Question

工事で部屋内での作業が必要と言われ、入られるのが嫌で断り続けたら退去を迫られた。

大家から、建物の耐震工事のため部屋に立ち入らせてもらうという通知が来ました。しかし、私の部屋は散らかっているし、趣味に関するものがたくさんあるので、他人に一歩も部屋に入って欲しくないのです。そのため何度お願いされても無理だと断り続けてきました。すると、それなら賃貸借契約を解除するから出て行ってくれと言われました。部屋に入られるのが嫌なだけなのに…退去って厳しくないでしょうか?

Answer

賃貸人には物件の維持や管理を行っていく義務があります。この義務は民法606条1項で定められており、その義務を遂行する行為を「保存行為」と呼びます。そして同条2項では、賃貸人が保存行為をしようとする時に賃借人はこれを拒めないとあります。すなわち、賃貸人が維持管理等の義務を負っているように賃借人も保存行為に協力する義務を負っているのです。そのため、耐震工事という保存行為に必要な作業を拒否することはできません。

なお、大家さんの契約解除は妥当な要求といえます。耐震工事が行えなかったことで何らかの損害が生じた場合、大家さんは民法717条の「工作物責任」によって損害を賠償しなければならなくなり、そうならないために必要な行為が「保存行為」であり、それを拒むことは大家さんの権利を侵害することになります。また、何度も催促しても聞き入れられなかったことで互いの信頼関係が壊れたと判断され、解約を求める際に必要な「正当な事由」に該当するとみなすこともできます。
退去を望まないのなら、妥協して作業を受け入れる他ありません。日時を決めて終始作業に立ち会うなどの取り決めをしておきましょう。

もし、大家さんが聞き入れられないなら強行しようと合鍵等を使って入室して作業を実施した場合は不法侵入になります。しかし、ほとんどの賃貸借契約書には「緊急事態ややむを得ない場合」には立ち入ることができるという条文があり、この「やむを得ない場合」に該当すれば不法侵入とはなりません。何が該当するかに関してはケースバーケースではありますが、耐震工事が必要であるのにもかかわらず何度も拒否されている状況であれば、その工事の緊急性が判断基準の一つになるかと思われます。