寒くなってくると、エアコンを使う機会が増えてくるでしょう。とはいえ、エアコン以外にも便利な暖房器具はたくさんあります。今回はその中でも「床下暖房」について説明します。
賃貸物件で「床暖房」や「床下暖房」が設備として備わっているものは非常に少なく、あまり聞きなれないかもしれません。寒い冬が苦手な方や、ペットを飼育している方にとって便利な床下暖房とは、一体どのようなものなのでしょうか。床暖房との違いについても、じっくりと説明しますので参考にしてみてください。
※設備として「床下暖房」のほか「床暖房」が含まれている可能性もありますので、お問い合わせ時に詳細を必ずご確認ください。
床下暖房とは?

あまり聞きなれない床下暖房ですが、簡単にいえば読んで字のごとく、床下にある暖房のことです。
床下に暖かい空気を発生させ、床から建物全体をじんわりと温める設備のことを指します。床下に一定程度のスペースが必要であることから、戸建住宅などで用いられることが多い設備です。
戸建住宅などで、リビングの窓際の床面に、グレーチングのような溝が空いている物件をご覧になったことはないでしょうか。これは床下で温められた空気を室内に循環させ、床下に再循環させるための通気口です。
※この通気口のことを専門用語で「ガラリ」と呼びます。
床暖房との違い
「床下暖房」とよく似た言葉に「床暖房」があります。床下暖房は、暖かい空気の力で床下の空間が温まるのに対し、床暖房は熱線や温水の力で床を直接温めるという点に違いがあるのです。
床下暖房と比較して、床暖房の方が床は直接暖まるため、床そのものの温度が高くなる傾向にあります。床暖房の場合は温度が高いがゆえに、長時間にわたって床に直接肌が触れることによって低温やけどとなる危険性がある点は注意しましょう。
床下暖房の種類
暖かい空気の力で床下から温める床下暖房ですが、その構造や種類にはどのようなものがあるのでしょうか。代表的なものをご紹介します。
暖房機を置くタイプ
床下にエアコンを設置して、エアコンの暖房機能で床下空間を温める方式です。みなさんがイメージするエアコンは天井に近い高いところに設置されていますが、それが床下に設置されているとお考えください。
床下に設置されたエアコンの暖房機能で温風を噴出し、床下を温めることで、室内がじんわりと暖かくなります。
放熱器を置くタイプ
床下に放熱器を設置し、暖気を床下⇒室内⇒床下と循環させ、室内と床面を温める方式です。放熱器とは、ラジエントヒーターのような形をイメージするとわかりやすいでしょう。
※設備として「床下暖房」のほか「床暖房」が含まれている可能性もありますので、お問い合わせ時に詳細を必ずご確認ください。
床下暖房のメリットと体験談

床下暖房の賃貸物件には、どのようなメリットがあるのでしょうか。著者の実体験も交えて説明していきます。
壁掛けエアコンと比較して空気が乾燥しにくい
冬の暖房器具といえばエアコンですが、エアコンは空気が乾燥してしまうことがデメリットです。
床下暖房は、高気密高断熱の物件に設置することが大原則です。すなわち、一般の物件よりも外気の影響を受けにくいため、エアコンを一般の物件ほど作動させる必要性がありません。
そういった意味では、エアコンによる乾燥状況は床下暖房の物件の場合、比較的乾燥しづらいことがメリットといえます。ただし、どのような暖房器具も乾燥を招くことは否定できませんので、冬場の乾燥対策はきちんと行いましょう。
足元が暖かいだけで「寒い」と感じにくくなる
暖かいものは、冷たいものと比べると上に上がります。お風呂に入ろうとしたとき、お湯を混ぜると水温が下がったような感覚になったことはないでしょうか。まさにその論理なのです。
冬場になると、足先が集中的に冷えるという方も多いでしょう。そういった方はエアコンとは別に、足元だけを温めるヒーターなどを併用することもあると思います。しかし、床下暖房であれば肝心の床下から暖まり、さらに空気が循環しますので、実際の温度よりも部屋全体が暖かくなるでしょう。
なお、寒さの感じ方や冷え性の症状などは個人差がありますので、あくまでも著者が床下暖房のある生活の中で感じたこととして参考してみてください。
長時間の利用に向いている
「床暖房」は床面が直接暖まるため、長時間暖まった床に接することで、低温やけどの症状を引き起こす可能性があります。一方の「床下暖房」は、床下の空気が暖まるだけで、床面が直接暖まるわけではありません。そのため、長時間にわたっての利用でも、低温やけどを引き起こすリスクが少ないといえます。
著者は子どもが生まれてつかまり立ちの時期に、床下暖房のメリットを享受しました。毛布やカーペットを敷いて生活させていると、滑ってけがをすることが懸念でした。しかし、床下暖房のおかげで冬場のフローリングも冷たくなることなく、快適に子育てができたのです。
※設備として「床下暖房」のほか「床暖房」が含まれている可能性もありますので、お問い合わせ時に詳細を必ずご確認ください。
床下暖房のデメリット・注意点と体験談
では、逆に床下暖房のある生活のデメリットや注意点には、どのようなことが考えられるのでしょうか。
家具やカーペットのレイアウトが制限される
上述のとおり、床下暖房では吹き出し口を設置する必要性があるので、その部分には家具やカーペット、ラグの類を設置できません。お子さまがいらっしゃるご家庭や家具が多いご家庭では、家具のレイアウトやカーペットのレイアウトに気をつける必要があります。
なお、著者宅では子どもが走り回るようになったとき、床で転んでけがをしないようにリビングにジョイントマットを敷き詰めていましたが、吹き出し口の近くは敷けませんでした。
すぐに暖かくはならない
床下暖房は、まず床下の空気が暖まり、その空気が建物を循環して暖かくなるという性質があります。そのため、暖かさを感じるまでに少し時間がかかるのです。
著者宅では、床下暖房で部屋全体が暖まるまでの間は、壁掛けのエアコンを併用していました。
定期的なメンテナンスが必要
ガラリ(通気口)から、床下で温められた空気が室内に運ばれてきます。空気の流れがあるところには埃がたまりやすくなりますので、定期的な清掃が必要です。
ガラリの清掃は表層だけではなく、ガラリを外して中の髪の毛や埃まで月に1回程度行うのが良いでしょう。
床下暖房がおすすめの暮らし

