夜のまったりとした時間には、梅酒がぴったりです。ソファに座り、お気に入りのドラマや映画を観ながら、梅酒の入ったグラスをゆっくり傾ける至福のひとときは、あなたの日常をきっと豊かにしてくれるでしょう。せっかくなら、市販ではない手作りの梅酒を、さまざまなアレンジも加えて楽しみたいものですね。
しかし、梅酒を作ったことがないという方は、どうやったらできるか想像もつかず、お酒を自分で作ることに不安を覚える人も多くいるかと思います。
今回は、自宅で毎年梅酒を作り続けて7年になる料理人の私が、自らの経験を踏まえた梅酒の作り方を伝授します。そのほかおすすめのアレンジ術やよくあるトラブル、疑問点まで、梅酒作りで気になる情報を紹介します。
梅雨入り前後は、梅酒を作る(仕込む)格好の時期でもありますので、ぜひ梅酒作りにチャレンジしてみましょう。
梅酒とは
梅酒とは、5月中旬頃から収穫される青梅を、ホワイトリカーやさまざまな焼酎・ブランデーなどといった蒸留酒に漬け込むことで、作られるお酒のことです。日本では、健康によいとされてきたことから食前酒としてよく利用され、昔から多くの家庭で作られてきました。
梅酒をはじめ、梅干しなどを作る(仕込む)ことを「梅仕事」といいます。梅酒は梅仕事のなかでもお手軽・簡単に作れるため、多くの方におすすめです。
また、梅酒に含まれるクエン酸は疲労回復効果が期待できるため、夏バテ防止に適しています。飲み過ぎはよくありませんが、アルコールによる血行促進効果によって、冬場の手足の冷えにも効果があります。おいしいだけでなく、さまざまな健康効果があるといわれていることから、とても人気なのです。
梅酒の作り方自体もとても簡単で、よく水洗いした青梅を瓶に入れ、氷砂糖とホワイトリカー(または芋や麦などの焼酎・ブランデーなど)を入れて密閉するだけ。ただし、各工程には細かいやり方やコツがあります。これから、失敗しないおいしい梅酒の作り方を解説していくので、ぜひご覧ください。
ただ、万が一のトラブルに巻き込まれないためにも、梅酒を手作りする前に「酒税法」について少しだけ知っておきましょう。
【注意】梅酒を手作りする前に「酒税法」について知っておこう
梅酒を手作りする前に、知っておくべきものとして「酒税法」があります。ビールやワイン・日本酒などのお酒にかけられている税金は、国の貴重な財源となっているため、製造を厳しく規制されているのです。
自家消費するための梅酒も、規制の対象となっていることに注意する必要があります。そのため、梅酒を手作りする際は、酒税法違反にならないように作らなければなりません。
酒税法にひっかからないための要点をまとめておきますので、これらを守ったうえで梅酒を手作りしましょう。
・使用するお酒のアルコール度数が20度以上であり、課税されているお酒を使うこと
・米・麦・あわ・とうもろこし・ぶどう・アミノ酸やビタミン類などを混ぜて作ってはいけない
・自家製の果実酒を販売してはいけない
・同居の親族以外に梅酒を提供してはいけない
とくに気をつけておきたいのが、同居親族以外への提供です。自宅に招いた友人に手作りの梅酒を振る舞うことは、違法となります。あくまで、自宅での自己消費の範囲でしか認められていないことを、事前に理解しておきましょう。
梅酒を手作りするために必要な材料や道具
酒税法の注意点を理解したら、さっそく梅酒を手作りしていきましょう。まずは、必要な材料や道具を解説していきます。もっとも基本的な材料なので、慣れてきたら好みに合わせて、氷砂糖の量や蒸留酒の種類を変えるなどのアレンジもOKです。
青梅・・・1kg
なるべく大きなサイズで、キズや変色がないものを選びましょう。6月の上旬をすぎると、青梅ではなく黄色く熟した完熟梅が少しずつ出回りますが、完熟梅でも梅酒作りは可能です。
ホワイトリカー・・・1.8リットル
ホワイトリカーは、スーパーで売っている紙パックのもので問題ありません。アルコール度数が35度前後のものを選びましょう。
焼酎を使う場合・・・1.8リットル
ホワイトリカー以外で梅酒を作るのも、梅酒作りの楽しみといえます。使用する焼酎は芋・麦などお好みのもので大丈夫です。麦焼酎で梅酒を作ると、独特のキレのある香りやまろやかな甘味を楽しめます。
