敷金精算でいくら戻ってくる?賃貸退去後に敷金精算書が届くタイミングや確認すべきポイントとは

目次

賃貸物件を退去する際に、敷金の返金額が気になる方は多いのではないでしょうか。返金された敷金を新たな物件の契約金に充てたり、生活費として利用できたりするため、金銭面でのメリットになります。

しかし、敷金精算の仕組みを知らなければ、返金どころか思ってもいない高額の支払いが必要になるケースがあるため注意が必要です。

そこで今回は「敷金精算の概要」や「敷金精算で戻ってくる金額」を、退去時の室内の状況別で解説します。記事の最後に解説する「敷金精算で確認すべき重要なポイント」と合わせて参考にしてみてください。

敷金の精算とは

敷金精算とは、賃貸物件を借りる際に大家さんに預けるお金のことです。家賃の滞納や、部屋の設備を故意に壊したり汚したりした場合の「保証金」の役割があります。退去時には、大家さん(管理会社)が部屋をチェックし、敷金から滞納分の家賃や修繕費用を差し引いて残額を返金するのが一般的です。

たとえば敷金として50,000円を支払った場合、入居者が退去する際に、清掃や修繕が必要な箇所があるとします。清掃や修繕にかかる費用が20,000円だった場合、大家さんは次のように敷金精算を行うことが可能です。

①敷金:50,000円

②清掃・修繕費用:20,000円

③返金額:50,000円 – 20,000円 = 30,000円

つまり、入居者には80,000円が返金される計算になります。

しかし、損傷や清掃にかかる費用が敷金の額を超える場合、追加で請求されるケースがあるため注意が必要です。清掃や修繕にかかる費用が60,000円だった場合、入居者は10,000円を追加で支払わなければなりません。

①敷金:50,000円

②清掃・修繕費用:60,000円

③返金額:50,000円 – 60,000円 = -10,000円(1,0000円の追加請求)

退去時に多額の追加費用を請求されないように、敷金精算の内容を契約時にしっかり確認しておくようにしましょう。

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敷金精算書が届くタイミング・時期

敷金精算書が大家さんから届くタイミングや時期は、ほとんどの場合退去してから1ヶ月以内が多いといえます。賃貸借契約の内容によって異なる場合がありますが、一般的な流れは以下の通りです。

1.入居者と大家さん(管理会社)による退去立会い時に修繕箇所を確認する

2.大家さんは、修繕や清掃などの費用の見積りを専門業者が算出し、敷金から差し引かれる残額を計算する

3.大家さん(管理会社)によって敷金精算書を作成する

※敷金精算書には、敷金から差し引いた費用の内訳や残代金が記載される

4.敷金精算書が完成したら、大家さん(管理会社)が入居者に送付

※送付方法は、郵送や電子メールなど

5.入居者が敷金精算書を受け取り内容を確認

6.必要に応じて記載された費用や残額について大家さんと話し合い合意する

このように、物件の状態を確認し、精算書を作成するための適切な時間を確保するために、少し時間がかかることがあります。したがって、敷金精算書が届くタイミングを退去立会い後から1ヶ月に設定しているケースが多いのです。

敷金の返金額を早めに知りたい場合は、退去の際に敷金精算書が届くタイミングを大家さん(管理会社)に確認するようにしましょう。

敷金精算の基準・ガイドライン

退去時に入居者負担となる修繕については、国土交通省が作成したガイドラインをもとに判断するようにしましょう。民間賃貸住宅の敷金精算に関するガイドラインは「契約自由の原則」に基づき、さまざまな法律に適合した内容となります。

そのため、トラブルを未然に防ぐために作られており、賃貸借契約の契約内容や物件の状況による原状回復の費用負担の決定がスムーズです。

たとえば、畳の色褪せや壁紙の日焼けなどの「経年劣化による修繕」に関しては、大家さん負担になることが記載されています。一方で入居者負担の内容は、故意や過失による窓ガラスの破損や、掃除を放置したことによるお風呂のカビなど「通常の使用を超える損耗による復旧費用」として定義してあるため、入居者の費用負担になるのが明確です。

