Question

大家さんの敷地内の一軒家を借りたが、自分の来訪者を不法侵入だと言われる。

大家さんの敷地内に建つ一軒家を定期借家契約で借りています。公道から細長い一本の私道が延びていて、私道を含む周辺の土地は全て大家さんの所有地で、私道の突き当たりに建っているのが私が借りている家という立地です。この私道は普通に生活する上での往来には制限はないと説明を受けていました。ところが先日、遊びに来た友人の車を借家の駐車スペースに停めたところ、後日大家さんに「業者以外の車の往来は許可していないし連絡もなかった。不法侵入だ」と怒られてしまいました。こういう立地の場合、来客時はいちいち連絡して許可を得ないといけないのでしょうか?

Answer

民法210条では、本件のように物件が他者の土地に囲まれている袋地だった場合、「囲繞地通行権」、すなわち賃借人が公道と物件の間を通行する目的で他者の土地を通る権利を認めています。しかしその通行権は無制限に認められるものではなく、所有者に与える損害が最小限となるよう通行しなければなりません。また、民法212条で通行者は所有者に償金を払うことが定められています。償金とは要は通行料のことで基本的には賃料に含まれているのですが、事前に別途請求すると定めていれば払う必要があります。
所有者が不法侵入と主張するには一定の合理性が必要です。例えば郵便や新聞の配達、宅急便などの生活上必須となる出入りに許可を求めたり制限することは合理性を欠くと判断されます。しかし、友人が遊びに来るというのは必須とまでは言えず、また大家さんにとって友人は契約関係にすらない第三者でもあるため、事前に連絡をして許可を得なかったのであれば不法侵入と主張されてもやむを得ないでしょう。よって、本件は大家さんの主張に正当性があるということになります。
本件のような袋地の通行権はトラブルの原因になりやすいため、友人が遊びに来る前には必ず連絡を入れるようにするなど、賃貸借契約前に通行権の対象や頻度、範囲、連絡の有無の取り決めをしておきましょう。

なお、似たような概念に「通行地役権」というものがありますが、これは当事者同士で地役権を設定する契約を交わすことが必須という点と、当事者同士の取り決めで通行料の有無を設定できる点などで「囲繞地通行権」とは異なります。袋地のような立地で他に通行手段がない場合に自動的に設定されるものが「囲繞地通行権」、他に通行手段はあるものの通行ができれば利便性が高い際に当事者で合議して設定するのが「通行地役権」、と覚えておくといいでしょう。