また、芋焼酎の場合は、さつまいもの香りと深いコクのある仕上がりになります。特別な焼酎を使うのではなく、「あえて」普段飲んでいる焼酎を使用すると違いがハッキリとわかるため試してみてください。
ブランデーを使う場合・・・1.8リットル
ブランデーを使用すると、芳醇な香り漂うとても贅沢な梅酒に仕上がります。梅の香りとブランデーの香りが合わさることで、ホワイトリカーで作った梅酒とはひと味違うリッチさを感じられるでしょう。
おすすめのブランデーは、スーパーで売っている「果実酒用ブランデー」です。量のわりに値段もそこまで高くなく口当たりもよいため、まずは「果実酒用ブランデー」を使うことをおすすめします。
日本酒を使う場合・・・1.8リットル
日本酒で梅酒を作ると、日本酒独自のうま味とまろやかさが際立つ梅酒ができあがります。ただし、アルコール度数が20度未満の日本酒で梅酒を作ると「酒税法違反」となるため、必ず20度以上の日本酒を使いましょう。スーパーにない場合はネット通販で購入できます。
また、日本酒を使う場合は、後述する氷砂糖の量を300g~500g程度に抑えたほうが、甘さ控えめでスッキリと飲みやすくなるのでおすすめです。
氷砂糖・・・1kg
スーパーで売っている氷砂糖を使用します。
容量3~4リットルほどの保存用の瓶
容量3~4リットルほどの保存用の瓶が必要です。雑菌が入るのを防ぐために、フタがついたものか、密閉できるものがいいでしょう。梅酒用や梅干し用の瓶として、ホームセンターなどで購入できます。
直射日光が当たらない冷暗所で保管する必要があるので、自宅に床下収納があれば置き場所として最適といえそうです。
食品用アルコールスプレー
梅酒作りを失敗しないためには、瓶や道具などの消毒がかかせません。食品用のアルコールスプレーは、スーパーマーケットで購入できます。もし、近所のスーパーマーケットで取り扱いがない場合は、ネット通販を利用しましょう。
ザルとボウル
青梅を水洗いするためのザルとボウルです。自宅にあるものを使いましょう。
キッチンペーパー
水洗いした青梅の水分を拭き取るために必要で、ある程度の厚みがあるものが使いやすく便利です。
つまようじや竹串
青梅のヘタを取るために使います。自宅につまようじや竹串がない場合は、フォークでも代用可能です。ただし、使う前に必ずアルコールスプレーで消毒しましょう。
自家製梅酒の作り方とポイント
必要な道具がそろったところで、誰でも簡単にできる梅酒の作り方を紹介していきます。7年間梅酒を作り続けてきた料理人の私が、失敗しないための独自のコツも紹介していくので、ぜひ参考にしてみてください。
STEP1.青梅を水洗いする
最初にザルとボウルを使い、青梅をつぶさないようにやさしく水洗いします。洗ったあとは、アク抜きを兼ねて2~3時間ほど水につけておきましょう。なお、黄色くなった完熟梅や冷凍された梅を使う場合、アク抜きは必要ありません。
STEP2.ヘタをきれいに取り除く
洗い終わったら、1個ずつ丁寧に竹串やつまようじでヘタをきれいに取り除いていきます。竹串やつまようじがなければ、自宅にあるフォークでもヘタ取りは可能です。ただし、必ずアルコール消毒をしましょう。
ヘタを取る際、梅にキズをつけると梅酒が濁る原因になるので、注意してください。鉛筆を持つように竹串を短く持つと、ヘタが取りやすくなります。また、キズや傷みのある梅はこのときに選別して、梅酒に使わないようにしましょう。
STEP3.青梅の水分を拭き取る
ヘタ取りが終わったら、キッチンペーパーで1個ずつ丁寧に水分を拭き取ります。水分が残っていると腐敗の原因になるため、残さず拭き取ることが大切です。
STEP4.保存用の瓶を消毒する
きれいに洗った保存用の瓶の水気を拭き取り、食品用アルコールスプレーでまんべんなく瓶の内側を消毒します。フタも、必ず消毒してください。消毒不足も失敗の原因となるため、しっかりと消毒しましょう。アルコールスプレーで消毒したら、アルコールが蒸発するまで数分待ちます。
STEP5.青梅と氷砂糖を交互に入れ、ホワイトリカーを注ぐ
