IoT家電は、ネットを介して操作や機能の追加などを行える家電です。聞いたことはあるものの「本当に便利なのか?」「賃貸の物件でも導入できるのか?」など、疑問を持っている方もいると思います。
そこで今回は、IoT家電の選び方やメリット、実際に使ってみた体験談などをご紹介します。IoT家電の仕組みや種類なども解説しているので、IoT家電に興味がある方や導入を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
IoT家電とは

IoT家電のIoTとは、Internet of Thingsの略称であり、直訳するとモノのインターネットという意味です。
私たちの身の回りにある身近な家電にIoT技術を応用したものを、IoT家電やスマート家電と呼びます。ネットにつながることで、遠隔操作したり機能を拡張したりできる点が、一般的な家電とは異なる特徴です。
IoT家電には、エアコン・洗濯機・ロボット掃除機・冷蔵庫などさまざまな種類があるほか、従来の家電をあとからIoT化するスマートリモコンやスマートスピーカーなども登場しています。
IoT家電の仕組み
IoT家電の多くは、Wi-FiまたはBluetoothに対応しています。自身が直接ネットに接続したり、連携したスマホやタブレットなどを通してネットにアクセスしたりすることが可能です。
明るさや温度、人感などをトリガーに機能を実行するタイプのIoT家電には、各情報を取得するためのセンサーも搭載されています。
一部のスマートホーム家電は家電同士での接続・連携にも対応しているものの、これまではThread・Z-Wave・ZigBeeなどの無線規格が乱立していました。しかし、2021年にスマートホーム向けの新たな共通規格である「Matter」が登場したのです。規格の策定団体には、Amazon・Apple・Googleといった大手プラットフォーマーも参加しているので、今後はメーカーの垣根を超えたデバイスの連携に期待できます。
IoT家電で暮らしが快適に
筆者は、実際にいくつかのIoT家電を導入して、スマートな暮らしを実現しています。主に活用しているIoT家電は以下の4種類です。
・スマートロック
・ロボット掃除機
・紛失防止タグ
・スマートリモコン
各スマートホーム家電によって生活がどのように変わるのか、以下で詳しく解説します。
スマートロックでドアノブに触れず鍵を施錠&入室する

スマートロックは、賃貸アパートやマンションの鍵にあとから取り付けてオートロック化できるIoT製品です。ペアリングしたスマホが一定の距離を離れると自動的に施錠し、近づくと自動で解錠できます。両手が荷物で塞がっている状態でも、ハンズフリーで自宅の鍵を開け閉めすることが可能です。
アプリをインストールしたスマホで合鍵を共有したり、外出先から遠隔操作で解錠したりもできるので、親しい友人や親戚が来たときにも物理鍵を使わずに対応しています。通常の鍵を便利に拡張するIoT対応製品なので、オートロックの物件であればあえて取り付ける必要はないかもしれません。
ロボット掃除機で外出中に掃除を済ませる

面倒な家事の筆頭でもある普段の掃除は、その大部分をロボット掃除機に任せています。
筆者が利用しているロボット掃除機「ルンバ692」は、IoT家電同士を連携できるWebサービス「IFTTT」に対応しているのが特徴です。スマホのGPSを利用して外出を検知すると、自動的に掃除をスタートするように設定しました。
買い物や仕事などで家を離れるだけで、帰宅する頃には掃除が完了しています。自分で掃除しなければならない場所は大幅に減り、無意識のうちにきれいな部屋をキープできるのです。
紛失防止タグで財布の置き忘れや紛失を防ぐ

鍵や財布などの貴重品には紛失防止タグを取り付けて、外出先での置き忘れや紛失などをあらかじめ対策しています。
紛失防止タグは、スマホとのペアリングが解除されると、アプリに通知を送りながらその位置を記録し、効率的に探せるようにサポートするアイテムです。過去に1度だけ財布をカフェに置き忘れてしまったことがありましたが、お店を出たあとにスマホに通知が届いたので、すぐに引き返して紛失や盗難を回避できました。
スマホから照明やテレビ、エアコンを操作する

