多くの人が憧れる一人暮らしは、親から見れば心配ごとが多いのも事実です。社会人になるときや大学に入学するときなど、さまざまなタイミングで一人暮らしをしたいと思う人は多いでしょう。しかし、一人暮らしに親が反対をするケースは少なくありません。賃貸仲介の現場では、親が一人暮らしに反対したり、賃貸物件選びに関与したりすることも多いのです。
今回は、親が一人暮らしに反対したときの説得ポイントや、強引に一人暮らしを進めるリスクについて解説します。「なんで反対するんだろう」「どう説得すればいいんだろう」と悩む前に、事前に反対の理由や対策を知っておくと、説得がスムーズに行えます。
親に一人暮らしを反対される主な理由
親が子どもの一人暮らしに反対するには、それなりの理由があります。まずは、なぜ親が反対するのか、その理由を理解しましょう。
経済的な理由
金銭面の心配から、一人暮らしを反対されることがあります。経済的な部分が反対理由であるときは、深掘りして考えることが重要です。なぜなら、親がお金の心配をする理由によって、対応が変わるからです。
金銭面での反対理由について、考えてみましょう。
学生やフリーターなど本人の資力に心配があるケース
本人の資力に不安があるときは、親が金銭面を理由に反対することがあります。家賃が払えなくなったり、アルバイトばかりで学業に集中できなくなったりする心配があるからです。このケースでは、反対ではなく心配と捉えることにより、解決策が見えてきます。
本人に資力はあるが信用されていないケース
親がお金の使い方を問題視しているときに、金銭面を理由に反対することがあります。「一人暮らしに必要なお金は親が出してくれる」「家賃はいくら払えるかわからない」という計画性がない方は、この理由で反対されることが多いです。このケースは明確に反対されているので、相応の準備が必要になります。
親自身に資力がないケース
親が子どもの資力に依存しているときも、お金を理由に反対することがあります。子どもが一人暮らしを始めてしまうと、親の生活が立ち行かなくなるからです。
さまざまな理由が考えられるため、このケースでは話し合いをすることが重要です。お互いの状況を理解しあうことが必要といえます。
感情的な理由
親が過保護だったり、心配性だったりすると、感情的な理由で反対されることがあります。やはり親は子どものことが心配で、気にかかるものです。なお、感情的な理由には、以下のようなものが考えられます。
親が子離れできていない
親自身が子どもに対して過保護であったり、子どもの存在に依存していたりするケースです。親は子どものことを心配するものなので、当然の反応といえるでしょう。むしろ自分のことを心配してくれる親に感謝しつつ、一人暮らしの理由を明確に伝えることで、解決できると考えられます。
親が賃貸に対してあまり良い印象を持っていない
そもそも賃貸で部屋を借りることに対して、反対するパターンです。この反対理由の奥底には、賃貸に居住したことがなかったり、賃貸の連帯保証人などにマイナスな印象を持っていたり、被害に遭ったりしたことがあるケースが考えられます。
賃貸契約では、連帯保証人や緊急連絡先に親が就任することも多いため、心配は当然です。賃貸仲介会社から賃貸契約の説明があると解決しやすいでしょう。
合理的な理由
合理性を主とした反対意見も、少なくありません。一人暮らしに対する反対意見のなかでは、非常に建設的な反対意見です。しかし、自分のなかにある一人暮らしの理由が確立していれば、特に困ることはありません。具体的な反対理由を確認しておきましょう。
食生活の乱れを心配される
一人暮らしでは、何かと生活が乱れる可能性があります。そのため、コンビニ弁当ばかりになることや、外食に偏る食生活を心配するあまり、反対されることがあるでしょう。
犯罪に巻き込まれないかを心配される
特に、女性の一人暮らしに多い反対意見です。地域でいえば治安面、物件に限れば防犯設備面が懸念事項となるでしょう。この反対意見は、親のみならず、自らも向き合い対策する必要があります。
親の協力がないまま、一人暮らしを始めると苦労すること
親が反対している状態でも一人暮らしは可能ですが、感情的な部分とは別に困る場面が訪れる可能性があります。ここでは、親の協力がないまま一人暮らしを始めるリスクについて解説します。
連帯保証人を探さないといけない
賃貸契約では、連帯保証人が必要になるケースがあるため、親以外の親族から連帯保証人を探すことが求められます。原則、連帯保証人は3親等以内の親族と定められています。そのため、親族が連帯保証人になってくれないときは、賃貸物件探しが難航することが予想されるのです。
なお、やむを得ない理由で親の反対を押し切って、一人暮らしを始めなければいけない事情がある人は、保証会社が利用できる賃貸物件を探してみてください。
