賃貸物件を契約する際には、前家賃を含めた初期費用が必要です。入居日次第では、家賃の3〜5ヶ月分の初期費用が必要になるため、金銭的負担が大きくなります。契約時に、初期費用に前家賃が含まれる理由が分からないという方も多いのではないでしょうか。
今回は、前家賃を支払う理由や、実際に必要な費用をシミュレーションで紹介します。この記事を読めば、前家賃を支払う理由が分かり、スムーズな賃貸契約ができます。これから賃貸物件を探す方は、ぜひ参考にしてみてください。
前家賃とは

前家賃とは、入居する日の翌月分の家賃を指します。賃貸契約の初期費用に、前家賃が含まれる物件は多いです。
例えば、4月〇日に入居する場合、契約時に4月分の日割りと合わせて、5月分の家賃を支払うことになります。さらに初期費用だけでなく、入居してから毎月支払う家賃にも、前家賃が採用されているケースがあります。つまり、当月〇日までに、翌月分の家賃を支払う物件が一般的です。
次章では、前家賃を取り入れている物件が多い理由を解説します。
前家賃を支払う理由
初期費用で前家賃を支払う理由は、いくつかあります。ここでは、前家賃を支払う2つの理由を解説します。
①家賃滞納リスクを防ぐため
大家さんの中には、家賃収入で生計を立てている人も多いです。そのため、家賃の滞納により収入が得られない場合、生活に大きく影響します。
初期費用で数ヶ月分の家賃を支払えば、大家さんとしては家賃滞納の不安がなくなります。少なくとも数ヶ月分の家賃を確保することで、早期で退去するリスクが軽減するからです。
例えば、前家賃なしで入居してもらった場合、数ヶ月の滞納で「退去通告」をしなければいけません。大家さんとしては、せっかく入居してもらったのに再度入居者を募集する必要があるため手間がかかります。
また、入居者としても「初期費用で高いお金を払ったから頑張って家賃を払おう」という気になるため、初期費用としての前家賃の支払いは必要です。物件によっては翌々月分を前家賃として請求されるケースがあるため、契約前に確認しておきましょう。
②毎月の支払いサイクルに合わせるため
家賃の支払いサイクルで多いのは、翌月分を当月に支払うケースです。これは「翌月も物件に住みます」という入居者の意思表示とも言えます。
家賃は、家を借りて住む際に大家さんに支払う住宅使用料です。大家さんとしては、前家賃が支払われた時点で「来月も住んでくれる」という安心感を得られます。
なお、退去するまでは次月の家賃を支払い続けることになります。契約時に初期費用として前家賃が必要なのは、毎月の支払いサイクルに合わせるためとも言えるでしょう。
前家賃はいくらするの?

