気泡コンクリート(ALC造)マンションとは?メリデメや他の構造との違いは?

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お部屋探しで重視すべきなのは、家賃・間取り・立地の3つと言われています。しかし、最近はインターネットで多くの情報を得ることができるため、これら以外のポイントに重きを置いたお部屋探しをする人も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、賃貸物件の構造にスポットを当てて解説していきます。そのなかでも「軽量気泡コンクリート(ALC)」と呼ばれる外壁素材を紹介します。

賃貸物件は間取りや設備に目がいきがちですが、外壁にも知っておきたいポイントが多数存在しています。この機会にぜひ外壁の素材にも目を向けてみましょう。

気泡コンクリート(ALC造)とは?

ALC造とは、軽量気泡コンクリート(ALC)という建材を、外壁や内壁などに使用した建物のことです。 ALCは、軽量で断熱性・気密性が高いという特徴があり、住宅やマンションなどでよく用いられます。

なお、ALC造という表現は正しくありません。ALCは「Autoclaved Lightweight Concrete」の略で、軽量で気泡がたくさん含まれたコンクリートのことです。このALCパネルを建物の外壁や内壁に多く使用している建物全体を指して「ALC造」と呼ぶことが一般化したのです。

RC造・SRC造と気泡コンの違い

RC造・SRC造とALC造は、費用・強度・重量・デザイン性などに違いがあります。

RC・SRC造は、鉄筋をコンクリートで覆うことにより互いの弱点を補完した、いわば「強くて頑丈」な構造です。一方のALC造は、RC・SRC造と比較してそこまで強固な素材ではありません。ただし、ALCパネルは施工後に塗装を施すため多様なデザイン性に魅力があります。また、RC・SRC造と比較してALCは軽量であることからタワーマンションの外壁にも導入されるなど、明確な優劣が存在するわけではありません。

気泡コンの賃貸物件に住むメリット

ALC造の賃貸物件にはどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、ALCの特徴からそのメリットを解説します。

耐震性に優れている

ALCは、耐震性に優れていることがメリットとして挙げられます。

なぜなら、ALCは一般的な外壁であるタイルやサイディングと比較して軽いことがその理由です。地震が発生したときに建物への負担が軽減され、建物の躯体へのダメージが少なくなるため、安全性が確保されやすいのです。

地震が発生すれば、建物はノーダメージでは済みません。地震被害を最小限に抑えたい人にALCは安心感をもたらしてくれます。

防音性に優れている

ALCは、防音性能が高いことも魅力です。

ALCが防音性能に優れている理由は、その構造に答えがあります。ALCは、無数の小さな気泡を含んだ特殊なコンクリートです。この気泡がまるでスポンジのように音を吸収するため、外部からの騒音が伝わりにくいのです。

外からの騒音に悩まされている人には、ALCの賃貸物件は解決の糸口になるかもしれません。

耐熱性能が高い

ALCは熱に強いことも、火災発生時に安心材料となります。

ALCの素材はセメントや石灰といった燃えにくいものばかりであることと、無数に存在する気泡があることによって熱伝導率が低いため耐熱性能に優れています。コンクリートは水・砂利・セメントを固めた構造であるため、熱伝導率がALCと比較して高くなるのです。

冬場にダウンジャケットを着用すると暖かいのは、ジャケット内の空気層が熱を逃がさないから。空気層の役割をALCの気泡が果たしていると考えるとわかりやすいでしょう。

とりわけ都心部の密集した賃貸物件にお住まいの人などは、火災・延焼対策としてALCは安心材料になると思われます。

調湿性能が高い

ALCのメリットとして、調湿効果があることも忘れてはいけません。

なぜなら、ALC内部の無数の気泡がスポンジのように働き、室内の湿度を自動で調整する機能を持っているからです。湿気が多いときは湿気を吸い取り、乾燥しているときは湿気を放出することで、室内の湿度を快適なレベルに保つことができるのです。

一方、コンクリートは水分を含んで硬化する性質を持っています。しかし、高密度のコンクリートには一度含んだ水分を放出する機能はないため、ALCほどの調湿効果はほぼ認められないでしょう。

ただし、いくら調湿効果があっても適切な換気を行わないとカビや結露の発生原因になりますのでご注意ください。

気泡コンの賃貸物件に住む注意点・デメリット

ALCには注意すべきポイントやデメリットも存在しています。気になる人はぜひデメリットもチェックしてみてください。

防水性能が低い

ALCの弱点は防水性能の低さにあります。なぜなら、気泡が存在していることによって浸水しやすい構造だからです。

この弱点を補うために、ALCを外壁に施工するときには必ず設置後に防水施工を施します。賃貸物件では気にする必要性はありませんが、定期的な防水施工が必要になるため維持管理コストが高くなる傾向にあることは覚えておくと良いでしょう。