困ったときに頼る先がない
お金や病気などで困ったときに、親を頼れなくなるリスクです。友人や会社の同僚などにも声をかけられますが、頼るにも限界があることも事実です。可能な限りきちんと親を説得して、協力のもと一人暮らしすることをおすすめします。
親に一人暮らしを反対されないように準備すること
ここでは、親に一人暮らしを反対されないよう、準備すべきことを解説します。
明確にするべきポイントは、以下の3点です。
・一人暮らしをする理由
・一人暮らしをして得られるメリット
・一人暮らしをしなければならない必要性
これら3点については、自分の言葉で説明できるようにしておきましょう。なぜなら不動産業界に長く勤めている私の経験上、これらが明らかでないときに親が反対することが多いからです。
また、これらが明らかであると、反対されたときの説得材料にもなります。そのため、賃貸物件探しに入る前に取り組んでおきたいところです。
一人暮らしをしたい理由
まず取り組むべきは、一人暮らしをしたい理由を明確にすることです。これから取り組む必要性やメリットを考えるうえで基礎になります。
はじめは立派な理由でなくとも大丈夫です。「なんとなく一人暮らしに憧れる」「自由な時間がほしいから」といった理由でも問題はありません。一人暮らしをしたいと思ったきっかけや感情に重きをおいて、引っ越しをする理由を考えてみましょう。
一人暮らしをしなければならない必要性
次に、一人暮らしをしなければならない必要性を考えましょう。必要性には、2つの意味があります。
1つ目は、必ず一人暮らしをしなければならないケースです。これは、転勤や通学に数時間かかるようなケースになります。一人暮らしをしなければならないので、反対には至らないでしょう。
2つ目は、一人暮らしをしたほうが良いケースです。「がんばれば通える」「実家暮らしは恥ずかしい」などの理由がこれにあたるでしょう。また前向きな意味で、経済的な独立や生活スキルを向上させるなども、あてはまります。
一人暮らしでは、実家暮らしでは養えない金銭感覚や生活スキルを養えます。自分に足りないものはマイナスの要素と思いがちですが、足りないものは必要なものと捉えることで、必要性を具体的にイメージすることが可能です。
一人暮らしをすることで得られるメリット
理由が明確になったら、次は一人暮らしをすることで得られるメリットを考えましょう。メリットは重要な説得材料になるため、よく検討することが重要です。
一人暮らしのメリット①経済的に自立できる
一人暮らしをすることで、経済的な自立を実現できます。収入の範囲内でやりくりをすることにより、金銭感覚が身につきます。
一人暮らしのメリット②目的(学業や仕事)に対して専念できる
一人暮らしをすることで、学業や仕事などに集中する環境を作れます。通学や通勤時間が短縮されることで、時間を気にする必要がなくなるからです。
なお、一人暮らしをするメリットを考えたとき、この理由が最も多いように感じられます。賃貸仲介の現場でも、通学や通勤時間を理由にお部屋探しをする人は少なくありません。通学や通勤時間にお悩みの方は、一人暮らしを検討してみてはいかがでしょうか。
一人暮らしのメリット③家事や料理、掃除などのスキルがあがる
一人暮らしでは、自分で何から何まで家事をこなす必要があります。そのため、家事や料理、掃除などの生活スキルを手にできるでしょう。
特に一人暮らしでお金がかかるのは、食事です。外食がかさんでしまい、あっという間にお金がなくなったという経験がある人も多いのではないでしょうか。
著者がおすすめするのは、自炊をすることです。一人暮らしで自炊を極めるためには、充実したキッチンが欠かせません。自炊に必要な二口ガスコンロ物件を選んで、自炊マスターを目指してみてはいかがでしょうか。
一人暮らしをする理由と必要性とメリットをまとめる
一人暮らしの理由・必要性・メリットを考えたら、親に伝える前にまとめておきましょう。理由・必要性・メリットのまとめ方は、以下のような考え方を参考にしてみてください。
<一人暮らしをしたい理由> ・自由な時間がほしいから |
<一人暮らしをする必要性> ・仕事が忙しく、通勤時間を減らさないと自分の時間を持てない |
<一人暮らしをするメリット> ・会社に近くなることで通勤時間が減り、仕事に集中できる ・趣味に費やす時間も増えて、自分の時間を充実させられる |
注意したいのは、賃貸物件を探す前に一人暮らしする意思を親に伝えることです。事前に賃貸物件を探してしまうと、キャンセルせざるを得なくなるなどトラブルになりかねません。
日頃の親とのコミュニケーションも重要になります。普段あまり会話がない人は、特にコミュニケーションを重視してみてください。
理由やメリットなどを伝えたうえでも、親に一人暮らしを反対されたら?