アルコールが蒸発したら、瓶に青梅と氷砂糖を2~3回交互に入れたのち、ホワイトリカーを注ぎます。
STEP6.しっかりとフタをしめ冷暗所にて3か月保管する
しっかりとフタをしめて、冷暗所にて3か月(またはそれ以上)保管します。直射日光に当てると腐敗の原因になるため、必ず冷暗所で保管してください。温度変化が少ない床下収納で保管するのが、ベストといえるでしょう。
漬け込んだ日をメモ書きして瓶に貼り付け、3か月たてば梅酒が完成し、飲み頃となります。
ちょっとしたひと手間でもっとおいしく!梅酒のアレンジ方法
梅酒は、水割りやロック・ソーダ割りで飲むのが一般的ですが、ちょっとしたひと手間を加えることで一気に世界が広がります。ここからは梅酒のアレンジ方法を紹介します。気になるものがあれば、ぜひチャレンジしてみてください。
梅酒アレンジ①ジュースや牛乳・豆乳で割る
もっとも簡単な梅酒アレンジは、お好みのジュースや牛乳・豆乳などで割って飲むことです。オレンジジュースやリンゴジュースなど、なんでもOKです。
あなただけのオリジナルドリンクを楽しみましょう。牛乳や豆乳で割ると、ヨーグルトのような風味が味わえるのでおすすめです。
梅酒アレンジ②ふやかした粉ゼラチンを入れて作る「梅酒ゼリー」
梅酒にあらかじめ水でふやかしておいた粉ゼラチンを加え、電子レンジで熱々に加熱(沸騰はさせない)します。加熱後にしっかりとかきまぜて粉ゼラチンを溶かし、粗熱をとったのち冷蔵庫で冷やし固めると、梅酒ゼリーのできあがりです。
粉ゼラチンの分量は、梅酒の2%が目安です。梅酒200ccであれば、粉ゼラチンを4g使いましょう。
梅酒アレンジ③スパイス&ハーブ梅酒
梅酒にスパイスやハーブを加えると、まったく別のドリンクに変化します。お手軽なアレンジ方法として、ぜひ試してみてください。
定番はシナモンで、甘い香りのシナモンを加えることにより、梅酒のフルーティさが際立ちます。そのほか、山椒・カルダモン・スペアミントなどもおすすめなので、いろいろと試してみるのもおもしろそうですね。
お酒が苦手な人やお子様におすすめ!梅シロップの作り方
お酒が苦手な人やお子様には、梅シロップを作りましょう。作り方は梅酒と同様で、ホワイトリカーなどのお酒を入れなければOKです。ただし、氷砂糖だと溶けにくいので、上白糖やてんさい糖などを使いましょう。
1~2週間ほど冷暗所で保管し、砂糖が完全に溶けたら完成です。完成したら梅を取り出し、冷蔵庫に入れます。すっきりとした梅シロップのソーダ割りは、夏の飲み物に最適です。梅酒を作る際、小さな瓶をもう1つ用意して、一緒に梅シロップも作っておくとよいでしょう。
梅酒作り歴7年の私が梅酒作りの疑問にすべてお答えします
ここからは、梅酒を作る際によくある疑問にお答えしていきます。これらの疑問の答えを知っておくことで、より素敵な梅酒ライフを送れるでしょう。私自身の経験を踏まえてお答えしていくので、ぜひご覧ください。
そもそも青梅はどこで手に入る?
梅は、毎年5月中旬から6月下旬にかけて市場に出回ります。この時期にスーパーマーケットなどへ行けば、問題なく手に入るでしょう。少しでも安く買いたいのであれば、個人で営んでいる八百屋か、道の駅などで買うのがおすすめです。
私は毎年、梅酒・梅干し・梅シロップなどを大量に作るので、地元の八百屋にお願いして、12kg~18kgの青梅や完熟梅を特別に注文しています。値段は毎年変動するものの、1kgあたり400円~700円ほどです。あくまで私の地元での話ですので、参考程度にしてください。
また、6月の上旬をすぎると、市場に出回る梅が少しずつ青梅から黄色に熟した完熟梅に切り替わっていくため、注意しましょう。もちろん完熟梅でも、おいしい梅酒が作れます。青梅ではキリッとした味わいを楽しめ、完熟梅ではよりフルーティな味わいの梅酒に仕上がります。ただし、難易度は完熟梅の方が高くなるため、まずは青梅からはじめる方が無難かもしれません。
もし、梅の旬を逃した場合でも、冷凍梅ならネット通販で一年を通して購入できるため、それを使っての梅酒作りも可能です。スーパーなどで購入時期を逃しても、あきらめずに冷凍梅を使って、梅酒作りにチャレンジしましょう。
どのサイズの青梅を選べばいいの?
