「鉄筋」と「鉄骨」という言葉はよく似ていますが、その意味は大きく異なります。今回
は、鉄筋コンクリート造と鉄骨造の違い、防音性能やメリット・注意点などを詳しく解説します。
鉄筋と鉄骨の違いを知って、自分に合った物件を探したい人は、ぜひ最後まで読んでみてください。
鉄筋コンクリート造と鉄骨造の違いとは?
マンション、アパートなどの物件を探すときに目にする「鉄筋」「鉄骨」「木造」といった用語は、建物を支える構造の種別を示しています。構造別の特徴は、以下のとおりです。
【構造別の特徴】
防音性 | 耐震性 | 耐火性 | 耐用年数 | 断熱気密性 | 賃料 | 主な規模・階数 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
鉄筋コンクリート造(RC造) | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | △ | 低層・中高層マンション |
鉄骨造(S造)重量鉄骨造 | ◯ | ◎ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | 低層・中高層マンション |
鉄骨造(S造)軽量鉄骨造 | △ | ◯ | △ | △ | ◯ | ◎ | 2階建てまでの小規模アパート |
鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造) | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | △ | 大規模高層マンション |
木造(W造) | △ | △ | △ | △ | ◯ | ◎ | 2階建てまでの小規模アパート |
なお、上記の表は、賃貸住宅の一般的な傾向を示しています。設計や築年数などにより個別の違いが大きく、必ずしもこの限りではありません。例えば、木造でも近年の技術向上によって3階建て以上が可能で、高い耐火性や耐震性をもつ物件もあります。
次項からは、構造別の特徴、仕組み、メリットなどを確認していきましょう。
鉄筋コンクリート造(RC造)とは
「鉄筋」は鉄筋コンクリート造のことで、RC造とも呼ばれます。鉄筋コンクリート造の主な特徴について、解説します。
鉄筋コンクリート造の特徴と仕組み
鉄筋コンクリート造(略称: 鉄筋、RC造、英語: Reinforced-Concrete)は、圧縮に強いコンクリートと、引っ張りに強い鉄筋が補い合う構造です。鉄筋を組み立てて型枠で囲み、中にコンクリートを流し込んでかためてから、型枠を外して造ります。
その性能から、集合住宅に適した構造と考えられており、2階建てから超高層タワーマンションまで広く用いられています。大きな特徴は、硬くて重いコンクリートによって、床・壁・柱・梁が隙間なく一体的に造られることです。ひとつの石から掘り出す彫刻のような、かたまりをイメージするとわかりやすいでしょう。
鉄筋コンクリート造には、柱・梁のフレームで構成された中高層マンションに多い「ラーメン構造」と、柱がなく壁と床で構成され、2〜5階建てまでの低層マンションに多い「壁式構造」があります。
鉄筋コンクリート造のメリット
鉄筋コンクリート造は集合住宅に適した構造とされ、多くのメリットがあります。以下では、鉄筋コンクリート造のメリットについて詳しく解説します。
耐震性・耐久性が高い
鉄筋コンクリート造は剛性が高く、揺れが少ない構造であり、耐震性に優れています。ただし、建築基準法の新耐震基準制定の前後で耐震性が大きく異なりますので、新耐震基準以降の物件がおすすめです。
1981年6月1日以降に建築確認を受け、おおむね1983年以降に完成した建物が該当します。国税局で定められた法定耐用年数は47年であり、耐久性が高い構造とされています。
耐火性がある
コンクリートという材料そのものに耐火性があります。長時間の火災に耐えて崩落せず、火災が燃え広がるまでの時間も長いため、安全性が高いです。
防音性・気密性に優れている
壁や床が重いコンクリートで、隙間なく一体的に造られていることから、防音性が高くなります。また気密性も高くなるため、隙間風がなく、快適で安定した室内環境が得られます。
