お気に入りの鞄や服、カバーなどのジッパーが壊れてしまうと、ショックですよね。ここだけ直せたらまだ使えるのに…と、壊れたジッパーを眺めながら悩む方は多いのではないでしょうか。
私はこのような状況によく遭遇していましたが、DIYの知識とコツを覚えてからは、簡単な構造のジッパーなら自分で直せるようになりました。
今回は私の経験談をふまえたうえで、ジッパーの直し方について解説します。ジッパーが壊れて困っている方は、ぜひ参考にしてみてください。
ジッパー(ファスナー・チャック)の構造と壊れる原因
ジッパー(ファスナー・チャック)を自力で直すために、まずは構造と壊れてしまう原因についてご紹介します。
ジッパーの基本構造
ジッパーの構造はシンプルです。じっくり観察してみると、それぞれの部品は非常に小さく、部品ごとに重要な役割があることが分かります。


「スライダー」が「エレメント(務歯「むし」ともいいます)」をぴったりと噛み合わせる役割を担っていて、ジッパーを縫いつけるときには、テープ部分を生地に縫いつけて固定します。

エレメントには小さなフックがついていて、閉じるときはスライダーを使ってエレメントの噛み合わせ位置を固定していく構造です。開くときは、スライダーを利用してエレメントの噛み合わせを解いていく仕様となっています。歯車が嚙み合うようなイメージをすると分かりやすいのではないでしょうか。
ジッパーが壊れる主な原因
ジッパーが最初から壊れやすくなっているときもありますが、普通に使っている状況で壊れてしまう主な原因は、以下の4つです。
<ジッパーが壊れる主な原因>
・ファスナー部分の摩耗
・スライダーの破損
・布地の引っかかり
・縫いつけのほつれ
ここからは、ジッパーが壊れてしまう原因についてそれぞれ解説していきます。
ファスナー部分の摩耗
ジッパーは摩擦によって少しずつ摩耗していきます。開閉の機会が多いほど、スライダーが擦り減ったりエレメントの歯の引っかかりが弱くなったりといった現象が起きます。
スライダーの破損
開閉時に引っかかりを感じるのに、無理に開け閉めをしたり、中身を詰め過ぎた状態で無理にジッパーを閉めたりする行為は、ジッパーに過度な負荷をかけます。負荷をかけ過ぎているジッパーは破損率が高い傾向があるので、扱い方を見直しましょう。
布地の引っかかり
開閉時に生地がエレメントやスライダー部分に巻き込まれることがあります。この状態で無理に引っ張り出すと、ジッパーが破損する原因になるので注意しましょう。
スライダーの緩みやエレメントの歯の欠け、生地の破れなどは、私がこれまでに経験したことのある状態です。破損が酷い場合は、簡単に修理できなくなるため、挟まった部分を力任せに引っ張らずに、丁寧に外すことが大切です。生地がガッチリ挟まってしまった場合は、対処法を後述しますので、参考にしてみてくださいね。
縫いつけのほつれ
ジッパーそのものは使える状態であっても、テープと生地を縫いつけた部分がほつれてしまうと、常に開きっぱなしになってしまうことがあります。これは、ほつれた部分を縫い直すことで解決します。
【原因別】ジッパー(ファスナー・チャック)の直し方
ジッパーは自分で修理できることが多いです。ジッパーが壊れた原因から、直せる可能性を探ってみましょう。
スライダーが動かない場合の直し方

ジッパーのスライダー部分が硬く、動かしにくくなってしまった場合、最初に確認してほしいのは「ジッパーの見た目に異変があるかどうか」です。
<ジッパーの見た目の異変例>
・スライダーやエレメントに汚れや錆がついている
・破損箇所がある
・異物が挟まっている
ジッパーの汚れが目立つようであれば、まずは付着している汚れを落としましょう。
用意するアイテム
・汚れをふき取る布やキッチンペーパー
・綿棒
・潤滑油(ミシン油・ワセリンや無色のリップクリームでも代用可)
・ピンセットや毛抜き(ゴミが挟まっている場合)
・歯ブラシ
まずは自宅に使えそうなものがないか探してみましょう。なければ100円ショップ・ドラッグストア・ホームセンターで購入できるものばかりなので、上記のアイテムをそろえてみてください。

