賞味期限切れはセーフ？消費期限切れはアウト？意外と知られていない食品の期限表示とは

我々が普段目にしている食品のほとんどには、賞味期限と消費期限というものが記載されていますが、その違いを知っていますか？また、期限表示は必ずしも守らなければいけないものなのでしょうか？

今回は食品を安全に食すために必要な、食品の期限表示と適切な保管方法について管理栄養士が解説していきたいと思います。

賞味期限と消費期限の違いとは？

食品に表示されている期限には賞味期限と消費期限の2つがありますが、それぞれ明確に違いがあります。

賞味期限とは、美味しく食べられる期限のこと

賞味期限とは、わかりやすく言うと「決められた方法で未開封のまま保存していれば、美味しく食べられる期間」のことを指します。そのため、賞味期限をすぎると味が落ちたり香りが減ったりということはありますが、基本的に食べられなくなるわけではありません。

消費期限とは、安全に食べられる期限のこと

一方で消費期限とは、「定められた方法で保存した場合、腐敗などを原因とした品質の劣化により安全性が損なわれない期間」のことを指します。そのため、消費期限表示があるものは期限内に食べることが必要です。

※参考：厚生労働省「加工食品の表示に関する共通Ｑ＆Ａ」

賞味期限と消費期限の表示義務と場所、表示形式

普段目にする食品には、賞味期限もしくは消費期限が記載されていることが多いですが、すべての食品に期限表示がされているのでしょうか？また、表示場所や形式は自由に定めていいのでしょうか？

本項では表示義務や場所、表示形式について解説をしていきます。

期限表示の義務について

賞味期限と消費期限は、多くの食品に記載がありますが、すべての食品に義務付けられているわけではありません。実は記載しなくていい食品や省略が可能な食品などがあるのです。

義務化されている食品は、加工食品や生鮮食品などが多く、代表的なものには塩蔵した加工品や乾燥した野菜などの食品、食肉や魚のむき身などの生食用に多くみられます。一方で品質の劣化が極めて少ないとされているような食品には表示義務がなく、代表的なものとして砂糖や塩、チューインガム、氷などは表示されていないことが多いです。

期限表示の場所について

食品の賞味期限や消費期限は、原則消費者の見やすい所に記載することとされています。多くの食品では、商品のパッケージを邪魔せず、イメージを損なわない裏面に書かれていることが多くみられます。

期限表示の形式について

期限表示は表示すべき内容や項目など表示形式も定められています。表示すべき項目は、食品の種類によって異なります。

＜例（加工食品の場合）＞

・名称

・保存の方法

・賞味期限または消費期限

・原材料名

・添加物

・内容量または固形量および内容総量

・栄養成分量

・食品関連事業者の氏名または名称および住所

・アレルゲン

【注意】”消費期限”切れの食品はまだ大丈夫そうでも絶対食べないこと

“消費期限”は安全に食べられる期限のため、期限が切れた食品は安全性が担保されていません。見た目やにおいが問題なく感じても、絶対に食べないようにしましょう。

さらに消費期限は「未開封の状態で適した保存方法をした上での期限」でもあるため、一度開封したものなどは、期限内であっても安易に口にしないようにしてください。

どうしても開封したものや保存方法を誤ったものを食べたい場合は、可能な限り早めに消費するのと、見た目やにおいなど違和感がないかをしっかり確認することを心がけましょう。

“賞味期限”切れ食品は食べても問題ないが、いくつか注意事項がある

消費期限が切れた食品は絶対に食べてはいけません。一方、賞味期限が切れたものであれば、味が落ちている可能性はありますが安全性には問題ない場合が多いです。しかし賞味期限切れの食品だからといって、いつまでも食べられるわけではありません。

賞味期限切れの食品を食べる際の注意点について紹介します。

期限切れ後の安全に食べられる期間には限りがある

賞味期限は、切れた後でも比較的安全に食べられますが、その期間には限りがあります。

また、「賞味期限が切れてから何日後に安全でなくなる」という指標もなく、食品によって大きく異なる為、明確にそれらを把握することはできません。

次項では、数ある食品の中でも賞味期限が切れたあとの喫食が危険とされるものを紹介します。

期限切れ後に食べるのを控えた方が良い食品がある

賞味期限表示がされている食品でも、比較的期限切れ後の劣化が早く、危険な食品も存在します。その代表的な物が、豆腐とカット野菜です。

豆腐は、賞味期限表示されている食品ですが、期限切れ後数日で急激に傷み始めます。期限切れ後1～2日であれば、しっかり加熱すれば食べられることもありますが、期限が切れてから1週間程度経過した場合は、ほぼ痛んでいると考えて良いです。

また一度開封した場合や、常温で保存した場合などは、期限内であっても痛んでいる可能性が高いため、喫食には十分注意しましょう。

カット野菜も、賞味期限切れ後に劣化が早い食品です。カット野菜は加工をしていない野菜に比べて空気に触れる面積が大きく、劣化しやすい傾向にあります。

賞味期限が切れた後は、水が出てきたり、においが変わったりと比較的変化がわかりやすいため、そういった兆候が表れた場合は、食べずに廃棄することをおすすめします。カット野菜は便利な加工品ですが、そういったデメリットもあるため、使用には十分注意しましょう。

一方で、お菓子などは賞味期限が切れた後でも比較的安全に食べる事ができる食品です。未開封であれば、見た目や臭いを確認し、問題なければ期限が切れていても大きな問題はありません。

