ドアスコープは、お客様がいらっしゃったときなど、室外の様子を室内から確認することができる防犯性に優れた便利な設備です。しかし、ドアスコープが犯罪のきっかけになることがあると聞いたら、少し驚いてしまうのではないでしょうか。
今回は、身近な防犯設備であるドアスコープについて解説します。初めて一人暮らしをする人やお部屋探しで防犯面が気になる人にとって、参考になる記事となっています。ぜひ最後までお読みください。
ドアスコープとは?
ドアスコープとは、玄関ドアについている覗き穴のことです。来客時など玄関を開ける前に、防犯のため誰かを確認することを目的として設置されています。
ドアスコープの危険性
防犯設備であるドアスコープですが、実は犯罪のきっかけになっている一面があります。ここでは、ドアスコープの「リスク」を確認しましょう。
在宅しているのがバレる
ドアスコープを外側から覗きこむと、在宅しているかがバレることがあります。なぜなら、ドアスコープの外側からでも室内の状況を確認することができるからです。
室内側からドアスコープを覗きこむと、外が広く見えますよね。外側から覗きこむと小さく映りますが、室内の状況を知ることができます。
電気がついているかどうか、人影が動いたかどうか…このくらいなら外側から覗きこまれると認識されるリスクは十分にあります。
ドアスコープから道具を使って開錠される
ドアスコープを破壊して室内側のサムターンを回され、開錠のうえ室内に侵入されることがあります。
ドアスコープを物理的に破壊して特殊な器具を挿入することで、サムターンを回す方法です。これは、鍵を紛失したときや忘れたときに鍵屋さんが開錠する方法の一つですが、悪用されることがあるのです。
盗撮被害に遭う
ドアスコープから室内の状況を撮影、いわば盗撮されることがあります。
ドアスコープから肉眼で覗きこむとかなり小さく見えてしまいますが、特殊なレンズを利用することで鮮明に室内の状況を撮影することができます。
賃貸仲介営業歴20年の私が聞いた、ドアスコープで実際にあった犯罪事例
実際に私が聞いた・体験したことのある、ドアスコープを悪用した犯罪事例を紹介します。嘘みたいな話と思われるかもしれませんが、全て実話です。
ドアスコープの防犯の重要性を知ってほしいがために記載しますが、悪用は厳禁です。これから紹介する行為は全て「犯罪」となります。
単眼鏡やドアビューアーで盗撮された
最も多いのが、ドアスコープからの盗撮被害です。実際に盗撮されなくとも盗撮の疑いがある事例は少なくありません。
ドアスコープに単眼鏡やドアビューアーと呼ばれる「室内をクリアに見ることができる装置」を設置して、スマートフォンのカメラで盗撮する方法です。
著者の経験ですが、入居者から「玄関ドアに不審者がいる」という連絡をもらい物件に急行したことがあります。玄関ドアから不審な物音がしたため、モニター付きインターフォンから玄関先の状況を確認したところ、不審者がドアスコープに何かを付けている映像を確認して盗撮が判明しました。
このケースでは、物音とモニター付きインターフォンにより犯行を事前に防止することができました。しかし、いつも物音に気付けるわけではありませんし、モニター付きインターフォンが設置されていない賃貸物件のときは確認する方法もありません。
夜間の就寝中にドアスコープを外され侵入されそうになった
ドアスコープを外して侵入するケースも、ドアスコープが原因で起こる犯罪の一つです。
夜間対応の緊急ダイヤルから深夜2時に連絡が入りました。就寝中に物音がして目を覚ますと、玄関から「カラン」と乾いた音がしたというのです。その後「ガタッ」とドアを開こうとしてドアガードに引っ掛かった音も聞こえたとのことです。玄関を確認するとドアスコープが外されて室内に落ちていたことが判明しました。
幸いなことに、室内から物音や話し声がしたことで犯人は侵入をあきらめ、事なきを得た次第です。しかし、物音に気付かなかったらと考えるとぞっとする話です。
留守中にドアスコープを外され開錠のうえ侵入被害にあった
最後に紹介するのは、実際に開錠され盗難被害にあった事例です。
仕事も終わろうかという19時頃に女性の入居者から連絡が入り、室内が荒らされているとのことでした。警察にも連絡をしたうえで物件へ急行すると、室内はひどい有様でした。
警察に話を伺うと、ドアスコープを外し特殊な器具を挿入してサムターンを回して玄関ドアの鍵を開錠し侵入したことが判明しました。
万が一にも在室していたらと、想像もしたくない話です。
ドアスコープによる被害発生率を下げる方法
ドアスコープは防犯のための設備ですが、ときとして犯罪のきっかけになることがあります。これらの犯罪被害に遭わないための方法を紹介します。
どれも少しの工夫と手間をかけるだけで、被害発生率を下げることが可能です。ぜひ参考にしてみてください。
専用カバーをつけて盗撮を防止する
ドアスコープの室内側にカバーをつけることで、盗撮被害を防止することができます。なぜなら、ドアスコープを室外側から覗き込んだとしても、カバーが邪魔をして室内の状況が見えなくなるからです。
