一人暮らしは自由を謳歌できる一方で、どうしても人に寂しさを感じさせる一面もあります。最近一人暮らしで寂しさを感じ始めている方、これから一人暮らしをしたいけど「寂しい思いをしてしまうかも…」と考えて踏み切れない方、そもそも一人は寂しいと思う方…いろんな方がいらっしゃると思います。
そこで今回は、そういった方々に向け、臨床心理士の立場から寂しさを感じるメカニズムとその対処方法をご紹介します。部屋を借りるにあたって、寂しさを感じにくい条件もあわせて紹介しているので、ぜひチェックしてみてください。
一人暮らしをしている人が寂しいと感じやすい瞬間

友達と遊んで帰ったあとや、家の中がシーンとしているときなど、一人暮らしをしていると誰もが一度は寂しいと感じたことがありますよね。男女ともに、「一人でいるとき」が最も寂しさを感じる場面であるように思います。
この孤独感を覚えることは、多くの人が経験したことがあるため、「自分だけが寂しさを感じている」と考え込む必要はありません。
家族など一緒に住んでいる人との出来事を聞いたとき
友人や上司、同僚などと会話する中で何気なく出てくる「家族と鍋パーティーした」「恋人と一緒にテレビを見てて…」などの身近な人とのエピソード。これらを聞くと、その瞬間に孤独感を感じることがあります。
ご飯が美味しくできても共有する人がいないとき
一人暮らしを始めて、自炊に挑戦する人も多いですよね。レシピを見ながら初めての料理を作り、美味しくできたとしても、自分しか食べる人がいない。「せっかくおいしくできたのに」と、共有する人がいないことに寂しさを感じることがあるかもしれません。
誰かに話を聞いてほしいとき
嬉しいことがあったとき、嫌なことがあったとき、「今すぐ話を聞いてほしい!」「帰ったら話を聞いてもらおう!」と思うことはありませんか?そんなとき、一人暮らしだと直接話を聞いてもらうことができません。
「この喜びを今すぐ共有したいのに!」「嫌なことがあったから今すぐに話を聞いて発散させたいのに!」と思ったとき、すぐ話を聞いてもらえないことで寂しさを感じることがあるでしょう。
イベントの時期に一人でいるとき
誕生日やクリスマス、年末年始などに一人で過ごしていることで、寂しさを感じることもあるかもしれません。これは、イベントごとがあると世間がにぎわい「みんなは楽しそうに友人と過ごしているのに自分は一人だ」と、他人と比べてしまうことで寂しさが助長されてしまうと考えられます。
人が寂しいと感じる理由
人が寂しいと感じる理由はさまざまで、一概に「これが原因」と言えないのが難しいところです。ここからは、臨床心理士の目線で人が寂しさを感じる理由を紐解いていきましょう。
人との関わりが少ない
人間はコミュニケーションをとることができる動物です。コミュニケーションを通して、家族や友人、恋人など、人とのつながりを実感することができます。
しかし、人とのコミュニケーションが少なくなると「人と関わっている」という感覚が薄れ、寂しいという感情を抱きやすくなります。
熱中できることがない
人間は何か熱中できることがあると、その熱中していることに時間を注ぐため、一人でぼーっとする時間が減り、「寂しい」と考える時間が少なくなります。
しかし、熱中できることがなく、一人で暇な時間が増えることで「一人は寂しい」と考える余地ができてしまい、落ち込むという流れに陥りやすいです。
セロトニン不足
人間は日光を浴びると、脳内でセロトニンという神経伝達物質が分泌されます。セロトニンは、感情のコントロールや、体温・血圧調節、運動機能など、脳を活発に働かせる脳内物質と言われています。
このセロトニンが不足することで、疲労感やイライラ感、向上心の低下など、気持ちの安定が失われると言われています。そのため、普段であれば気にならないような些細なことも気になり、「寂しい」といった感情を抱きやすいと考えられます。
臨床心理士が教える!一人暮らしの寂しさを乗り越える5つの方法
これまで、人が寂しいと感じやすい瞬間や寂しさを感じる理由を紹介してきました。ここからは、それらを踏まえたうえで寂しさを乗り越える具体的な5つの方法を、段階別に紹介します。また、すぐにでもできる行動例も併せて説明するので、「今とにかく寂しい」と感じている方は参考にしてみてくださいね。
①人とつながる機会をもつ

