小さなスペースを有効に使う方法として「ヌック」が注目されています。ヌックは、建物の一角に作られた小さな空間で、そこに机やベンチなどを設置して快適な居場所に変えられます。
コロナ禍以降、在宅時間が増え、家の中でも自分の時間の必要を感じる機会が多くなりました。ヌックは、まさにこうした悩みを解消してくれるスペースになるでしょう。
今回は、ヌックの魅力や作り方のポイント、活用方法についてご紹介します。
ヌックとは
ヌックとは、こぢんまりとした居心地の良い空間のことです。スコットランドの温かくて心地の良い場所という意味の「neuk(ヌーク)」が語源といわれています。
最近では、心地良い小さな空間のことをヌックと呼ぶようになりました。注文住宅でも居心地の良い隠れ家のある暮らしを楽しみたい人のために、ヌックを取り入れるケースも増えてきています
ヌックの良さとその効果
ヌックを作ることで、パーソナルな空間を楽しめるなどさまざまなメリットがあります。具体的にどのような良さや効果があるのかを見ていきましょう。
家族の気配を感じながらひとりの時間を楽しめる
ヌックの魅力の一つは、家族の気配を感じながらひとり時間を満喫できるところです。リビングなど家族が集まる場所にヌックを作れば、家族がリビングでくつろいでいるときにヌックで読書をしたり、ゲームや趣味の作業に没頭したりと、ほど良い距離を保ちながら自分の好きなことに集中できます。
リビングにヌックを作る際は、家族とのコミュニケーションを妨げないように、オープンなデザインにするのが良いでしょう。
空間に立体的なメリハリが生まれる
ヌックは空間のアクセントになります。広いリビングは単調になってしまいがちですが、段差を設けたり、ベンチを置いたりしてヌックを作れば、空間に立体感を出すことが可能です。
床や壁、天井などの素材や色を変えてアクセントにすると、より空間に奥行きが生まれます。ヌックは空間にメリハリを作るので、個性や特別感を演出したい場所におすすめです。
さまざまな用途で活用できる
ヌックは、読書や音楽などの個人の趣味を楽しむスペースにしたり、勉強や仕事など自分のニーズに合わせた専用スペースにしたりするなど、さまざまな用途で活用することが可能です。それぞれの目的によって、家具やレイアウトを工夫してお部屋をカスタマイズすれば、使い勝手の良い空間になります。
狭い空間が落ち着く人にとって、ロフトのように天井が低く限られたスペースは、心地良い空間になるでしょう。そこに寝転がれるソファを置けば、手軽にリラックスできるヌックを作れます。ロフト付きの住まいは、天井が高く開放感がありますので、さまざまな空間の変化を楽しめるでしょう。ロフトにヌックを作れば、プライバシーも確保しつつ、気持ちが良いヌックのスペースになるでしょう。
ヌックの注意点・デメリット
ヌックは、限られたスペースを有効活用できるというメリットがありますが、ヌックを作るときの注意点やデメリットもあります。ヌックの注意点・デメリットも理解したうえで、ヌックを取り入れるか検討しましょう。
完成までに費用がかかる場合がある
ヌックを作るには、部屋のレイアウトや構造に合わせて、工事やDIYが必要になる場合があります。特に賃貸物件の場合は、大家さんや管理会社の許可が必要になるケースもありますので、工事やDIYをするときには必ず確認しましょう。
また、間仕切りの壁をつけたり、小上がりにしたりすると、費用がかかってしまうこともあります。ヌックを作る前には、予算や工期をしっかりと考えておきましょう。
圧迫感を覚えるかもしれない
ヌックは狭い空間なので、囲われた狭い場所が苦手な人にとっては、居心地が悪く感じる場合もあるでしょう。特に天井が低いと、息苦しいと感じる場合もあります。小さな空間が落ち着くとはいっても、ヌックを快適に使うためには、ある程度の空間の広さや高さを確保することが大切です。
また、暗い空間は圧迫感を覚えるので、暗い場所にヌックを作るときには照明を設置することを検討しましょう。家具を置いても圧迫感が出てしまうので、空間に応じて圧迫感のない家具を選ぶことも意識しましょう。
スペースを割くため部屋が狭く感じる可能性がある
ヌックを部屋の一角に取り入れると、本来の部屋より狭くなってしまいます。特に収納スペースや動線が減ってしまうと、生活に不便を感じることもあります。ヌックを作る際には、部屋全体のバランスや機能性を考慮することが必要です。
スペースが限られている場合には、収納力の高い家具や多目的な家具を選ぶことも検討しましょう。そのような家具を選ぶことで、スペースを活用できます。
居心地の良いヌックを作るポイント
ヌックは自分の好きなものや使い方に合わせて作ることで、部屋にアクセントをつけたり、自分だけの癒やしの場所を作ったりできます。しかし、実際にヌックを作ってみたものの、居心地が悪かったり、使いづらかったりしたらもったいないでしょう。
