味噌は、私たち日本人の食卓に欠かせない調味料のひとつです。味噌汁や炒め物、煮物など、さまざまなお料理の味付けに使える万能さが魅力です。また、発酵食品でもある味噌を毎日の食事に取り入れることで、腸内環境が整います。健康維持にもつながることから、最近の腸活ブームでも注目を集める調味料です。
そんな魅力がたっぷり詰まった味噌を、自宅で手作りしてみたいと考えつつも、なかなかチャレンジできずにいる方も多いのではないでしょうか。
今回は、意外にも簡単にできる味噌の作り方や保管方法、今すぐチャレンジしてみたくなる手作り味噌の魅力をご紹介します。
40年の経験を持つ母から教わった、手作り味噌の魅力
年を重ねるにつれて、自分や家族の健康について考えることが多くなり、母の作る料理にさまざまな発酵食品が含まれていたことを思い出しました。野菜たっぷりの味噌汁やぬか漬けなど、日々の食卓に並んでいた料理が家族の健康につながっていることを知り、ますます発酵食品に興味が湧いていきました。
そのなかで、まず母から教わったのがぬか漬けです。さらに、発酵調味料のなかでも比較的手軽に作れる、塩麴や醤油麴などを自分で作るうちに、発酵食品を手作りする楽しさを感じるようになりました。
▼参考記事
ぬか漬け歴40年の母直伝!今日から始めるぬか床作りの3つの簡単手順
味噌に関しては、母が手作りしていることは知っていたものの、準備や工程、保管方法が難しいのではないかと思い、長年チャレンジできずにいました。実際、母に教わりながら味噌を作ってみると、意外にも簡単で、仕込み終わったときの達成感もひとしおでした。
最初はたくさん仕込むのではなく、少量から始めてみるのも、気軽に手作り味噌を楽しむためのポイントです。
自分好みの味が作れる
味噌を手作りする大きな魅力は、豆や塩、麹などの材料を自分で選べる点です。地元で採れた豆やこだわりの塩、好みのメーカーの麹を使うなど、自分で選んだ安心の材料で作れます。
豆の粗さを調整できる点も、手作り味噌の魅力です。より豆の味や風味を楽しむために、つぶつぶ感を残して粗く潰す、細かく潰してなめらかな食感に仕上げるなど、豆の粗さでも自由自在に個性を出せます。また手作り味噌なら、塩加減を自分で調整できるところも嬉しい魅力です。
完成したときの達成感が格別
味噌をじっくり煮てから潰す、塩と麹を加えてしっかり混ぜ合わせる、味噌団子を作って容器にきっちり詰めるなど、味噌作りにはさまざまな工程があります。一つひとつ丁寧に作業していくことで、仕込み終わったときの達成感はひとしおです。
さらに、熟成を経て仕上がった味噌には、愛着が湧いてきます。味噌ができあがったあとは、どんな食材に合わせようかとレシピを考えるのが楽しくなり、日々の料理へのモチベーションも上がっています。
美容や健康に嬉しい効果がたくさん期待できる
発酵食品の味噌は、腸活にもピッタリの調味料です。畑の肉とも呼ばれる大豆を主原材料とする味噌には、植物性たんぱく質が多く含まれていて、栄養バランスにも優れています。発酵させる過程でアミノ酸やビタミン類が増えるほか、大豆には本来含まれない酵母や乳酸菌などを同時に摂取できるのも、味噌ならではの魅力です。
さらに、味噌のなかには、私たちが生きていくうえで不可欠な、必須アミノ酸9種類がすべて含まれています。そのほかにも、炭水化物や脂質、ビタミン、ミネラル、食物繊維など、多くの栄養素がバランスよく含まれているため、美容や健康にも嬉しい効果がたくさん期待できます。
味噌の主な種類
日本全国で独自の発展をしてきた味噌は、気候や製法によってさまざまな種類があります。ここでは、味噌の主な種類を麹・味・色・地域の4つに分けて、その特徴や違いをご紹介します。
麹による分類