梅にはS~4Lといった具合に、さまざまなサイズが存在します。梅酒を作る際、私の個人的な意見としては大きい方(4L)がおすすめですが、なければ3Lでもかまいません。大きな梅は果肉が多く、果汁もよく出るため、おいしく仕上がります。
また、漬け込んだ梅自体も食べられるため、大きい方がお得感もあり、大きい梅を選ぶことは一石二鳥といえるかもしれません。ただし、濁りの原因となるので、キズや変色の少ないきれいな青梅を選びましょう。
濁ってきたけどこれは失敗?
濁り=失敗ではありません。キズがついた梅を使ったり、完熟梅を使ったりすると濁りやすくなります。また、作る工程で黒砂糖やはちみつなどを加えると、それらに含まれる不純物の影響で濁りやすくなるようです。
濁ってしまうと見た目はあまりよくありませんが、腐っているわけではないため、問題なく飲めます。ただし、ツンとした酸っぱいにおいがしていたら腐敗が進んでおり、また梅からカビが生えてしまうと失敗です。飲むのは危険なので、廃棄しましょう。失敗しないためにも、正しい手順を確実に行う必要があるのです。
梅酒は何年くらいもつ?梅は漬け込んだままでいいの?
明確な基準はありませんが、安全に飲めるのは3年以内とよくいわれているため、それまでに飲み切るのがいいでしょう。もし、酸っぱいにおいやカビが浮いていたら、腐敗が進んでいるため廃棄してください。
漬け込んだ梅は、長くても1年で取り出すのがよいでしょう。長期間梅を漬けっぱなしにすると形が崩れ、濁りや腐敗の原因になるからです。また、取り出した梅は、さまざまな料理に活用できます。もちろんそのまま食べてもおいしく、梅自体を活用できることが、手作り梅酒の醍醐味といえます。
取り出した梅は活用できる?
では、取り出した梅はどのように活用すればよいのでしょうか?私がおすすめする活用方法を紹介します。
梅ジャム
まずは定番の梅ジャムです。意外と簡単なので、ぜひ作ってみましょう。ジャムはとくに雑菌が繁殖しやすいので、保存用の瓶は必ずアルコールスプレーもしくは煮沸消毒をしてください。
<材料>
・梅の実 400g
・水 適量
・グラニュー糖 150g(てんさい糖や黒糖でも可)
・レモン汁 大さじ2杯
1. 鍋に梅の実と、梅がひたひたになる程度の水を入れて中火にかけ、2〜3分沸騰させます。
2. 梅をザル上げして、水を捨てます。
3. 梅の種を丁寧に取り除き、鍋に戻してグラニュー糖とレモン汁を加え、弱火で梅の実を崩しながらとろみが出るまでしっかりと煮込みます。
4. 熱々のジャムを消毒した瓶に入れ、フタをしてひっくり返します(ひっくり返して冷ますことで空気が抜け、カビを防止できます)。
イワシの梅煮
イワシの梅煮もおすすめです。梅の実を使うと臭みが消えるので、食べやすくなります。大葉を加えるのもいいですね。さっぱりとしているので食べやすく、クエン酸の疲労回復効果によって、夏バテ防止にも最適な料理といえそうです。
<材料>
・イワシ 4尾
・梅の実 1~2個
・しょうが 1/2片
・こいくち醤油 大さじ4
・日本酒 大さじ4
・みりん 大さじ2
・砂糖 大さじ1
・水 200cc
1. こいくち醤油・日本酒・みりん・水・砂糖を入れ、中火で煮立てる。
2. 煮立ったらしょうがと梅の実を加え、再度煮立てる。
3. イワシをならべて入れ、アルミホイルやキッチンペーパーなどで落とし蓋をして、弱火〜中火で10分程度煮込む。
ドライフルーツ
梅の実の種を抜いて、日当たりのいい屋外に数日間干すか、120℃程度のオーブンで1時間~1時間半加熱すると、ドライフルーツの完成です。ちょっとしたおやつに最適なので、ぜひ試してみてください。オーブンでの加熱時間が短いと、アルコールが飛ばないため注意しましょう。
手作りの梅酒を楽しもう!
梅酒は手軽に作れるうえに、健康効果も高いことから多くの家庭で作られてきました。私自身も、毎年梅酒をはじめ、梅干しや梅シロップなどを作っています。手作り梅酒は格別の味わいであることはもちろん、梅酒を作る「梅仕事」自体が、とても楽しい梅雨時期のイベントです。
自分で梅酒を作るからこそ、さまざまなアレンジも楽しめます。今回紹介した方法で作れば、失敗の確率を大幅に下げられるでしょう。
ぜひ一度、あなたも梅酒作りにチャレンジしてみてはいかがでしょうか?梅の時期を逃してもネット通販で一年中購入できるので、思い立ったその日に梅仕事はできますよ。