ヌックを作るときには、いくつかのポイントがあります。インテリアコーディネーターの視点から、ヌックを作るポイントについて解説しますので、参考にしてみてください。
作る目的を決めておく
ヌックで何をしたいかによって、必要なインテリアが変わってきます。例えば、読書や勉強などのスペースにしたい場合は、本棚や机、椅子などが必要で、照明も明るめにする必要があります。一方、昼寝やリラックスして休憩できるスペースにしたい場合は、クッションやブランケットがあると快適で、照明も暗めの方が良いでしょう。
また、書庫やキッチンのそばに作って休憩や作業のスペースとして使いたい場合は、収納やコンセントなどが必要になる場合があります。ヌックでしたいことを明確にしておくことで、適切なインテリアを選べます。
居心地の良いと感じられる場所に作る
ヌックは居心地の良さが重要です。せっかくヌックを作っても、音がうるさい場所や温度調整がしづらい場所だと快適に過ごせず、結局は無駄なスペースになってしまいます。
居心地の良い場所とは、お部屋の環境や人によって異なりますが、一般的に窓際は光や風を感じられて開放感があります。そのため、リラックスのできる空間にしたい場合は、窓際に作るのがおすすめです。外からの視線が気になってしまう場合は、カーテンで仕切ればシーンに応じてプライバシーも保てます。
また、窓から離れた壁際に作れば、自然光に左右されづらく、外の音の影響も少なくなります。落ち着いて読書をしたり、作業をしたりするのに適した場所になるでしょう。
サイズ感も重要なので、目的に合わせて自分に合った居心地の良い場所、サイズ感でヌックを作るのがおすすめです。また、ヌックの内装やインテリアに、自分の好きな色や柄、素材を取り入れるのも良い方法です。好きな色や柄、素材を目にしたり、触れたりすると気分が上がり、心地よく過ごせるでしょう。
別空間だと認識させる
ヌックは別空間と認識させることで、空間にメリハリが出たり、他の空間とは異なる使い方ができたりするようになります。
別空間と認識させる方法はいくつかあります。例えば、囲いや段差を作ることです。ヌックの境界を明確にでき、空間に奥行きを出せます。また、梁や柱は空間に区切りをつけることが可能です。マンションでは、梁や柱を上手く活用するとヌックが作りやすいでしょう。
さらに、ラグやマットを敷いて床を変えることで、より別空間と認識させられます。テクスチャーを変えれば、見た目だけでなく、足元の感触の変化で違いを感じられるはずです。壁紙やカーテンで背景を変えても、違いを出せます。ヌックの色彩や柄を変えても、視覚的に別空間と感じられるでしょう。
その他に、小物や飾りで雰囲気を変えることでも、別空間に感じさせられます。ヌックのテーマやコンセプトを作り、それに合わせた小物や飾りを取り入れてみましょう。
ヌックにおすすめの場所や箇所
では、実際にどのような場所や箇所がヌックを作るのに適しているのでしょうか?ここでは、ヌックを作るのにおすすめの場所や箇所を具体的にご紹介します。
ロフト
ロフトは、手軽にヌックが作れるおすすめの場所と言えます。ロフトは天井が低く、限られた小さなスペースです。そのため、落ち着いた空間作りに向いていたり、高い場所にあるためプライバシーを保てたりするので、自分の時間を過ごすのに最適な場所になります。
また、ロフトは空間を有効活用できる点もメリットです。例えば、ロフトにベッドやソファを置いて、寝転がりながら読書や映画鑑賞を楽しむといった使い方もできるでしょう。ロフト付きの住まいであれば、工事やDIYをする必要もないので、手軽にヌックが作れます。
ウォークインクローゼット
ウォークインクローゼットは、2〜3畳ほどの広さがありますので、ヌックを作るのに最適です。ウォークインクローゼットは、寝室などの居室にあることが多いので、落ち着いた空間を作るのに向いています。静かな環境も作りやすいので、デスクや椅子を置いて書斎やワークスペースとして活用するのもおすすめです。
空間が個室のように囲われるため、空気がこもらないないように換気やサーキュレーターを利用して空気を循環し、温度調整にも気をつけましょう。
リビング
みんなが集まる広い空間内にヌックを作るのもおすすめです。リビングは、家族や友人とコミュニケーションを取りながら、自分の趣味や好きなことを楽しめる場所です。リビングにヌックを作るには、設置場所も重要と言えます。
家族の気配を感じつつ、自分の時間を充実させるためには、家族との目線が外れた位置にヌックを設置したり、カーテンやパーテーションでゆるやかな仕切りを作ったりすると良いでしょう。同じ空間にいても、自分の時間と家族と過ごす時間をバランスよく過ごせます。
和室の押入れ