デザイン性があるものが多い
最近のデザイナーズマンションなどでは、コンクリート打ちっぱなしの素材感を活かした、モダンで洗練された高級感のある物件が増えています。
鉄筋コンクリート造の注意点
鉄筋コンクリート造はメリットだけでなく、注意すべき点もあります。以下では、鉄筋コンクリート造の注意点について解説します。
賃料が高い傾向にある
鉄筋コンクリート造は、施工に手間や期間が多くかかり、建築コストが高くなります。このため、ほかの構造より賃料が高くなる傾向があります。
大きな柱型・梁型を用いる必要がある
柱と梁でフレームを構成する一般的なラーメン構造では、部屋の隅に大きな柱型、天井に梁型ができます。このため、実質的な空間が狭くなり、家具の配置にも制約を受ける場合があります。
古い物件の断熱性が不十分である場合がある
築年数の古い鉄筋コンクリート造は断熱性が不十分なことが多く、かつ気密性が高いため、結露やカビが発生しやすいことがあります。鉄筋コンクリート造を選択する場合は、新しい物件がおすすめです。
鉄筋コンクリート造がおすすめの人
耐震性、耐火性や高級感があり、特に防音性はほかの構造より優れています。賃料は高めになりますが、住まいの安心感、静かさやプライバシーにこだわりたい人には、鉄筋コンクリート造がおすすめです。
鉄骨造(S造)とは
鉄骨は鉄骨造のことで、S造とも呼ばれます。鉄骨造の主な特徴について解説します。
鉄骨造の特徴と仕組み
鉄骨造(略称: 鉄骨、S造、英語: Steel)は、鉄製の柱・梁で建物を支える構造です。工場で製作した柱や梁のフレームを現場で組み立て、間仕切り壁や外壁などを順次設置して造ります。
鉄筋コンクリート造が、粘土細工のように一体的なかたまりを造るのに対して、鉄骨造は模型のように部品を組み立てるイメージです。鉄骨造は高い強度の割に軽量なため、商業施設や工場のような大きな空間や高層ビルなどに多く用いられています。
また鉄骨造には、建築業界での呼称として「重量鉄骨造」と「軽量鉄骨造」があり、それぞれの特徴は大きく異なっています。
「軽量鉄骨造」と「重量鉄骨造」の違い
軽量鉄骨造と重量鉄骨造の違いは、以下のとおりです。
・重量鉄骨造
厚さ6mm以上の鋼材による大きな柱・梁と、コンクリートの床で構成されたものを言います。強度が高いため、中高層マンションに多く用いられています。
・軽量鉄骨造
厚さ2.3〜4.5mm程度の鋼材による小さな柱・梁と、軽量な床で構成されたものです。柱型が壁の中に納まっているのも特徴で、工法としては木造に近い性質をもっています。ハウスメーカー製のプレハブ建築に多く、主に2階建てまでのアパートに用いられています。
鉄骨造のメリット
鉄骨造も優れた構造であり、多くのメリットがあります。以下では、鉄骨造のメリットについて解説します。
耐震性・耐火性・防音性・耐久性・品質安定性が高い
重量鉄骨造の耐震性や耐火性、防音性は鉄筋コンクリート造に近く、鉄骨は工場で製作されるため、品質が安定しているのも特徴です。耐震性については、鉄筋コンクリート造と同様に、新耐震基準以降の物件がおすすめです。
法定耐用年数は重量鉄骨造では34年ですが、軽量鉄骨造は仕様によって19〜27年程度であり、木造の22年と近いものになっています。
賃料(軽量鉄骨の場合)が安い場合が多い
軽量鉄骨造では、使用される鋼材の数量が少なく建築コストが低いため、賃料が抑えられる傾向があります。
鉄骨造の注意点
鉄骨造の耐火性は木造より優れていますが、鋼材は火災で熱されると強度を失います。耐火被覆で鉄骨を覆うことにより耐火性を保っており、構造体そのものに耐火性がある鉄筋コンクリート造よりは劣ります。詳しくは後述しますが、防音性も木造より優れているものの、鉄筋コンクリート造には及びません。
また、軽量鉄骨造の場合、耐火性、耐久性や防音性などは、木造に近いものになります。
鉄骨造がおすすめの人
重量鉄骨造は、多くの点で鉄筋コンクリート造に近く、バランスが良いため、性能にも賃料にもこだわりたい人におすすめです。軽量鉄骨造は、鉄骨の安心感とリーズナブルな賃料が特徴で、物件数も豊富です。
鉄筋コンクリート造と鉄骨造ではどちらの防音性が高い?
