インスタグラムやYouTubeといった個人で発信できる媒体が増え、SNSでも煌びやかで美しい写真や動画がたくさん公開されている時代。
「自分もカメラが欲しい」「自分もカメラで綺麗な写真を撮ってSNSに上げたい」と思う方も多くいらっしゃるはず。そして同時に、「だけど、どんなカメラを買えばいいかわからない」「どんなもの(被写体)を撮ればいいのかわからない」と悩んでいるのではないでしょうか。最初は誰でも、そうした悩みに突き当たるものです。
そこで今回は、歴15年目のプロカメラマンである筆者がおすすめする、カメラの種類や選び方のポイント、初心者の方におすすめの被写体などを紹介します。お住まいでのカメラの保管方法についても解説しますので、高いカメラを持て余すかもしれないと不安な方も安心して、本記事を参考にカメラを始めてみてください。
カメラの種類と特徴
「カメラ」と一口に言ってもいろいろな種類があります。
たとえば、プロ向けのハイエンドなものから初心者向けのエントリーモデルまで揃う「一眼レフカメラ」「ミラーレス一眼カメラ」といったレンズ交換式のデジタルカメラ。または、レンズ一体型のコンパクトデジタルカメラやアクションカメラ、あるいは近年のレトロブームに乗って再評価されつつあるフィルムカメラ・チェキ。こうしたいろいろなカメラから自分に合ったものを選ぶために、まずは基礎知識から学んでいきましょう。
ここでは、主要なカメラの種類別に、メリットや注意点、どのような人におすすめなのかを紹介していきます。
コンパクトデジタルカメラ(コンデジ)
コンパクトデジタルカメラは、気軽に携帯できるレンズ一体型のデジタルカメラを指し、一般的には「コンデジ」と呼ばれています。たとえば、Canonの「PowerShot」やSONYの「CyberShot」のような機種です。
コンパクトデジタルカメラのメリットとしては「片手に収まるサイズで持ち運びやすい」「フルオートやタッチパネルなど直感的な操作性で扱いやすい」「レンズを交換しなくても綺麗な写真が撮れる」点が挙げられます。
注意点としては、「耐久性に不安がある」「複雑な操作設定ができない」「レンズが取り外せないので、レンズが壊れたら本体丸ごと修理に出さなければならない」といったところです。
コンパクトデジタルカメラは、携帯性が高く小型でありながら、それなりに高い性能を発揮してくれます。「いつでもカメラを持ち歩いて気軽に写真を撮りたい方」や「レンズを交換するなど面倒な操作までは必要ないなと思う方」などにおすすめです。
デジタル一眼レフカメラ
デジタル一眼レフカメラは、プロがよく使っているレンズ交換式の高性能カメラです。一般的には「一眼レフ」と呼ばれています。たとえば、Canonの「EOS Kiss X10」やNikonの「D7500」のような機種です。プロも使うので、大型で性能が高く高価なモデルも多いですが、初心者向けの扱いやすいエントリーモデルもあります。
デジタル一眼レフカメラのメリットとしては「画質がいい」「ボケ味などレンズ特性を生かした撮影ができる」「無数にあるレンズから目的に合ったレンズに交換できる」点が挙げられます。
注意点としては、「価格が高い」「ファインダーを覗かないと撮影できない機種が多い」「掃除やメンテナンスが大変」「保管時やレンズを取り替えるときにレンズを取り外す手間がかかる」といったところでしょうか。
デジタル一眼レフカメラは、ある程度のカメラ知識を得た上で、ワンランク上のステップアップとして選択肢に入れる方が多いでしょう。そのため「設定にこだわって写真を撮りたい方」や「レンズにこだわりたい方」などにおすすめです。ただし、エントリー機種であればフルオートでもプロっぽい写真が気軽に撮れるので、一番最初のカメラとしても十分選択の余地はあります。
ミラーレス一眼カメラ
ミラーレス一眼カメラもまた、プロがよく使っているレンズ交換式の高性能カメラです。見た目上はデジタル一眼レフと見分けがつきにくいですが、ミラーレスの名の通り、一眼レフ内部に搭載されている光学式(ミラー式)の反射機構が存在せず、レンズから直接画像センサーに光を取り込むという特徴があります。
一般的には「ミラーレス」と呼ばれており、プロ向けの機種も近年は多いです。たとえば、Canonの「EOS Kiss M3」やSONYの「α6700」のような機種です。一眼レフと同じく大型で高価なプロ向けモデルも多いですが、初心者向けのエントリーモデルは一眼レフよりもさらに扱いやすくなっています。