照明やテレビ、エアコンなどの家電製品は、赤外線リモコンの機能をスマートリモコンに集約し、スマホから操作しています。
スケジュール機能を活用して朝の決まった時間にテレビや照明を自動的に点けたり、冬には外出先からエアコンを操作して、帰宅前にあらかじめ部屋をあたためたりすることも可能です。
赤外線リモコンで操作するタイプの家電であれば、古いタイプでもスマートリモコンに学習させられるので、賃貸アパートでも簡単にスマートホームを実現できます。
IoT家電のメリット

IoT家電には、さまざまなメリットがあります。代表的なメリットを以下で3つ紹介するので、参考にしてみてください。
家事の自動化・効率化
IoT家電のわかりやすいメリットは、家事を自動化・効率化できることです。例えば、ロボット掃除機を導入すると好きなタイミングで掃除を任せられるので、自分で手を動かす必要がありません。
一部のオーブンレンジのようなIoT対応の調理家電であれば、スマホでレシピをチェックして人数を決めると、食材と分量が表示されます。そのため、献立を考える手間も軽減することが可能です。
面倒な家事を隙間時間に片づけられるので、時間を有効に活用できます。
アップデートで機能や情報が増える
IoT家電は、ネットに接続できるという特徴を活かして、ソフトウェアをアップデートできる場合があります。不具合が見つかった場合に修正できるのはもちろん、家電によっては機能の追加も可能です。
調理家電の場合、作れるレシピがどんどん増えていくこともあるので、メニューのレパートリーを広げられます。複数の料理が作れるガスコンロ二口以上の物件や、美味しいお水が出る浄水器付きの物件などにIoT対応の調理家電を組み合わせると、さらに料理を楽しめるはずです。
外出時の不安を解消できる
一部のIoT家電は、防犯対策にも有効です。例えば、スマートリモコンで照明をコントロールしたり、照明自体をスマート電球に取り換えたりした場合、外出先からオン・オフの操作をするだけで防犯効果に期待できます。
外出先から操作できるタイプのIoT家電であれば、電源の消し忘れにすぐ対応できるのも嬉しいメリットです。
ペットやお年寄りがいる家庭には、遠隔操作できるスマートカメラをおすすめします。外から自宅の様子をチェックできるので、事故の防止にもつながるでしょう。オートロックの物件にスマートカメラを組み合わせれば、より安心して外出できます。
IoT家電の注意点・デメリット

IoT家電は非常に便利な一方で、デメリットや注意しなければならない点もあります。代表的な注意点を以下で3つ紹介するので、メリットと合わせて参考にしてみてください。
安定したネット環境が必須
IoT家電は、ネットに接続できるという点が特徴であり魅力です。自宅にネット回線がなければネットを利用する機能が使えないので、普通の家電と変わりません。
無線LAN対応の物件やインターネット無料の物件であれば、IoT家電を使うのに必要なネット環境を簡単かつ少ないランニングコストで整えられます。
障害や電池切れに注意
IoT家電は、通信障害が発生すると、本来の性能を発揮できなくなる場合があるので注意が必要です。
実際に筆者も、外部サーバーに障害が発生した際、スマートリモコンが正常に動作しなくなってしまった体験をしています。もしスマートリモコンで家電を操作していたとしても、必ず本来のリモコンもすぐ使える場所に保管しておきましょう。
また、電池切れにも注意が必要です。とくに、スマートロックは電池が切れてしまうと自動解錠ができず、家から締め出されてしまうリスクがあります。物理鍵は、肌身離さず持ち歩くことが必須です。
不正アクセスのリスク
ネットに接続するという性質上、IoT家電には不正アクセスのリスクが必ず伴います。気にしすぎる必要はないものの、IoT家電そのものや連携するスマホ、Wi-Fiルーターのソフトウェアバージョンは、常に最新版にアップデートしておきましょう。
それでも気になる方は、スマホにウイルス対策ソフトを導入することも検討してみてください。
IoT家電の種類