夏場は熱がこもりやすい場合がある

ALCは優れた断熱性をもつ一方で、夏場に熱がこもりやすいといわれています。その理由はALCの気泡構造と高い断熱性にあります。

ALCの主成分であるセメントは太陽光を吸収しやすい性質を持っているほか、気泡構造により太陽光が乱反射し散乱させることで表面温度が高くなることがあります。また、高い断熱性能によって熱が外に逃げにくくなってしまうのです。

エアコンの利用やサーキュレーターを活用して、空気を冷やしながら循環させるなどの対策は欠かせません。

表面の耐久性が劣ることがある

ALCは耐水や耐熱加工が劣化すると、その機能も著しく衰える点がデメリットです。

ALC材を建物に利用するときは設置後に耐水や耐熱の加工を施します。そのため、定期的なメンテナンスの状況が賃貸物件の快適度に直結すると言っても過言ではありません。

ALC材を利用した賃貸物件を検討するときは、メンテナンスの状況をチェックしておきたいところです。

気泡コンを使った賃貸物件がおすすめの人

ALCを導入している賃貸物件に向いている人はどのような人でしょうか。お部屋探しの希望やお悩みに合わせて検討してみてください。

騒音問題を控えたい人

ALCは、気泡構造により高い遮音性を備えているため、外の騒音を気にせず、静かな環境で過ごしたい人におすすめです。

具体的には、仕事や勉強に集中したい人・テレワークをする人・外からの騒音に悩まされている人・夜勤で昼間家にいる人などが挙げられるでしょう。

湿気の発生を抑えたい人

ALCは、調湿性が高く、カビやダニの発生を抑える効果があるため、湿気の発生を抑えたい人にもおすすめです。

特にアレルギー体質の人・小さなお子様がいるファミリー世帯には、安心した賃貸ライフを送ることができそうです。

地震の被害を抑えられる丈夫な建物に住みたい人

ALCは軽量で柔軟性があるため、地震の揺れに対して比較的強いと言われています。 地震が起きた際も、建物が倒壊するリスクを低減できます。

地震対策は個人で行うにも限界があります。地震被害に備えたい人・都心部の密集したエリアに住んでいる人などは、地震対策を賃貸物件の構造に頼るのも有効な方法です。

気泡コンの賃貸物件に住む前に確認すべき項目

ALCの賃貸物件を検討するにあたって、どのようなポイントに着目し、内見時に注意するとよいのでしょうか。ここでは、ALCの特徴をもとにチェックポイントを紹介します。

外壁の防水処理状況を確認する

ALCのメリットを享受するためには、外壁の状況を把握することが重要です。なぜなら、外壁の防水施工状況が、ALCの効果を大きく左右するからです。

外壁の防水処理状況を確認するためには、以下のような方法があります。

ひび割れ(クラック)の有無を目視で確認する

外壁のALCパネル本体はもちろんのこと、パネルのつなぎ目にあるシーリングにひび割れがないかどうかも確認しましょう。ひび割れが多数存在しているときは、適切なメンテナンスがなされていない可能性が高いため、ALCのメリットを享受できない可能性があります。

塗装の剥がれを確認する

下地処理を含む塗装は、ALC外壁を紫外線や雨風から守る大切な役割を果たしています。しかし、時間の経過とともに塗膜が劣化し、剥がれてしまうことがあります。気になるときは外壁を指先でなぞってみましょう。手にチョークのような粉が付着するときは、塗装が剥げている証拠であり、ALCの効果が十分に発揮されないと考えるべきです。

室内の設備を確認する

ALC材には多くのメリットがありますが、室内設備との組み合わせによってその効能は左右されます。ALCのメリットを最大限活かすことができる設備があれば、よりALCの恩恵を受けることができるでしょう。

ALCの効果を活かす設備は以下のようなものです。

ペアガラス

ALCの断熱性能を活かすためには、窓の性能も重要です。特にペアガラスであれば窓から受ける外気の影響を最小限に抑えることができるため、断熱性能をより効果的に実感できるでしょう。

換気設備

ALCの調湿効果を活かすためには、換気設備もチェックしておきましょう。室内は窓がありますが、洗面所やキッチンまわりなどは窓がないときも珍しくありません。換気扇の有無や性能はカビの抑制に繋がります。

気泡コンの賃貸物件に住むことも検討しては?

ALCは、高い断熱性・遮音性・耐火性など、多くの魅力的な特徴を有しています。静かで快適な住環境を求める人・アレルギー体質の人・地震に備えたい人など、さまざまな人に適しているといえるでしょう。

しかし、夏場の暑さや冬場の寒さ、そして適切なメンテナンスが必要であるといったデメリットを忘れてはいけません。賃貸物件を選ぶ際には、内見でしっかりと建物の状態や設備を確認し、不動産会社に気になる点を質問することが大切です。

ALCは、快適な暮らしを実現する選択肢の一つです。ご自身のライフスタイルや優先順位に合わせて、ぜひ検討してみてください。