ち着きのあるヌック空間をつくる
リビングの一部が下がり天井となっていると「圧迫感が出てしまうかも…」と不安に思うかもしれません。しかし、そこにソファやサイドテーブル、スタンド照明などを置いて「たまり」をつくることによって、落ち着きのあるヌックのような空間を生み出すことができます。
自分だけのリラックス空間を作ってみてはいかがでしょうか。
リビングの下がり天井を書斎コーナーとして利用する
リビングの下がり天井になっている部分にデスクや書棚を設置し、ゆるやかに区切られた書斎コーナーをつくり出しています。低めの天井による「こもり感」があり、リモートワークなどの作業に集中する空間として活用することができます。下がり天井の部分に間接照明を入れて、変化に富んだ高級感のある空間をつくっている事例です。ハイグレードな高層マンションなどで、よく見られます。
下がり天井の賃貸物件も検討してみては?
下がり天井は、邪魔なものとしてマイナスに捉えられがちです。しかし、生活するうえではまったく問題がないことも多く、むしろプラスに活用されている場合もあります。ここまで解説してきたようなメリットとデメリットをよく理解して、積極的に検討してみてはいかがでしょうか。