「高齢だから」「未成年だから」と、賃貸物件探しをあきらめていませんか?年齢が理由で部屋を借りられないかも、という不安を抱えている方も多いかもしれません。
そこで今回は、賃貸契約の年齢制限について解説します。賃貸実務での傾向、高齢者や未成年の方が賃貸物件を借りる際に注意すべき点、そしてスムーズな部屋探しを進めるためのヒントなども盛り込みました。
年齢を理由に諦めずに、理想の住まいを見つけたい人に向けて、賃貸契約に関するよくある疑問や不安を解消し、スムーズな部屋探しをサポートします。ぜひ最後までお読みいただき、お部屋探しに役立ててください。
【結論】賃貸契約に明確な年齢制限はないが断られるケースはある
賃貸契約に、法律で定められた明確な年齢制限はありません。しかし実際には、高齢者の方や未成年の方が入居を断られるケースがあることも事実です。
賃貸実務では年齢をどのようにとらえているのでしょうか?年齢の下限と上限に分けて解説します。
賃貸契約の年齢下限
賃貸契約は、成人年齢である18歳にならないと単独で締結することはできません。これは民法に定められている「自分の意思だけで契約するための年齢下限」です。
なお、年齢の下限には以下のような例外が設けられています。
・18歳未満の人が結婚したとき
・18歳未満の人が自分で事業を興したとき
・親の同意があるとき
これらに該当するときは、18歳未満であっても単独で賃貸契約を結ぶことができます。
なお、未成年のお部屋探しや、初めての一人暮らしでは以下の記事も役に立ちます。ぜひ併せて参考にしてください。
▼参考記事
親が一人暮らしに反対したら?賃貸仲介歴20年のプロが教える説得のコツを解説
高校生でも一人暮らしはできる?注意すべきポイントと賃貸物件の探し方とは
賃貸契約の年齢上限
賃貸契約を締結するとき、年齢の上限を定めた法律や規定はありません。そのため、基本的には何歳であっても賃貸契約を締結し入居することが可能です。
しかし、賃貸実務では70歳くらいを目途として賃貸契約の締結を断られることがあります。もちろん高齢者であっても入居可能な賃貸物件はありますので、不動産会社へ事前に確認しておくとよいでしょう。
「契約に通りにくい年齢ライン」が存在する理由
なぜ年齢が賃貸契約の審査で問題となるのでしょうか。ここでは、家主さんや管理会社の視点からその理由に迫ります。
家賃滞納リスクによるもの
家主さんや管理会社にとって、入居者が家賃を滞納してしまうことは何よりも困ることです。そのため、家賃滞納リスクを回避する理由から審査に落ちることがあります。
若い人、とりわけアルバイトの人などは収入が不安定であるため、与信が不十分と判断されがちです。また、高齢者では年金受給額が少ないという理由も考えられます。
ただし、これらは表面的な理由に過ぎません。貯蓄額が十分にあることや何か別の資産があることを伝えることで、審査に通過する可能性は残されています。
孤独死リスクによるもの
高齢者の単身入居では、孤独死を想定して審査が否決されることがあります。
孤独死自体ではなく、「孤独死が発生してから長い間発見されないこと」に問題があります。その点から、高齢者であっても身近に緊急連絡先やケースワーカーがいることを伝え、審査通過する例も多く存在しています。
高齢者の賃貸の割合
さまざまな理由によって賃貸契約の審査に通りにくいとされる高齢者ですが、高齢者の居住実態はどのようなものなのでしょうか?