開封後はなるべく早く食べることを心がける

賞味期限、消費期限どちらにも共通する事ですが、開封したらなるべくはやく食べきりましょう。賞味期限も消費期限も、未開封の状態で定められているため、開封後にいつまで保つかは不明瞭です。

また、一度開封すると空気や菌に触れるため、どんな食品でも劣化が進みます。早めに食べきることはもちろん、しっかりと加熱をして喫食することも重要です。

賞味・消費期限切れ食品を摂取した場合の健康被害

期限切れの食品を摂取すると、下痢や嘔吐などの消化管症状が現れることが多いです。実際に、期限切れの食品による健康被害について紹介します。

サルモネラ菌による食中毒

サルモネラ菌は、食肉や卵などに含まれる食中毒菌のことです。過去には生卵が原因のサルモネラによる食中毒で、子どもが死亡した事例もあります。

特に免疫機能が弱い子どもや高齢者、傷病者などは食中毒を引き起こす危険性が高いため、これらの食品はしっかりと加熱して食べる事を意識しましょう。

※参考：食品安全委員会「食品健康影響評価のためのリスクプロファイル」

リステリア症の発生

リステリア症は、リステリアと呼ばれる細菌によって引き起こされる感染症のことです。患者数は非常に少ないですが、重症化すると致死率が高いため、WHOも注意喚起を行っている感染症です。

生ハムやナチュラルチーズと言った、加熱の弱い食品で発生する可能性が高い傾向があります。リステリアは他の食中毒菌と違い、低温・高塩分濃度環境下でも増殖するので、冷蔵庫で長期間保存されている食品は要注意です。

※参考：厚生労働省「リステリアによる食中毒」

缶詰食品によるボツリヌス症

ボツリヌス症とは、ボツリヌス菌が発生させる毒素によって引き起こされる疾患のことです。特に1歳未満の乳児でリスクが高い傾向があります。

低酸素状態になると毒素を発生させるため、缶詰などの密閉された食品の中で増殖しやすいです。乳児に起こるボツリヌス症の多くは、はちみつが原因となることが多いので、1歳までの乳児にはちみつを食べさせないようにしましょう。

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賞味期限と消費期限の食べられる期間の決め方

賞味期限や消費期限は、微生物試験や理化学試験、官能試験などにより決定します。

ちなみに、この期限を定める際は、食品の特性や製造上の衛生管理、包装の形態など様々な要素を総合的に判断し、科学的根拠に基づいて設定する必要がある為、実は食品を製造している製造業者や加工業者などが設定しています。

賞味・消費期限内でも食品の劣化を見分ける方法

賞味・消費期限内でも食品の劣化を見分ける方法について解説していきます。

見た目の変化

まず一番わかりやすいのは、見た目の変化です。変色や離水、粘りなど明らかに目に見える変化が起こっている場合は、喫食を避けましょう。

臭いの変化

においの変化も、食品の劣化を判断する材料の一つです。元々においの少ない食品からにおいがする場合や、異臭がする場合は、劣化している可能性が高いです。

味の変化

見た目や臭いで変化が判らず、食品を食べてしまった場合でも、味の変化で劣化に気づくこともあります。味の変化に気付いた場合は、食べるのをやめ、廃棄するようにしましょう。

もし他の変化に気づかなかった場合は、少し味見をしてみるなど、大量摂取とならないよう注意しましょう。

硬さや柔らかさの変化

食品の硬さや柔らかさの変化も、劣化の指標になります。硬かった食品が柔らかくなったり、逆に柔らかい食品が硬くなったりといった変化は気を付けて見ておきましょう。

食品を長持ちさせるための保管方法

どの食品も期限内に食べきることが理想ですが、どうしてもそれが難しい場合や、一度開封してしまった場合などに、安全かつ品質を落とさないためには、どのように保管するのが望ましいのでしょうか？

適切な温度管理を行う

適切な温度管理は、食品の劣化を予防する第一歩です。店頭では常温保存で陳列されている食品でも、一度開封したら冷蔵保存するように記載がある食品も多いです。食品を長持ちさせるためには、食品の保存方法（表示）を必ず確認しましょう。

加えて、冷蔵庫の温度設定は、3～6度程度を維持してください。3～6度の設定でも、あたたかい食品を冷蔵庫に入れた場合など、一時的に常温に近い環境になることも珍しくありません。あらかじめ、ある程度温度を下げてから冷蔵庫に入れるなどの工夫をしましょう。

冷蔵庫内の食品の配置を意識する

適切な温度管理を行うためには、冷蔵庫内の食品の配置を意識しましょう。例えば開封した食品など、他の食品よりも厳密に温度管理をしたい食品の近くにはあたたかいものを入れないことや、頻繁に温度が代わる冷蔵庫の入り口付近には置かないなど、配置を意識することでしっかりと温度管理ができるようになります。

開封した食品を密閉容器に移し替える

食品の劣化は、空気に触れることでも進むため、一度開封した食品を密閉容器に移し替えるのも効果的です。この際、容器が汚れてないことをしっかりと確認しましょう。

新しい食品を後ろに、古い食品を前に置く

期限内に食べきれない理由の1つとして、期限を把握していないことが上げられるため、そういった方は、古い食品を手に取りやすいよう、新しい食品を後ろに、古い食品を手前に置くようにしましょう。

購入日や開封日をラベルに書いておく

期限表示は、食品によっては見づらいことも多い為、購入日や開封日をラベルに書き、見やすいようにしておくことで管理しやすくするのも効果的です。