ミラーレス一眼カメラのメリットとしては「軽量でコンパクト」「電子シャッターが使える」「本格的な撮影を簡単な操作で行える」「目的に合ったレンズを自由に選べる」点が挙げられます。
注意点としては、「バッテリー持ちが悪い」「メーカーによってはレンズレパートリーが少ない」「実際に見えている光景をそのまま見れる光学式ファインダーではなくデジタルの映像を投影する電子ファインダーなので、ファインダー表示に遅延が発生することがある」などです。
ミラーレス一眼カメラもステップアップに向いた機種ですが、デジタル一眼レフカメラと比べ操作性が柔軟で簡単であるため、最初のカメラに選んでもいいでしょう。「本格的な撮影を簡単な操作からでも始めたい」「高画質なカメラが欲しいけど軽いカメラが欲しい」という方におすすめできます。ただし、気合いを入れて高価なモデルを買ってしまうと、操作が難しく持て余す場合がありますので気をつけてください。
アクションカメラ
近年、特に飛躍的な進化を遂げているのが、アクションカメラです。一般的には手のひらサイズ以下の、非常に小型なレンズ一体型のカメラを指して「アクションカメラ」といいます。
アクションカメラの特徴は、さまざまなマウントや拡張パーツで人体や乗り物などに固定して使えること。機種ごとに際立った特徴があることが多いため、アクションカメラと一緒くたに呼ぶよりは型番名で呼ばれることが多いです。たとえば「GoPro」や「OSMO Pocket」などがアクションカメラの一種です。
アクションカメラのメリットは「非常に小型ながら本格的な高画質動画が撮れる」「強力な手ブレ補正が搭載されている機種が多く滑らかな動画が撮れる」「携帯性に特化しているため防水構造や耐衝撃構造などが優れている」などでしょう。注意点としては、「小さいので紛失や盗難のリスクがある」「バッテリーが小型で持ちが悪く、熱暴走しやすい」「細かなピント調整などができない」などがあります。
アクションカメラはスポーツ用途やVLOG用、SNS用などの記録映像として使う場合が多いため、「気軽に記録映像を撮りたい」「手ブレのない動画を残したい」方におすすめです。
フィルムカメラ・チェキ
近年、電化製品でもレトロブームが来ている中で、フィルムカメラにも注目が集まっています。デジタルカメラでは表現できないフィルム写真独特の色味や、現像という工程が再評価されているのです。特に撮影後すぐに現像できる富士フイルム製の「チェキ」は、アイドルやロックバンド等の物販用途として需要が高まっているだけでなく、趣味用途でも若年層を中心に話題となっています。
フィルムカメラのメリットは「デジタルカメラでは撮れない色味の写真が撮れる」「データではなく、明確に写真という形として残せる」などでしょう。注意点としては、「フィルムの数に限界があり、撮れる枚数が少ない」「現像に時間がかかる」「プレビューできないので失敗して撮り直しになる可能性もある」「設定に露出計など専門的な器具が必要で撮影自体が難しい」「保管方法に気を遣う」などがあります。
カメラは全ての種類において保管に気を払う必要がありますが、特にフィルムカメラは変形しやすく結露などの問題で故障や劣化をしやすいため、高温多湿を避け、冷暗所に保管する必要があります。一般的な住宅は、日の当たらない備え付けのクローゼットなどの収納が、冷暗所にあたります。フィルムを数ヶ月保管する場合は、ビニール袋等で密閉したのち冷蔵庫へ入れなければなりません。
フィルムカメラは現在主流ではありません。一度は廃れたアナログ文化の再興として現在盛り上がっていますが、用途としては「あえてフィルム」というような、実用的ではない趣味的な領域であることが多くなります。「フィルムが好き」「フィルムで撮りたい」「データという形で写真を残したくない」方におすすめです。
カメラを選ぶポイント
カメラを選ぶ際には、慎重な検討が必要になってきます。さまざまな情報を参照し、あるいは実際に商品を見て触ってみて、自分に合ったカメラを探しましょう。
ただ、カメラは精密機器であるため判断材料が多く、商品紹介パンフレットなどを見ても選ぶポイントがわからないということも多いのではないでしょうか。
そこで、ここからはプロカメラマンが教えるカメラを選ぶ際の基準、選び方のポイントを紹介していきます。
