野菜や肉・魚など、食材の保存方法にこだわりがある方は多いかと思います。しかし、日本人の主食であるお米を適切な方法で保存できなかった場合、虫やカビが発生したり、味が極端に落ちたりすることをご存じですか?
今回は、そのような事態を起こさないために、お米を適切に保存することが重要な理由や、保存に最適な場所・具体的な保存方法などを紹介します。また保存に不向きな場所も紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。おいしいお米を無駄にせず、いつでも美味しいご飯が食べられるように、是非参考にしてください。
お米を適切に保存することが重要な理由
まずは、お米を適切に保存することが重要な理由を紹介します。お米は日持ちするものという認識を多くの方が持っているかと思いますが、決してそうではありません。何もせずに保管していると、確実に劣化します。
これから紹介するさまざまな劣化を防ぎ、安心して食べるために保存方法が重要といえます。
酸化を防ぐため
まず、お米を適切な方法で保存しないと、酸化が進みます。お米の酸化とは、食品を長期間空気などに触れさせることにより、白米の表面にある糊粉層(こふんそう)が壊れてしまうことです。糊粉層が壊れてしまうと、炊いたときの粘り気が失われ、味の劣化や古米臭といった独特なにおいを発生させてしまいます。
結露や乾燥を防ぐため
お米の結露や乾燥を防ぐためにも、正しい保存方法が重要です。冬場などの室内で、日中と夜間の寒暖差が大きい場所(窓際など)は、結露が発生しやすいといわれています。結露はカビの原因となるため、お米は結露が発生しにくい場所で保管しなくてはなりません。
また、乾燥にも注意です。室内の高温状態が続くとお米は乾燥し、ひび割れを起こします。ひび割れたお米は、炊きあげるとべちゃっとしたご飯になってしまいます。結露や乾燥といった極端な環境ではなく、一定の湿度や温度を保てる場所で保管することが重要です。
虫やカビを防ぐため
お米を常温で一定期間放置すると、虫が発生しやすくなります。代表的なものは「ノシメマダラメイガ」と「コクゾウムシ」です。基本的に虫や小石などの異物は厳重な検査により除去されるのですが、それでもごくまれになんらかの形で侵入し、卵を産み付けてしまうことがあります。
その場合、20℃以上の高温状態が1か月続くと、虫が発生しやすくなるため注意しましょう。これらの虫は、15℃以下で活動が鈍り、増殖できないため、虫を防ぐために正しい保管方法が重要です。
カビは、風通しが悪く、湿度が60%を超えると発生しやすくなります。カビを発生させないためにも、正しい保管方法を知ることが必要です。少し話は逸れるものの、濡れた手でお米に触れないことも大切といえます。これもカビの原因となるため、取り扱いにも注意しましょう。
お米の保存に最適な場所とは
ここからは、お米の保存に最適な場所の特徴を紹介します!具体的な場所も紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
低温である場所
前提として、保管場所の温度が高ければ虫が発生しやすくなります。一般的に、20℃以上の高温状態が1か月続くと発生しやすくなるため、極力温度が低い場所で保管したほうがよいでしょう。また、お米の乾燥によるひび割れを防ぐためにも、低温である場所への保管を心がけてください。
たとえば、冷蔵庫の中や、あまり温度が高くなりすぎない床下収納(高湿度にならないよう注意)などが該当します。
湿度が適切に保てる場所
カビを発生させないためにも、湿度が一定に保てる場所で保管しましょう。湿度が60%を超えると、カビが発生しやすくなります。そのため、水回りや窓の近くなど、普段から水を使う場所や季節によっては結露しやすい窓の近くなどで、保管するのは避けた方がよいでしょう。
日光に当たらない場所
日光に当たらない場所で、お米を保管することも重要です。直射日光はお米の酸化を促進させ、部屋の温度も上昇させます。お米のひび割れや虫の発生にもつながるので、日光に当たらない場所での保管を心がけましょう。
お米の具体的な保存方法
それでは、どのようにお米を保存すればよいのでしょうか?ここからは、お米の劣化を最大限遅らせ、美味しく食べるための具体的な保存方法を紹介します。これまでお米の保存方法にあまりこだわりのなかった方は、ぜひお試しください。
冷蔵庫の野菜室で保管する
温度の上昇や湿度を一定に保つうえで、お米の保管に適しているのが冷蔵庫の野菜室です。お米も野菜と同じ農作物なので、野菜室で保管することは理にかなっているといえるでしょう。