では、どのようなライフスタイルの方に床下暖房は向いているのでしょうか。
肌が乾燥しやすい人の暮らし
床下暖房の部屋に住んで一番びっくりすることは、空気が循環しているといっても、ガラリから空気が出ているような感覚がほとんどないことです。
エアコンやファンヒーターを利用すると温風が直接吹き出されますので、肌の水分が蒸発しやすくなり、結果的に乾燥肌になりやすいといわれています。
その点、床下暖房は肌に直接風があたる感覚はなく、エアコンのような直接的な乾燥感覚のある暖房とは異なるのが特徴です。エアコンやファンヒーターの直風があたり、乾燥肌になる可能性は低いといえるでしょう。
小さな子どもがいるファミリー世帯
小さな子どもがいると、室内の温度や湿度を適切に保つ必要があります。エアコンだと乾燥しすぎとなり、ストーブなどは賃貸で利用できないことが多い、ファンヒーターもガスコックがなければ利用できないという理由から、消去法的にエアコンばかりを利用するのが一般的です。
しかし、床下暖房では室内のほとんどすべての箇所を同一の温度で保てます。そのため、エアコンを作動させると暑くなり、エアコンを停止させると寒くなるといった微妙な季節の温度調整が非常に簡単になり、快適に過ごせるのです。
とりわけ小さな子どもがいる場合は、温度調整に気を遣うことになるため、床下暖房の適度な保温機能は非常に役立ちます。
床に直接座ることが多い世帯
最近でこそダイニングテーブルとソファが一般的ですが、まだまだ床に直接寝転がったり、座ったりするご家庭も多いのではないでしょうか。
元来、日本人は床に直接座るという文化がありますので、特段違和感のあることではありません。しかし、床材とライフスタイルが欧米化していくことに対し、直接床に座るという文化は残ったままとなっています。
床下暖房は床面の快適な暖かさが約束されていますので、そういったライフスタイルが常態化しているご家庭にはもってこいの設備といえるでしょう。
※設備として「床下暖房」のほか「床暖房」が含まれている可能性もありますので、お問い合わせ時に詳細を必ずご確認ください。
床下暖房のある部屋で快適に暮らそう
床下暖房の特性として、ゆっくりと建物全体が暖かくなるという一面があります。これは、エアコンのような即効性ではなく、じんわりと続くいわば魔法瓶のような保温効果が建物全体に備わっているのです。
そもそも床下暖房は、高気密高断熱の建物にしか設置できない設備になっています。また、建物内の空気を循環させるという性質から、空気の循環経路が緻密に計算された高品質な住宅であることが担保されていなければいけません。
なかなかお目にかかれない床下暖房ですが、ファミリー世帯で誰かが必ず自宅にいるようなご家庭に、自信をもっておすすめできる快適な設備です。
ぜひ、床下暖房のある冬を体験してみてください。一度体験すると、離れられなくなるかもしれません。