和室の押入れは、扉を外して上段をデスクとして使うなどして、ヌックにできます。和室の押入れは、狭くて暗いイメージがありますが、照明やインテリアを工夫すれば快適な空間に変えられます。
和室の押入れをヌックで利用するなら、和室の住まいがおすすめです。和室は畳や障子などで温かみのある雰囲気が漂うため、リラックス効果も高いでしょう。和テイストのヌックを作りたい人にも、和室の住まいはおすすめです。
ライフスタイルに合わせたヌックの活用アイデア8選
ヌックを作ることで、一つの空間に別のニーズを持たせられますが、実際に自分のお部屋でヌックをどのように活用すればいいのか迷う方も多いかもしれません。そこで、ライフスタイルに合わせたヌックの活用アイデアを8つご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
活用アイデア①読書の場
ヌックは読書にぴったりの場所です。本棚やクッションを置いて、快適な読書スペースを作りましょう。本が好きな人なら、自分だけの図書館のような空間を楽しめます。読書以外にも、雑誌や漫画、ゲームや音楽が聴けるスピーカーなど、好きなものを置いておくと気分転換にもなるでしょう。
活用アイデア②趣味の場
ヌックは、趣味を楽しむ場所としても最適です。手芸や絵画、音楽など、自分の好きな趣味をするための道具や素材を収納しておけば、いつでも気軽に始められます。趣味にあった照明やコンセントも準備し、自分で作った作品を飾っても素敵です。ヌックは周りから隔離された空間なので、集中力や創造力を高められるでしょう。
活用アイデア③ヨガや瞑想の場
ヌックは、リラックスしたいときにも役立ちます。ヨガマットや瞑想クッションを置いて、心身ともに癒やされる空間を作りましょう。ヌックは静かで落ち着いた雰囲気にすると、ストレスや疲れを解消するのに最適です。また、香りや音楽、照明などを工夫して、自分好みの空間を演出しましょう。
活用アイデア④ただリラックスするための場
ヌックをただリラックスするための場所にするのもおすすめです。ソファやハンモックを置いたり、ブランケットなどのくつろぎアイテムを常備したりして、くつろげる空間を作ってみてください。ヌックはコンパクトな空間なので、居心地の良さを感じられるでしょう。窓際のヌックなら、外の景色や光を楽しみながらリラックスできます。
活用アイデア⑤ワークスペース
ヌックは、仕事や勉強をする場所としても使えます。机や椅子、パソコンや文房具などを置いて、効率的なワークスペースを作りましょう。ヌックは周りから遮られた空間なので、集中力や生産性を高められます。また、壁に掲示板やカレンダーなどを貼って、自分の目標や予定を管理することも可能です。
活用アイデア⑥子どもの遊び場
ヌックは、子どもの遊び場として楽しい空間を作れます。おもちゃや絵本、ぬいぐるみなどを置いて、子どもの好きな空間を作りましょう。ヌックのような小さな空間は、親から見える位置にあると安心して子どもを遊ばせられます。子どもにとっても、秘密基地のようなワクワクできる場所になるでしょう。
活用アイデア⑦ペットの居場所
ヌックは、ペットの居場所としても最適です。ペットの好きなおもちゃやゲージ、サークル、トイレなど、ペットにとって快適な空間を作れれば、ヌックはペットにとって安全で落ち着く場所になります。また、ペットがヌックに入っている姿はとても可愛らしく、飼い主の癒やしにもなるでしょう。スペースがあれば、ソファやベンチを置くことで、飼い主と一緒にくつろいで過ごせます。
活用アイデア⑧思い出の品や写真を並べるコーナー
ヌックは、思い出の品や写真を並べるコーナーにするのも素敵です。旅行やイベントなどで集めたものや、家族や友人との写真などを飾って、自分だけのギャラリーを作りましょう。ヌックは小さな空間なので、一つひとつのものに目が行きやすく、ヌックに入るとその世界にじっくり浸れます。また、そのような特別なコーナーがあることで、来客時の話題作りにもなります。
思い出の品や写真をたくさん並べたい場合は、ロフトのように高さが違う場所に作ると良いでしょう。ロフトであればたくさん飾れるだけでなく、上を見上げないと見えない場所にあるので、お部屋の雰囲気に合わないものを飾っても目立ちにくいです。また、高い場所にヌックを作りたい人にもロフトはおすすめです。
居心地の良い自分だけの空間「ヌック」を作ってみよう
この記事では「ヌック」の魅力、作り方のポイントや活用のアイデアをご紹介しました。ヌックは、日常のストレスから解放される場所や、集中して作業したり趣味に没頭したりできる場所など、アイデア次第でさまざまな用途に活用できます。
ヌックがあるだけで部屋の印象や生活の質が変わりますので、自分の好みや目的に合わせて、快適で機能的なヌックを作ってみましょう。