ジッパーのエレメントには小さな爪がついているため、毛足の長い素材でふき取ると繊維が引っかかります。汚れをふき取る際はタオルなどではなく、毛足の短い生地の使用をおすすめします。
私は使い古した綿素材のシーツを切り離し、「ウエス」として使っていますが、同様の素材の手ぬぐいやハンカチなども使いやすいです。なければキッチンペーパーでも大丈夫ですが、濡らしても破れにくい素材のほうが望ましいです。
細かい部分を掃除する際は綿棒があると、汚れを優しく落とせます。潤滑油はミシン油が扱いやすいですが、スプレータイプの防錆・潤滑剤やサラダ油を使うことも可能です。手元になければ、リップクリームでも効果があります。
ゴミを引っ張り出す際は、細かいものをキャッチしやすい毛抜きやピンセットがあると便利です。
直し方

異物が挟まっている場合は、毛抜きなどを使って静かに取り出します。
細かい部分は綿棒を使ってオイルをなじませて、大まかな範囲は布にオイルを少量つけてからふき取る作業を繰り返していきます。オイルをファスナーに数的垂らしながらふき取ってもよいのですが、ジッパー以外の場所に油染みをつけてしまわないように保護しながら行いましょう。
錆や汚れが落ちたらスライダーを動かしてみて、ジッパーの開閉具合を確認してみてください。
生地がジッパーに挟まったときの解決法

ジッパーが生地を噛んでしまって、スライダーが動かなくなってしまった場合、力任せに挟まってしまった生地を引っ張ると、ジッパーを壊してしまったり生地に穴を開けてしまったりしやすいです。この場合の直し方にはコツがあるので、焦らずに試してみてください。
用意するアイテム

・マイナスドライバー
・ニッパー
・ラジオペンチ
上記のアイテムは、100円ショップやホームセンターで購入できます。プロ仕様のものでなくても、まったく問題ありません。最近の100円ショップの工具類はかなり優秀です。
スライダーの端っこに生地が少し挟まっている程度であれば、道具がなくても回復できます。ガッチリとスライダーに生地が食い込んでしまっている場合は、「マイナスドライバー」を補助的に使うことで生地を引き出しやすくなります。ドライバーのサイズは、スライダーに差し込めるものを選びましょう。
マイナスドライバーでもうまくいかないときは、ニッパーやラジオペンチを併用してみてくださいね。
直し方

生地を噛んでいるスライダーにマイナスドライバーを差し込み、テコの原理でスライダーの開口を少し押し広げ、隙間を緩めて生地を引っ張り出しやすくします。

マイナスドライバーでうまく押し広げることができない場合は、ニッパーの先をスライダーに突っ込み、開口を少しだけ広げましょう。広げ過ぎると修復しにくくなってしまうので、本当に「少しだけ広げる」のがポイントです。

挟まってしまった生地を取り出した後は、ラジオペンチを使って広げたスライダーの開口を元に戻します。一連の作業が終わったら、ジッパーの開閉を何度か繰り返してみて、動きの具合を確認してみましょう。
歯が噛み合わないときの対処法

エレメントの歯が噛み合ってくれず、ジッパーが閉じない場合も、スライダーを少しいじる必要があります。
用意するアイテム
・ニッパー
・ラジオペンチ
上記のアイテムは、どちらも100円ショップやホームセンターで購入できます。
直し方