参照:国土交通省住宅局 「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)

賃貸借契約書の内容も必ず確認しよう

国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」は、あくまでも賃貸借契約の実務上の手続きやトラブルを解決しやすくするための「基準」です。

そのため、法律や契約書に優先するものではなく、あくまで参考として活用するようにしましょう。最終的な原状回復の負担に関する判断は、賃貸借契約の内容を判断して行うのをおすすめします。

【事例】退去時の敷金精算でいくら戻ってくる?

敷金精算で返金されるのは、入居者が負担する「原状回復費用」を差し引いた残りの金額です。返金額は、賃貸契約の内容、物件の状態などによって異なります。

特に、敷金の一部を「礼金」として扱っていれば、退去時に返還されない場合もあるため、契約時に費用の内訳を細かく確認することが重要です。

ここでは、敷金精算額の事例を実際の計算に当てはめて算出します。

最小限の損傷での退去ケース

壁や床についた最小限の損傷で退去するケースで見てみましょう。

1LDK賃料50,000円の場合

敷金(賃料1ヶ月分)50,000円
修理費用▲10,000円
清掃費用▲20,000円
返金額20,000円

この場合、返金額は20,000円となります。ただし、極端に軽度な画鋲の穴や見えない程度の床の傷は通常損耗として大家さんの原状回復費用負担の可能性が高いでしょう。その場合、清掃費用の20,000円だけが必要になり、入居者への敷金返金額は30,000円となります。

中程度の損傷での退去ケース

ここでは、壁や床についた傷や汚れが「中程度」の損傷で退去するケースで見てみましょう。

1LDK賃料90,000円の場合

敷金(賃料1ヶ月分)90,000円
修理費用▲50,000円
清掃費用▲30,000円
返金額10,000円

物をぶつけたことによる壁の穴や、ペットの爪とぎ等による床の一部破損は、故意過失による破損に該当する可能性が高いため、原状回復費用は入居者負担となります。そのため、敷金返金額は10,000円となり、ほとんど戻ってきません。 

大きな損傷での退去ケース

ここでは、壁や床についた傷や汚れが大きな損傷で退去するケースで見てみましょう。

2LDK賃料100,000円の場合

敷金(賃料1ヶ月分)100,000円
修理費用▲100,000円
清掃費用▲40,000円
返金額▲40,000円

夫婦喧嘩による壁の大きな穴や、お風呂の排水溝のつまりによる水漏れで床が腐食した場合は多額の修理費用が必要です。また、これらの大きな損傷は故意過失による破損に該当する可能性が高いため、原状回復費用は入居者負担となります。上記の場合は敷金だけでは補完できないため、40,000円の追加支払いになります。

ただし、火災保険の補償対象となるケースもあるため、あらかじめ大家さんや保険会社に対象となる事故内容を確認しておきましょう。 

長期滞在後の自然損耗での退去ケース

ここでは、長期間の入居による自然損耗で退去するケースで見てみましょう。

3LDK賃料200,000円の場合

敷金(賃料1ヶ月分)200,000円
修理費用0円
清掃費用▲150,000円
返金額50,000円

通常の生活による破損や汚損による修繕費用は「自然損耗」「経年劣化」と判断されるため、敷金から差し引かれません。この場合、大家さんの原状回復を行います。

上記の場合、敷金返金額は50,000円となりますが、長期入居による感謝の意味をこめて清掃費用を大家さんが負担するケースもあります。

敷金精算後に追加請求されたケース

原状回復の状況次第では、以下のような追加請求が必要になるケースがあります。

・原状回復費用

・クリーニング費用

・ゴミの撤去費用

・未払いの家賃や光熱費

・鍵の交換費用

例えば以下のように、敷金精算による返金額が60,000円の予定が、未払い家賃や鍵の交換費用などの追加請求が発生するケースがあります。

敷金(賃料1ヶ月分)100,000円
修理費用▲20,000円
清掃費用▲20,000円
敷金精算による返金額60,000円
※ 未払い家賃▲100,000円
※ 鍵の交換費用▲10,000円
最終的な返金額▲50,000円