種類
まず大前提として、「カメラの種類」で選ぶという方法があります。主なカメラの種類は上記に紹介した通りですが、基本的には「カメラが欲しい!」となったとき、直感的に「使ってみたい!」と思った種類を選ぶのが一番です。
私の場合、最初はガラケーやチェキで気軽に写真を撮り始めたのですが、画質面で限界を感じ「高画質の写真を撮りたい!」と思って一眼レフを買った経緯があります。
もしご自身でそういう思いつきがなければ、SNSの写真投稿等を参考にして「こういう写真が撮りたい」というものがあれば、撮影者さんにどんなカメラを使って撮ったのかを直接聞く、あるいは電気店の担当者さんなどに投稿を見せて尋ねるなどして、「このカメラで撮りたい」と思えるカメラの種類を絞り込んでいきましょう。
重さ・大きさ
特に子どもや女性などでは、カメラの重さや大きさも大切になります。あまりに大きくて重いカメラでは、持ち歩くだけでも一苦労ですし、物理的に操作しづらいなどということがあればカメラを嫌いになってしまいかねないからです。逆に、小さすぎるのもそれはそれで操作しづらいかもしれません。
基本的には、実際にお店などでカメラを持ってみて、普段の持ち歩きに困らない程度の軽さであることや、実際に操作してみて操作ボタンやスイッチ類に手や指が届くか、届くにしても操作しやすいかといったことをチェックするのが最も確実です。もし田舎などで実際に触れるお店が周りにない場合は、インターネットなどで調べて寸法を確認し、自分の手の大きさと合うかを確認するのもいいでしょう。
メーカー
カメラを製造しているメーカーのブランドで選ぶというのもおすすめです。最初は、「カメラといえばこのメーカー」というイメージがあればそうした感じで選んでしまってもいいでしょう。実際、筆者が最初に一眼レフを買った時は、まさに「カメラといえばニコンだよね?」という素人なりのブランドイメージにまかせて、500円玉貯金をかき集めてニコンの一眼レフを買いました。(その後、数年使ったのちにCanonへ鞍替えするのですが…)
もし自分の中でそうした具体的なイメージがない場合には、知り合いや友人・家族など近しい人にカメラを使っている人がいれば、その人と同じカメラメーカーのカメラを買ってみましょう。そうすれば、買った後で使い方がわからないなどの問題があっても教えてもらえますし、経験に基づいたアドバイスも受けられます。
費用
身も蓋もない話ですが、「費用」すなわち予算は重要です。特に大切なのは、「予算の限界を超えて無茶をするのは最初のうちはやめたほうがいい」ということ。どんなカメラを買うにしても高価であった昔であればともかく、今では安価なエントリーモデルでもそこそこ綺麗に撮れてしまう時代です。ある程度、自分なりの需要が見出せないうちから機能が高すぎるカメラを無理して買う、というのはおすすめできません。
自身の体感で「これくらいまでは出せる」という肌感覚があればいいのですが、そうしたものがないという方も多いでしょう。自分なりの基準がない場合には、基本的にはカメラに求める性能のレベルで、ざっくりとした費用基準を選ぶことができます。
たとえば、コンデジで「簡単に操作したい」「ある程度高い画質で撮りたい」といった場合には、3万円〜5万円もあればそこそこ優れた機能を備えたモデルが買えます。一眼レフまたはミラーレス一眼カメラで「こだわりなくある程度綺麗な写真が撮りたい」という場合には、中古なら5万円〜7万円程度、新品でも10万円以内でそこそこのレベルのカメラが買えます。ラインナップが少ないアクションカメラなら、3万円〜7万円程度でも4K動画が撮れるモデルが買えます。
性能のレベル | おすすめのカメラ | 価格帯 |
---|---|---|
簡単に操作できる | コンパクトデジタルカメラ・アクションカメラ・チェキ | 数千円〜5,6万円程度 |
簡単に操作できて、ある程度高画質な写真が撮れる | コンパクトデジタルカメラ・一眼レフやミラーレス一眼(エントリーモデル) | 5万円〜10万円 |
画質や設定にある程度こだわれる | 高級コンデジ・一眼レフやミラーレス一眼(APS-Cモデル) | 8万円〜20万円 |
高い画質を持ち幅広い撮影に対応できる・撮影の仕事で使う | 一眼レフやミラーレス一眼(フルサイズ) | 25万円〜70万円 |
撮影したい写真の種類(撮影用途)
