土鍋で炊いたご飯は、ふっくらしていて美味しいですよね!しかし「興味はあるけど炊飯器と違って、火加減や炊き方が難しそう」「後片付けが大変そう…」などと考えている方も多いのではないでしょうか。
実は、炊飯器より美味しさが倍増する「土鍋ご飯」は、とても簡単に作れます。今回は、3年間、自宅において土鍋でご飯を炊き続けたプロの料理人である私が、実際に毎日炊いている失敗知らずの炊き方を伝授します。
さらに、土鍋でご飯を炊くことのメリットや美味しさの理由、経験者しか知らない利便性、注意すべき点など、土鍋でご飯を炊くのに必要な情報をすべてご紹介します。この記事を読むだけで、あなたの「土鍋ご飯」に対するイメージが一気に変わるでしょう。
土鍋でご飯を炊くことに興味がある方は、ぜひ最後までご覧ください。
プロの目線から土鍋でご飯を炊くことを勧める理由
料理に携わる仕事をしている立場から美味しさだけではない、土鍋の良さをご紹介します。
お米のふっくら感やツヤ感が良いから
土鍋で炊いたご飯が、炊飯器で炊いたご飯より美味しい理由は「熱伝導率の低さ」です。金属製の炊飯器の内釜に対し、土鍋の熱伝導率は約100分の1から約300分の1といわれています。つまり、火にかけたときの温度上昇がゆるやかなのです。
ふっくらとしてツヤがあるご飯を炊くコツの1つに「ゆっくりと加熱する」ことが挙げられます。土鍋は金属製の炊飯器の内釜よりも温度上昇がゆっくりになるため、ご飯を美味しく炊くことができます。
お米の仕上がりを自分好みに調整しやすいから
土鍋は、火加減を調整しながら炊きあげることができます。火力を強くして焦げをつけてみたり、火力を弱めて少しやわらかい食感になるように炊いてみたりと自由度の高い炊き方ができます。お米の仕上がりを、自分好みで調整しやすい点がメリットです。
食後の洗い物が楽チンだから
土鍋はイメージと違って、簡単に洗えます。
炊飯器の場合は、フッ素樹脂加工の釜にはじまり、内蓋やゴムパーツなど、傷をつけないようにスポンジで丁寧に洗わなくてはいけません。一方で土鍋の場合、「土鍋とフタ」の2つをゴシゴシ洗うだけで洗い物が簡単に完了します。基本的に表面は頑丈な作りなので、スポンジだけでなく、やわらかいたわしを使用することも可能です。
土鍋を洗う際は、水やお湯を貯めてこびりついたご飯をふやかしてから洗いましょう。そのとき一緒に食器も浸け込んでいれば、食器の汚れも落とすことができます。食洗機が自宅にあるご家庭なら、そのまま食器を食洗機にかけるだけで洗い物が完了するので、時短と節水が可能になります。
食洗機との組み合わせで、面倒な洗い物が簡単に片付くメリットもあるので、気になる方は食洗器が備え付けられている物件を見てみるのも良いでしょう。
炊飯器より早く炊けるから
意外と知られていないメリットとして、実は炊飯器よりも土鍋の方が早く炊きあがることが挙げられます。
一般的な炊飯器は50分〜60分ほどで炊きあがるものが多いのに対し、土鍋は蒸らし時間を合わせても30分ほどで炊きあがります。忙しい人にとっては、大きなメリットです。
炊飯器の「早炊きモード」を使うと土鍋と同じ30分ほどで炊きあがりますが、通常モードで炊いたときよりも味や食感が落ちてしまう場合が多いです。味と時短の両方の点からみると、土鍋がおすすめといえるでしょう。
翌日も美味しく食べられるから
炊飯器で炊いたご飯は、翌日に黄ばんでいたり、いやなにおいを感じる場合もあります。黄ばみは「メイラード反応」といって、ご飯に含まれる糖質やアミノ酸などが化学反応を起こして変色するもので、高い温度で長時間保温することにより起こります。また、においに関しても、長時間保温することによる雑菌の繁殖から起こるといわれているのです。
炊飯器での長時間保温によってもたらされる注意点ですが、土鍋には保温機能がないため、長時間経過しても黄ばみやにおいはまったくありません。また、フタをして保管することで保湿もされるため、翌日も電子レンジで温め直すだけで、長時間保温した炊飯器より美味しいご飯を食べられます。
炊いたお米の保管が楽チンだから
