お風呂場の床や排水溝の近くに出現する、ヌルヌルとしたピンク色の汚れ。掃除をしてもすぐにまた新しい汚れが出てきて、うんざりしている方もいるでしょう。
実は、このピンク色汚れは一般的に考えられているカビではなく、酵母菌の一種によるものです。今回は、ピンクの汚れの正体や危険性、効果的な掃除方法、そして日々実践できる予防策まで詳しく解説しています。バスタイムをより快適にするためにも、ぜひ最後まで読んでみてください。
お風呂・洗面台のピンク汚れとは
お風呂や洗面台に発生するピンクの汚れはカビではなく、「ロドトルラ」と呼ばれる酵母菌によるものです。ロドトルラは、皮脂や石鹸カスを栄養源として繁殖します。その繁殖スピードは早く、とくに夏場や梅雨時など、高温多湿の環境では一気に広がります。成長したロドトルラのコロニーはピンク色となり、独特のぬめりを伴う汚れとなるのです。
ピンク汚れが広がると、浴槽のシリコン部分やプラスチックの細かい傷に入りこみ、除去が難しくなってしまいます。放置すればカビの発生源にもなるため、汚れに気づいたらできる限り早く対処しましょう。
ピンク汚れを放置するとどうなる?
ピンク汚れの正体である「ロドトルラ」そのものは、健康に悪影響を及ぼすものではありません。しかし、掃除せずに放置したままにしていると、黒カビが発生しやすくなったり、滑りやすくなりケガの原因となったりすることも考えられます。ピンク汚れを掃除しないことにより生じるリスクを紹介します。
カビが生えやすくなる
ピンク汚れを放置すると、カビが生えやすくなります。石鹸カスや皮脂と同じく、ロドトルラ自体が黒カビの栄養源となるためです。
黒カビが広がると、空気中に細かな胞子を放出し、健康被害を及ぼします。具体的には、喘息やアレルギー性鼻炎・アトピーなど、アレルギー性の疾患を引き起こしたり悪化させたりするリスクにつながります。また、黒カビは根を深くまで伸ばし、黒いシミを床や壁に残すこともあるのです。
滑りやすくなる
ピンク汚れが蓄積すると床面が滑りやすくなり、事故のリスクが高まります。とくにお風呂場での転倒事故は、骨折をはじめとする重大なケガにつながる可能性があります。安全のためにも、ピンク汚れは早めに掃除するよう心がけましょう。
健康被害につながる可能性も
ロドトルラ自体が健康に被害をもたらすことは、基本的にありません。しかし、ピンク汚れのぬめりには乾燥から身を守るために他の雑菌が隠れていることがあるのです。
お風呂場で問題となる菌のひとつとして、レジオネラ菌が挙げられます。レジオネラ菌は本来土壌や水の多い環境に広く生育する細菌ですが、お風呂のシャワーの勢いで空中に舞い上がり、菌を多く吸い込むとレジオネラ肺炎を発症する場合があります。とくに免疫力の弱い小さな子どもや高齢者がいる家庭は、注意が必要です。
参照元:厚生労働省「レジオネラ菌」
ピンク汚れの原因
ピンク汚れを防ぐには、ロドトルラが増殖しやすい環境を改善する必要があります。ピンク汚れの原因を見ていきましょう。
湿気
毎日水やお湯を使う洗面所や浴室は、湿気がこもりやすい場所です。湿度の高い状況が続くことで、ロドトルラにとって繁殖に理想的な環境を作り出してしまいます。こまめな換気や、水滴を拭き取るように心がけることがピンク汚れ予防の鍵となります。
不十分な換気
入浴後に換気が不十分であると、湿度が下がらず、ロドトルラの繁殖を促進します。また、空気の循環が悪いことで、カビや雑菌も増えてしまいます。とくに窓のない浴室や、狭い洗面所では換気が十分に行われるように工夫しましょう。
石鹸カスや皮脂
石鹸カスや皮脂は、ロドトルラの餌となります。入浴後にそれらを残さないよう、できるだけすぐに掃除をすることで、ピンク汚れやカビの予防につながります。
ピンク汚れを落とす方法