ニッパーでスライダーの開口を少し広げ、噛み合っていないエレメントを正しく合わせるように入れ直します。エレメントを合わせることができたら、ラジオペンチで少しスライダーを締め直し、エレメントから外れないように調整します。
緩く締めると、スライダーが外れてしまいやすくなりますし、きつく締め過ぎるとスライダーが動かなくなってしまうので、少しずつ締め直していきましょう。
閉めてもジッパーが開いてしまう場合は?
スライダーを閉める方向へ動かしているのに、エレメントが嚙み合わずに開いてしまう場合も、スライダーを調整すると直せます。
用意するアイテム
・ニッパー
・ラジオペンチ
上記のアイテムは、どちらも100円ショップやホームセンターで購入できます。
直し方
スライダーとエレメントの挟み込み部分を調整することで、調子が戻ります。ジッパーを閉めたときに、噛み合っていない場所が少しでもあると、閉めてもすぐに開きやすくなるので、必ずすべてのエレメントがピシッと閉じている状態になるまで、しっかりと調整しましょう。
縫いつけ部分のほつれを直すやり方

縫いつけ部分がほぐれてしまっている場合は、少し手芸の知識が必要になります。
用意するアイテム
手縫いで修復を試みる場合は、以下のようなものが必要です。

・縫い針(生地に合わせた太さと長さを選ぶ)
・生地に合わせた縫い糸(太さや色は既存の状態を見て決める)
・指ぬき
・クリップ
ミシンが使える状態であれば、以下のものを準備しておきましょう。

・厚地が縫えるようなパワーがあるミシンが望ましい(裾上げができるタイプなど)
・生地の厚みに合わせたミシン針
・クリップ
・しつけ糸と縫い針
上記以外にも、リッパーや目打ち、糸切ハサミなどの基本的な裁縫道具もあったほうが便利です。縫い代の調整の際に、少し解くときに使います。縫いつけ箇所を押さえるときは、可能であればアイロンで折り目をつけてからクリップを使うと、作業が進めやすいです。
直し方
ほつれの修復は、生地の素材・ほつれ具合・持っている道具によって修復できる度合いが異なります。修復範囲が広くてアイロンが使える生地の場合は、できるだけ折り目をキッチリとつけてから縫い直すと、仕上がりがキレイになるのでおすすめです。
ほつれた範囲が狭い場合は、手縫いで縫い直しましょう。ジッパーのテープと生地が重なっている部分は厚みがあるので、「指ぬき」を使わないと縫い針を差し込む際に、指を痛めてしまいます。

ミシンを使える状況の場合は、アイロンを使って折り目をつけるのはもちろん、しつけ糸で仮縫いをしてからミシンで本縫いをするとかなり縫いやすくなります。
「縫い直し」は、思っている以上に時間と労力を使いますし、見た目をキレイに直せるかも賭けになります。縫い直しは自身で着手する前に、修理をしてくれるお店へ一度相談したり、買い替えを模索してみたりするなど、金銭面と作業時間を天秤にかけて検討しましょう。
ジッパーの取り替えが必要なケース
ジッパーの各部品に損傷がなければ、自分で修復できる可能性は高いですが、一部が劣化していたり部品を紛失していたりする場合は、ジッパーそのものを交換するしか方法はありません。
<ジッパーの取り替えが必要な状態>
・エレメントの歯が欠けている(一部がなくなっている)
・スライダーが取れている
・テープが破れている
・下止めが取れている(ジッパーを正常な位置にセットできない)
ジッパーを取り替える際に必要な道具と手順
・同じサイズのジッパー
・ミシン
・生地に応じたミシン針
・生地に合わせたミシン糸
ジッパーを取り替えるためには、同じサイズのジッパーや生地に合わせた縫い糸を手芸店などで入手する必要があります。ジッパーの縫いつけには専門的な知識が必要になるため、難易度は高めです。なるべくなら、修理をしてくれるお店へ相談してみるか、商品そのものの買い替えを検討しましょう。
ジッパーを直す際の注意点と長持ちさせるコツ
ジッパーそのものを交換する場合は、プロに依頼することをおすすめします。
スライダー部分の不調を調整する程度であれば、必要な道具も少なく、費用も安く済みます。しかしジッパーの交換となると、そもそもミシンを持っていなければ作業が難しくなりますし、裁縫道具がそろっていなければ作業自体が困難です。
修理のために道具を買いそろえる場合、それなりの出費が予想されるため、買い替えたほうが安く済む可能性が高いでしょう。
注意点①修理の際の道具にこだわる必要はない
新たに買いそろえるものが少なく、手元にある道具で修理が可能な場合は、自分で修理をすることで余計な出費を抑えられます。
修理に使用する道具にこだわり、高価なものを買いそろえたとしても、ジッパーの修理に関して大きな差はありません。そのため、修理に必要な道具が手元にない場合は、道具にこだわるのではなく、できる限り低予算で済ませましょう。
注意点②ダメ元で取り組む
ジッパーの劣化の状態によっては、元通りに修復できない可能性があります。また、ジッパーの修理を自分で行う場合は、完全に自己責任となります。したがって、「直ればラッキー」「多少の見栄えは我慢できる」「ダメなら諦めて買い替えを検討する」という心づもりで、柔軟に対応しましょう。
ジッパー(ファスナー・チャック)を長持ちさせるコツ・アイテム
ここからは、ジッパーを長持ちさせるために気をつけたい、4つのコツを紹介します。今まで雑に扱っていたとしても、これから気をつけていけば、長持ちさせられるでしょう。
長持ちさせるコツ①アイロンを使うときはあて布を使う

