賃貸の地震保険は加入すべき?保険料の相場や保障内容、保険金請求のポイントとは

目次

賃貸物件を借りる際に検討したいのが、地震保険です。しかし「地震保険の保障内容がよくわからない」「賃貸は地震保険に加入する必要はないと聞いたけど本当?」など、賃貸の地震保険について疑問や不安を持っている人もいるかもしれません。

本記事では、元保険会社勤務で1級ファイナンシャル・プランナーの私が、賃貸における地震保険の保障内容や必要性をわかりやすく解説します。

被害にあった際に押さえておきたい保険金請求のポイントについても紹介するので、賃貸の地震保険を検討している人や加入するか悩んでいる人はぜひ参考にしてみてください。

賃貸における地震保険とは

賃貸における地震保険とは、地震による家財の損失を補償する保険です。

賃貸物件では建物の所有権がオーナー(不動産会社や大家さん)にあるため、居住人は建物に対して火災保険や地震保険をかける必要はありません。そのため、賃貸における地震保険では、家財のみが補償対象です。

補償対象となる家財は生活用の家財一式で、以下のようなものが含まれます。

・洗濯機

・炊飯器

・食器棚

・テレビ

・パソコン

・衣類

※一部対象とならない家財もあります

通貨や有価証券・30万円を超える宝石など、一部対象にならないものもありますが、ほとんどの家財が地震保険の対象です。

また、地震保険は単独での加入はできず、火災保険とセットで加入する必要があります。火災保険と地震保険の違いは以下のとおりです。

火災保険:火災や風災・水災・破損などによる損害を補償する(地震は対象外)

地震保険:地震による損害を補償する

地震保険を契約することで、火災保険では補償できない地震による損害を補償できます。

賃貸における地震保険の種類

賃貸における地震保険に種類はありません。契約時に設定した保険金額に基づいて、被害の度合いに応じた保険金が支払われます。

地震保険は国と民間の保険会社が共同で運営する保険のため、どの保険会社も補償内容は同じです。

賃貸の地震保険で保障される内容

地震保険は、契約時に設定した保険金額(上限1,000万円)に基づいて保険金が支払われます。支払われる保険金は、以下のとおりです。

損害の程度支払われる保険金
家財全体の時価の80%以上保険金額の100%(時価が限度)
家財全体の時価の60%以上80%未満保険金額の60%(時価の60%が限度)
家財全体の時価の30%以上60%未満保険金額の30%(時価の30%が限度)
家財全体の時価の10%以上30%未満保険金額の5%(時価の5%が限度)

地震保険は、家にある家財のうち、どの程度の家財が被害にあったかで保険金を算出します。損害にあった家財を実際に修理した費用や、再購入した費用が支払われるわけではないので、注意してください。

例えば、家財の保険金額500万円で契約している家が、地震により家財の約半分(50%)に損害を受けた場合、150万円(500万円×30%)の保険金が支払われます。

また、地震保険で補償対象となる損害は以下のとおりです。

・地震による損壊

・噴火による損壊

・地震・噴火が原因の津波による損害

それぞれについて解説します。

地震による損害

地震保険は、その名のとおり地震による損壊を補償します。想定される損失は以下のとおりです。

・地震で倒れたテレビの画面が割れた

・地震で落ちてきた食器が割れた

・地震で落ちてきた音楽再生プレイヤーが壊れた

とくに、パソコンなどの精密機器は見た目が大丈夫でも、地震の衝撃によって機能に異常が出る場合もあります。地震後は、いつも通り動くかを確認してみてください。

また、地震による火災も補償対象です。料理中で火を使っている際に地震が起き、家財が燃え移ってしまった場合の損失などを補償できます。

噴火による損壊

実は、地震保険は噴火による損失も補償可能です。噴火が起きやすい地域に住んでいる人は、ぜひ地震保険への加入を検討してみてください。

地震・噴火が原因の津波による損害

地震や噴火による津波も補償対象となります。東日本大震災のように、地震が原因の津波によって流された家財も補償可能です。

賃貸の地震保険は加入すべき?

