シングルマザー(母子家庭)にとって、毎月の生活費は大きな悩みのひとつだと思います。シングルマザー世帯は、父子家庭と比較して就労収入が少なく、生活費の負担が大きくなりがちです。
そこで今回は、シングルマザーの生活費・収入の平均や、生活費の負担を軽くするためのポイントについて解説します。生活費の負担を軽くするための手段を知り、できる範囲で取り入れて日々の生活にゆとりを持たせましょう。
シングルマザーの生活費の平均
![](https://www.housecom.jp/kurashiate/images/2022/08/pixta_17687578_M.jpg)
総務省統計局の「2019年全国家計構造調査 家計収支に関する結果」によると、18歳以下の子どもがいるシングルマザーの生活費の平均は、約19.7万円でした。
※参考 総務省「2019年全国家計構造調査 全国 家計収支に関する結果(1-12表)」
また、当たり前の話かもしれませんが、子どもが成長するにつれて生活費が増えることがわかります。特に食費や教育費などは、子どもが成長すると多くかかるというイメージがあるでしょう。
そして、子どもの人数によっても生活費は変動します。食費や教育費、通信費など、子どもが多いと毎月の支出がその分増えます。加えて、家族が増えると狭い部屋での暮らしが厳しくなると考えられることから、広い家が必要になるでしょう。
※参考 総務省「2019年全国家計構造調査 家計収支に関する結果(1-10表)」
シングルマザーの平均年間収入
![](https://www.housecom.jp/kurashiate/images/2022/08/pixta_71788742_M.jpg)
2019年全国家計構造調査によると、シングルマザーの平均年間収入は約290.5万円です。そのうち、勤務先からの収入は約206.4万円、年間可処分所得(収入のうち、自由に使えるお金)は約243.7万円でした。
※参考 総務省「2019年全国家計構造調査 家計収支に関する結果(3-12表)」
毎月の生活費の平均から単純計算で年間の生活費を割り出すと、約236.4万円です。この数字から、可処分所得と生活費がほぼ同額であるとわかります。
シングルマザーの勤務先からの平均収入を月額換算すると約17.2万円です。生活費の平均と比較すると、約2.5万円不足している状態であるため、利用できる手当などとは別で、毎月20万円ほどの収入があれば安心といえます。手当を除く収入と生活費が同額であれば、手当を将来のための貯蓄に使えます。
生活費と収入から考慮するシングルマザーの物件家賃帯
シングルマザーの就労収入は就業形態によって大きく変わります。「平成28年全国ひとり親世帯等調査結果報告」によると「正規の職員・従業員」の年間就労収入の平均は305万円、一方で「パート・アルバイト等」の平均は133万円でした。
※参考 厚生労働省「平成28年全国ひとり親世帯等調査結果報告」
とはいえ、シングルマザーの収入は就労収入だけではなく、養育費の有無や金額、受給できる給付金などによっても変動します。家賃は毎月の収入の1/3が目安とされていますが、収入が少ない場合は生活を圧迫しないように1/4を目安にしてもいいかもしれません。
【毎月の収入と家賃の目安(千円以下は切り捨て)】
毎月の収入 | 収入の1/4 | 収入の1/3 |
---|---|---|
10万円 | 2.5万円 | 3.3万円 |
12万円 | 3.0万円 | 4.0万円 |
15万円 | 3.7万円 | 5.0万円 |
20万円 | 5.0万円 | 6.6万円 |
25万円 | 6.2万円 | 8.3万円 |
ただし、極端に家賃の低い物件に住むと生活の豊かさが失われてしまうおそれがあります。どんな部屋ならストレスを溜めずに暮らせるのか、家賃と生活費のバランスを見ながら部屋探しを進めてみてください。
シングルマザーの生活費負担を抑える3つのポイント
![](https://www.housecom.jp/kurashiate/images/2022/08/pixta_88948080_M.jpg)
生活費の負担を抑えるポイントは主に以下の3つです。
・公的制度を利用する
・固定費を見直す
・家計簿をつけて、無駄な変動費を削減する
上記の3点を意識し、生活に取り入れられそうなものがあればぜひ実践してみてください。
①シングルマザー向けの支援・公的制度を活用する
公的制度を利用することで生活費の一部を補填することができます。ただし、自治体によって利用できる制度が異なる点に注意が必要です。
