社会人や大学生になって一人暮らしを始めるのはよく聞く話ですが、高校生でも一人暮らしはできるのでしょうか。
今回は、高校生の一人暮らしについて、その方法や問題点、注意すべきポイントなどを解説していきます。
一人暮らしをしたいと考えている高校生の方や高校生のお子さまに一人暮らしをさせる必要性がある親御さんも確認してみてください。
高校生(未成年)でも一人暮らしはできる?
高校生(未成年)が一人暮らしをすることは可能なのでしょうか。また、それは一般的によくある話なのでしょうか。
令和2年度に実施された国勢調査によれば、以下のような統計が発表されています。
国内における一般世帯の総数は、5,570万5千世帯です。そのうち、単身世帯(一人暮らし)の数は、2,115万1千世帯となっています。さらに、18歳未満の単身世帯の数は、7,995世帯しかありません。割合でいうと0.038%とほとんど事例がないくらいの数値です。
統計的に見ると、高校生の一人暮らしは可能ですが、ほとんど見かけない話といえます。なぜ高校生や未成年の一人暮らしはこれほど少ないのでしょうか。その理由を解説していきます。
高校生の一人暮らしにおける法的な考え方
「高校生は未成年である」という前提に立ちつつ、未成年が一人暮らしをするにはどのような法的制限を受けるのでしょうか。
まず、未成年者は法的に手厚く保護されており、未成年者が単独で行った法律行為は、本人もしくはご両親がいつでも後から取り消すことができると定められています。
部屋を借りるという行為は、「賃貸借契約を締結する」という法律行為に該当します。仮に、未成年者が単独で賃貸借契約を締結した場合、未成年者本人およびご両親があとから「この契約はなかったことにしてください」と言えば、契約を破棄させることができます。
では、未成年者の法律行為が有効となるのは、どのような場合でしょうか。
親権者の同意を得たとき
未成年者が法律行為をしようとしたとき、親権者の同意を得た場合はその法律行為が有効に成立するとされています。例えば、未成年者が部屋を借りようとしたとき、親の同意があれば未成年者の責任で借りてもよいのです。
賃貸物件を借りるときの具体的な手続きとしては、以下のような方法です。
① 高校生名義で契約 高校生が居住 親権者同意書の提出が必要
② 親権者名義で契約 高校生が居住 親権者同意書の提出は不要(代理契約と呼ぶことがあります)
どちらも親権者の同意を得たうえで締結する契約であることに代わりはありません。しかし、誰が契約の名義人になるかによって手続きが異なるので注意しましょう。
婚姻による成年擬制
未成年者であっても、結婚をしたときは成年と同様の行為能力を有するとされています。結婚をしても法律行為が制限されている状態では生活に不都合が生じるため、結婚をしたときは成人と同じ扱いになるのです。
このことから、未成年が結婚をした場合においては、未成年者が単独で賃貸借契約を締結することが可能となります。もちろん、この賃貸借契約は確定的に有効なものとして扱われます。
なお、未成年者が結婚後に成年者であるとみなされてから、未成年者のうちに離婚をした場合であっても、未成年者に戻ることはありません。
高校生(未成年者)が一人暮らしをするメリット
では、高校生(未成年者)に限って一人暮らしをするメリットには、どのようなことが考えられるのでしょうか。
通学時間が短縮される
遠方の高校に通っている高校生であれば、高校の近くで一人暮らしをすることにより、通学時間が短縮されるというメリットが考えられます。
時間はお金で買えるものではありません。大好きな部活や、将来のために必要な勉強時間を確保できるという点は、一人暮らしの大きなメリットであるといえます。
自立する精神が養われる
一人暮らしをするには、経済的な自制心と自立が必要です。一人暮らしが完全な自立を意味しているわけではありませんが、少なくとも一定の自制心がないと生活はあっという間に破綻してしまいます。
お金の管理から家事までのすべてを一人で担うことにより、こういった自制心が培われ、自立する精神が養われるのはメリットといえるでしょう。
高校生(未成年者)が一人暮らしをする注意点やデメリット
