連帯保証人の変更はできる?不動産歴20年の宅建士が手続き方法と注意点などを解説

目次

賃貸借契約を締結するとき、頭を悩ませるのは連帯保証人ではないでしょうか。ご両親がご健在であったり、関係性が良好であったりすれば良いのですが、そうでないときは親戚にお願いすることとなり、大きなストレスになりがちです。ましてや、突発的な理由で連帯保証人を変更する必要性に迫られたときは、どう対応してよいのかわからなくなるでしょう。

そこで、今回は賃貸借契約で連帯保証人を変更する手続きや注意点について解説いたします。

・賃貸借契約を締結中で、連帯保証人の変更で悩んでいる人

・賃貸物件を探しているが、連帯保証人がいなくて困っている人

こういった悩みを抱えている人に役立つ内容になっています。

ぜひ最後までお読みください。

連帯保証人ってなに?

連帯保証人とは、本人に代わって借主の債務を保証する人のことをいいます。賃貸借契約における連帯保証人の役割は以下のようなものです。

・家賃を支払わなかったとき、借主に代わって支払わなくてはならない

・退去費用を支払わなかったとき、借主に代わって支払わなくてはならない

一般的には、どのような人でも連帯保証人になれるわけではありません。以下より、連帯保証人のルールについて解説いたします。

個人契約で連帯保証人になることができる人

個人契約であれば親族に限定されることが多いでしょう。なお、親族とはこのような人たちを指します。

・6親等以内の血族

・3親等以内の姻族

・配偶者※

6親等の血族とはかなりの遠縁に該当します。そのため、現実的には以下に該当する方へ依頼することが大半ではないでしょうか。

・両親のどちらか一人(1親等の血族)

・兄弟(2親等の血族)

・叔父や叔母(3親等の血族)

・いとこ(4親等の血族)

・配偶者の両親のどちらか一人(1親等の姻族)

・配偶者の兄弟(2親等の姻族)

なお、親族であっても一般的に配偶者は連帯保証人になることはできません。なぜなら、借主と生計を一つとしているため、借主と別の連帯保証人として不適格だからです。

法人契約で連帯保証人になることができる人

法人契約における連帯保証人とは、主に法人の代表者や役員、もしくは居住する社員が就任することが一般的です。

大手法人契約であれば連帯保証人の就任が不要というケースもあります。

保証人との違い

保証人とは、連帯保証人より責任性の薄いもの、と解釈すると分かりやすいでしょう。

連帯保証人の責任は極めて重たいものです。借主に未払いが確認された時点で、すぐに連帯保証人は請求を受けたとき「無条件で」支払わなくてはなりません。

しかし、保証人は以下の権利を有しています。

・催告の抗弁権

→まずは本人に請求してください、と主張することが可能

・検索の抗弁権

→本人に資力があるようであればそちらから回収してください、と主張することが可能

連帯保証人にはこのような「主張する(言い返す)権利」はありません。

連帯保証人になってほしいと頼まれたときは、非常に大きな責任が発生することに十分注意してください。同様に、誰かに連帯保証人になってほしいと頼むときは、未払いによって多大な迷惑をかける恐れがあります。くれぐれも未払いなどは起こさないようにしましょう。

賃貸借契約における連帯保証人を変更することはできる?

賃貸借契約で連帯保証人を変更しなければいけない状況が発生したときに、連帯保証人を変更することは可能です。

しかし、「この人に変更しますね」と口約束で変更できるような軽いものでもありません。必要な手続きについては追って解説いたします。

賃貸借契約の連帯保証人を変更する主な理由・事情

賃貸借契約で連帯保証人を変更しなければならない必要性や事情はさまざまです。どのような理由や事情で連帯保証人の変更が必要になるのか、具体的な状況を確認しておきましょう。

連帯保証人の保証能力が著しく低下した

連帯保証人の資力が低下したことにより保証能力が著しく低下したときは、連帯保証人の変更が必要になります。

保証能力の低下には、以下のような事情が考えられます。

・連帯保証人が仕事を辞めた

・連帯保証人が転職して給料が減少した

・連帯保証人の高齢化によるもの

連帯保証人との人間関係が悪化した

連帯保証人と借主の人間関係が悪化もしくは疎遠になり、連帯保証人がその地位から離脱したいという申し出がなされることがあります。

連帯保証人が亡くなった

連帯保証人が死亡したときは、新たな連帯保証人を就任させる準備が必要です。

なお、連帯保証人の地位は原則として相続するものです。新たな連帯保証人を就任させる必要性はないように感じますが、実務では新たな連帯保証人を選定し、保証委託契約を取り交わすことが一般的になっています。

