家賃の値上げは断れる?交渉ポイントや決裂した場合、賃料が変わる主な理由とは?

目次

日本の景気が良くなることで物価が上昇すると、家賃が値上げされるケースもあります。しかし、家賃が値上がりすると毎月の支払いが増えるため、金銭的に大きな負担となるでしょう。

そこで今回は、今住んでいる家賃が値上げされて困っている方や家賃の値上げに不安がある方のために、家賃が値上がりする理由や交渉にいたるタイミング、交渉に対処するポイントなどを紹介します。急な値上げ交渉があっても混乱しないように、あらかじめ理解しておきましょう。

家賃が値上がりする主な理由

家賃が値上がりすると生活費への負担が大きくなるため、困る方も少なくありません。家賃が値上がりする理由は、大きく3つあります。それぞれの理由を確認してみましょう。

家賃が相場よりも安い

理由の一つに、近隣エリアの相場と比べて家賃が安い場合があります。ほかの物件よりも極端に安い場合、相場と見合わない家賃と判断されるため、値上げが認められるのです。例として、以下の表をご覧ください。

【お住まいの物件と周辺物件の家賃比較】

お住まいの物件物件A物件B物件C物件D
家賃5万円家賃7万円家賃8万円家賃7.5万円家賃7万円

上記の表では、お住まいの家賃と周辺の類似物件を比較すると、約2〜3万円安くなっています。このように、家賃が周辺物件よりも極端に安い場合は、値上げが可能です。

建物や土地の評価・値段が上がった

不動産の価値が、社会情勢の影響などにより上昇している場合、家賃の値上がりが認められる可能性も高いです。不動産の価値が上がる理由の一つに、周辺環境の変化が大きく影響します。例えば、以下のケースです。

<不動産の価値が上がる周辺環境の変化>

・大型ショッピングモールができた

・駅の開発で交通の便が良くなった

・新しい工場や企業の進出で人口が増加した

物件周辺の利便性が良くなれば、不動産価値が上がり、人口も増加します。賃貸需要が増加すれば家賃の値上げが認められるため、家賃相場を定期的に確認しておきましょう。

物価が高くなっている

全体的に物価が上がれば、家賃も値上がりするのは当然です。物価が上昇しているのにもかかわらず、家賃が変わらない場合は、物件の価値が低いと評価されます。また、周辺の家賃が値上がりしていれば、大家さん自身が損をしていると感じるのは当然です。物価が高くなると、大家さんから家賃値上げの交渉があることを知っておきましょう。

ただし、家賃を値上げするためには、借地借家法第32条にあるような正当理由が必要です。あらかじめ、一読しておくことがおすすめです。

参考資料:借地借家法第32条

家賃が値上げされるタイミング

一般的には、契約更新のタイミングで家賃の値上げを伝えられるケースが多いといえます。大家さんにとって、入居者に対する家賃の値上げ交渉は行いにくいものです。契約更新のタイミングなら、契約内容を見直せる機会にもなるため、家賃の値上げ交渉がしやすいといえます。家賃の値上げは大家さんとの合意が必要なので、書面による通知書が届きます。

しかし、契約更新時に値上げ交渉が多いとはいえ、通知書が突然届くケースがあることを確認しておきましょう。更新までは家賃が上がらないからと安心していると、毎月の支払い負担が増えるので、痛手となります。

一方で、周辺相場よりも住んでいる物件の家賃が明らかに高い場合は、入居者側から家賃減額の交渉ができる可能性があります。

家賃の値上げには絶対応じなければいけないの?

家賃の値上げは、大家さんとの合意が必要です。つまり、お互いの合意がなければ家賃の値上げは実現しないため、拒否する権利はあります。例えば「もう少し家賃収入がほしい」「一時的にお金が必要だから家賃を上げてほしい」など、明らかに大家さん側の都合による値上げ交渉と思われる場合は、拒否する余地があるでしょう。

しかし、正当な理由による値上げ交渉があった場合は、話し合いを行うことをおすすめします。話し合いを拒否すれば、訴訟により退去を求められる恐れがあるため、値上げ交渉は慎重に判断しましょう。