一人暮らしの寂しさをなんとかするためにすぐにアクションを起こせる方は、まず友人や恋人、家族など、人とのつながりを実感できる予定を計画すると良いでしょう。
先ほど、人との関わりが少ないと人は寂しさを感じやすいと述べました。そのため、友人や恋人、家族などとどこかに出かけたり、自宅でホームパーティーをひらいたりと、人と関わる機会を計画すると良いでしょう。
すぐに試せる「人とのつながりを実感できること」の例
・友人や恋人、家族と今夜のご飯や飲み会の約束をする
・ボイスチャットツールなどを活用してオンライン飲み会を計画してみる
・店員さんとお話できるカフェやバーを訪れてみる
②熱中できることを探す

一人暮らしの寂しさをなんとかしたいけれど、他の人を誘うのはハードルが高い…と感じる方は、別の方法で寂しさを感じないようにしてみてはいかがでしょうか。
例えば暇な時間があると、人はどうしてもネガティブなことを考えてしまいがちです。そのため、何か熱中できることを見つけると良いでしょう。
資格やお金の勉強、読書は将来に役立つかもしれません。部屋の掃除をして、いらないものを売るといったことをしてみると、ちょっとしたお小遣い稼ぎになります。
部屋の模様替えの様子をSNSでアップするなど、自分がSNSの発信者になってみることも夢中になれる趣味のきっかけになるかもしれません。(ただし、住んでいるところが特定されないように十分な配慮が必要です)
慣れないことを始めるのは勇気がいることですが、意外と夢中になって、気がついたら寂しいという感情が「一人の時間が充実している」という気持ちに変わっているかもしれません。
すぐに試せる「熱中できること」の例
・本屋などに立ち寄って興味のあるテーマの勉強を始めるきっかけを探してみる
・サブスクリプションサービスに契約して映画や番組を観る
・オンラインで人と遊べるゲームを始めてみる
③とにかく笑顔でいる

誰かを誘うのはハードルが高い、けれど何かに熱中できるものがすぐに見つからなかった…という場合は、「とにかく笑顔でいる」ことを心がけてみてください。
アメリカの心理学者ジェームズとデンマークの心理学者ランゲの「ジェームズ・ランゲ説」というものがあります。これは、「身体反応(行動)が気持ちに変わる」というもの。
つまり、出来事があったときに楽しいから笑うのではなく、笑っているから楽しいと感じるという考え方が「ジェームズ・ランゲ説」なのです。
そのため、お笑いやバラエティ番組などを見てとにかく笑っていると、寂しい気持ちが減っていくのではないでしょうか。
すぐに試せる「とにかく笑顔でいられること」の例
・好きなお笑いコンビのライブや過去の人気バラエティ番組のDVDを借りて観る(配信サービスを利用する)
・Web上で読める漫画を読んでみる
・トレンドになっている動画や作品をチェックしてみる
④セロトニンの不足を解消する

ここまで具体的なアクションを紹介してきましたが、それでも一人暮らしの寂しさが拭えないという方は、人体のメカニズムからアプローチしてみましょう。
セロトニンが感情のコントロールなどに関わっている神経伝達物質であることを説明しました。日光を浴びる時間が減る、運動量が減る、ストレスの多い生活、昼夜逆転の生活といったことでセロトニンが分泌されにくくなると言われています。
セロトニン分泌を促すために、適度に日光を浴び、適度に運動や筋トレをして、規則正しい生活を心がけることで、安定した気持ちで生活が送れるでしょう。
すぐに試せる「セロトニン不足解消」の例
・休憩時間に近所を15分程度散歩してみる
・ご飯をよく噛んで食べるように意識してみる
・朝食を抜いてしまっている場合は朝食を食べるようにしてみる
⑤寂しいという気持ちに正面から向き合う