ここからは、親に一人暮らしを反対されたときの対応方法について解説します。反対理由や状況ごとにまとめたので、ぜひ参考にしてみてください。
経済的なことを理由に反対されたとき
毎月発生する家賃の支払いや初期費用を理由に、反対されることがあります。経済的な問題は非常に重要なので、心配するのは当然のことです。このケースで行うことは、非常にシンプルです。
家賃の問題であれば、毎月の給与から支出を試算して説明しましょう。無理な収支計画ではなく、実現性の高い計画を立てることを心がけてください。また、初期費用の問題であれば、貯金額で支払えることを伝えたり、安い物件を選択したりすることで説得できます。
家賃が安い物件や初期費用が相場より安価な物件は、意外とたくさんあります。下記リンクより検索できるので、収支計画の参考にしてみてください。
賃貸物件のスペックや防犯性を理由に反対されたとき
賃貸物件のスペックや防犯性を理由に、反対されることがあります。主に、女性の一人暮らしに多く見られる傾向です。このときは反対意見と捉えずに、協力者として親を巻き込むことがポイントです。一緒に部屋探しについてきてもらうなどすれば、親も安心することでしょう。
とりわけ、セキュリティ面は重視される傾向にあります。下記リンクから、防犯性の高い賃貸物件を探してみてください。
エリアを理由に反対されたとき
治安面や実家との距離感から、エリアに対して難色を示すことがあります。このときも、相談しながら賃貸物件探しをすることで、前に進めることができるでしょう。
エリアの地域性や治安などは、不動産会社に相談することをおすすめします。
感情的な理由で反対されたとき
親が単に「寂しい」「心配」という感情的な理由で反対することがあります。厄介な理由と考えてしまいがちですが、前向きに捉えましょう。
最も有効なのは、今までお世話になったこと、育ててくれたことへの感謝を伝えることです。そのうえで、一人暮らしをする必要性を説明してみてください。感情には、感情で対応するのも良い方法です。一人暮らしを始めても定期的に実家に帰る約束をするなど、自分も寂しいことを伝えると理解が深まります。
親自身の経済的な理由で反対されたとき
親が子どもの資力に依存しているときは、説得だけで足りないことがほとんどです。このケースでは、説明ではなく仕送りを約束するなど、経済的な援助が効果を発揮することがあります。
また、親自身も状況を改善するように促すなど、根本的な原因の解決も求められます。根気がいる作業ですが、あきらめずにトライしてみてください。
親の気持ちを理解したうえで、一人暮らしをさせてもらえるような説得を試みよう
法律的には、成人であれば単独で賃貸借契約を締結することが可能です。親が反対したとしても、勝手に一人暮らしをしても何の問題もありません。しかし、これは正解の1つであって、最適な答えではないと私は考えます。
一人暮らしをするうえでは、やはり親に納得してもらうことが必要です。正しい手順で説明することにより、多くの親は一人暮らしに理解を示してくれます。また自分で説明できないことは、賃貸仲介会社の担当者に説明してもらうことで、解決する可能性もあります。
信頼できる賃貸仲介会社を選び、一人暮らしをより良い形でスタートさせましょう。