保証会社が変更になった

さまざまな理由で保証会社を変更する必要が生じたときも、連帯保証人を変更するタイミングになりえます。保証会社が変わるタイミングは以下のような背景が想定されます。

・管理会社が変更になり、保証会社を変更しなければならなくなった

・所有者が変更になり、保証会社の変更を求められた

・保証会社が倒産した

過去に借主が滞納などで連帯保証人に迷惑をかけたことがあるときなどは、連帯保証人の協力を得ることが困難になることが予想されます。そのため、連帯保証人を変更することが必要になるのです。

更新のタイミングで拒絶されることがある

賃貸借契約で更新を行うとき、連帯保証人から拒絶されることがあります。これは、連帯保証人が結婚したり、子どもが生まれたりといった、環境が変わったことによって無駄な責任を負いたくないという理由からなされることが多いようです。

更新料の支払いに各種手数料の支払い、手間と費用がかかるタイミングでの変更は避けたいものですので、普段から連帯保証人とのコミュニケーションはよい状態にしておくことが必要でしょう。

なお、更新のタイミングで連帯保証人から拒絶されたときは、引っ越しを考えるベストなタイミングです。更新料・各種手数料の支払いに加え、新しい連帯保証人を探す手間を考えると、そこまで大きな費用差と手間なく引っ越しができるからです。

更新料がない物件も最近は増えてきましたので、一度確認してみてください。

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賃貸借契約の連帯保証人を変更する際の手続き方法

ここでは、具体的に賃貸借契約で連帯保証人を変更する手続きを4つのポイントに分けて解説します。

①新しい連帯保証人を見つける

②必要な書類や情報を準備する

③新しい保証委託契約を借主・連帯保証人・貸主間で「書面」で取り交わす

④前連帯保証人の離脱に関する合意を「書面」で取り交わす

具体的に確認していきましょう。

①新しい連帯保証人を見つける

連帯保証人を変更するには、まず今の連帯保証人を外す前に新しい連帯保証人を見つけることからスタートです。

なぜなら、連帯保証人という制度は貸主を守るために存在するからです。貸主の承諾なくして連帯保証人を外すことはできません。そのため、新しい連絡保証人を連れてくることが借主に求められるのです。

②貸主や管理会社に連絡して審査を行う

新しい連帯保証人を見つけることができたら、貸主や管理会社に連絡をして手続きを進めます。

貸主や管理会社ごと、さらには保証会社の加入有無によって手続きは異なりますが、一般的には何かしらの形で新しい連帯保証人に対して審査が行われます。

③必要な書類や情報を準備する

貸主や管理会社による審査が通過したら、書類の手続きを行います。保証契約は書面で行わなければその効力を発しない、という民法のルールがあるため、書類の手続きは割愛することはできません。

なお、書類の手続きは以下のようなものになります。

・賃貸借契約書(兼保証委託契約書)の再締結

・保証会社との保証委託契約書の再締結

上記の手続きのほか、新しい連帯保証人の印鑑証明が必要になることがあります。もちろん、そのときは契約書類への押印は「実印」になりますので注意しましょう。

④前連帯保証人の離脱に関する合意を「書面」で取り交わす

前連帯保証人がその地位から離脱する合意書を取り交わす必要があります。なぜなら、離脱する合意書を取り交わさないと、連帯保証人の効力がなくならないからです。

実務では、③と④の処理を並行して行うことがあります。そのときは、③の処理が有効に完了することが条件になることがほとんどです。

前連帯保証人に迷惑をかけないように、全ての手続きをスピーディに行いましょう。

【注意】連帯保証人の変更にはお金がかかる!

なお、連帯保証人の変更においては、さまざまな費用がかかります。

事務手数料

管理会社や貸主に対して、契約書の再締結に要する費用としてかかるものです。事務手数料の金額は各管理会社や貸主により異なりますが、多くは家賃の半月分から1ヶ月分程度かかることも珍しくありません。

保証委託料

保証会社に対して、保証を委託するにあたって必要な費用です。保証委託料も同様に家賃の半月分から1ヶ月分程度は覚悟しておくべきでしょう。

出費がかさむことを考えると、連帯保証人の変更に合わせて引っ越しをするのも有効な選択肢です。最近では敷金や礼金が0円の物件も多く存在していますし、連帯保証人がそもそも不要という物件もたくさんあるからです。ぜひ一度チェックしてみてくださいね。

