新しくできたパートナーと同棲するためや結婚をきっかけとしたお部屋探しは、誰しも嬉しいものであり、新生活の始まりに胸が踊るものです。
しかし、パートナーを自分の部屋に招いて一緒に住まわせる「居候」となれば話は別。正しい手続きを行わないと、お部屋を追い出されることにもなりかねません。
そこで今回は、居候を受け入れるときの手続きや同居・同棲との違いについて解説します。ぜひ最後までお読みいただき、同居人が増えるときの正しい手続きとその必要性を理解してください。
居候とは
居候とは、血縁関係や必要性の有無にかかわらず賃貸借契約上に同居人として登録せずに住んでいる人のことです。家主や管理会社からすれば知らない人が住んでいるため、居候の立場は極めて不安定であり、居候の入居が発覚すると契約違反として対応を迫られることにもなりかねません。
居候と同居、同棲、ルームシェアの違い
居候に似た言葉で「同居」「同棲」「ルームシェア」というものがあります。これらは厳密にどのように違うのでしょうか。言葉の意味や定義を確認しておきましょう。
同居との違い
同居とは、血縁関係の有無にかかわらず賃貸借契約上に同居人として申請して賃貸物件に居住している人のことです。適正な手続きを経て入居しているため、その立場は契約で守られているということができます。
同棲との違い
同棲とは、血縁関係のないパートナーと生活を共にしている状態を指します。同棲している相手をきちんと賃貸借契約で同居人として申請していれば同居という関係になりますし、申請していなければ居候との違いはありません。
ルームシェアとの違い
ルームシェアとは、血縁関係の有無にかかわらず2名以上の入居者が家賃などを負担しあいながら一般の賃貸物件の一室で共同生活を営む契約形態のことをいいます。ルームシェアでは、2LDK以上の賃貸物件で1人が1部屋ずつを利用し、LDKや水回りを共同利用するような使い方が一般的です。
ルームシェアでは誰が誰とルームシェアするかを申請する必要があります。そのため、ルームシェアしている人たちは適正な申請に基づいて入居しているということができます。
勝手に居候させるのはだめ?犯罪?
何かの事情で知人などに居候をお願いされることがあるかもしれません。しかし、そもそも居候の是非は勝手に判断してよいものでしょうか?また、勝手に居候されることによってどのようなことが起こるのでしょうか。
ここでは、居候の許可について解説します。
犯罪ではないが、賃貸借契約違反になる
居候をさせること自体は犯罪ではありませんが、賃貸借契約違反に該当する可能性が非常に高い行為に当たります。なぜなら、賃貸借契約書で同居する人が増えるときは、事前に家主さんや管理会社に申請を行い承諾を得る必要があると定められているからです。
契約上で認められていない人の居住が発覚したとき、家主さんや管理会社などから是正を求められます。是正策として以下のようなことが挙げられます。
・居候を同居人として申請する
・居候に退去してもらう
・賃貸借契約が解除される
上述のとおり、最悪のケースでは賃貸借契約を解除されることも珍しくありません。くれぐれも自分の判断で居候させないようにしましょう。
申請すれば絶対に許可を得られるわけではない
是正策として同居人としての申請手続きを行うことがありますが、申請すれば必ず承認を得られるわけではない点を理解しておく必要があります。なぜなら、同居人の追加申請においても審査が行われるからです。
そのほか、ワンルームや1Kタイプのように、単身で住まうことを目的とした賃貸物件であるときも同居人の追加が認められないことがあります。
安易に居候を許可してしまうと、バレたときに取り返しのつかないことになりかねません。絶対にやめておきましょう。
自分の家に友人を正しく居候(同居)させるときの手続き
ここからは、自分の家に友人などを居候させるときの手続きや手順を解説します。正式な手続きを経て同居申請が認められるよう、必要な手続きを正しく理解しましょう。
①大家さんや管理会社に相談をする
事前に大家さんや管理会社に打診をして、同居人の追加が可能かどうかを確認します。
同居人追加の必要性や居候する人の簡単な属性などを伝え、検討してくれそうであれば手続きを進めていきましょう。
②居候する人の身分証明書などを用意する
同居人追加の手続きは原則書類で行われることがほとんどです。申請手続きでは居候する人を対象として審査が必要になりますので、居候する人の身分証明書を準備しておきましょう。身分証明書とは運転免許証・パスポート・マイナンバーカードなどの顔写真付きのものが望ましいです。
そのほか、居候する人の内容を書面に記して提出する必要もあります。書式は家主さんや管理会社が指定するものを利用するとよいでしょう。
身分証明書と申込書を合わせて提出し、家主さんや管理会社に審査をお願いし、あとは結果を待ちましょう。
③承諾を得たら、書類手続きを行う
家主さんや管理会社から承認がおりたら、書類手続きに移行します。手続きは家主さんや管理会社により異なりますが、概ね以下のような書類に署名捺印が必要です。
・賃貸借契約書
・同居人追加に関する覚書
こういった手続きは可能な限り迅速に進めることが重要です。なぜなら、承認が下りたとしても双方の合意を証する書面が締結されていなければ、その効力は発揮されないからです。とりわけ賃貸契約は書面の有無により判断することが大前提ですので、手続きは遅滞なく進めるようにしてください。
賃貸仲介歴営業歴20年の私が教える、同居人トラブルあるある
居候や同居を前提とした賃貸契約ではトラブルがつきもの。そこでここからは、賃貸歴20年の著者がよく遭遇する同居人トラブルを紹介します。
同棲や同居をお考えの人はぜひお読みいただき、入居後のトラブル防止にお役立てください。
契約書上の借主がもはや住んでいない
賃貸借契約上の借主が居住しておらず、同居人が住んでいるパターンがあります。このパターンでは、同居人が誰かによって少々判断が異なります。
同居人が親族など血縁関係があるときは一定の理解が示されます。しかし、友人など何の血縁関係もない人であるときは又貸しとみなされ契約違反となり、ほぼ契約解除になります。
万が一にもバレずに退去したとしても、退去費用の精算で借主と同居人間でトラブルになることもあります。同居人への又貸しは絶対におやめください。
1人が出ていくことになり、家賃支払いトラブルが起きる
適切に同居申請を行ったときでも、何かの理由で1人が退室するとなればトラブルになるケースがあります。それは、2人で家賃を負担することを前提にお部屋を借りていたときです。
2人で払っていた家賃を1人で支払うのは相当な負担がかかります。そのため、1人の退室をきっかけに家賃滞納が発生するなど、お金の問題で借主と同居人間でトラブルに発展するのです。
このケースでは家主さんや管理会社が介入する余地がないため、本人同士による話し合いで解決するほかありません。同居を始めるときはトラブルに至らないよう、事前にどうするかを取り決めておくのがよいでしょう。
無断での居候は絶対認めないで!
居候という言葉は最近あまり耳にすることはありません。しかし、賃貸物件の借り方も多様化しており、ルームシェアに代表されるように、複数の人が1つの賃貸物件を借りることも一般化してきています。
居候は珍しいかもしれませんが、勝手に同居人が増えるトラブルと言い換えれば、賃貸実務では珍しくありません。そのため、同居人が増えるときは正しい手続きと事前の話し合いを必ず行うようにしましょう。
また、どのような理由があっても、入居中に居候を勝手に招き入れることは絶対に避けるべきです。最悪の場合は強制的に退去させられることになるからです。借主としてのルールと契約を守り、家主さん管理会社との良い信頼関係を築いていきましょう。