カバーや裏蓋がついていない賃貸物件にお住まいの人は、一度外側からドアスコープを覗いてみてください。意外と室内の状況がわかることに驚くでしょう。
ドアスコープのカバーや裏蓋は非常に安価であり、数百円で販売されています。カバーや裏蓋の購入が面倒であれば、テープなどで目隠しをするだけでも効果があります。
ドアスコープからの盗撮防止対策は、見えなくすることにあります。これだけでも十分に防犯効果がありますので、ぜひ試してみてください。
空転するドアスコープに変えて侵入対策をする
ドアスコープを空転するタイプに変更することでも、ドアスコープの防犯に役立ちます。なぜなら、ドアスコープを空転式に変更することで、外側から外しにくくなるからです。
ドアスコープを室内側から見ると、スコープの周りに「切り込み」があることがわかります。この切り込みにコインを挟み回すことで簡単にドアスコープの交換が可能です。
簡単に交換することが可能であることは便利ですが、見方を変えればリスクがあるともいえます。ドアスコープは室内側から外すことが原則ですが、外側からでも器具を使えば簡単に外すことができるからです。
しかし、空転式のドアスコープに変えることで外側から外せなくなります。防犯面が気になる人は、ドアスコープを交換することをおすすめします。
なお、ドアスコープを交換するときは、必ず外したドアスコープをホームセンターや鍵屋さんに持ち込むようにしてください。サイズによっては合わないことがあるからです。
ドアスコープカメラを検討する
それでもまだ心配という人は、ドアスコープにカメラを設置する方法があります。ドアスコープの玄関側に専用のカメラ機能付きモニターを設置するのです。
最近では、人感センサーがついているものや録画機能があるものまで存在しています。過去にドアスコープの犯罪被害に遭われた人や、ドアスコープからの被害が気になる人はカメラの導入も検討してください。
なお、工事不要で後付けできるものであれば問題はありませんが、ドアスコープ自体を差し替える必要があるものなどに関しては、入居者が勝手に行うと規約違反になる可能性があります。何かしらの既存設備に影響があるものの場合、必ず管理会社もしくは大家さんに許可を取ってから設置してください。
玄関まわりでやっておきたい防犯対策8選
ドアスコープでの防犯対策を施していても、まだまだ手の打ちようは残っています。それは、玄関まわりで発生する犯罪をさらに防ぐことです。
ここからは、玄関まわりの防犯に視野を広げた防犯対策を紹介します。お部屋の防犯対策はもちろんのこと、お部屋探しにもお役立てください。(なお、一部の対策は入居者が勝手に設置・実施をすると管理会社や大家さんに迷惑がかかる、規約違反に該当する恐れがあります。少しでもリスクがある場合は、必ず事前に相談しましょう)
常に施錠をすることを心がける
基本的なことですが、お部屋の鍵を施錠することを忘れないでください。なぜなら、ほんの数分の間であっても空き巣被害は発生するからです。
警視庁の発表したデータによれば、令和4年度の空き巣件数は10,553件も発生しています。着目すべきはその侵入方法で、10,553件のうち4,145件は無施錠だったことがわかっています。
出典:警視庁「令和4年の刑法犯に関する統計資料」
このことからも、いかに施錠しないことにリスクがあるかがわかります。ふとした気の緩みが犯罪に巻き込まれることになるため、鍵は必ず締めましょう。
防犯アラームや防犯ブザーを置いておく
玄関まわりに防犯アラームや防犯ブザーを置いておくのも有効な手段です。なぜなら、玄関ドアを開けたときに大きなアラームやブザーが鳴ることで、かなりの確率で侵入を防止することができるからです。
防犯アラームやブザーの仕組みはシンプルです。玄関ドアとドア枠に各々器具をセットするだけです。2つの器具はドアが閉まっているときはほぼくっついている状態です。ドアを開けると2つの器具が離れ、大きな警戒音がなる仕組みになっています。
両面テープで簡単に設置できるものや、乾電池式のものまで、多くの種類が存在しています。さらに、リモコンタイプでボタンを押すと警戒音が鳴るタイプもあるため、玄関まわりの防犯だけではなく在室時の防犯にまで役立つものもあります。
ただし、誤作動などで近所迷惑に繋がる可能性もありますので、導入は慎重に検討してください。
宅配ボックスを設置する
宅配ボックスの設置も防犯に役立ちます。なぜなら、配達による買い物などが便利になったため、宅配員を装い犯罪におよぶケースもあるからです。
宅配ボックスがあることで玄関を開ける必要がそもそもなくなります。そのため、宅配員を装う犯罪被害から身を守ることができるようになるでしょう。
しかし、一戸建てならまだしも、マンションやアパートの廊下に宅配ボックスを設置することは家主さんや管理会社の許可が必要になります。また、廊下は火災発生時の避難経路としても利用されますので、保安上認められにくいことが考えられます。