ロドトルラは黒カビと異なり、建材に根を張って広がることはありません。比較的落としやすい汚れです。しかし、そこで掃除に手を抜いてしまうと、目に見えない菌が残り、すぐにまたピンク汚れが広がってしまいます。
ここからは、具体的なピンク汚れの掃除方法について見ていきましょう。主に次の3つの方法を紹介します。
・洗剤と柔らかいスポンジで汚れを落とす
・汚れにエタノールを吹きつけて拭き取る
・カビ取り用洗剤で汚れを落とす
洗剤と柔らかいスポンジで汚れを落とす
まずは、洗剤と柔らかいスポンジで汚れを落とす方法について解説します。普段の浴室掃除の際に手軽にできる方法です。
STEP1. 必要な道具を用意する
必要な道具は次のとおりです。
・中性洗剤
・柔らかいスポンジ
・清潔なタオルや布
汚れた部分をシャワーの温水で湿らせておきます。
STEP2. 柔らかいスポンジに中性洗剤を少量つける
まず、柔らかいスポンジに洗剤をつけます。浴室用の中性洗剤がよいでしょう。洗剤をつけたら、スポンジをしっかりと泡立てます。
STEP3. スポンジで汚れた部分を優しく擦る
スポンジで汚れた部分を丁寧に擦ります。強くこするとシンクや浴槽の表面が傷つく恐れがあるため、優しく円を描くように擦りましょう。
頑固な汚れの場合は、洗剤を塗布したまま数分間置いておくと効果的です。
STEP4. 洗剤が残らないように、温かい水でしっかりとすすぐ
汚れが取れたら、温かいシャワーでしっかりとすすぎます。細かい部分や隙間に洗剤が残らないように注意しましょう。洗剤が残ってしまうと、それが菌の餌となるリスクがあります。
STEP5. 清潔な布やタオルで水分を取り除く
最後に、清潔な布やタオルで残った水分を除去します。
汚れにエタノールを吹きつけて拭き取る
ピンク汚れは、スポンジでこするだけで簡単に落ちます。掃除後は綺麗になったように見えますが、実は目に見えない菌が残っており、すぐにまた汚れが広がってしまうことがあります。その場合には、消毒用エタノールを使った掃除をするとよいでしょう。
エタノールを使用した掃除の手順を見ていきましょう。
STEP1. 必要な道具を用意する
必要な道具を準備します。
・エタノールスプレー(濃度70〜80%)
・清潔な布やペーパータオル
・手袋
使用するエタノールスプレーは、除菌効果の高い濃度70〜80%のものがおすすめです。また、作業中には十分換気を行いましょう。
STEP2. エタノールをペーパータオルに染み込ませる
エタノールをペーパータオルに染み込ませます。アルコール成分に触れると皮膚が荒れる可能性がある方は、手袋を装着して作業しましょう。
STEP3. 汚れ部分にペーパータオルを貼り付ける
ピンク汚れにペーパータオルを貼り付け、10〜15分程度放置します。
STEP4. 汚れを拭き取り、水で洗い流す
キッチンペーパーやタオルで汚れを拭き取ります。汚れが十分に取れていない場合には、キッチンペーパーやスポンジで擦りましょう。最後にきれいに水で洗い流します。
STEP5. 乾燥させる
掃除した部分の水分を拭き取り、乾燥させます。完全に乾燥させることで、清潔な状態を長く保ちやすくなります。
カビ取り用洗剤で汚れを落とす
「頑固なピンク汚れを一気にキレイにしたい」「ヌメヌメに触りたくない」という方には、カビ取り用の塩素系漂白剤で汚れを落とす方法もおすすめです。
なお、塩素系漂白剤を使用するときはしっかりと換気しましょう。有毒ガスが発生するため、絶対に酸素系の洗剤と混ざらないように注意してください。
STEP1. 必要な道具を用意する
必要なものを準備します。
・塩素系漂白剤(カビ取り用洗剤)
・ゴム手袋
・マスク(ゴーグル)
・スポンジまたはブラシ
・清潔な布やタオル