土鍋の大きなメリットとして「土鍋ごと食卓に置ける」「土鍋ごと冷蔵庫に保管できる」という2つが挙げられます。
土鍋は動かしやすいので、食卓でおかわりすることが可能です。食べ盛りのお子さまがいる家庭の場合、おかわりのたびに席を立たなくてもよくなるのでちょっとしたメリットになるかもしれません。
食べ終わったら土鍋をそのまま冷蔵庫に入れて保管することもできます。食べるときは土鍋ごとレンジで温めればればいいので、楽チンに保管することができます。
作業スペースが広くなるから
賃貸物件ではキッチンが狭いものもあり、作業効率を上げてなるべく時短で料理を作るために、少しでもキッチンを広く使いたいものです。
土鍋を使えば、炊飯器を置いていたスペースが空くので、作業スペースが広くなります。空いたスペースに盛り付け用の食器を並べてもいいですし、調理する食材を置いてもいいでしょう。キッチンを広く使えると、料理がはかどるのでとてもおすすめです。
さらに、キッチンから炊飯器を撤去することで生活感がなくなり、キッチン周りが一気にオシャレな空間に生まれ変わります。実は、私が土鍋を使いはじめた理由がこれなのです。我が家はフルオープンキッチンのため、リビング・ダイニングでくつろいでいると、キッチンにある大きな炊飯器の存在感が強かったので、思い切って土鍋でご飯を炊くことにしました。
土鍋を使いはじめると、驚くほどご飯が美味しく炊けたので、それから3年経った今も、ずっと土鍋でご飯を炊き続けています。
料理人監修、土鍋でご飯を炊くレシピ・作り方
土鍋を使いはじめた当初、プロの料理人である私も「うまくできるかな?」という不安がありました。実際、最初は何度も失敗していますが、正しいやり方やコツをつかめば簡単に美味しい土鍋ご飯を炊きあげることができます。
ここからは「3年間、土鍋でご飯を炊き続けているプロの料理人」が、実際に我が家で行っているご飯の炊き方やポイントを伝授します。必要な道具のそろえ方やプロが行う米の洗い方、水加減・火加減まで、ぜひ参考にしてみてください。
【必要なもの】道具をそろえる
まず、土鍋を準備しましょう。ネット通販やホームセンターでは「ご飯炊き専用土鍋」が売られていますが、とくに必要なく、自宅に土鍋があればそれを使用してOKです。我が家も自宅にたまたまあった土鍋を最初は使用していました。
もし、新たに買う必要がある場合は、以下の点に注意して購入しましょう。
・フタ付きであること
・一日で食べる量を逆算して土鍋のサイズを決めること
・自宅コンロがIHの場合、IH専用土鍋を選ぶこと
まず、フタ付きの土鍋でなければご飯が炊けないため、必ずフタ付きのものを選びましょう。次に、1日に食べる量から土鍋のサイズを決めます。目安は1人暮らしなら3合、2人以上なら3~5合、ファミリー世帯なら5~7合炊ける土鍋が必要です。
我が家は妻との2人世帯なので、自宅にあった口径27cm(9号)の土鍋を使用し、最大で5合炊飯しています。市販の土鍋で炊ける量としては、口径30(10号)で6合までです。
どうしても7合炊く必要がある場合は、ネット通販で入手できるので検索してみましょう。残念ながら1升炊ける土鍋は特注品以外になく、仮に作ったとしても家庭ではコンロのサイズや火力の問題もあるため、あまり現実的ではありません。
また、手元にある土鍋で何合までご飯が炊けるかですが、土鍋に洗米した米と水を入れた際、6~7割以下の容量であれば問題なく炊けます。逆に、これ以上だと吹きこぼれてしまいうまく炊けないので、参考にしてみてください。
【作り方】お米を正しく研ぐ
米の正しい研ぎ方を実践されている方は、意外に少ないのです。せっかく土鍋を使うわけですから、正しい研ぎ方もマスターしましょう。
1.計量した米をボウルに入れ、米がすべて浸るくらい水を入れる
米が一気に水を吸収するため、できれば浄水器の水を使った方がよりいっそう健康的に美味しく炊けますよ。
2.10秒ほどで2~3回かき混ぜたら、水を一気に捨てる
時間をかけてしまうと糠のにおいも吸収してしまうため、素早く水を捨ててください。スピード勝負です!