前家賃の支払額には相場がありません。一般的には、翌月の家賃1ヶ月分くらいです。物件によっては、翌々月分までの2ヶ月分が初期費用として必要になるケースもあります。ここでは、入居日別の前家賃を含めた初期費用のシミュレーションを紹介します。
4月3日に家賃7万円の物件に入居した場合
4月3日に入居した場合の一般的な初期費用は、以下のとおりです。
【4月3日に入居した場合の一般的な初期費用】
初期費用の項目 | 費用 |
---|---|
4月分日割り家賃(4月3日~4月30日までの28日分) | 65,300円(10円以下切り捨て) |
5月分家賃(前家賃) | 70,000円(0円のケースあり) |
敷金(1ヶ月分) | 70,000円 |
礼金(1ヶ月分) | 70,000円 |
仲介手数料 | 77,000円 |
火災保険費用(1年間) | 20,000円 |
保証会社への保証料(家賃の80%の場合) | 56,000円 |
合計 | 428,300円(358,300円) |
※共益費、駐車場代は除く
4月の上旬に入居するため、日割り分のみが初期費用となるケースが多いです。ただし、物件によっては、上記の表のように前家賃が必要なケースがあるため、あらかじめ確認しておきましょう。
4月23日に家賃7万円の物件に入居した場合
4月23日に入居した場合の一般的な初期費用は、以下のとおりです。
【4月23日に入居した場合の一般的な初期費用】
初期費用の項目 | 費用 |
---|---|
4月分日割り家賃(4月23日~4月30日までの8日分) | 18,600円(10円以下切り捨て) |
5月分家賃(前家賃) | 70,000円 |
敷金(1ヶ月分) | 70,000円 |
礼金(1ヶ月分) | 70,000円 |
仲介手数料 | 77,000円 |
火災保険費用(1年間) | 20,000円 |
保証会社への保証料(家賃の80%の場合) | 56,000円 |
合計 | 381,600円 |
※共益費、駐車場代は除く
このケースでは、4月の下旬に入居するため、日割り分と5月分の前家賃が必要です。入居日が月の上旬と下旬では、同じ物件でも初期費用が大きく変わります。引越し見積りなどで、比較してみるのがおすすめです。
前家賃を支払う必要がない物件はあるの?
多くの物件では、初期費用の支払いに前家賃が必要です。しかし、フリーレント物件では、前家賃がいらないケースもあります。
フリーレント物件とは
フリーレント物件とは、一定期間の家賃が無料になっている物件のことです。家賃の1〜2ヶ月分が無料になっている物件が多く、物件によっては3ヶ月分のケースもあります。
もちろん前家賃も発生しないため、初期費用を大きく抑えられます。フリーレント物件に住むメリットは、初期費用を抑えられるだけではありません。
フリーレント物件に入居するメリット
フリーレント物件に入居する大きなメリットは、初期費用の負担が軽減されることです。ほかにも、以下のようなメリットがあります。
<フリーレント物件に入居するメリット>
・引越しを自分のペースでできる
・家賃の二重払いが防げる
・浮いたお金を家具や家電の購入費用に充てられる
通常の賃貸契約では、入居日に引越しを行う方が多いでしょう。家賃発生日が入居日になるケースが多いため、早めに引越しをしないと家賃がもったいないと感じるからです。
しかしフリーレント物件なら、最初の1〜2ヶ月分の家賃が必要ないため、あわてて引越しをする必要がありません。家賃の発生日までに引越しをすれば良いため、気持ちにゆとりが持てます。
さらに、フリーレント期間を利用して、家賃の二重払いを防ぐことが可能です。例えば、退去する物件の契約が3月30日まで残っている場合、2月20日に新たな物件の契約を行います。2月20日〜3月30日までフリーレント期間となる物件を選ぶことで、その間の家賃が発生しません。
浮いたお金で、新しい家具や家電の買い替え費用に充てられるため、新生活が充実します。
フリーレント物件に入居前に確認すべき注意点
フリーレント物件に入居する前には、確認しておくべき注意点が2つあります。
<フリーレント物件に入居前に確認すべき注意点>
・途中解約による違約金の有無を確認する
・相場と比較して家賃が妥当かどうか確認する
フリーレント物件には、契約期間による違約金を設定しているケースがあります。例えば、以下のような内容です。
2ヶ月分の家賃をフリーレントにする代わりに、2年間の契約が必要。万が一、2年以内に退去した場合、違約金として家賃の2ヶ月分が発生する。 |
フリーレント期間が終了してすぐに入居者が退去してしまうと、大家さんは損をします。また、まれに「家賃が高いから空室が埋まらず、フリーレントにしている」というケースもあります。その場合、フリーレント期間が終わると、相場よりも高い家賃を払い続けることになるため、大きな負担です。あらかじめ、類似物件の相場を比較しておきましょう。
前家賃と一緒に支払う必要のある初期費用の種類

ここでは、前家賃と一緒に支払う初期費用の種類を3つ紹介します。どんな費用の支払いが必要になるのか、確認しておきましょう。
敷金・礼金
敷金や礼金は、家賃の1〜2ヶ月分が必要なケースが多いです。敷金は、入居者が家賃を滞納した場合や、退去時の原状回復費用など(入居者による故意過失の破損などの場合)に充てられます。礼金は、大家さんへの謝礼金と考えましょう。
ただし、物件によっては前家賃の支払いが必要になる代わりに、敷金礼金が無料になっている「ゼロゼロ物件」もあります。初期費用の負担を抑えるために、探してみるのもおすすめです。
仲介手数料
仲介手数料は、不動産会社に支払う手数料です。不動産仲介会社が契約の仲介をすることで、手数料の支払いが発生します。金額は賃料の1ヶ月分(消費税別)で、支払い方法は以下の3パターンがあります。
<仲介手数料の支払い方法>
・大家さんが不動産仲介会社に1ヶ月分払う
・入居者が不動産仲介会社に1ヶ月分払う
・大家さんと入居者が0.5ヶ月分ずつ折半して、不動産仲介会社に払う
よくあるケースは、入居者が不動産仲介会社に1ヶ月分支払うパターンです。物件によっては大家さんが支払うケースもあり、その場合は仲介手数料が無料になっているケースが多いです。
賃貸物件を探す際には、仲介手数料が無料の物件を探してみましょう。
保険や保証会社にかかる料金
初期費用には、火災保険や保証会社に支払う保証料も必要です。火災保険に加入すれば、火災や台風などで、家具や衣類などの家財が被害にあっても保証できます。
さらに、近年では連帯保証人を不要にする代わりに、家賃保証会社への加入を必須にしている物件が多いです。火災保険の費用や保証料は物件ごとに異なるため、事前に確認してから契約しましょう。
前家賃を支払う理由を知って、スムーズな賃貸契約をしよう
前家賃を支払う理由が分かれば、予算を設定しやすくなり、スムーズな賃貸契約が可能です。入居日によっては、前家賃が不要なケースもあるため、覚えておきましょう。
さらに、初期費用を抑えるために、フリーレント物件を探すのもおすすめの方法です。この記事で解説した前家賃の特徴や内容を参考にして、今後の賃貸物件探しに活かしてみてください。