宅配ボックスを検討している人は、もともと賃貸物件に宅配ボックスが設置されているところを選ぶのがよいでしょう。
オートロックにする
玄関のセキュリティを守る最大の方法は、オートロックにすることでしょう。オートロックがあることで、そもそも第三者の侵入を防ぐことができるからです。
しかし、賃貸物件でオートロックを個人で設置することは極めて難しいと言わざるを得ません。その点からいえば、オートロック付きの賃貸物件を選択することが望ましいでしょう。
ドアポストを塞いでおく
ドアスコープからの開錠について解説しましたが、ドアポストからの開錠や盗撮も実例が存在しています。そのため、ドアポストからの被害も防止しておきたいところです。
一般的な玄関ドアについているポストの構造は、玄関外側から郵便物を投函する「口」が開いており、玄関内側に郵便物を受け取る「箱」がついています。その箱は開閉式になっており、内側からは手前に引くことで箱を開け郵便物を取り出すという構造です。
ドアポストで対策すべきは、以下のようなポイントです。
・集合ポストがあればそちらを利用し、ドアポストをテープや布で塞いでしまう
→ドアポストを塞ぐ専用のシールテープが市販されていますので、それを利用してください。普通のテープだとはがしたときに痕が残る可能性があるので注意しましょう。
・ドアポスト内部の箱に南京錠などの鍵を設置して外部から開けにくくする
→内部の箱が外側から押し開けられることを防ぐため、簡単に開かないように南京錠を設置するのも防犯には有効です。
なお、ドアポストの変更を防犯上行うときは、家主さんや管理会社へ相談のうえ行うことを忘れないでください。
防犯用サムターンに変更する
サムターンとは、玄関ドアの室内側から鍵を締めるときに捻る部品のことです。このサムターンを防犯用のものに変更することで、外部からの開錠を防止することが可能になります。
防犯用サムターンとは、普通に回しても鍵は施錠されず、つまみを押しながら回すことで施錠できる防犯性に優れたサムターンです。防犯用サムターンに変更することで、ドアスコープやドアポストから特殊な器具を挿入されても鍵を開錠することができなくなります。
防犯用サムターンへの変更は自分でもできますが、家主さんや管理会社に許可を得たうえで鍵屋さんを紹介してもらって変更するとよいでしょう。
玄関補助錠を設置する
玄関ドアについている鍵に加えて、補助鍵を設置することも防犯面では有効です。補助鍵が防犯面に有効な理由は2つあります。
1つ目は、補助鍵があることで開錠に時間がかかること。2つ目は、補助鍵がついているような防犯意識が高い部屋を、わざわざ泥棒が狙うとは考えにくいからです。
補助鍵もホームセンターで簡単に購入し設置することが可能ですが、緊急時に家主さんや管理会社が入室できなくなるというデメリットも存在しています。設置にあたっては家主さんや管理会社への指示に従いましょう。
工事不要で取り付け可能なTVドアホンを設置する
TVドアホンを設置して防犯性能を向上させることも効果が見込めます。
モニター付きインターフォンがない賃貸物件では、どうしてもドアスコープを覗いたり、玄関ドアを開ける必要があります。しかし、TVドアホンを後付けすることで、これらの不安を解消することが可能です。
後付けするTVドアホンには、2つのタイプがあります。玄関ドア外側の上部に固定するタイプと、ドアスコープに設置するタイプです。いずれも乾電池で動くものもあるため、特別な電気工事も必要ありません。
Wi-Fiと連携することでスマートフォンで来客者の確認が可能なタイプもあります。お住まいの賃貸物件にモニター付きインターフォンがない人はもちろんですが、インターネットが利用可能な人も検討してはいかがでしょうか。
後付けでTVドアホンを設置するときは、費用面や設置が可能かどうかを事前に確認しておくことをおすすめします。なぜなら決して安い買い物ではないほか、横開きのドアなどでは設置が困難になることがあるからです。また、事前に家主さんや管理会社への相談は欠かせません。
これらを踏まえて、モニター付きインターフォンや無料インターネットが設備として備わっている賃貸物件を選ぶという選択肢もあります。
ドアスコープ付き物件でも、工夫次第で防犯性を高めることができる
今回はドアスコープと玄関まわりの防犯について解説しました。
築年数が浅い賃貸物件では、ドアスコープやドアポストからの犯罪を懸念するところ、これら設備はあまり見られなくなってきました。しかし、築年数や賃貸物件によってはまだまだドアスコープやドアポストがついている物件は少なくありません。
ドアスコープやドアポストは防犯と利便性のために重要な設備ですが、犯罪に使われやすいというデメリットが存在しています。しかし、そうであっても少しの工夫で防犯性能を高めることが可能です。
この記事の内容を参考に、自分で防犯性能の高い部屋をつくってみてはいかがでしょうか。