高校生(未成年者)が一人暮らしをするには、当然のことながらリスクやデメリットも存在しています。
生活がずさんになりがち
一人暮らしは自分一人で生活するため、誰かが代わって家事をしてくれることはありません。どうしても学業や遊ぶことなどを優先してしまい、部屋が汚くなったり、洗濯物が貯まってしまったりと生活全般がずさんになることが懸念されます。
経済的に困窮しやすい
一人暮らしをしてみると、さまざまなことにお金がかかることに気がつきます。また、一人暮らしの自由さにかまけて遊びすぎてしまい、お金がなくなってしまうこともよくある話です。
お金に困窮するだけならまだしも、アルバイトに明け暮れてしまい、学業や部活が疎かになってしまうこともあるでしょう。もはや何のために一人暮らしを始めたのか、その意味さえも失ってしまうことになります。
さまざまな手続きに親権者の承諾が必要
一人暮らしは部屋を契約すればスタートできますが、それ以外にもさまざまな契約をしなければいけません。インターネットや携帯電話など、こういったサービスを利用する場合は、ほぼ親権者の承諾が必要になると考えておきましょう。
また、電気・水道・ガスといったライフラインを契約する場合なども、インターネットのサービスよりハードルは下がりますが、それでも未成年者である場合は親権者の連絡先が必要になることがほとんどです。
学校の規則に抵触する可能性がある
一例ですが、公立高校は受験段階で「本人および父兄の住所地が同じであること」が定められていることもあります。これは、未成年である高校生の身上監護を家庭で担保することの必要性から、定められているものです。
公立高校の場合などは、高校生が一人暮らしをすることを前提としていませんので、一人暮らしが学校にバレた結果、退学処分になってしまうなどのリスクが考えられます。
高校生(未成年)が一人暮らしをするための賃貸物件を選ぶポイント
何らかの必要性があって、高校生(未成年)が一人暮らしをする際には、どのようなポイントに気を付けて賃貸物件を探せばよいのでしょうか。
通学先の学校に近いところを選ぶ
通学先の学校に近いところや交通アクセスがよく通いやすいエリアをできる限り選びましょう。高校生の一人暮らしは部活や勉強などで忙しいことが考えられますので、少しでも自身への負担を減らすことができる賃貸物件を選ぶことがポイントです。
一人暮らし向けの間取りを選ぶ
一人で生活を送るのならば、家賃が比較的安い傾向の一人暮らしの間取りを検討しましょう。
暮らしていくうえで、食費や光熱費、水道代などの生活費は必然的にかかります。負担なく生活が送れる家賃を考えたうえで、お部屋探しするように心がけることが大切です。
駐輪場がある賃貸物件を選ぶ
高校生の移動手段は自転車になることが多いと考えられます。都心の物件や家賃が安い物件では、駐輪場が整備されていないことも多々あります。まず駐輪場の有無を前提とし、そこから家賃などで条件を絞っていくことをおすすめします。
セキュリティ面で不安のない賃貸物件を選ぶ
セキュリティ面はとくに重視すべき一面です。
とりわけ高校生の一人暮らしとなると、どのようなトラブルに巻き込まれるかもわかりません。防犯カメラが設置されていたり、オートロックが設置されていたりするなど、トラブルの発生可能性が低い物件を選ぶことで、リスクから身を守ることが期待できます。
【女性の場合】女性専用の賃貸物件を選ぶ
賃貸物件では、入居者を女性に限定した物件も存在しています。一人暮らしを予定している高校生が女性の場合は、女性専用の賃貸物件を選ぶ選択肢もあるでしょう。
高校生(未成年)の一人暮らし用の部屋は慎重に選ぼう
高校生(未成年)の一人暮らしには、法的な制限や経済的なリスクが存在しています。
それらのリスクやデメリットをよく考え、それでも一人暮らしの必要性や妥当性があると判断した場合のみ、一人暮らしをすることをおすすめします。
また高校生が一人暮らしをするためには、法律的にも経済的にも親権者の同意と協力が不可欠です。さまざまな理由により高校生が一人暮らしを始めるときは、考えられる色々なことを想定して部屋探しをすることをおすすめします。