ここでは、内閣府が調査した公的データをもとに高齢者の居住実態を確認しましょう。
なお、本項においては「高齢者」とは60歳以上の人と定義しています。
高齢者(60歳以上)は持ち家率が高い
高齢者の持ち家:賃貸比率を調査したところ、圧倒的に持ち家比率が高いことがわかりました。都市規模別での持ち家・賃貸比率の詳細割合は以下のような状況です。
都市の大きさ | 持ち家比率 | 賃貸比率 |
---|---|---|
全国平均 | 88.2% | 11.3% |
大都市東京都23区・政令指定都市 | 79.4% | 19.9% |
中都市人口10万人以上の市 | 88.8% | 10.8% |
小都市人口10万人未満の市 | 92.9% | 6.5% |
※出典:内閣府「令和元年版高齢社会白書」 第3節<特集>高齢者の住宅と生活環境に関する意識 1.住まいに関する意識より抜粋
高齢者は持ち家に住むことが多く、賃貸物件への居住は少数派です。ただし、大都市では持ち家比率が79.4%であるのに対して、小都市では92.9%と大きな開きを確認することができます。
大都市では、不動産価格が高いことに加えて賃貸物件が充実しているため、高齢者であっても賃貸住宅を選択するケースが増えています。一方の小都市では、価格が安価であるため若いうちから持ち家を所有する人が多い背景から、持ち家に住み続ける人が多い傾向にあると考えられます。
高齢者でも属性により持ち家率は異なる
高齢者の持ち家比率を配偶者の有無・死別・離別ごとに分けて調べたところ、興味深い傾向があることもわかりました。
未婚・既婚 | 持ち家比率 | 賃貸比率 |
---|---|---|
未婚 | 78.3% | 21.7% |
既婚(配偶者あり) | 91.7% | 8.2% |
既婚(配偶者と死別) | 87.3% | 12.1% |
既婚(配偶者と離別) | 54.4% | 40.8% |
※出典:内閣府「令和元年版高齢社会白書」 第3節<特集>高齢者の住宅と生活環境に関する意識 1.住まいに関する意識より抜粋
未婚者と配偶者と離別した人、すなわち単身者に賃貸比率が高い傾向が顕著です。離別をきっかけとして持ち家を手放す人が多いといえるでしょう。また、配偶者と死別した人については、そのまま持ち家に住むと考えられるため高水準の持ち家比率が維持されていると考えられます。
高齢者の賃貸住まいには不安がつきもの
この調査では、高齢者が住まいに対して不安があるかどうか、そして不安はどのようなものかについても踏み込んでいます。
高齢者のなかでも住まいのことで不安を覚えている人は、全体の26.3%でした。持ち家にお住まいの高齢者で住まいに不安を抱えている人は24.9%、対して賃貸物件にお住まいの高齢者で不安を感じている人は36.5%。賃貸物件に住んでいる人のほうが不安が大きいことがわかります。
賃貸物件にお住まいの高齢者が抱える不安は以下のようなものです。
・高齢期の賃貸を断られる(19.5%)
・家賃などを払い続けられない(18.2%)
・虚弱化したときの住居の構造(15.6%)
・世話してくれる人の存在(15.6%)
※出典:内閣府「令和元年版高齢社会白書」 第3節<特集>高齢者の住宅と生活環境に関する意識 1.住まいに関する意識より抜粋
このように、高齢者の賃貸生活には不安がつきものです。そのため、お部屋探しの段階から準備をしておくことが必要といえるでしょう。
高齢者が物件を選ぶ時のポイント
高齢者や高齢になっても安心できる賃貸物件とはどのようなものでしょうか?これより、物件選定のポイントを紹介します。
安心して住める構造かどうかをチェックする
高齢者はまず、安心して住むことのできる賃貸物件を選ぶことが重要です。なぜなら、歳を重ねることによって身体の機能も低下するからです。
身体機能が低下してからも安心して生活できる賃貸物件の特徴は、以下のようなものです。
・玄関、階段、浴室、トイレに手すりがある
・バリアフリー、もしくは段差が少ない
・玄関や廊下が広い
・滑りにくい素材が利用されている
すべての条件を満たしている賃貸物件は、あまり多くはありません。そのときは、手すりや滑り止め材の設置可否を家主さんや管理会社へ確認すれば、自分に合った賃貸物件の仕様へ変更が可能です。
家賃が安い物件を探す
家賃や共益費など、固定費を抑えることも高齢者の部屋探しでは重要なポイントです。
若いうちは体が動くため働いてお金を稼げますが、歳を重ねるとそうはいきません。そのため、固定費を抑えてお金の不安を軽減させることも必要なのです。
近い年代の人が住む物件を探す
賃貸物件であっても、近隣の人や地域のコミュニティに加わるようにしましょう。
孤独感を解消できるほか、人との繋がりによって豊かな人生を送ることができます。また、何かあったときに声がけや助けてくれる点も高齢者にはありがたいことです。
内見時に住民の状況やコミュニティを知ることは困難ですが、何度か物件を訪れたりして可能な限り事前に把握するようにしておきましょう。
高齢者でも比較的借りやすい物件の条件と借りやすくするためのコツ
高齢者が審査落ちしにくい賃貸物件には特徴があり、また審査を問題なくパスするためのテクニックもいくつかあります。ここでは、賃貸仲介歴20年以上の私がそれらを紹介します。