冷蔵庫の野菜室は3度~8℃程度であり、虫が発生することはなさそうです。また、庫内も一定の湿度が保たれているので、カビの心配もそれほどありません。
密閉容器に入れて保管する
具体的な保存方法として、米袋のまま保存せず、プラスチック製の密閉容器に移し替えて保管することが大切です。密閉容器に入れなければ、いつの間にか虫が混入してしまい、そこから大量発生してしまうかもしれません。
米袋を隙間なく閉じているので大丈夫と思うかもしれませんが、残念ながらお米に発生する代表的な虫であるノシメマダカラメイガは、長いくちばしによって米袋など簡単に破って侵入します。密閉容器といってもジッパー付きポリ袋ではなく、プラスチック製の密閉容器などを活用したほうがよいでしょう。
【おすすめ】ペットボトルの容器で保管する
ここまでの具体的な保存方法をふまえて、私の方から提案できるおすすめの保管方法はペットボトル容器です。
ペットボトル容器をよく洗ったあとにしっかり乾燥させれば、これ以上ない立派な密閉容器になります。お米をペットボトルに入れて、冷蔵庫の野菜室で保管します。ペットボトルなら、計量カップへお米を注ぐことで簡単に計量できるのも、メリットといえるでしょう。
冷蔵庫は、庫内がペットボトルを保管しやすく設計されているものも多く、効率よく収納・保管でき、ベストマッチといえるかもしれません。ペットボトルへお米を移す際には、こぼさないように100円均一ショップで買える「ろうと」を使いましょう。お米の保管は、ペットボトル容器がおすすめです。
炊いたお米(ご飯)の具体的な保存方法
お米の保存方法は、ご理解いただけたかと思います。では、炊いたお米(ご飯)はどう保存すればいいのでしょうか?当日〜長期間まで、炊いたお米の具体的な保存方法を紹介します。
冷凍保存する
一人暮らしをしている学生や社会人など、日々忙しい方に最適な保存方法です。ご飯を冷凍保存すれば、約1か月は保存できます。ご飯を食べるときに、小分けにした冷凍ご飯をチンするだけで、美味しく食べることが可能です。
ご飯が炊きあがったら「シャリ切り(しゃもじでご飯全体を底からまぜ、余計な水分を飛ばし空気を含ませること)」をしたあと、熱いうちにラップで平たく包み、そのまま放置して冷ましたあとに冷凍庫に入れましょう。ご飯の量は、茶碗1杯分が目安です。
炊きあがりの熱々状態のご飯をラップで密閉することで、水分を逃がさずに冷凍できます。そのため、電子レンジで再加熱しても、冷凍ご飯とは思えないほどみずみずしく、美味しいご飯が食べられるのです。
休日にご飯を炊き、それをラップに包んで冷凍するだけで、忙しい平日はご飯を炊く手間がなくなります。忙しい方にとてもおすすめの方法です。
冷蔵保存する
炊いたご飯を2~3日で食べきる方は、プラスチック製の密閉容器に入れて冷蔵保存しましょう。注意点は、必ずラップやフタなどで密閉することです。ラップやフタをしないとご飯の表面が乾燥し、電子レンジで再加熱したときのみずみずしさが失われます。
どうしてもご飯が乾燥してしまった場合は、霧吹きなどで少し水をかけてから、電子レンジで温めれば多少は改善します。
1日で食べきれるなら常温保管でもOK
1日でご飯を食べきれるという方であれば、夏場でもないかぎり常温保管で大丈夫です。ただし、電子ジャーの保温機能を使って、保温したまま保存するのはあまりおすすめできません。ご存じのとおり、ご飯を保温しっぱなしにしておくと、黄色く変色し、においが出ます。
ご飯が黄色くなる現象を「メイラード反応」といい、長時間保温するとご飯に含まれている糖とアミノ酸が糖化反応を起こすため、黄色く変色します。また、電子ジャーは65℃前後で保温するので、細菌が増殖し、においも出やすくなります。
数時間なら問題ありませんが、12時間以上保管するなら、容器に移して常温保管しましょう。これで、変色やにおいが出ることはありません。温めなおせば、美味しく食べられるのでおすすめです。
やってはいけないお米のNG保存方法
せっかくのお米を台無しにしてしまうNGな保存方法も見ていきましょう。お米の劣化を早め、味も悪くなってしまうため、これらに該当する場所で保存されている方は、早急に保存方法の見直しをおすすめします。
湿気の多いシンク下で保管する
湿気の多いシンク下で、お米を保存するのはNGです。いわゆる水まわりは常に湿気が多く、カビを発生させるリスクがあります。また、シンク下は排水や生ごみなどのにおいも気になるため、においを吸着させやすいお米の保存はやめましょう。
芳香剤やにおいが強い洗剤などの近くに保管する
お米はにおいを吸着しやすい食材のため、芳香剤や洗剤など強いにおいを発生させるものの近くで保存するのはやめましょう。一度お米についたにおいを除去するのは難しく、炊いたときの味が極端に落ちてしまいます。