「どんな写真を撮りたいか」というのも判断材料としては大きなものです。
たとえば、画面全域にピントが合ったいわゆる「パンフォーカス」的な写真を撮りたい場合と、被写体にはピントが合っていて背景はしっかりボケさせるような写真が撮りたい場合とでは、明確にカメラの種類が異なるわけです。この場合、前者のみでよければアクションカメラやコンデジで十分ですし、後者にこだわりたいのであれば一眼レフやミラーレスという選択肢がおすすめになります。
極端な例でいえば、360度写真が撮りたい場合には360度レンズが搭載されたアクションカメラが必要になりますし、魚眼のような像面歪曲をしっかりきかせた写真を撮りたい場合には、一眼レフorミラーレスのボディのほか「魚眼レンズ」と呼ばれる特殊なレンズが必要になります。
以下に、撮影用途別に適したカメラを表にまとめましたので、参考にしてみてください。
どんな写真が撮りたいか | 適したカメラ |
---|---|
画面全体にピントが合った鮮明な写真 | コンパクトデジタルカメラ・アクションカメラ・一眼レフ・ミラーレス一眼 |
被写体の背景をボケさせる写真 | 一眼レフ・ミラーレス一眼・コンパクトデジタルカメラ |
望遠撮影 | 望遠(光学ズーム)機能があるコンパクトデジタルカメラ・望遠レンズをつけた一眼レフやミラーレス一眼 |
水中撮影 | 防水性能が高いアクションカメラ・水中撮影専用ケースに入れた一眼レフやミラーレス一眼 |
自撮り | アクションカメラ・バリアングル機能付きのコンパクトデジタルカメラやミラーレス一眼 |
魚眼や広角などレンズ特性を生かした写真 | 一眼レフ・ミラーレス一眼 |
360度写真やパノラマ写真 | 360度撮影やパノラマ写真が撮影可能な機能のあるアクションカメラやコンパクトデジタルカメラ |
機能
機能でカメラの種類を選ぶのもおすすめです。この場合の機能とは、撮影機能以外で際立って便利だったり特徴的だったりする機能のことを指します。たとえば「Bluetooth経由でスマホに写真が転送できる」「パソコンやスマホを使ってリモート撮影ができる」、「首からぶら下げたり頭の上に取り付けたりできる」などです。
今の時代、BluetoothやWi-Fiを使った遠隔操作機能は、中級機以上のコンデジやエントリーモデルのミラーレス・一眼レフなど多くのデジタルカメラに搭載されています。一方、後者の機能は、ほとんどのアクションカメラに搭載されています。「フィルム写真に現像して残す」機能が欲しい場合は、フィルムカメラやチェキが該当するでしょう。
明るさ・感度
ここからは少し発展形になりますが、対応している明るさや感度のレベルでカメラの種類を決めることが必要になる場合があります。それは、カメラで写真を撮る場合、暗い場所で明るく撮ろうとするとノイズが走って画質が大きく落ちてしまうのですが、このノイズが出るか出ないかの限界値について、カメラによって差が出るからです。これは後述する「暗所耐性」とほぼイコールの基準となります。
明るさや感度は、本体(ボディ)の場合では「常用ISO感度」、レンズのみの場合では「開放F値」という数値で判断できます。開放F値は一眼レフなどにつけるレンズではF1.2が最高の明るさで、他にはF2.8・4.0・6.3などがあり、数値が小さければ小さいほど明るくなります。逆に常用ISO感度は、数値が大きければ大きいほど明るくなります。
常用ISO感度はコンデジで100〜3200、アクションカメラでは100〜6400、一眼レフの中堅機で100〜25600、ミラーレスの中堅機で100〜51200といったように違いがあります。これは、詳細は省きますが、カメラに搭載された「画像センサー」のサイズが大きければ大きいほど感度が優れるためです。コンデジやスマホは画像センサーが小さく、一眼レフ・ミラーレスはセンサーサイズが大きいため、最大の感度が高くなっているのです。
特に、筆者のように屋内のコンサートホールなど暗所でライブを撮るという仕事をメインに行なっている場合、常用ISO感度は最低でも1600、ある程度感度を上げて撮る場合で3200〜6400はないと厳しいです。
明るさや感度のレベル | 該当するカメラ | 常用ISO感度 |
---|---|---|
あまり明るく撮れない・明るく撮るとすぐにノイズが走る | 安価なコンパクトデジタルカメラ・アクションカメラ | 100〜3200 |