連帯保証人・緊急連絡先が近くにいるエリアから探す
連帯保証人や緊急連絡先と借りる賃貸物件の場所が近ければ近いほど、審査には有利に働きます。なぜなら、距離が近いと有事にすぐ対応できることが予想されるため、孤独死リスクが軽減・回避されるからです。
実務では、必ず内見前に高齢者の受入が可能かどうかを確認します。年齢だけ伝えると断られてしまうこともしばしばですが、近くに身内がいるだけで心象ががらりと変わることは珍しくありません。
高齢者を歓迎している物件を探す
さまざまな理由によって高齢者の入居を問題としていない賃貸物件も存在していますので、そういった物件を選ぶのも有効な手段です。
・家主さんや管理会社が高齢者の入居に積極的で理解がある
・退去が少なく、いつの間にか入居者全体の年齢層が上がってきた
・築年数が経過したため、ターゲットが高齢者になった
これらに当てはまっていれば、高齢者の入居に抵抗感がないことが考えられます。詳細の事情は不動産会社がよく知っているはずですので、希望するエリアにある不動産会社に問い合わせしてみるとよいでしょう。
高齢者におすすめの物件の条件
最後に、高齢者のライフスタイルに適合する設備や条件を紹介します。意外と見落としているものがあるかもしれませんので、ここでおさらいしておきましょう。
バリアフリー・手すり付き
高齢者にとっては少しの段差も命取りになりかねません。そのため、バリアフリーや手すりが付いた賃貸物件は日常の支えとなるでしょう。
なお、手すりがついている賃貸物件は少ないのが現状ですが、前の入居者が設置したものをそのまま利用できることがあります。同じ物件であってもお部屋によって設備が異なることがあるため、きちんと家主さんや管理会社へ、必要に応じて自ら物件を確認してくれる不動産会社を選びましょう。
1階の部屋
高齢者の人たちにとって、1階の部屋は人気です。人気の理由は階段を上下する必要がないことと、庭があることです。
階段の上り下りは高齢者にとっては重労働。ケガの心配もさることながら、外出が億劫になり、引きこもりがちになることも珍しくありません。そのため、安心して積極的に外出できる1階には人気が集まるのです。
また、庭や軒先では高齢者の人気の趣味である園芸作業を楽しむこともできます。花や草木を育てることで日々の暮らしの癒しになるほか、近所の人たちとのコミュニケーションの一助にもなるでしょう。さらに、園芸作業には自己肯定感を高めるほか、水やりや植え替えなどの作業をすることで運動能力の維持向上も期待できます。
住居警報がある
マンションタイプに引っ越しを考えているときは、住戸警報があると安心です。住戸警報とは、お部屋で事件・事故・天災に遭遇したときに押すことで、警備会社へ発報してくれる仕組みのことです。
急な体調不良など、外部の人に助けを求めたいときにこういったシステムがあると安心感が高まります。
住戸警報はモニター付きインターフォンに付いていることがほとんどです。「警報」と書かれたボタンがついていたら、住戸警報としての役割があるかどうかを確認しておきましょう。
【補足】高齢者向け賃貸住宅とは
近年、高齢者の方向けの賃貸住宅が増えてきています。これらの住宅は、バリアフリー設計や緊急通報システムなど、高齢者が安心して暮らせるような設備が特徴です。
また、共用スペースで他の入居者と交流したり、イベントに参加したりする機会も設けられているため、孤独を感じることなく生活を送ることができます。
高齢者向け賃貸住宅には、大きく分けて以下の2種類があります。
・サービス付き高齢者向け住宅
介護が必要な方や要介護状態になりそうな人を対象とした賃貸物件で、食事の提供や介護サービスを受けることができます。
・高齢者向け優良賃貸住宅
介護を必要としない自立した高齢者向けの賃貸物件で、「高齢者向け優良賃貸住宅等整備基準」に基づき設計建築されているため、高齢者が安心して生活できる賃貸物件です。
高齢者向け賃貸住宅を選ぶ際には、立地・設備・サービス内容・家賃などを比較検討することが大切です。ライフスタイル・介護の必要性・経済状況などをよく考え、自分に合った賃貸物件を選びましょう。
賃貸物件の契約についてまわる年齢制限を知ってトラブルを防止しよう
賃貸契約では、年齢による審査基準が設けられている場合があります。特に若年層や高齢者は、収入の安定性・健康状態などの理由で審査が厳しくなることも少なくありません。
今回は賃貸契約における年齢制限の現状と、若年層や高齢者が賃貸契約を結ぶときの注意点、そして審査落ちを回避するための具体的な方法について解説しました。
若年層は収入が安定していないと判断されやすく、保証人や連帯保証人を求められることがあります。一方、高齢者は収入の減少や健康状態が懸念されるため、審査に通らないケースもあります。
そのため、賃貸物件を探すときは不動産会社に相談し、自分や家族の状況を正直に伝えましょう。保証会社の利用・連帯保証人や緊急連絡先の活用でカバーできるかもしれません。
この記事を参考に、賃貸契約に関する知識を深め、自分に合った物件を見つけてください。年齢制限に振り回されることなく、快適な賃貸生活を始めましょう。