家賃の値上げを言い渡されたら確認すべき3つのこと

ここでは、家賃の値上げを告げられた場合に確認する3つのポイントを紹介します。交渉内容次第では、値上げ交渉に応じなくても良いケースがあるため、覚えておきましょう。

なぜ値上げされたのか【理由の確認】

家賃値上げ交渉に対して簡単に承諾したり、頭ごなしに拒否したりするのではなく、値上げする理由や事情の確認が必要です。そして理由や事情によって、納得して受け入れるか拒否するのかを決めましょう。

法律的には以下のような「やむを得ない理由」がないと家賃の値上げができません。

・周辺の家賃相場と差がある

・建物にかかる税金が増減する

・土地や建物の価格が上昇・低下する

土地や建物の固定資産税の上昇により大家さんの支払う税金が増えたときや、物価が上がるなど「経済事情」が変動したときです。加えて、周辺の類似物件と比べて明らかに家賃が安いときも値上げを請求できます。

これらの条件は借地借家法第32条に記載があるため確認しておきましょう。

(借賃増減請求権)
第三十二条
建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。

2 建物の借賃の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃を支払うことをもって足りる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払った額に不足があるときは、その不足額に年一割の割合による支払期後の利息を付してこれを支払わなければならない。

3 建物の借賃の減額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、減額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃の支払を請求することができる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払を受けた額が正当とされた建物の借賃の額を超えるときは、その超過額に年一割の割合による受領の時からの利息を付してこれを返還しなければならない。

※参照:借地借家法第32条

また、やむを得ない理由に該当しない、自己都合の値上げ理由としては以下のようなものが挙げられます。

<自己都合の値上げ理由>

・旅行代に充てるため

・借金返済に充てるため

・車の購入代に充てるため

このようにやむを得ない理由とは言い難いケースも存在するため、値上げ交渉されたら必ず理由を確認しましょう。

周辺の家賃相場はいくらか【妥当額かどうかの確認】

まずは、本当に値上げが必要な家賃かどうかを調べる必要があります。おすすめは、ポータルサイトで類似物件の家賃と比較する方法です。以下の項目を検索して比較しましょう。

<類似物件と比較する項目>

①エリア

②間取り

③築年数

④構造

⑤駅からの距離

⑥部屋の面積

同じ条件がない場合、上記の優先順位で類似物件を比較しても構いません。物件を比較すれば、相場の家賃が分かります。例えば、周辺相場で家賃が約2万円高い場合は、値上げも同じくらいになる可能性が高いです。

家賃の値上げ金額に関しては、法律上での上限はありませんが、極端な値上げを行う際には正当な理由が必要とされています。もし明らかに相場とかけ離れた極端な値上げを求められた場合は、大家さんや不動産管理会社に値上げ理由を確認し交渉していきましょう。

なお値上げ理由の確認や交渉をスムーズに行うために、「周辺の家賃相場から値上げ額が妥当額かどうか」や「正当理由にあたるかどうか(借地借家法第32条)」などを、あらかじめ調べておくことが大切です。

契約書の内容と違いはないか【特約条項等を確認】

賃貸契約書に「一定期間の家賃値上げ禁止特約」などの内容が記載されていれば、その期間は家賃の値上げに応じなくてもよい決まりになっています。ただし、基本的には契約書に「双方協議の上」と記載されているため、大家さんが一方的に家賃の値上げをすることはできません。

つまり、大家さんと入居者が「家賃変更合意書」に記名押印を交わすことで値上げの合意となります。賃貸契約書に家賃値上げの特約事項が記載してあるかどうかを、しっかり確認しておきましょう。

大家さんに交渉する際のポイント

ここでは、家賃の値上げに対して、大家さんに交渉する際のポイントを3つ紹介します。「家賃値上げに納得できない」と思った方は、しっかり確認しておきましょう。

落ち着いて話すように心がける

値上げ交渉をされた場合、感情的にならずに落ち着いて話すようにしましょう。感情的になって口論や一方的に退去してしまうと、自分にとってデメリットしかありません。

例えば、引越し先の物件が同じ大家さんの場合、入居を拒否されることも考えられます。不動産管理会社にも「あの入居者は感情的になる」というレッテルをはられるケースもあるでしょう。値上げ交渉をされても、大人として落ち着いて話すことをおすすめします。