冷凍庫に生米を保管する
冷凍庫に生米を保管することもやめましょう。冷凍庫にお米を入れると水分が凍ってしまい、ひび割れを起こします。組織が壊れてしまい、炊きあがりの状態がべちゃっとなるので決しておすすめはできません。
長期保存ができる「玄米のある暮らし」を取り入れてみるのも1つの手
何回もお米を買うのが面倒な方や、どうしても長期間保存せざるを得ない方などは、酸化しにくく長期保存が可能な玄米を取り入れてみてはいかがでしょうか?玄米は、精製されたお米よりも、長期保存が可能です。
私は現在、年に数回農家さんから直接30kgの玄米を融通してもらい、一定量をその都度精米して食べています。ただし、30kgの袋はとても大きいので、冷蔵庫に入りきらない分は密閉容器に移したうえで、床下収納スペースに入れています。
現代の住まいで風通しのよい場所を確保するのは難しいため、保管には温度変化の少ない床下収納でも大丈夫です。ただし、湿度が上がりやすいこともあるので、気になる方は乾燥剤も活用しましょう。
玄米を一定量ずつ自宅で精米することで、常に新鮮な美味しいお米を食べられるため、多くの方におすすめです。
実は家庭精米はとても簡単にできる
玄米をそのまま食べるのもよいのですが、口の中に残るような食感を苦手とする方が比較的多いようです。そこで家庭精米を行い、精米したてのお米を食べましょう。家庭精米はとても簡単で、ネット通販などで小型の家庭用精米機が15,000円前後から売っているため、それを使います。
スーパーなどで精米済みのお米と、自宅精米の新鮮なお米との炊きあがりを比較したとき、やはり自宅精米に軍配が上がります。ご飯の色・ツヤがまったく違うのです。初めて自宅精米のご飯を食べたときの感動は、今でも忘れられません。そのため、私は多くの人に自宅精米をおすすめしています。
長期保存可能な玄米を購入し、自宅で精米するという最高のルーティーンのできあがりです。
玄米食で美容と健康を手に入れる
私は週に1~2回程度、玄米の日を作っています。玄米はビタミンB群や食物繊維をはじめとした栄養価が非常に高く、健康やデトックスを兼ねて玄米を食べているのです。
健康ブームといわれる昨今、玄米食が注目を浴びています。ビタミンB群や食物繊維はお肌やお通じを改善させるため、美容と健康への意識が高い方にはピッタリの食事といえるでしょう。ただ、玄米は白米より消化に時間がかかるため、胃腸が弱い方は多く食べすぎないよう注意する必要があります。
私の玄米の炊き方は、8~12時間程度浸水させたあと、少量の粗塩を加えて土鍋で炊飯する方法です。8~12時間程度浸水させて粗塩を加えることで、玄米独特の口の中に残るボソボソとした食感と、米ぬかのにおいをかなり軽減させられるので、参考にしてみてください。
玄米がどうしても苦手なら胚芽米がおすすめ
玄米がどうしても苦手な方は、少なからずいます。かくいう私も、週7日すべて玄米は少し厳しいです。どうしても玄米が苦手な方は「胚芽米」にして食べましょう。胚芽米とは、お米の栄養成分が凝縮された「胚芽」を残したお米です。
また「分づき米」というのもあり、こちらは玄米から白米に何割精製したかをさし、「3分づき」「7分づき」など、数字が大きいほど白米に近くなります。
家庭用の小型精米機は、基本的に「分づき米」モードや「胚芽米」モードが搭載されているため、ボタン1つで分づき米や胚芽米へ精米でき、手間はかかりません。なにより、玄米にある口の中に残るボソボソとした食感と米ぬかのにおいがなくなり、白米と同じ食感(あくまで私の主観ですが)で食べられることが最大の魅力といえるでしょう。
玄米ほどではないにせよ、栄養価の高いご飯が白米と同じ食感で味わえるわけですから、もはや食べない手はありません。私は普段の生活で、玄米の日以外はすべて胚芽米を食べています。
玄米がどうしても苦手な方は、胚芽米を食べましょう!美味しさと栄養価を両立させた胚芽米は、お米を食べることへの罪悪感を小さくしてしまうため、食べすぎにだけは注意してくださいね。
お米の正しい保存方法を押さえよう
今回は、お米の正しい保存方法を紹介してきました。野菜や肉・魚といった食材と異なり、お米の保存方法についてはそこまで意識していない方がほとんどです。しかし、せっかくのお米を酸化させてしまっては、美味しくなくなってしまいます。虫やカビが発生した日には、もう目も当てられないことでしょう。
これらのトラブルを事前に回避し、いつでも安心して美味しいお米を食べられるようにするためにも、お米の正しい保存方法を理解し、ぜひ実践しましょう!