都内有数の歓楽街、五反田がベンチャー企業の聖地になったワケ

都内有数の歓楽街である五反田。実は近年、この街はベンチャー企業の聖地として認知されるようになり、今ではシリコンバレーをもじって「五反田バレー」と呼ばれるようになりました。

実際、クラウド会計ソフトの「freee」、人工知能型営業支援ツールを提供する「マツリカ」、飲食店向け予約顧客台帳サービスの「トレタ」など、現在注目の急成長企業が五反田に拠点をおいています。

現在ではこうした企業を始めとした400社以上のベンチャー企業が五反田に拠点を置くようになり、まさに五反田は次世代ベンチャー企業にとっての聖地になりつつあるようです。



PR TIMESにて公表されている五反田のベンチャー企業集積状況をまとめた「五反田バレーマップ」https://prtimes.jp/main//rd/p/000000010.000031052/

しかしなぜ五反田にベンチャー企業が集まるようになったのでしょうか。

かつてベンチャー企業の聖地といえば六本木や渋谷が主流で、六本木には楽天やライブドア、渋谷にはGMOインターネット、ミクシィ、そしてDeNAなどのベンチャー企業が集まりました。

渋谷では大規模な再開発が駅周辺部で行われ、渋谷ストリーム、渋谷スクランブルスクエア、渋谷フクラスといったAグレードオフィスが次々と誕生し、大量のオフィス床供給に伴い大手テック企業が渋谷での活動を活発化させています。

そうした中、高騰する渋谷の家賃水準は、創業間もない急成長企業にとってそぐわないものになりつつあり、そこで注目されたのが渋谷から2駅離れた五反田だったのです。



五反田のオフィス賃料相場は渋谷よりも3〜5割ほど手頃で、渋谷とは異なりオフィスオーナーが個人であることから、入居審査のハードルが比較的低いのです。

一般的に渋谷などのオフィスビルは入居審査の際に三期分の決算を求められ、赤字の場合は入居を断られてしまいます。しかし、創業間もないベンチャー企業の中には赤字が続く企業も少なくなく、個人オーナーのオフィスビルであれば交渉の余地があるため、五反田が注目されたというわけなのです。

また五反田は東海道新幹線の発着駅である品川駅まで2駅で、なおかつ五反田駅に乗り入れている都営浅草線を利用すれば羽田空港や成田空港にダイレクトにアクセスできることから交通利便性において大きなアドバンテージを持っています。

もともとシリコンバレーやドイツ・ベルリンも、近隣都市の家賃上昇を受け、手頃や家賃相場を理由に若手起業家から注目されたという経緯を持っていますが、五反田の注目すべき点は低い家賃相場ではなく、独自のベンチャー経済圏を形成している点にあると言えるのです。



先述したfreeeやマツリカといった五反田で事業を行う有力企業6社が中心となって「一般社団法人五反田バレー」を発足し、2018年に品川区が連携協定の締結を発表しました。

五反田では数年前からベンチャー企業が集まりつつありましたが、横の繋がりが弱いことが課題として挙げられており、五反田バレーを一過性のブームとして終わらせないために同団体は設立されたのです。

品川区は同団体と提携協定を結んだことで、昨年2019年には7600万円の予算を計上して、慢性的に不足するエンジニアを確保するために一人たり50万円の助成金を交付するなどの取り組みをはじめました。

同時に、品川区の商店街の活性化や防災などの地域課題解決をテーマに、AIやIoTを活用したアイデアを募集しはじめ、具現化したアイデアの実証実験をスムーズに行うために区役所以外の行政機関等に対する調整役を担うようになったのです。



一般社団法人五反田バレーや現在急成長中の企業が入居する雑居ビル群

次から次へとベンチャー企業が集まり、まるで一つのベンチャー村のようになった五反田にとって、一般社団法人五反田バレーは互いに情報を交換し合ったり協力し合うための「町内会」のような役割を果たしています。

地元のベンチャー企業同士が連携して地域課題について議論するなど、非常にローカル色が強いことが特徴の五反田ベンチャーですが、実際に五反田のベンチャー企業は渋谷などにあるベンチャー企業とは毛色が異なります。

例えば、渋谷に拠点を構えるベンチャー企業がスマホを中心としたエンタメやモバイル決済などの金融サービスを提供しているのに対して、五反田には先述のfreeeやトレタを始めとした中小零細企業の悩みを解決する「問題解決型」の企業が集まる傾向にあるのです。

こうして課題解決型のベンチャーが次々と集まることによって、五反田には独自のベンチャー経済圏が形成されています。



こうして六本木、渋谷に次ぐ東京のベンチャー企業の聖地としての立ち位置を確かなものにしている五反田ですが、五反田に集まるベンチャー企業の多くが社員数100人未満。

五反田には大規模オフィスの供給がほとんどなく、100人を越えると五反田でオフィスを見つけることが難しくなってくるのです。

中には企業の成長に伴って拡張移転のために五反田を「卒業」する企業もあり、大崎に移転したオイシックスはその一つに挙げられます。

このように五反田生まれのベンチャーが成長の過程で五反田を卒業し、次なるベンチャー企業が五反田に誕生する。そんなサイクルの中で、五反田は今後もベンチャーの聖地として新陳代謝を繰り返していくのでしょう。