麹とは、穀物に麴菌を繁殖させたもので、白い粉がまぶされたような見た目が特徴です。麹は、味噌󠄀や醤油、酒など、日本伝統の発酵食品に幅広く使われています。味噌作りには、米麴・麦麹・豆麹の3種類が使われており、米味噌・麦味噌・豆味噌の3つに分類されます。
米味噌
米味噌は、大豆に米麹と塩を加えて作る味噌で、熟成期間は6ヶ月〜1年です。米麹を使った米味噌は最も一般的な味噌であり、全国各地で生産されています。米味噌はクセのない味わいが特徴で、白〜赤、甘〜辛まで色や味わいも多種多様です。
麦味噌
麦味噌は、大豆に麦麹と塩を加えて作る味噌です。麦味噌の熟成期間は2〜6ヶ月と、ほかの味噌に比べて熟成期間が短い点が特徴になります。麦麹を使った麦味噌の主な産地は、九州、四国、中国地方です。麹の割合の多さや熟成期間の短さなどにより、より甘みが強いのが特徴です。
豆味噌
豆味噌は、大豆に豆麹と塩を加えて作る味噌です。熟成期間は1〜3年と、ほかの味噌に比べて熟成期間が長い点が特徴になります。豆麹を使った豆味噌の主な産地は、愛知県、三重県、岐阜県などの中京地方です。
豆味噌は、ほかの味噌に比べて大豆の割合が多く、熟成期間が長いです。そのため、グルタミン酸を多く含み、旨味が強く、濃厚な味わいを楽しめます。
味による分類
味噌の味は、塩加減と麹歩合によって変化します。麹歩合とは、大豆に対する麹の比率のことです。塩分量が一定なら、麹の量が多くなればなるほど甘みの強い味噌に仕上がります。味噌の味は甘味噌、甘口味噌、辛口味噌の3つに分類されます。
甘味噌
甘味噌は塩分量が低く、麹歩合が高いため、甘みのある優しい味わいが特徴です。
甘口味噌
甘口味噌は、甘味噌と辛口味噌の中間の塩加分量と甘さが特徴です。
辛口味噌
辛口味噌は塩分量が高く、麹歩合が低いため、塩味のある力強い味わいが特徴です。
色による分類
味噌の色は、大豆の種類、大豆を蒸すか煮るかの違い、麹の割合、発酵や熟成のさせ方や期間による違いがあります。味噌の色の違いや濃淡の差は、発酵・熟成する間に起こるメイラード反応(原料である大豆などのアミノ酸が糖と反応して褐色に変化すること)によるもので、主な種類は白味噌、淡色味噌、赤味噌の3つに分類されます。
白味噌
白味噌は熟成期間が短く、すっきりとした甘みが特徴です。また、大豆を煮て作る白味噌は、メイラード反応の要因でもある糖質やたんぱく質が水に溶け出すため、褐色に変化しにくく、明るい色に仕上がります。
赤味噌
赤味噌は熟成期間が長く、コクのある深い味わいが特徴です。また、大豆を蒸して作る赤味噌は、メイラード反応の原因でもある、糖質やたんぱく質が多く含まれています。褐色に変化しやすく、濃い色に仕上がります。
淡色味噌
淡色味噌は、赤味噌と白味噌の中間の色で、白味噌より塩味が強くてやや色が濃いのが特徴です。大豆を蒸して作るものと煮て作るものがあり、麹の量や熟成期間を調整して作られています。
地域による分類
味噌は、地域によっても種類がさまざまです。全国の気候や風土、原材料や配合など、さまざまな条件が重なることにより、その土地ならではの個性豊かな味噌が作られています。地域ごとの味噌については、種類がとても多いので、ここでは代表的な味噌をご紹介します。
信州味噌
信州味噌は、信州地方で作られている辛口の米味噌です。現在、日本国内で生産されている味噌の約半分 が、信州味噌と言われています。さっぱりとしながらも、旨味をしっかりと感じられる、香り豊かな味わいが特徴です。炒め物や汁物・煮物と、幅広い料理に使われています。
仙台味噌
仙台味噌は、宮城県で作られている米味噌です。赤味噌の一種で、色が濃くて塩分も高めですが、大豆の風味や旨味をしっかりと味わえることから、出汁なしでも美味しい味噌汁が作れるとも言われています。
八丁味噌
八丁味噌は、愛知県で作られている豆味噌です。米や麦を使わず、大豆のみで作られています。大豆の旨味が凝縮されていて、濃厚なコクと酸味、渋味のある独特な風味を味わえます。