薄暗い場所でもある程度は綺麗に撮れる | 高級アクションカメラ・高級コンデジ・エントリーモデルの一眼レフやミラーレス一眼(APS-C) | 100〜6400 |
薄暗い場所でも高画質に撮れる | ミドルレンジ以上の一眼レフやミラーレス一眼(フルサイズ) | 100〜25600100〜51200 |
対応カードの種類
ある程度カメラを使い慣れている方なら、カメラに搭載されたカードスロットに差し込めるカードの種類でカメラを選ぶ、という方が多いのではないでしょうか。そして、初心者の場合では、カードスロットの種類よりも、対応したカードの価格帯が高いかどうかという点に注意しなければなりません。
一番のおすすめは、コンデジや一眼レフで対応していることが多い「SDカード」、あるいはスマホやアクションカメラに対応している「microSDカード」です。処理速度により値段は変わりますが、安いもの・高いもの、容量の少ないもの・大きいものなど幅広く揃っていますし、他のメディアでも記録媒体として使えるからです。
注意するべきなのはSONY機種の「メモリースティック」や、Canonなどで多い「CFカード」といった独自規格のカードスロットしかない場合です。この場合、カードの価格帯も高めで、予備のカードを用意するだけでもかなりの出費になってしまうでしょう。
カメラとスマホで撮った写真はどう違う?
日々カメラマンとして撮影を行なっていると、スマホの進化には驚くべきものがあります。野外で風景を撮る場合にはスマホで十分、と考えているくらいです。
しかし、それでもプロである私は、仕事の撮影にスマホは使わず、一眼レフやミラーレスを使います。それは、スマホとコンデジ以上のカメラで撮った写真にはいまだに大きな違いがあるからです。
基本的には前述した「画像センサーの大きさの違い」による差が多いですが、それ以外にも違いがあります。ここでは、カメラで撮った写真とスマホで撮った写真の主な違いについて解説します。
画質の違い
単純に「画質」の違いは大きいでしょう。ここでいう画質とは、主に「画素数」と「ズーム時の画質」に分けられます。一般に、画素数が大きければ大きいほど高精細な画像が撮れますが、スマホは一般的にインカメラで500〜700万画素程度、アウトカメラで1200万画素程度です。一方コンデジ以上では、1200万画素〜2000万画素あたりが普通です。そして、一眼レフやミラーレス一眼では、2400万画素〜6100万画素くらいまであります。
これも搭載されている画像センサーの大きさによって差が出ているところで、当然ながら最大でも1200万画素程度しかないスマホよりも、2400万画素以上ある一眼カメラの方が高画質になります。
この差はズームした時の画質にも大きな影響を与え、特にスマホではズームすると大きく画質が落ちます。スマホを使ってズームして撮るとざらざらしたり、平坦な質感になったりと不自然に写ってしまうのはこのためです。これがコンデジ以上になると、レンズの力による光学式ズームの設備も高性能になるので、ズームをしても画質が落ちず鮮明に撮影できます。
カメラの種類 | 画素数 | ズーム時の画質 |
---|---|---|
スマホ | インカメラ:500〜700万画素アウトカメラ:1200万画素 | ズームするとすぐに粗くなってしまう(ザラザラする・不鮮明になる) |
普通のカメラ | 1200万画素〜2000万画素 | ある程度ズームすると画質が落ちる |
ミドルレンジ以上の一眼レフ・ミラーレス一眼 | 2400万画素〜6100万画素 | 最大望遠でも鮮明で高画質 |
暗所での撮影性能の違い
先述したように、カメラの「暗所耐性」は常用ISO感度によって左右されます。ここで追記すると、ISO感度における「常用」は「感度を上げることでノイズがあまり出ない範囲」を指し、それ以上に感度を上げると、どんなに高性能なカメラであってもノイズによるざらざら感が出てしまいます。
暗所耐性とは、つまりは常用ISO感度の高さとイコールになり、ノイズでざらざらしない写真が撮れる=暗所耐性が高い=常用ISO感度が高い、ということになります。
常用ISO感度は、先に記した通り、コンデジ以上であれば機種により1600〜51200あたりの範囲まで拡大されるのに対し、スマホでは最大でも1600程度。暗い場所で多少明るく撮ろうとしただけでも、コンデジ以上のカメラであればある程度は明るく撮れるのに対し、スマホではすぐにノイズが出てザラザラした写真になってしまいます。
