賃貸物件を借りる際、家賃以外に「共益費」という名目で費用を請求される場合があります。しかし、実際には何のための費用で、どのように使われているのかご存じではない方も多いのではないでしょうか。また、なかには共益費に関する記載がない物件も多く、一見お得のように思えますが、何らかのデメリットがあるようで少し心配ですよね。
そこで今回は、共益費とはどういう費用なのか、管理費との違いや相場も含めて解説します。賃貸物件を探す際に、どのように考えて物件を決めたら良いのか不安な方はぜひチェックしてみてください。
共益費とは
共益費とは、建物を維持管理するために必要な費用のことです。一般的には、エントランスやエレベーターなど居住者が共同で使うエリアや設備のメンテナンスのために使用されます。
共益費を請求されない物件もありますが、管理会社が共用部分の維持管理をしていないわけではありません。通常、家賃に共益費が含まれているということになります。
共益費と管理費の違い
共益費と同じような費用に「管理費」がありますが、具体的にどのような違いがあるのでしょうか。
管理費は、マンション内に備わっている設備やエントランスなどの共用部分の維持、管理をするために使われるお金です。これに対し、共益費は入居者が共同して使う施設や設備のメンテナンス、維持にかかる費用とされています。
管理費には、「マンションの事務処理」も含まれているため範囲が広いように思えますが、「維持に関する費用」ということに変わりなく、一般的に同じ意味で使われています。また、共益費や管理費の使い道に関して明確なルールがなく、単に家賃の一部として考えている大家も少なくありません。
共益費・管理費の使い道
マンション経営に欠かせない共益費や管理費は、主に以下のような用途・目的で使われます。
・管理人の人件費や管理会社の管理費
・共用部分(エントランスやエレベーターなど)の清掃費
・共用部分の電気代や水道代
・共用部分の備品の購入費(照明の電球や清掃用の洗剤など)
・エレベーターやオートロックなどの保守管理費
・敷地内の植栽の管理費
・共用部分にかかる火災保険料や地震保険料
・インターネット導入費
・共用部分の公租公課(固定資産税)
・町内会費
建物を維持管理するためには、さまざまな経費がかかることがわかります。もし入居しているマンションにエントランスやエレベーターがある場合、汚したり壊したりしないよう注意したいものですね。
共益費・管理費の相場料金
共益費の相場は家賃の5~10%といわれています。オートロックやエレベーターがあるマンションなどは、保守点検に費用がかかるため比較的高額になっているケースが多いです。一方、共用部分の清掃を大家さんがしているような物件は、共益費の額が低めに設定されていることも珍しくありません。
また、共益費や管理費の上限に明確な決まりはなく、大家さんや不動産会社が相場を加味して決めていることがほとんどです。ちなみに、共益費や管理費に消費税はかかりません。共益費や管理費の支払いがネックになりそうな方は、この2つの費用が相場とずれていないかチェックしながら部屋探しを進めていきましょう。
共益費込みの賃貸物件の特徴
共用部分があまりなく、清掃は大家さんが自らしているアパートのような場合、実際に費用はかかっていないと考え、家賃に共益費を含めたものとする場合があります。また共益費を想定した場合、小額なので別に請求するのも手間と考えて、家賃に含めた形で請求する大家さんも少なくありません。
共用部分の維持管理費がさほどかからないアパートの場合、共益費を含めた金額を家賃として請求するケースが多いということを押さえておきましょう。
共益費は別途で徴収される賃貸物件の特徴
共用部分の維持管理費が高めなマンションの場合、家賃に共益費を組み込んでしまうと総額が高くなり、入居者に敬遠されてしまうケースが多々あります。家賃と共益費を合算しない方が安く見えるため、大家さんによってはこれらを別に徴収することも珍しくありません。合算するかしないかは、大家さんの考え方次第といっても良いでしょう。
共益費を支払っていて良かったケース
トータルの費用がかさむため、できるなら共益費を支払いたくないと考える方も多いと思いますが、支払いをしていることで得られることもあります。
たとえば、管理会社が共用部分の維持管理をきちんとしていないと感じたとき、共益費を払っていることを理由に、共用部分の管理体制について提案できます。費用を支払っている旨を伝えたうえで話し合いを進めれば、共用部分の改善に努めてくれるでしょう。
共益費がないことでトラブルになったケース
入居者から共用部分の清掃状況改善のご要望があった際に、家賃以外の費用をもらっていない旨を伝えたうえで、「共益費を徴収していないので、清掃は入居者が自主的にしてほしい」とおっしゃる大家さんは実際にいました。
本来は共用部分の管理は大家さんがするべきだと思いますが、上記の主張を曲げることはありませんでした。内見の際、共用部分の管理状態を必ず確認していただきたいと思う理由は、こういった事例が過去にあったからにほかなりません。
共益費・管理費によくある質問や疑問
家賃とは別に共益費や管理費が請求される物件と、家賃に共益費が組み込まれている物件の2つを比べた場合、どちらがお得といえるのでしょうか。このような疑問に悩む方も多いのですが、借主にとっては前者の方にメリットがあるといえます。
敷金や礼金、仲介手数料などを算出する際に、「家賃○ヶ月分」と表示されているのをご覧になったことがあるかと思いますが、このときに違いがはっきりと出ます。
【敷金1ヶ月分の場合】
・家賃70,000円→70,000円
・家賃65,000円+共益費5,000円→65,000円
家賃と共益費だけなら、どちらの物件も毎月の支払総額は同じですが、敷金をはじめとする初期費用(礼金や仲介手数料など)が変わってくるので気をつけましょう。
共益費を支払うタイミングはいつ?
厳格なルールはありませんが、家賃と同じタイミングで共益費の支払いを済ますケースが多いです。昔は現金での支払いでしたが、今は合算して振込み、もしくは口座振替などで支払うのが一般的です。また、家賃と共益費をある程度まとめて支払いたいと希望される方も少なくありませんが、その場合大家さんや不動産会社が承諾すれば、前払いは可能です。
共益費の値下げ交渉はできる?
共益費の値下げ交渉は可能です。もちろん断られるケースもありますが、相談はできるので不動産会社経由で大家さんに交渉してみましょう。なお、共益費が低い物件を選べば交渉することもなくなるため、共益費の額も見ながら物件を探すことも忘れないでください。
共益費の支払いは拒否しても問題ない?
前述のとおり、ほとんどの大家さんや不動産会社は共益費や管理費を家賃と区別していません。したがって共益費の支払いを拒否した場合、家賃の支払いを拒否したこととして受け取られます。
賃貸借契約時に説明されることではありますが、家賃を滞納した場合、連帯保証人や保証会社へ連絡が入ります。また、3ヶ月支払いが滞ると民法上では賃貸借契約を解除できると解釈されているため、たとえ共用部分の清掃の仕方が悪いなどの理由があったとしても、共益費の支払いは基本的に拒否できないと考えておいた方が良いでしょう。
もし共用部分の管理に問題がある場合は、管理会社や不動産会社へその旨を連絡し、改善してもらうようにしましょう。
共益費とは主に共有スペースの維持のために使われるお金
賃貸物件は共同住宅なので、共用部分の維持管理には費用がかかるものと心得ましょう。また賃貸物件を内見する際には、共用部分の管理が行き届いているかをきちんと確認することをおすすめします。
共益費の相場は大体決まっているものの、物件によってかかる費用はそれぞれ異なります。賃貸物件を選ぶときには、月々の支払総額や初期費用の合計額など必ず総額を計算したうえで入居するかどうか決めるようにしてください。