3.水を捨てたら、やさしくシャカシャカとかき回して研ぐ
一定の方向で15~20回ほど、軽く手を握った形にして米の摩擦を利用して研ぐイメージです。米をゴシゴシ研がず、あくまでやさしく研ぎましょう。
4.水を入れて白く濁った研ぎ汁を捨てる
このとき軽くかき混ぜて、底に溜まった研ぎ汁も捨てることを忘れないようにしましょう。。
5.3と4を繰り返し行う
昔と違い現在は精米技術が向上しているので、必要以上に何度も水を交換する必要はないので、ある程度繰り返せば大丈夫です。
6.米に水を浸水させる
夏場の場合は30分、冬場の場合は1時間ほど浸けるようにしましょう。
急いでいる場合は、ふっくら感は劣りますが浸水せずに炊きあげてもOKです。土鍋で浸水させると、土鍋自体の強度が下がってしまうため、浸水は別の容器で行いましょう。
7.浸水させた水を捨てる
土鍋に米を移して、必要分の水(浄水器)を入れて完了です。
最初のすすぎと浸水、そして炊くときに浄水器の水を使えば、さらに美味しく炊きあがり、健康への安心感も違います。体に入っていくものですので、可能であれば浄水器の設置もあわせて検討されてみてはいかがでしょうか?
【おいしく炊くポイント】水の分量
当たり前ですが、水の分量を間違えば美味しいご飯は炊けません。大切なのはきちんと水を計量することで、我が家の水の分量は以下の通りです。
・米2合 | 450cc |
・米3合 | 650cc |
・米5合 | 950cc |
・米1合の重さ=150g
・米1合の容量=180cc
基本的な考え方として、浸水後の水の量は米の容量の1.1~1.2倍程度です。浸水のありなしで水の量を変えるべきという人もいますが、そこまで難しく考える必要はありません。
私自身も急いでいるときなど、水の分量はそのままで浸水せずにすぐ炊いています。もちろん浸水した方が美味しく炊けるのは事実ですが、特段問題はありません。
【おいしく炊くポイント】火加減と時間
土鍋でご飯を炊く最大のポイントが火加減です。ただし、慣れれば問題はなく、タイマーがあれば失敗することもほとんどありません。ここではまず、ガスコンロでの炊き方を説明します。
1.土鍋を中火にかけ、約8~10分かけて沸騰させます。
2.沸騰したら、吹きこぼれる前に弱火にし、そのままタイマーで11分~13分火にかけます。
3.火を止めたら、蒸らすため10分間そのまま放置して完了です。
私が苦労したのは、弱火にしてから何分火にかければもっとも美味しく炊きあげられるかでした。試行錯誤して3合なら15分、5合なら12分(米が多い方が時間は短い)という結論を導き出しましたが、各家庭のガスコンロの火力や土鍋の種類によって違いますので、あくまで参考程度にしていただければと思います。
大切なことは「8~10分かけて沸騰させる」「12分~15分弱火でコトコト炊く」「10分蒸らす」の3つです。また、中火で沸騰させる際に吹きこぼれてしまったら、素早くフタを外し、吹きこぼれを止めてから弱火にして再度フタをすれば問題ありません。
土鍋で炊くご飯はIHクッキングヒーターでも作れる
賃貸物件ではIHクッキングヒーター(IHコンロ)が導入されている物件もたくさんあります。自宅がIHクッキングヒーター(IHコンロ)だからといって、土鍋ご飯をあきらめる必要はありません。
IHクッキングヒーター(IHコンロ)でも土鍋ご飯を作ることができます!しかし、IHクッキングヒーター(IHコンロ)独特の、ガスコンロとは異なる注意点もあるため、その点も含めてご説明します。
IHクッキングヒーター(IHコンロ)は火加減を数字で管理するため失敗しにくい
まず、メリットとしてガスコンロと違い、IHクッキングヒーター(IHコンロ)は火加減を数字で管理します。そのため加熱工程において、たとえば沸騰までは「8」、沸騰後は「3」といった具体的な数字で火加減を管理することが可能です。
また、タイマー機能付きのIHクッキングヒーター(IHコンロ)であれば、タイマーと同時に加熱が止まるため、失敗のリスクも軽減されます。この点はガスコンロにない大きなメリットです。
吹きこぼれしても掃除が楽チン
土鍋でご飯を炊くと、うっかり吹きこぼれてしまうことがあります。ガスコンロでは掃除が大変なのですが、IHクッキングヒーター(IHコンロ)ではサッと拭くだけできれいになるため、この点も大きなメリットといえますね。