カメラの種類 | 常用ISO感度 | 暗所での撮影性能 |
---|---|---|
スマホ | 100〜1600 | 低い(すぐに粗くなる) |
普通のカメラ | 100〜3200(or 6400) | 普通(ある程度までは粗くならない) |
ミドルレンジ以上の一眼レフ・ミラーレス一眼 | 100〜25600(or 51200) | 高い(極端に感度をあげなければノイズすら出ない) |
機能や設定の自由度の違い
スマホは、機種によって標準カメラアプリ(ノーマルカメラ)の機能が違いますが、多くの場合、細かい場所まで設定をいじれません。(一部中国製のスマホなどで、純正カメラでも細かく設定ができる機種もありますが、数が少なく一般的ではないためここでは例外とします)
ここでは、iPhoneやGooglePixelといったOS純正カメラを持つスマホを例に、機能や設定の自由度の違いを表にまとめてみましょう。
カメラ | スマホ | |
---|---|---|
露出調整 | ○ | ○ |
セルフタイマー | ○ | ○ |
オートフォーカス | ○ | ○ |
顔認識 | ○ | △(機種による) |
絞り調整 | ○ | × |
シャッタースピード調整 | ○ | × |
レンズ補正 | △(付け替えにより対応) | ○(デュアルカメラの場合) |
ISO感度調整 | ○ | ×(自動調整) |
色温度調整 | ○ | ×(自動調整 オフは可能) |
プロカメラマンが教える、初心者でも簡単に扱える撮影方法のススメ
上記までのいろいろな基準をもとにしっかりと品定めをして、カメラを手に入れたとしましょう。次に考えなければならないのは「何を、どのように撮るといい写真が撮れるのか」です。
もちろんその前に使い方を一通り覚える必要がありますが、それは最低限でOKです。経験上、説明書を丁寧に読み込む必要はありません。無駄な知識を入れるより、まずはなんでも撮りたいものを実際に撮ってみるというのが何よりも大事です。その方が楽しいですし、撮ってみてから足りないところに気づいた方が、知識をつけたいという欲も出てくるでしょう。
そこで、ここからは、初心者の方向けに、身の回りのいろいろなものを撮影する際に意識するべきポイントを解説していきます。
人物を撮るときは「表情」や「画角」を意識して撮影する
カメラを買うと、人付き合いの豊富な人ならばまず「身近にいる人たちにモデルになってもらって撮影したい!」と思うのが普通でしょう。周りの友人や家族に被写体になってもらうときには、特に「表情」「画角」を意識して撮影しましょう。どんな写真でも、この2つは重要です。
画角はレンズによって左右されますが、特に気をつけるべきはコンデジやスマホのアウトカメラなどにも使われている広角レンズ特有の写像の歪みです。広角レンズの場合、寄りで撮ると顔が伸びてしまいますので、コンプレックスを強調することにもなりかねませんし、表情にも影響が出ます。顔が伸びてしまうのを防ぐには、ある程度離れて、引きの画角で撮ることをおすすめします。
表情や顔の向きに関しても、何よりも大事なのは「自然に楽しんで写ってもらうこと」ではあるのですが、表情を作れない方もいるでしょう。撮る側としては、被写体が自然に「盛れる」角度を探してあげることもおすすめです。一般的には「顎を引いて目線を上にする」というのが定番であり鉄板です。
動物を撮るときは「シャッター音」を意識して撮影する
動物など自分の意思で制御できない生き物を撮る場合、何より気をつけるべきは「音」です。自分の足音や声などもそうですが、カメラを扱う場合には「シャッター音」に気をつけましょう。大きなシャッター音が響くと、耳のいい動物は驚いて逃げてしまうからです。
慣れてくると、他の動物の鳴き声など自然に発生している音と合わせてシャッターを切って誤魔化すなどの工夫もできるようになりますが、理想を言えばシャッター音が出ない設定ができるカメラであると一番です。
盗撮防止のため、コンデジをはじめ多くのカメラでシャッター音が鳴る設定になっていますが、「サイレントシャッター」などシャッター音を調整できるカメラであれば動物撮影に大いに役立つでしょう。なお、ある程度高いミラーレス一眼であればシャッター機構が駆動しない「電子シャッター」により無音での撮影が可能です。