この場合、最終的に50,000円の追加支払いが必要になるため、注意が必要です。

清掃費用などを理由に、事前にお金を徴収されたケース

退去時だけでなく、入居時にお金を徴収されるケースがあります。この場合、原状回復(故意過失による修繕はのぞく)にかかった金額に限らず、退去時の精算はありません。

たとえば、敷金「なし」の物件で、退去時清掃費用として賃貸借契約時に家賃の1ヶ月分程度が必要なケースです。この場合、入居者による修繕が必要なければ、清掃費用の支払いは完了しているので追加の支払い等を考慮せず退去できます。

敷金なしの物件を探す際には、退去時に必要になる「清掃費用」などがないか確認するようにしましょう。

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仲介営業10年目の私が教える、敷金精算書で確認すべきポイント

ここでは、敷金精算書の内容で確認すべき3つのポイントを解説します。仲介営業10年目のプロが解説しますので、一つひとつ押さえておきましょう。

①何に対して、どのくらい引かれているのか

敷金精算では、入居者が物件を退去する際に、敷金から「家賃滞納分」や「物件の修繕費」などを差し引いた残額が返金されます。この際に、以下の3つを明確に理解することが重要です。

・差し引かれている項目

・差し引かれる理由

・差し引かれた金額

たとえば「家賃滞納額の金額は何ヶ月分あるのか」「清掃を行う箇所は部屋のどこになるのか」「修繕にかかる費用の見積もりはいくらか」などを、しっかり確認しましょう。

この確認を行うことで、適正な「返金額」かどうかを判断することができます。

②項目の内訳

敷金精算書には、敷金から差し引かれる項目の内訳が記載されていないケースがあります。そのため、引かれた金額がどのような項目に対応しているのかを詳細に把握することが必要です。

たとえば、以下の3つの項目の内訳です。

・清掃費用

・修繕費用

・家賃滞納分

それぞれの項目に金額が記載されていれば、退去する側も納得できます。しかし敷金精算書に「費用一式」などと記載されていて、引かれた金額がそれぞれどのような内容であるかが分からない場合は納得できません。

万が一、敷金精算書に項目ごとの明細が示されていない場合は、一つひとつの内訳を大家さんや管理会社に確認して、納得のいく精算となるようにしましょう。

③支払う必要のない項目の有無

敷金精算では、退去者が支払いを要求される項目と、支払いが不要な項目があります。たとえば、通常の居住に伴う自然な劣化や経年劣化は、入居者の責任ではなく大家さんの負担です。

そのため敷金精算の際には、修繕が入居者の「責任範囲内」であるかどうかを確認することが重要です。特に、修繕が必要な箇所が入居前から存在していた場合や、定期的なメンテナンスが必要なものであれば、入居者の責任ではない可能性が高くなります。この点は、入居時にあらかじめ写真を撮っていれば安心です。

トラブルにならないためにも「支払う必要がない項目の有無」は、しっかり確認するようにしましょう。

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敷金精算で後悔しないように契約書内容を確認しておこう

敷金精算時の返金額は、退去時の部屋の状況によって違いがあります。生活の中で汚れた壁や床の修繕費用、畳の取り替え費用などは、基本的に大家さんの費用負担による原状回復が必要です。

入居する賃貸物件に記載してある契約書の内容と、国土交通省のガイドラインと見比べてみておかしな点があれば大家さんや管理会社に問い合わせてみるのがおすすめです。

退去時の敷金精算で損をしないように、この記事で解説した内容をぜひ参考にしてみてください。