IHクッキングヒーター(IHコンロ)の出力(火力)によって加熱時間が変わってくる
ガスコンロよりIHクッキングヒーター(IHコンロ)の方が、機種ごとの出力(火力)の差は大きくなっています。そのため、一概に加熱時間と火加減を提示できません。自宅にあるIHクッキングヒーター(IHコンロ)の出力が何kWかによって、炊きあがりまでの加熱時間が変わるのです。
私の肌感覚では、ガスコンロよりもIHクッキングヒーター(IHコンロ)の方が、炊きあがりまでの加熱時間は長くなる傾向があると感じています。したがって、自宅がIHクッキングヒーター(IHコンロ)の場合、何度か試行錯誤しながら炊く必要があるため、この点には注意が必要です。
もちろん「中火で沸騰させる」「弱火でコトコト炊く」「火を止めて蒸らす」の原則は同じであるため、炊き方さえ一度わかれば、火力と時間を数字で管理できる分、ガスコンロよりも失敗のリスクは小さくなります。
IHクッキングヒーター(IHコンロ)での土鍋ご飯は十分に可能です。メリットもあれば注意点もありますが、美味しく炊くためにもぜひチャレンジしてみましょう。
土鍋でご飯を炊く際の注意点
土鍋でご飯を炊くには、注意点もあるので知っておきましょう。あとで「こんなはずじゃなかった!」とならないためにも、土鍋ご飯の注意点をご紹介します。
冷めたら電子レンジなどで温め直す必要がある
炊飯器と違い土鍋には保温機能がなく、ご飯が冷めたら温め直さなければなりません。保温機能がないからこそ、翌日も黄ばみやにおいなどなく美味しく食べられるのですが、温め直しが人によっては注意点と感じることもあるでしょう。
基本的に私は土鍋本体ごと電子レンジで温め直しますが、冷蔵庫から出した土鍋は冷たく、さらに量が多ければそれなりの時間(3~5分)がかかるため、この点は注意が必要です。
炊きあがるまでそばで見ておく必要がある
当たり前ですが、土鍋には炊飯器にあるタイマー機能などがありません。そのため、予約機能を使って外出中にご飯を炊くことはできず、ご飯を炊く際は常に近くにいなければなりません。
さらに、ガスコンロであれIHクッキングヒーター(IHコンロ)であれ、コンロを1つ使用することになるので、コンロが1口のみであればその間はほかの料理を作れない注意点も挙げられます。
土鍋でご飯を炊く場合はコンロが2口以上ある賃貸物件を選ぶと、効率よく料理が作れるでしょう。
慣れるまで焦がしてしまう可能性がある
ものごとに「失敗」はつきものです。プロの料理人である私も、最初の頃は何度か失敗しました。
失敗でもっとも多いのは、ご飯を焦がすことです。私は炊き込みご飯でのお焦げは嬉しいのですが、白米でのお焦げはあまり嬉しくなく、苦いだけでした。どこまで加熱すればいいかの加減が最初はわからず、気がつけば「焦げたにおい」がキッチンに充満することも多々ありました。
こればかりは何度か失敗を経験してコツをつかむしかないため、一度や二度焦がしてもあきらめずにチャレンジしましょう!プロの私ですら最初はよく焦がしていたので、失敗しても大丈夫です。
失敗しないために重要なのは、ご飯の見た目ではなく、タイマーを使って時間で管理することです。基本的に米の分量と水の分量を正しく量り、決まった手順の火力で加熱すれば、あとは時間さえ守れば焦げてしまうこと事態が減ります。
土鍋を乱雑に扱うと割れてしまう
土鍋は、金属の鍋とは違い、落としたり乱雑に扱ったりするとすぐに割れてしまいます。私も手を滑らして一度割っており、現在の土鍋は2代目です。
一生懸命美味しいご飯を炊こうと頑張っている土鍋なので、やさしく大切に扱ってあげましょう。
「土鍋でご飯」を炊飯生活にとり入れてみては?
土鍋でご飯を炊きはじめて3年がたちます。その魅力に取り憑かれた私は、二度と炊飯器でご飯を炊くことはありません!炊きたてが美味しいのは当然のこと、翌日も美味しく食べられるうえにメンテナンスも非常に楽であるため、炊飯器に戻す理由がないのです。さらにキッチンのスペースが広くなり生活感も消え、オシャレな空間に生まれ変わりました。
多くの人に知ってもらいたい「土鍋でご飯」の素晴らしさ。実際に使ってみると面倒くささなどまったくなく、それどころかQOLが一気に向上します。ぜひ、あなたも土鍋ご飯にチャレンジしてみましょう!