関西白味噌
関西白味噌はその名の通り、関西地方で一般的に使われている米味噌です。大豆に対して倍量の麹を加えているので、甘みが強いのが特徴です。京風の雑煮や味噌床に魚や肉を漬け込む西京漬けにも、使われています。
【味噌の作り方①】必要な材料・道具を用意する
ここからは、味噌作りに必要な材料と道具をご紹介します。
味噌の材料
味噌にはさまざまな作り方がありますが、基本の分量を「大豆:麹=1:1」「塩=大豆+麹の20%」としておくと覚えやすいです。慣れてきたら、塩分など自分好みのバランスを試してみるのもおすすめです。
今回は、初めてでも作りやすい、できあがりが2kgを目安とした分量でご紹介します。
①乾燥大豆 500g
②米麹 500g
③塩 200g
味噌作りに必要な道具
味噌を作る際に準備しておきたい道具をご紹介します。使う道具は工夫することで、自宅にあるものでも十分に味噌作りに活用できます。
①大きめの鍋
大豆を煮るため(より簡単に時短で作るなら圧力鍋もおすすめ)
②ボウル
麹と塩を混ぜる、大豆を潰す・混ぜるため(漬物用ビニール袋や保存袋を使うのもおすすめ)
③マッシャーまたはフードプロセッサー
煮た大豆を潰すため
④ラップ
味噌を密閉するため
⑤重石
味噌を密閉するため(重石はペットボトルや塩を詰めた袋などでも代用可)
⑥保存容器
味噌を保存するため(ジッパー付き保存用袋でも代用可)
【味噌の作り方②】味噌作り前日に行う作業とポイント
味噌作りは、全部で2日間が必要になります。乾燥大豆は、味噌を仕込む前日に水に浸しておきましょう。
乾燥大豆は、お米を研ぐように豆と豆をこすり合わせるように洗い、汚れをしっかりと落とします。水がきれいになるまで、水を4〜5回変えながらよく洗いましょう。洗い終わったら、大豆の体積に対して3〜4倍の水に浸して、一晩以上おきます。(目安は10時間以上)
その際には、浄水器の水を使うなど、きれいな水に浸すのがおすすめです。乾燥した大豆は、一晩水につけると体積が約2倍にもなるので、大きめの鍋やボウルを使いましょう。
【味噌の作り方③】味噌作り当日に行う作業とポイント
ここからは、味噌作り当日に行う作業をご紹介します。
①大豆を煮る
大豆が十分に吸水したら、大きな鍋で煮ます。煮汁が蒸発して減ってきたら、ときどき水を足して、アクをとりながら煮ていきます。圧力鍋を使えば、煮る時間がより短くなり、簡単に大豆を煮ることが可能です。
煮あがりの目安は、親指と小指で潰せるくらいの柔らかさです。煮汁は仕込みの際に使うので、捨てずにとっておきましょう。
②麹と塩を混ぜる
麹をパラパラにほぐし、塩を合わせていきます。この作業のことを「塩切り」と言います。材料が少量であれば、麹を保存用袋に入れてパラパラとほぐしたあと、塩を加えて袋ごと振って混ぜるのも、簡単でおすすめです。
③大豆を潰す
人肌に冷ました大豆をマッシャーなどで潰します。量が多い場合は、フードプロセッサーを使うと、作業がより簡単になります。ボウルでの作業が難しい場合、漬物用ビニール袋などに大豆を入れ、空き瓶などで叩いて潰すのも作業が簡単です。
④大豆と塩切り麹を合わせる
潰した大豆と塩を切った麹を混ぜ合わせます。耳たぶくらいの柔らかさを目安に、固い場合は人肌に冷ました煮汁を加えて調節していきます。ここで材料が均一に混ざっていないと、発酵が上手く進まない場合があるので、下からすくってしっかり混ぜ合わせることが大切です。
⑤味噌団子を作り容器に詰める
大豆、麹、塩、煮汁が十分に混ざったら味噌団子を作り、容器に詰めていきます。味噌団子を作る際のポイントは、ハンバーグを作るときのように空気を抜くことです。
容器に味噌団子を敷き詰める際は、空気が入らないように拳で平に押し付けます。空気をしっかり抜いて詰めることで、味噌の発酵が促されます。また、カビの発生も抑えることが可能です。