ここまで紹介した4つを試してみても寂しさが拭えない、もしくは試す気力もなくなってしまうくらい気持ちが摩耗している、という方は、「寂しさ」に対する考え方そのものを変えてみてはいかがでしょうか。
そもそも、寂しいという気持ちは「ネガティブな感情」と捉えられがちです。そして人は、「ネガティブな感情なんか自分の中からなくなってほしい」、と感じる傾向にあります。「寂しい=ネガティブ」と自分の中で捉えると、自分の中からなくなってほしい感情だと認識してしまい、「寂しい」と感じた自分を否定してしまうことにつながります。
「自分は今、寂しいと思っているんだ」と自分の気持ちを一度受け止めたうえで、「なぜ寂しいと思っているのか?」を自分に問いかけて、寂しいと感じている自分と向き合ってみるのはいかがでしょうか。
一人になることが苦痛にならない人は、自分と向き合うことが上手な人です。自分の世界を作り、自分の内面と向き合うことで、本来の自分を知ることができ、自己肯定感も上がると言われています。
一人暮らしの寂しさを紛らわすうえでやめておいた方がいいこと
一人暮らしの寂しさを紛らわすためにやったことが、かえって逆効果になることもあります。ここからは、寂しさを紛らわすうえでやりがちな、落とし穴とも言える行動を紹介します。
NG行動①SNSを見て気を紛らわせる
SNSを見ることで一時的に寂しさを紛らわすことができ、かつ時間も経つのも早く感じるので一石二鳥と思えるかもしれません。
しかし、SNSでの他の人の投稿を見るのは、良くも悪くも自分の気持ちに大きな影響を与えがちです。友人の楽しそうな投稿を見ることで、「自分は一人暮らしで寂しい」「自分は友達が少ない」など、寂しさや孤独感を助長させてしまう可能性があります。
もし少しでも寂しいと思っている節があるのなら、SNSを長時間見続けることは避けた方が良いでしょう。
NG行動②そこまで仲良くない人との予定をたくさんいれる
人とのつながりを実感することは大切だと述べましたが、そこまで仲良くない人との予定を手あたり次第いれることはあまりお勧めしません。
予定をいれたものの、予定の日程まで億劫になったり、エネルギーを使って疲れてしまうといったことが考えられます。
人との予定を入れるのであれば、「自分が会いたいと思う人」「この人となら会っている時間も楽しい・充実している」と思うことができる人とに絞ることをお勧めします。
一人暮らしの寂しさを感じさせない物件とは

これまで、一人暮らしと寂しさの関係性について紹介してきました。どうせ一人暮らしをするのなら、できるだけ寂しさを感じないような部屋を借りたいですよね。ここからは、一人暮らしで感じる寂しさが心配な方向けの賃貸物件と、その理由を紹介していきます。
ペットが飼育可能な物件
ペットと触れ合うことで、不安やストレスの軽減、精神状態が安定する、リラックス効果があるといった、心理的作用が促進されると言われています。
ペットと触れ合っていると自然と癒される、なんて声もたくさん聞きますよね。また最近では、ペットをSNSにアップしてバズっているアカウントもたくさん見かけます。そのくらいペットは人間にとって癒し効果をもたらしてくれます。
ただし、ペットを飼うということは責任が伴います。アレルギーがないか、世話ができるかどうかなど、しっかりと判断したうえでペットを飼うことを決めてください。
駅近の物件
駅によっては、周辺にさまざまなお店が立ち並んでいることがあります。そのため、いつでも人のにぎやかな声が聞こえてきたり、居酒屋やカフェを開拓してお気に入りのお店を見つけるなど、人とのつながりを積極的に感じることができるというメリットがあります。このメリットを通して、「自分は一人じゃない」「孤独じゃない」と思うことができるため、寂しさを感じさせないでしょう。
ただし喧騒もあり、静けさを求めている人には不向きな側面もあるので注意してください。
シェアハウスの物件
人との関わりが直接実感できる物件といえば、シェアハウスです。一人暮らしをしながらも、共用スペースもあり、顔を合わせれば会話が生まれる…というように、コミュニケーションが自然と発生する環境の安心感はとても心強いでしょう。
プロジェクターが設置できる物件
プロジェクターをテレビ代わりに使うことで、ライブ映像や映画、スポーツ観戦などを臨場感を味わいながら夢中になって楽しむことができます。夢中になれば一人暮らしの寂しさを感じさせる余地も減るため、おすすめです。
友人や家族、恋人などを招待する理由にもなりますね。一緒に楽しむことで、孤独感を解消することができます。
一人暮らしの寂しさとうまく付き合って生活を充実させよう
今回は、臨床心理士の観点から一人暮らしの寂しさについて解説しました。
一人暮らしの寂しさとうまく付き合っていくために、寂しさを感じさせないような物件を選ぶのも良し、日々の生活の中で寂しさと向き合っていくのも良しです。もちろん、人によってできること・できないこと、合う・合わないといったこともあるので、自分にできそうなものをまずは1つ、生活の中に取り入れて、寂しさとうまく付き合っていくと良いでしょう。
これを読んでいただいた方が、少しずつ寂しさと付き合いながら、充実した日々を送れますように。