作業の際には手袋やマスクを装着し、洗剤に直接触れたり吸い込んだりしないよう注意が必要です。
また、素材によっては塩素系漂白剤が使用できないものもあるため、事前に取扱説明書を確認しておきましょう。
STEP2. 洗剤を塗布する
ピンク汚れに塩素系漂白剤をスプレーします。汚れ全体に、均一にかかるように意識しましょう。
STEP3. 時間を置いて洗剤を浸透させる
洗剤をスプレーしたら、5〜10分放置します。長すぎると素材を傷める可能性もあるので、時間は正確に測定することをおすすめします。
STEP4. 洗い流す
時間が経ったら、シャワーで洗剤を洗い流します。ブラシやスポンジで擦りながら、汚れや洗剤の成分が残らないように念入りに流します。
STEP5. 乾燥させる
水分が残らないよう、布やタオルでしっかりと水気を拭き取ります。掃除後はしばらく換気をしておきましょう。
ピンク汚れを未然に防ぐ方法
ピンク汚れは比較的簡単に除去できますが、汚れが発生しないように日頃から気をつけることで、カビや雑菌の発生しにくい、清潔なお風呂場を維持できます。
ここからは、日常的に実践できるピンク汚れの予防方法を紹介します。
小物を浮かせる
シャンプーやボディソープなどのボトル、洗面器、椅子などの小物類を床や棚に置いておくと、設置面に水が溜まりやすく、ピンク汚れが発生しやすくなります。
小物類はできるだけ吊り下げたり壁に設置したりして浮かせるか、水はけのよい場所に設置しましょう。最近では、磁石でお風呂場の壁にボトル類を貼り付けられる便利なグッズも販売されています。
浴槽にフタをする
浴室の湿度は、室内の温度が高ければ高いほど上昇します。浴槽にフタがないと、浴室の温度が上がるとともに水分が蒸発し、湿度が急激に高くなります。
入浴後はすぐに浴槽にフタをして、ピンク汚れの広がりを防ぎましょう。浴槽内の温度も維持できるので、省エネにも繋がります。
入浴後は必ず換気する
入浴後は、必ず換気をしましょう。換気扇を回す、窓を開けるなど、できるだけ早く浴室の湿度を下げるよう工夫する必要があります。24時間換気システムが設置されている住まいである場合は、積極的に活用することをおすすめします。
水気を拭き取る
入浴後に水気を拭き取ることも有効です。
浴室の湿気を減らし、細菌やカビの繁殖を抑えます。また、水気を拭き取っておくことにより、水垢汚れの発生も防ぐことが可能です。最初は面倒に感じるかもしれませんが、スクレーパーや吸水性の高いタオルなど便利なグッズを利用して、習慣化してみてください。
冷水をかける
ロドトルラは20〜30度の高温多湿の環境を好みます。入浴後やお湯で浴室を掃除したあとに冷水をかけることで、浴室内の温度を下げ、浴室の温度を一気に下げましょう。
防カビ剤を使用する
市販されている防カビ剤を使用するのもピンク汚れ防止に効果的です。防カビ剤には、くん煙タイプやスプレータイプ、噴射タイプなどさまざまな種類があります。使用に必要な時間や方法が違うので、ライフスタイルに合わせて選んでみましょう。
なお、ピンク汚れの増殖速度は速いため、効果の持続期間はカビ予防より短くなります。
ピンク汚れを放置するとさまざまなデメリットが!日頃から予防しよう
今回は、ピンクの汚れの正体や危険性、効果的な掃除方法、日々実践できる予防策を解説しました。
ピンク汚れの原因は、「ロドトルラ」という酵母菌の一種です。繁殖力が非常に高く、お風呂場に水滴や皮脂、石鹸カスなどが残っていると急速に広がることがあります。放置すると清潔感が失われるだけでなく、体に害のあるカビや細菌が増殖しやすくなったり、滑りやすくなり転倒のリスクが高まります。
・定期的な掃除と換気を心がける
・水滴をこまめに拭き取る
・適切に掃除をする
普段からこれらの工夫を心がけることで、清潔で快適な環境を維持していきましょう。