今まで地震保険の補償内容を説明しましたが、賃貸の地震保険は加入すべきなのでしょうか?賃貸の地震保険に加入すべき理由を解説します。

家財の修理・購入費用は高額になる

地震で被害を受けた場合、家具の復旧・購入費用は高額です。東日本大震災で被災者生活再建支援制度を申請した人の約50%は、家電や家具・寝具の購入などに50万円以上のお金をかけています。

50万円以上の損失に備えたいのであれば、地震保険に加入すべきでしょう。

家に住めなくなった場合にはさまざまな費用がかかる

地震の被害により賃貸物件に住めなくなった場合、家具の復旧・購入費用以外にも、引っ越し費用や新しい家を借りるまでのホテル代、新居の敷金や礼金などさまざまな費用が発生します。

これらの費用すべてを自己負担するには、かなりの金額が必要です。資金に余裕がない人は、地震保険への加入をおすすめします。

賃貸の地震保険における保険金請求のポイント

では、賃貸の地震保険に加入していて地震の被害にあった場合、どのような対応が必要なのでしょうか?賃貸の地震保険における保険金請求のポイントを解説します。

壊れた家財は必ず写真を撮る

壊れた家財は動かさずに、その場で写真を撮りましょう。保険金請求時には、家財が地震によって損害を被ったことを証明する必要があります。

そのため、地震によって家財が壊れた現場を写真で撮るようにしてください。地震が起きた際にはパニックに陥りがちですが、一度冷静になって現場写真を保存することが重要です。

壊れた家財は破棄しない

保険会社が保険金査定をする際には、調査員が自宅に訪問して壊れた家財を確認する場合があります。そのため、損害が出た家財は破棄せずに、家に残しておきましょう。調査員が自宅を訪問した際に、家財が壊れた際の写真と実際に壊れている家財の実物を見せてください。

被害にあった旨を保険会社に伝える

保険金は、自分で請求しなくては受け取れません。被害にあった際は、保険会社や保険代理店に連絡を入れましょう。インターネットで被害申請ができる場合もあるので、電話などがつながりにくい際はインターネットでの申請も検討してみてください。

審査結果に満足できない場合は相談する

調査員による保険金査定の結果「明らかに家財が壊れているのに損壊なしと判断された」「しっかりと査定してもらえなかった」などの場合には、保険会社や代理店に再審査を依頼しましょう。

それでも調査結果に納得できない場合は、日本損害保険協会が運営する「そんぽADRセンター」に相談してみてください。そんぽADRセンターは、損害保険会社とのトラブルが解決しない場合の紛争解決の支援を行っている機関です。

賃貸の地震保険でかかる保険料・相場

地震保険料は、建物の所在地と構造・保険金額によって決まります。損害保険会社による保険料の違いは原則ありません。

東京都における地震保険料の例は、以下のとおりです。

建物の構造地震保険の保険金額年間保険料
鉄骨/コンクリート100万円2,750円
鉄骨/コンクリート500万円1万3,750円
鉄骨/コンクリート1,000万円2万7,500円
木造100万円4110円
木造500万円2万550円
木造1,000万円4万1,100円

鉄骨・コンクリート造より、木造の方が保険料は高くなります。都道府県によって保険料は異なるため、保険会社が提供する保険料シミュレーターなどでぜひ計算してみてください。

賃貸の地震保険でかかる料金を抑える方法

保険会社による地震保険料の違いはありませんが、契約期間や建物の建築年・性能などによって割引の適用が可能です。

賃貸の地震保険にかかる料金を抑える方法を解説します。

長期契約を結ぶ

長期契約をすれば、地震保険料の割引を受けることが可能です。地震保険の保険期間は通常1年ですが、最長5年まで保険期間の延長ができます。保険期間ごとの係数は以下のとおりです。

保険期間係数
2年1.90
3年2.85
4年3.75
5年4.65

※2021年1月1以降契約

1年契約の年間保険料が1万円の場合、5年契約にすれば保険料は4万6,500円(1万円×4.65)となります。

建物の性能や建築年による割引を活用する

建物の性能や建築年によっては割引を適用可能です。地震保険で適用できる割引は、以下の4種類となります。なお、割引の併用はできません。

割引対象建物(割引要件)割引率
建築年割引1981年以降に新築された建物10%
耐震等級別割引一定の耐震等級を有している建物10~50%
免震建築物割引免震建築物の基準に適合する建物50%
耐震診断割引一定の耐震基準を満たす建物10%

最大50%もの割引を適用できるので、住んでいる建物が割引対象になるかをぜひ確認しましょう。

また、割引を適用できる物件は、地震による被害を受けにくい物件とも言えます。ぜひ新たに物件を探す際には、地震保険料の割引が適用できる物件かもチェックしてみましょう。

免震構造の住まいを見る

エリア別に物件を探す

Powered by

耐震構造の住まいを見る

エリア別に物件を探す

Powered by

築年数30年以内の住まいを見る

エリア別に物件を探す

Powered by

賃貸でも加入すべき地震保険の重要性を理解しよう

賃貸の地震保険に加入すれば、万が一の際にかかる高額な家具の修理・購入費用を補償できます。資金に余裕のない人ほど、地震保険の重要性は高いです。

また、地震保険は物件の建築年や性能によって、割引を適用できます。ぜひ物件探しの際には、地震保険料の割引を適用できるかも確認しながら、自分に合う物件を探してみてください。