値上げを決めたきっかけとなる資料を見せてもらう

家賃の値上げに踏み切る際には、周辺の家賃が値上がりしている、不動産価格上昇による税金の増加など、何かしらのきっかけがあるはずです。そのため、口頭だけでなく、以下のような資料による根拠を求めましょう。

<値上げの根拠となる資料>

・不動産会社などの専門家が作成した周辺相場の家賃の比較表

・数年分の固定資産税評価証明書

・開発で大きな商業施設ができるニュースや新聞の記事

上記のような資料をしっかり確認したうえで、家賃の値上げに応じるかどうか検討しましょう。

長期的に住みたい意思を大家さんにしっかり伝える

値上げ交渉の際に、長く住み続ける意思を大家さんに伝えてみましょう。大家さんによっては、家賃を値上げして入居者に退去されるよりも、長く住み続けて家賃を払ってもらうほうがメリットになる場合があるからです。

例えば、以下のような言い方で伝えれば、大家さんも納得しやすいでしょう。

私はこのエリアに昔から思い入れがあり、ようやく見つけたこちらの物件を気に入っております。勤務先からも近いため、快適に生活できています。できるだけ長い期間住みたいと思いますので、家賃の据え置きをご検討いただけますと幸甚です。今後ともよろしくお願いいたします。

物件を気に入っているという意思を伝えれば、交渉に応じてくれる可能性が高いため、試してみましょう。

もし家賃値上げの交渉が決裂したら退去をしなければいけない?

家賃の値上げ交渉が決裂しても、退去する必要はありません。家賃の値上げは、大家さんと入居者の合意で成立するからです。さらに今までの家賃をしっかり支払っていれば、大家さんから退去を求められても交渉に応じる必要がなく、大家さんからの強制的な退去もできません。

しかし、大家さんによっては、値上げした家賃でなければ受け取らない人もいます。「値上がりした家賃を支払うくらいなら、家賃自体を支払わない」と意地をはって家賃を支払わないと、家賃滞納を理由に退去させられる恐れがあるため、注意が必要です。

法務局などの機関に家賃を預けて(供託)おけば、家賃を支払っている証明ができます。入居者が不利にならないように、供託制度があることを知っておくことをおすすめします。

と、ここまでは入居者側の目線で家賃値上げへの対処法を説明してきましたが、大家さん側の立場に立った際、家賃の値上げをせざるを得ないケースは多々あります。また入居者に渋い顔をされたい、という大家さんは存在しないものです。

お互いに譲れない部分があり、最終的に家賃交渉がうまくいかず値上がりを受け入れるしかない場合は、引越しも検討しましょう。すぐに入居できる物件や、オンラインで内見できる物件が豊富にあります。無理をして入居を続けずに、サクっと引越しできる物件を探すのも、選択肢の一つです。

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引越しを検討する前に!家賃の値上げを通じて交渉の余地ができること

値上げ交渉が決裂しても、以下のような交渉ができる可能性もあるため、覚えておきましょう。引越しを検討する前に、交渉してみるのがおすすめです。

<交渉できる可能性がある項目>

・設備を新品に交換してもらう交渉

・更新料免除の交渉

・インターネット無料か高速タイプ変更への交渉

家賃の値上げに応じる代わりに、ほかの項目でメリットを受けられるため、選択肢に入れておくと良いでしょう。しかし、必ず交渉が可能になるわけではありません。前項で説明の通り、大家さん側にも様々な家賃値上げの理由や事情があるものです。交渉の際は、それらを考慮したうえで無理のない範囲でお願いしてみましょう。

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家賃値上げの理由を確認したうえで、今後どうするかを検討しよう

賃貸物件に住んでいる以上、大家さんから家賃の値上げ交渉があるかもしれません。急な値上げ交渉に混乱しないように、この記事の内容をしっかり理解しておきましょう。値上げ交渉があっても簡単に承諾したり、頭ごなしに拒否したりするのではなく、値上げの理由を確認しておくことが重要です。

家賃が値上がりする理由を熟知したうえで、住み続けるか引越しするかを検討するようにしましょう。