食べ物を撮るときは「色温度」や「シズル感」を意識して撮影する
インスタグラムなどで美味しそうな食べ物の写真や動画を見て、涎を垂らしたことがある方も多いでしょう。せっかくであれば食べ物を美味しく撮りたい、そう思ってカメラを買う方も多いはず。食べ物を撮る際に意識するべきなのは「色温度」と「シズル感」です。
色温度は、画面全体の色合いの暖かさを示す数値で、一般的に数値が低いほど赤みが強くなり、高いほど青みが強くなります。食べ物を美味しそうに撮るには、一般的には太陽光が最も自然に映る色温度にすると美味しそうに写ります。
色温度は「ケルビン(K)」という単位で表され、太陽光が最も自然に映るのは5200Kといわれますので、K調整ができるならそこに合わせましょう。できなければホワイトバランス設定で「太陽光」を選ぶのがおすすめです。
「シズル感」は、食べ物をより美味しそうに見せるための効果のこと。たとえば、温かい料理では「湯気や蒸気」があると美味しそうに見えますし、キリッと冷やした飲み物なら「結露や水滴」があると美味しそうに見えます。これが「シズル感」です。なお、湯気は普通に撮っても写らないことがありますが、露出を明るめにするか、シャッタースピードを調整できるならシャッタースピードを少し遅めにすれば写ってくれるでしょう。
植物を撮るときは「ボケ味」「ピント」を意識して撮影する
植物を撮る場合は、1本の茎に咲く花、というだけではどことなく寂しく写ってしまいます。できれば、「複数の花が集まっており、そこから特定の花にピントを合わせる」という撮り方をするのをおすすめします。
これは、特定の花にだけピントを合わせることで、それ以外の花をぼかすことができるからです。何もないのは寂しいですが、ボケていてもそこに他の花があることがわかれば、見所をしっかり絞った上で賑やかな雰囲気を出すことができます。
こういう撮り方をする場合は、スマホやコンデジよりも一眼レフやミラーレスがおすすめです。
静物を撮るときは「影」を意識して撮影する
最後に、瓶や積み木といった静物を撮るときに意識すべきことを紹介します。静物の中でも無機物は、単体で生命感を出すということはできないので、シルエットや影などを使って立体感や存在感を高めるのがいいでしょう。
しっかりとした影を作る場合は斜め前から光を当てるのをおすすめします。ただ1灯だけでは背景が暗く不自然な絵になるため、正面から別の光を当てるといいでしょう、
プロカメラマンがおすすめする、初心者向けのカメラ被写体(撮るもの)4選
カメラを手に入れたばかりの初心者の場合、「何を撮ればいいか」悩む方も多いのではないでしょうか。そうした場合は、初心者でも比較的撮りやすい被写体から撮り始めてみるといいでしょう。そうしたものを撮ることで写真の楽しさに目覚めていくことができ、写真の技術を磨いていくことができるからです。
ここでは、プロカメラマンがおすすめする、初心者向けのカメラ被写体を4つ紹介します。
自然(花や風景など)
まずおすすめできる被写体は、「自然」です。特に植物や森、山といった被写体は動き回ることもなく立っている存在なので、初心者でも自分にとって素晴らしいと感じる画角やピントを探しやすいからです。
昆虫や野生動物などはある程度動き回るため難しいかもしれませんが、タイミングによっては理由もなく静止していることもあります。そうしたタイミングで狙えば、特に設定をいじったりレンズを振り回さずともしっかり写ってくれるでしょう。
建物
周りの風景で動かないものといえば、建物もおすすめです。特に、東京スカイツリーや東京タワー、六本木ヒルズなど誰もが知るランドマークは、多くの人が写真に撮っており、夜にはライトアップもされているということもあって、撮影しやすいでしょう。
人物・ペット
カメラを買ったとき、身の回りの人物やペットを最初の被写体にする方も多いでしょう。気心の知れた友人や仲間であれば、快く写ってくれるでしょうし、シャッター音をあまり立てなければペットも警戒することなく写ってくれます。
ペットの動きをネタにしたインスタグラムのリール動画やTikTok動画も溢れている時代です。建物や自然など動かないものを撮るのとは違った、動体撮影の基本技術を鍛えることもできます。
食べ物