味噌を保存する容器は、ホーロー容器やプラスチック容器など特に決まりはありません。ジッパー付き保存用袋を使うのも、簡単でおすすめです。ジッパー付き保存用袋なら空気をしっかり抜けるため、重石をする必要がなく、中身が透けて見えるので、熟成具合も一目瞭然です。
⑥密閉して重石をする
表面を平らに整えたら、カビ防止のために表面に塩をまぶします。最後に空気に触れないようラップをして、上から重石を乗せます。
<カビ防止のために表面に塩をまぶしている様子>
<空気に触れないようラップをして上から重石を乗せている様子>
重石は、できあがりの量の2割の重さを目安にしましょう。また、容器の周りが汚れている場合は、しっかり拭き取りましょう。
味噌作りは、大豆を水に浸して煮るところから始まり、容器に詰め終わるところまで2日間を要するうえ、作業スペースも必要になります。普段の食事の準備もあることを考えると、味噌作りをする際はガスコンロが二口以上あり、作業スペースがある程度確保できるキッチンが理想的です。
【味噌の作り方④】できあがった味噌を美味しく熟成させて保管する
味噌の熟成に適した温度は、20℃程度です。温度が低すぎると発酵が進まず、高すぎると過発酵になってしまうので、直射日光の当たらない常温、室温で保管しましょう。仕込んでから、半年〜1年ほどで食べられるようになります。
味噌を美味しく熟成させる保管・保存のポイント
ここからは、味噌を美味しく熟成させる保管や保存のポイントをいくつかご紹介します。
①容器内をきれいにしておく
事前に容器内を焼酎などですみずみまで拭き、よく乾かしておくことも大切です。容器に汚れがついたままだと、カビや雑菌の原因となってしまうので、容器内をきれいにしておくことも重要なポイントです。
②容器の端から貼り付けるように詰める
味噌を美味しく熟成させるポイントは、容器に空気が入らないように、味噌団子をぎっしりと詰めることです。味噌団子を作ったら容器に団子を敷き詰めて、空気の隙間ができないように拳で平に押し付けます。一段敷き詰めたら、二段目からは団子を投げ入れて、空気が入らないように詰めていくのが上手く仕上げるコツです。
③空気に触れないよう表面にラップをする
味噌が空気に触れないよう、表面に塩を振ったあとにラップを密着させます。さらに、中蓋をして重石をすることで、カビの発生を防げます。
④湿気の少ない冷暗所で必ず保管・保存をする
仕込みが終わった味噌は風通しがよく、直射日光の当たらない冷暗所で保管するのがポイントです。麹の力で発酵を促す味噌は、冷蔵庫に入れてしまうと熟成が進まなくなってしまいます。熟成期間は冷蔵庫に入れず、流し台の下や床下収納、パントリーなどで保管するのがおすすめです。
手作り味噌のおすすめ保管場所3選
ここからは、手作り味噌を保管するのにおすすめの場所をご紹介します。
床下収納
床下収納は直射日光が当たらず、年間を通して温度変化が少ないことから、味噌を保管するのに適しています。
パントリー
キッチン横に設けられていることが多いパントリーは、コンロの熱などの影響を受けにくく、比較的温度が一定なので、手作り味噌を熟成させるのに適しています。また、収納スペースが十分にあるパントリーは、味噌を仕込んだ大きめの容器も置きやすいので、おすすめです。
冷蔵庫
手作り味噌の熟成期間が終わったら、冷蔵庫で保存することになります。手作り味噌を保存するための家電付きの住まいや、大きめの冷蔵庫が置けるキッチンのある住まいがおすすめです。
手作り味噌をおうちで楽しもう!
味噌を作るのは意外にも簡単で、楽しいというのが私の印象でした。手作り味噌を使えば、料理がもっと楽しくなり、レパートリーが今まで以上に増えること間違いなしです。さらに、美容や健康にもよい効果があるなどメリットがいっぱいなので、ぜひ手作り味噌をおうちで楽しみましょう!