基本的に、公的制度は申請しないと利用できません。以下に代表的なものを紹介していきますが、自治体独自の支援制度もあるため、今住んでいる自治体の制度を確認することをおすすめします。
シングルマザー向けの代表的な支援・公的制度
シングルマザー向けの代表的な支援・公的制度を3つご紹介します。
・児童扶養手当
児童扶養手当は、18歳未満の児童がいる母子家庭・父子家庭を対象とした制度です。支給額は児童数や受給者(母または父)の所得によって変動します。
【支給額(令和4年4月以降)】
児童数 | 全額支給 | 一部支給 |
---|---|---|
1人 | 43,070円 | 43,060円から10,160円 (10円刻みで変動) |
2人 | 10,170円を加算 →53,240円 | 10,160円から5,090円を加算 (10円刻みで変動) |
3人以上 | 一人増加するごとに6,100円を加算 →59,340円(3人) | 6,090円から3,050円を加算 (10円刻みで変動) |
【所得制限限度額(令和4年7月現在)】
扶養数 | 全部支給 | 一部支給 | 扶養義務者・配偶者・孤児等の養育者 |
---|---|---|---|
0 | 490,000円 | 1,920,000円 | 2,360,000円 |
1 | 870,000円 | 2,300,000円 | 2,740,000円 |
2 | 1,250,000円 | 2,680,000円 | 3,120,000円 |
3 | 1,630,000円 | 3,060,000円 | 3,500,000円 |
4 | 2,010,000円 | 3,440,000円 | 3,880,000円 |
5 | 2,390,000円 | 3,820,000円 | 4,260,000円 |
たとえば子どもが1人のシングルマザーの場合、所得が87万円未満であれば全額支給され、所得が230万円未満であれば所得に応じて手当の一部が支給されます。ただし、所得制限限度額は年によって変動する可能性がある点に注意が必要です。
所得額は、1〜9月までに請求した場合は前々年の所得、10~12月までに請求した場合は前年の所得が適用されます。
・ひとり親家庭医療費助成制度
ひとり親家庭医療費助成制度とは、母子家庭・父子家庭を対象とした医療費の自己負担額の一部、あるいは、全額を助成する制度です。この制度を利用すると、ひとり親家庭の母や父、18歳以下の子どもの医療費が助成されます。ただし、児童扶養控除の一部支給と同額の所得制限が設けられています。
自治体によって、制度の名称や助成内容などが異なるため、現在住んでいる自治体の制度を確認しましょう。
・児童育成手当
児童育成手当も18歳未満の児童がいる母子家庭・父子家庭を対象とした制度です。支給額は、児童1人につき月額13,500円です。
ただし、児童育成手当は東京都の制度であるため、別の地域に住んでいる方は利用できません。地域によっては似たような制度があるかもしれないので、一度ホームページを調べてみてください。
【所得制限限度額(令和4年5月〜令和5年5月)】
扶養親族人数 | 所得制限額 |
---|---|
0人 | 3,604,000円 |
1人 | 3,984,000円 |
2人 | 4,364,000円 |
3人 | 4,744,000円 |
4人 | 5,124,000円 |
5人以上 | 一人増すごとに380,000円加算 |
シングルマザーに限らず受け取れる、家庭を対象とした代表的な支援・公的制度
ここではシングルマザーに限らず利用できる2つの制度をご紹介します。
・児童手当
児童手当とは、対象となる児童がいる家庭を対象とした制度です。児童の年齢に応じて支給額が変動し、子どもが中学を卒業するまで支給されます。
【支給額】
対象年齢 | 支給額 |
---|---|
0〜3歳児未満までの児童 | 15,000円 |
3歳〜小学校卒業までの児童 | 第一子・第二子:10,000円 第三子以降:15,000円 |
中学生 | 10,000円 |
ただし、児童手当には所得制限があり、前年の所得が一定額以上の方は子ども1人につき月額5,000円、あるいは支給されません。
・こども医療費助成制度
こどもの医療費の一部が助成されます。ひとり親家庭医療費助成制度とは違い、親の医療費は対象とされません。また、助成内容や所得制限など、各自治体によって制度の詳細が異なるため気になる方は一度確認しておきましょう。
②固定費を見直す