プラスチックやナイロン製のジッパーつきのものにアイロンを使う場合は、直接アイロンの熱が伝わらないように注意しましょう。ジッパー部分に「あて布」をして、保護しながらアイロンがけを行うと安心です。
ジッパーの部品が変形してしまうと、スムーズな開閉ができなくなったり、ジッパーの交換が必要になってしまったりする可能性があります。
長持ちさせるコツ②洗濯時は閉めて洗う

洋服やクッションカバーなどを洗濯する際は、ジッパーを閉めてから洗濯ネットに入れましょう。ジッパーを開いたまま洗濯機に入れると、スライダーやエレメント部分に他の洗濯物の生地が絡まりやすく、ジッパーが傷む原因になります。また、ジッパーの寿命が縮む恐れもあるため注意が必要です。
さらに、ジッパーが他の洗濯物に引っかかると、生地のほつれや破れの原因となることもありますが、洗濯ネットを使うことでジッパーと他の洗濯物を保護できます。
このように、洗濯をするときはジッパーを閉めて、形を整えた後でジッパーを開けて干すと、乾きが早くなるのでおすすめです。
長持ちさせるコツ③負荷をかけ過ぎない
ジッパーに無理な力をかけ過ぎないように注意しましょう。ボタンやホックと併用でジッパーがついている場合は、先にジッパーから手をつけるようにすると、負荷を軽減できます。
中にものを詰めて閉める場合は、中身を奥へ押し込みつつ、ジッパーのテープ部分を引き寄せるようにしながら閉めていくようにすると、生地を巻き込みにくくなります。
長持ちさせるコツ④時々お手入れする

気になる汚れを見つけたときは、早めに取り除くようにしましょう。特に金属製のジッパーは錆がついてくることもあります。滑りをよくするには自転車のチェーンに使えるスプレータイプの潤滑材が便利ですが、換気が必要ですし、室内では作業がしにくいです。
その点、ミシン油なら安価で購入できますし、布に染み込ませて利用しやすいのでおすすめです。潤滑油を使って汚れをふき取り、歯ブラシで余分なオイルや汚れを取り除くと、びっくりするくらい動きがスムーズになります。また、ミシン油はペンチやニッパー、ドライバーの掃除にも使えます。

油の扱いに抵抗がある場合は、蠟燭の「ロウ」を刷り込んでおく方法を試してみてください。手を汚さずに防汚効果を期待できるため、長く使い続けたいもののお手入れ用品として、クローゼットなどに常設しておくのもよいでしょう。
ジッパーの直し方を理解して愛用品を大切にしよう
今回は、ジッパーの直し方について解説しました。まずはしっかりと状態を観察し、自分で対処できそうであれば、修復にチャレンジしてみましょう。
自宅にある道具で直すことができれば、想定外の出費を控えられますし、節約にもつながります。お気に入りの製品がまだ使えるようになると、気分も上がります。
ジッパーの直し方は、長く使えるお得なDIYのスキルなので、ぜひ習得してみてくださいね。