IoT家電には、さまざまな種類があります。以下では、定番のIoT家電とその機能を見ていきましょう。
照明
IoT対応の照明は、スマート電球やスマートシーリングライトなど設置場所に合わせたタイプがあります。多くのIoT照明はスマホとの連携に対応しており、スマホをリモコン代わりにして調光や調色が可能です。また、外出先からスマホで操作できるモデルもあります。
掃除機
代表的なIoT対応掃除機は、「ルンバ」シリーズのようなロボット掃除機です。スマホから掃除をスタートさせ、きれいになると自動的に充電ドックに帰るので、ほかの家事や作業をしながら掃除を済ませられます。
GoogleアシスタントやAmazon Alexaなど、音声アシスタントに対応しているモデルの場合は、声をかけるだけでも操作可能です。
エアコン
IoTエアコンは、スマホからの操作に対応しています。風量や風向き、タイマーなど、従来はリモコンで操作していた機能をスマホでコントロール可能です。
無線LAN内蔵エアコンの場合は、外出先からも操作できます。各種センサーを内蔵する高機能なモデルになると、温度や湿度、人の不在などをスマホからチェックできるのも便利なポイントです。
電気の使用量から電気代を概算できるモデルもあるので、コストが気になる方にも適しています。
冷蔵庫
生活に欠かせない家電である冷蔵庫にも、IoTに対応するモデルがあります。
IoT対応の冷蔵庫は、ドアの閉め忘れや給水タンクの水不足を検知することが可能です。スマホに通知を送ったり、位置情報から買い物していることを認識して、庫内を冷却したりできます。
また、モデルによっては重量を検知する専用のプレートが付属しており、食材の残量をスマホから管理することが可能です。
炊飯器
炊飯器のIoT対応モデルは、炊飯の開始や完了、エラーなどの通知をスマホに送信できます。炊飯完了までの残り時間や、保温してから経過した時間なども確認可能です。
食感の炊き分け機能を搭載した炊飯器の場合、スマホで仕上がりについてのアンケートに回答するだけで、少しずつ好みの食感のご飯に近づけられます。
洗濯機
IoT洗濯機の特徴は、動作状況を連携したスマホから確認できることです。運転終了時にプッシュ通知を送ったり、衣類の取り込み忘れを知らせたりできるモデルもあります。
外出先から洗濯を開始できるほか、帰宅のタイミングに合わせて予約時間も変更可能です。
テレビ
すでに身近になりつつあるIoT家電のひとつが、テレビです。YouTubeやNetflixといった動画配信サービスをテレビの大画面で楽しめるのは、IoT化のわかりやすい例と言えます。
スマホからテレビを操作したり、別の部屋にあるレコーダー内に録画保存された番組を視聴したりできるのも、IoTテレビならではです。
加湿器
IoTに対応する加湿器も、電源のオン・オフや運転モードの変更などの操作をスマホアプリから行えます。
湿度や温度をスマホの画面から確認して加湿量を調節したり、タイマーを設定したりするなどより状況に合わせた使い方が可能です。
扉の鍵
スマートロックは手軽に導入しやすく、生活の変化も体験しやすいIoT家電です。一般的な扉の鍵に被せるように取り付けると、スマホから解錠・施錠を操作できます。
スマホの位置情報やBluetooth接続を利用して、オートロックや近づくだけでの自動解錠なども実現可能です。スマホで合鍵をシェアできるほか、解施錠の履歴もスマホからチェックできるので、職場にいながら子どもの帰宅を確認できます。
スマートリモコン
赤外線リモコンを学習し、スマホから操作できるようにするのがスマートリモコンです。古い家電でも関係なく登録できるので、すでに自宅にある複数の家電をまとめてIoT化できる場合もあります。
モデルによっては照度や人感などのセンサーも内蔵されているので、センサーから得た情報をトリガーに自動で家電を操作可能です。外出先から家電を操作したり、スマートスピーカーと連携して音声でコントロールしたりもできます。
IoT家電の選び方