鉄筋コンクリート造は、外壁や隣の住戸との界壁・床などが、厚さ15cm程度以上のコンクリートによって隙間なく一体的に造られているため、防音性が高いことが特徴です。
鉄骨造では、軽量化のために、外壁や界壁が軽量鉄骨にボードなどを貼った空洞型であったり、軽量コンクリート製のパネルになっていたりします。床のコンクリートも厚さ8〜13cm程度であり、一般的に鉄筋コンクリート造に比べて防音性は劣ります。
内見中にできる防音性を確認する方法
まずドアや窓を閉めて、外部の騒音を注意深く聴いてみましょう。次に、隣住戸との界壁を手で軽く叩いてみてください。「コツコツ」と硬く重い感触であれば、高い防音性が期待できます。「コンコン」「ポコポコ」といった軽い音の場合は、防音性がやや劣る可能性があります。
トントンと軽く飛び跳ねて、床の揺れ方を確認することも有効ですが、周囲の迷惑にならないよう配慮しましょう。
鉄筋コンクリート造と鉄骨造の組み合わせ「鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)」もある!
鉄筋コンクリート造と鉄骨造を組み合わせた「鉄骨鉄筋コンクリート造」という構造もあります。鉄骨鉄筋コンクリート造の特徴について解説します。
鉄骨鉄筋コンクリート造の特徴と仕組み
鉄骨鉄筋コンクリート造(略称: SRC造、英語: Steel Reinforced Concrete)は、鉄骨の柱・梁を鉄筋コンクリートで包んだような構造です。鉄筋コンクリート造と鉄骨造の特徴を併せ持っており、主に大規模な高層マンションに採用されています。
鉄骨鉄筋コンクリート造のメリット
最大のメリットは、高い耐震性と耐火性を備えている点です。鉄骨の柔軟性と鉄筋コンクリートの剛性が組み合わさることで、地震の際の揺れに対して建物が柔軟に対応でき、倒壊を防ぐことが可能です。また、コンクリートは燃えにくい材料であるため、火災時の安全性が高まります。
さらに、鉄筋コンクリート造は大きな空間を作ることができるため、オフィスビルや商業施設など、広く開放的な空間が求められる建築に適しています。
鉄骨鉄筋コンクリート造の注意点
鉄骨鉄筋コンクリート造は多くのメリットがある一方で、注意すべき点も存在します。まず、建設コストが高いことが挙げられます。鉄骨とコンクリートの両方を使用するため、他の建築方法に比べて材料費や施工費が増加する傾向にあります。また、設計や施工が複雑になることもあり、専門的な技術や知識が必要です。
鉄骨鉄筋コンクリート造がおすすめの人
物件数が限られ、賃料は高めになりますが、高性能な高層マンションにこだわりたい人におすすめです。
鉄筋コンクリート造と鉄骨造の違いを押さえたうえで、お部屋を選ぼう
鉄筋コンクリート造と鉄骨造の主な違いや特徴、ポイントは、以下のとおりです。
・鉄筋コンクリート造は、コンクリートの床・壁・柱・梁を隙間なく一体化した構造
・鉄骨造は、鉄骨の柱・梁の上に壁などを組み立てた構造
・重量鉄骨造と軽量鉄骨造で違いがあり、軽量鉄骨造は木造に近い性質がある
・防音性は鉄筋コンクリート造が最も高い
・鉄筋コンクリート造や鉄骨造は賃料が高いが、軽量鉄骨造では木造並みの場合もある
今回は、鉄筋コンクリート造と鉄骨造の特徴やメリット、デメリットについて詳しく解説しました。賃貸物件を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。