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賃貸借契約の連帯保証人を変更する際の注意点

賃貸借契約で連帯保証人を変更するときには、いくつか注意すべきポイントがあります。

連帯保証人の変更は、賃貸借契約における重要な部分の変更になります。そのため、安易に変更できると考えていると思わぬ事態に陥ることもあるでしょう。

ここから紹介するのは、私が賃貸実務で実際に遭遇した事例です。必ず確認しておいてください。

連帯保証人からの変更申し出には対応できない

連帯保証人が直接貸主や管理会社に連絡をして、連帯保証人を辞めたいことを伝えたとしても、何も起こりません。

理由は2点あります。1点目は、賃貸借契約の主人公は借主であるため、連帯保証人による契約内容の変更申出は意味がないからです。

2点目は、連帯保証人の変更は貸主からみて借主の与信を揺るがす重要な変更といえます。連帯保証人からの申し出であっても、連帯保証人がその地位を離脱することは法律的にも不可能だからです。

以上を踏まえて、連帯保証人の変更に必要なプロセスどおりに話を進めることが求められます。

必要書類の記入漏れに気を付ける

書類の記入漏れや捺印漏れ、必要書類の不足には気をつけましょう。なぜなら、保証契約は書類で締結しなければならないからです。

契約書類や必要書類に不備が生じていると、連帯保証人の変更手続きが完了していないことがあります。そうなると新旧の連帯保証人に迷惑がかかることが考えられますので、手続きは確実に行いましょう。

連帯保証人の審査が必ず行われる

連帯保証人にも審査が行われますので、審査の結果として連帯保証人として認められないことがあります。

連帯保証人が審査に落ちる理由は以下のようなものが考えられます。

・連帯保証人の与信に不安があるケース

・連帯保証人が高齢であるなど意思疎通や継続性に疑義が生じるケース

・連帯保証人が反社会的勢力に該当しているケース

連帯保証人の審査が否決されたときは、また新たな連帯保証人を探さなければなりません。連帯保証人を選ぶときは、審査に落ちる可能性を考えて慎重に選びましょう。

連帯保証人の変更手続きには意外と時間がかかる

連帯保証人の変更手続きには時間がかかることを理解しておきましょう。

実務的には、新たに部屋を借りる手続きとほぼ同様の手続きが発生します。そのため、今日申請をして明日には完了、とはいきません。変更手続きにはいくら早くても1週間以上の時間がかかることを覚えておきましょう。

2020年の制度改正で連帯保証人の負担に変更が加わった

連帯保証人の責任は非常に重く、かつ賃貸契約の連帯保証人となれば無制限に借主の債務を負担することになります。そのため、連帯保証人自身が借主の債務により破産してしまうという事態が頻出しました。

こういった連帯保証人の一方的な不利益が社会問題となり、2020年に民法が改正されています。

現下の民法における連帯保証人について、これより解説いたします。

保証額の上限を定めないといけない

連帯保証人の債務について、上限額を定めることが必要な条件となりました。上限の定めがない連帯保証契約は「無効」です。

よって、連帯保証人に就任する際の条件は、以下の2点となります。

・書面で締結されていなければならない

・上限額が定められていなければならない

これらの条件のいずれか1つでも満たされていなければ、その連帯保証契約は無効となります。

なお、一般的に連帯保証人が賃貸借契約において定められる上限金額は賃料の24ヶ月分程度となっています。

保証人に情報提供をしなければならない

賃貸借契約の貸主は、連帯保証人に対して借主の家賃支払い状況や未払いがあるときはその金額を提供することが求められます。

借主からみれば、自身の支払い状況や未払金額が連帯保証人に筒抜けになるということです。くれぐれも、家賃の支払いを遅れさせないようにしましょう。

借主が死亡したときの対応

借主が死亡した時点で貸主に対して未払い金があるとき、借主が死亡した時点までの未払い金しか連帯保証人に請求されません。

借主が死亡した後に発生した家賃については連帯保証人が請求されることはない、ということになります。

これは、孤独死などにより連帯保証人へ請求する金額が高額化することを回避するための措置です。

お部屋を借りる本人からすれば、あまり関係のない話に思われるかもしれません。しかし、連帯保証人に就任するときは、このようなことも理解しておくことが必要でしょう。

連帯保証人を変更する必要がある場合は早めに手続きを進めよう

賃貸借契約において連帯保証人を変更することは、非常に骨の折れる作業です。しかし、法律的な連帯保証人の意味合いや、実務的な手続きを理解していれば、必要以上に過敏になることはありません。

最近の賃貸業界では、連帯保証人という人的な保証制度から保証会社による機関保証制度に移行しつつあるのが現状ですが、連帯保証人の変更手続きがどうしても必要なときは、今回の内容を参考に速やかに余裕をもって手続きを行いましょう。

ぜひお近くの不動産業者に相談してみてください。