生活費は固定費と変動費に分類できます。固定費は家賃や水道光熱費、通信費など毎月一定額必要になる費用のことです。固定費を見直してできる限り抑えることで、毎月の生活費の負担が軽くなります。
【固定費の見直し例】
種類 | 見直しのポイント |
---|---|
通信費(スマホ代) | 格安SIMや大手キャリアの格安プランへの変更 (ahamoやpovo2.0など) |
生命保険料 | ・公的制度で補える部分を把握し、不要な部分を解約 ・プラン内容の重複をチェック |
電気代・ガス代 | ・料金プランの見直し ・他社に乗り換える |
サブスクリプションサービス料 | 利用しなくなった、あるいは利用頻度が少なくなったものを解約 |
家賃 | ・引越し ・値下げ交渉 |
人にもよりますが、毎月の生活費から1〜3万円ほどの節約効果が見込めます。取り入れられそうなものだけでも構わないので、休日などを利用して一度固定費の見直しを行ってみてください。
最も大きな固定費である家賃を見直す場合に考慮したい物件条件
節約を考える際、家賃の支払いは大きな悩みの種のひとつです。家賃が安い家に引越すと数万円単位の節約が可能になりますが、引越しには初期費用が発生するため、ある程度まとまったお金を用意しなければなりません。
引越しを考える際に考慮したいポイントは以下の4つとされています。
・敷金、礼金なし
・インターネット無料
・更新料無料
・値下げ交渉可
敷金は、主に物件の退去時にかかる原状回復の費用に充てられるため、特に何もなければ返還されます。そのため敷金なし物件の場合、退去時に原状回復のための費用を請求されます。一方、礼金は物件の所有者にお礼として支払うお金で、基本的に返ってくることはありません。
敷金・礼金は、それぞれ家賃の1〜3ヶ月ほど初期費用としてかかることが多いです。とはいえ、敷金・礼金なし物件もあるため、初期費用を抑えるために敷金・礼金なし物件も探してみてください。
また、インターネット回線がすでに準備され、さらに無料で使用できる物件もあります。そのような物件を選ぶと、通信費のうち、インターネット回線の使用料が削減できます。
賃貸物件に住む場合、一定期間以上住み続けると更新料が発生する物件が多いです。更新料は家賃とは別で負担する費用で、費用は物件によってそれぞれ異なります。家賃の1〜2ヶ月分の更新料が必要になる物件があれば、更新料無料の物件もあるのでそのような物件を探してみるのもひとつの手です。
家賃や初期費用などを少しでも抑えたいと考えている方におすすめなのは、「値下げ交渉可」の物件です。敷金・礼金や前家賃、仲介手数料などの初期費用を減額できれば引越しがしやすくなります。また、家賃そのものを下げることに成功すると、初期費用だけではなく毎月の固定費も抑えられます。
家計簿をつけてお金を管理する
家計簿をつけることでお金の流れを把握できるようになり、無駄な支出にも気づけるようになります。家計簿をつけることはおすすめなのですが、家計簿をつけること自体を目的にすると疲れてしまい、長続きしません。家計簿をつける目的は「お金の流れを把握して無駄な支出を削減すること」であるため、この点を意識しながら家計を管理していきましょう。
・家計簿の項目を必要最低限にする
・完璧を意識しすぎない
・家計簿を見返す時間を作る
上記3点を意識すると、家計簿を継続しつつ、支出の削減という目的を達成しやすいです。また、家計簿の項目は必要最低限にすることをおすすめします。項目が多いと記入の手間が多くなり、継続が難しくなります。
なるべく短時間で済ませたい人は、「固定費」「食費」「日用品費」「特別費」「趣味・娯楽費」「交際費」「その他」の7項目で家計簿をつけてみてください。7項目でも多く感じる方は、一部の項目を「その他」にまとめると楽になります。
また、1円単位で完璧な家計簿の作成を目指すと、誤差が生じるたびにストレスを感じてしまうようになるため、支出をある程度把握することが目的と割り切ってつけることも重要です。多少の誤差は許容範囲内と考え、家計管理を楽しみながら支出の削減に努めましょう。
公的援助や節約などでシングルマザーの生活費負担を軽くしよう
シングルマザーの生活費と収入の平均を比較するとそこに大差はなく、貯蓄をする余裕がない方が多いと考えられます。子育てをしながら収入を増やすことは簡単ではなく、自由に働ける時間にも限りがあります。身体が何よりの資本なので、今回ご紹介した公的制度を利用しつつ、自分に合った節約方法を実践しながら家計管理を行ってみてください。