IoT家電にはさまざまな種類があるので、いざ選ぼうとすると迷ってしまうかもしれません。そこで、これからIoT家電の導入を検討される方向けに、IoT家電を選ぶポイントやおすすめのIoT製品について解説します。
用途・目的にあわせて選ぶ
まず、IoT家電で何をしたいか?どんな家事や作業を効率化させたいか?といった、用途や目的に合わせて選ぶことが重要です。
まずはお試しで導入したいなら「スマートスピーカー」がおすすめ
はじめてIoT家電を導入する方には、スマートスピーカーがおすすめです。話しかけるだけで天気やニュース、スケジュールなどを確認できるので、手軽にIoTの便利な側面に触れられます。
また、モデルによっては、スマートスピーカー対応の家電も操作可能です。例えば、Amazonの「Echo Dot 第5世代」であれば温度センサーが内蔵されており、指定の温度をトリガーにエアコンや扇風機を操作できます。
既存の家電をIoT化させるなら「スマートリモコン」がおすすめ
スマートリモコンを導入すれば、赤外線リモコンで操作するタイプ限定ではあるものの、すでに自宅にある家電を簡単にIoT化できます。
あらゆる赤外線リモコンを1台のスマートリモコンに集約し、スマホから操作することが可能です。さらに「Nature Remo 3」のように、温度・湿度・照度・人感などのセンサーが搭載されている場合、センサーから得た情報をトリガーに家電を操作できます。
面倒な家事を軽減したいなら「ロボット掃除機」や「オーブンレンジ」などがおすすめ
IoT家電のメリットである家事の負担軽減や効率化を重視したい方には、ロボット掃除機やオーブンレンジなどがおすすめです。
ロボット掃除機の「Eufy Clean G40 Hybrid+」は、1台でゴミの吸引だけでなく、床の水拭きもできます。専用のゴミ収集ステーションも付属するので、ゴミ捨ての手間も抑えることが可能です。
献立を考えたりレシピを調べたりするのが面倒な方には、パナソニックのオーブンレンジ「ビストロ NE-UBS5A」をおすすめします。本体には最小限のボタンしか搭載されておらず、スマホアプリからメニューを送信して調理することが可能です。
スマートホーム化するなら「スマートロック」や「スマートカーテン」などがおすすめ
手軽にスマートホーム化を実現したい方には「SADIOT LOCK 2」のようなスマートロックがおすすめです。賃貸のマンションやアパートのドアも簡単にオートロックにできるほか、iOS・Androidを問わずスマホを鍵として使えます。
また、スマートホームに興味があるなら「SwitchBot カーテン」も見逃せません。スマホアプリの操作でカーテンを開閉でき、内蔵の光センサーを利用した自動化にも対応しています。もちろん工事不要で設置できるので、導入のハードルも高くありません。
接続方法から選ぶ
IoT家電の接続方法には、主にBluetoothとWi-Fiの2種類があります。
Bluetooth | Wi-Fi | |
---|---|---|
メリット | ・消費電力が少ない ・設定が簡単 | ・通信距離が長い ・直接ネットに接続できる |
注意点 | ・通信距離が短い | ・初期設定がやや手間 |
通信できる距離が短いBluetoothは、スマートロックやスマートカーテン、紛失防止タグなど近距離で操作するタイプのデバイスに多く採用されています。
一方、Wi-Fiに対応するIoT家電は、ルーターを介して直接ネットに接続できるので、外出先から操作できるタイプが多くラインナップされています。
セキュリティ性から選ぶ
セキュリティを重視したい場合にも、適したIoT家電は多くあります。例えば、スマート電球やスマートシーリングライトは、外出先から照明のオン・オフを操作できるので、いつでも在宅しているように見せかけることが可能です。
スマホから映像をチェックできるスマートカメラも、防犯対策にピッタリのIoT家電として挙げられます。
操作方法から選ぶ
IoT家電の多くは、連携したスマホから操作します。Wi-Fiに接続できるタイプのIoT家電の場合は、専用のアプリをインストールすると外出先からも操作可能です。
また、音声操作に対応するIoT家電もあります。本体が音声認識に対応しているモデルのほか、スマートスピーカーと連携できるモデルもあり、どちらも声をかけるだけで操作できる点が魅力です。両手が塞がっている状態でも、スマートに家電をコントロールできます。
ブランドやメーカーから選ぶ
好きなメーカーや個人的に信頼しているブランドがある場合は、そのメーカー・ブランドの中から選ぶのも、IoT家電を購入する際の選び方のひとつです。
SwitchBotシリーズのように、同じブランド同士のアイテムを連携させることで、さまざまなシーンに対応できる柔軟なスマートホームを構築できる場合もあります。
IoT家電の導入で暮らしを充実させよう
IoT家電の選び方やメリット、実際にIoT家電を導入してみた暮らしの例などを紹介しました。既存の家電をIoT家電に置き換え、外出先からの操作やスケジュール機能などを駆使するだけで、簡単にワンランク上のスマートな生活を実現できます。
ライフスタイルに合わせて、少しずつ取り入れてみるのもおすすめですよ。