毎日必ず目にするものといえば「食べ物」でしょう。そして、食べ物の写真はインスタグラムなどSNSの基本でもあります。先述したようにシズル感と色温度を意識して、暖かめなホワイトバランスで角度をつけて撮ってみて、美味しく見える角度を探してみましょう。
時には引きではなく、フォークに絡まったパスタ麺のアップなど一部分だけを強調した「寄り」のショットも織り交ぜることで、さらに美味しそうに見えるはずです。
カメラの最適な保管方法や場所、注意点
さて、カメラはいろいろな場所で使えるものですが、本来、ぞんざいに扱ってはいけない精密機器。特にフィルムカメラは劣化しやすいため、適した保管方法というものがあります。もしカメラを買うのなら、自宅内に最適な場所がないかを探し、保管方法にも気を配ってみましょう。
そうすることで、せっかく買ったお気に入りのカメラを長い間、不調も故障もなく快適に使い続けることができます。ここでは、一般的な住宅でカメラを保管する上で最適な場所や保管方法について解説します。
カメラの保管方法
カメラの保管方法として、必ず守るべき原則がいくつかあります。それは以下のような原則です。
・高温多湿の環境を避ける
・埃が入らないように密閉保管する
・ボディのキャップやレンズキャップ・リアキャップがある場合はつけて保管する
・長期間使わない場合はバッテリーを外す
高温は、カメラの内部機能の故障を招く危険性があります。多湿は、カメラボディ内やレンズ内にカビが発生するリスクがあります。埃などの細かいゴミも、レンズに入り込むことでフォーカス機能がしっかり働かなくなる危険があります。バッテリーに関してはつけっぱなしにしていると過放電を起こし劣化したり使えなくなったりしてしまいます。
そのため、カメラを保管する場合は、適当に押し入れに入れるなどせず、以上の原則を守ってしっかりと保管しましょう。
カメラの保管に最適な場所
それでは、ご自宅など一般的な住宅内でカメラの保管に最適な場所はどこなのでしょうか。まずは、保管場所についての最適な条件を軽くおさらいしておきましょう。
・高温でない場所
・高湿度でない場所
・できる限り密閉性が高い場所
・埃やゴミなどがない場所
一般的な住宅で以上を全て満たす場所は、たとえば以下のような場所が挙げられます。
・床下収納
・全居室収納
・トランクルーム
床下収納やトランクルームは、直射日光が当たらない場所という意味では最適です。注意すべきは湿度と埃ですが、湿度は除湿剤や除湿庫を使うことで、埃に関しては別途キッチンボックスなど密閉性の高いケースに入れれば解決できるでしょう。クローゼットなどの居室内収納でも、直接日光が当たらない場所にあるなら大丈夫です。
カメラの保管における注意点
以上までにもいくつか保管における注意点(主に場所や保管条件に関して)を記載していますが、改めてカメラの保管における注意点をまとめておさらいしてみましょう。カメラの保管の際の注意点は以下の通りです。
・高温多湿の環境を避ける(故障やカビの発生を防ぐ)
・密閉環境で保管する(埃の侵入を防ぐ)
・ボディのキャップやレンズキャップ・リアキャップがある場合はカメラからレンズを外し、キャップをつけて保管する
・レンズやカメラに乾燥した布を巻いて保管するとなお良し
・長期間使わない場合はバッテリーを外す
ただし、リアキャップを持っていないなどの場合には、逆にレンズをボディにつけっぱなしにしておいた方が安心です。レンズ内に埃やチリの侵入をさせないというのが本来の目的であるからです。当然ですが乾燥した布を巻く際には布から埃が入らないよう各部のキャップはしっかり閉めましょう。
また、バッテリーは保管方法を間違えるとすぐに劣化してしまうので、特に取扱いに気をつけましょう。なお、保管時の理想的なバッテリー容量は40〜50%ほどです。
趣味としてカメラを楽しんでみては?
おすすめのカメラの種類とカメラを選ぶためのポイント、スマホで撮った写真との違いから、初心者にもおすすめの被写体や撮り方のコツ、カメラの保管方法といったところまで網羅的に解説しました。プロカメラマンとしての経験も盛り込んだ上で詳細に書いておりますので、参考にしてみてください。
カメラは繊細なものなので、使用時はもちろんですが、保管する時にも気をつけなければなりません。保管する場合には、本記事で紹介した注意点や保管方法のポイントをしっかり意識して、自宅に条件の合う場所があれば意識して保管するようにしましょう。