最近、YouTubeやInstagramなどで、料理動画を投稿する方がどんどん増えています。人それぞれ趣向を凝らした料理動画は、観ていてとても楽しいものです。それが自分で撮影したものなら、さらに楽しめることまちがいないでしょう。
今回は、実際に料理動画を撮影してきた料理人の私が、料理動画の撮影に興味がある方に向けて、全体像や撮り方を簡単に解説します。この記事を読めば、料理動画撮影にあたって何からはじめればよいかがわかるでしょう。
撮影するのに必要な機材や、料理動画を撮影して直面するよくあるアクシデントとその対策も紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
料理動画とは
料理動画は、料理の作り方やレシピなどを視覚的に紹介できるコンテンツです。YouTubeやInstagramなどのSNSに投稿することで、あなたの自慢の料理やテクニックなどを多くの方に共有できます。「いいね」がつくととてもうれしく、ライフワークとしている方もたくさんいます。
もちろんSNSに投稿せず、自分だけの趣味として観返したり、メモ帳代わりに撮影したりすることも可能です。何度も撮影していくうちに、どんどん上達していくことが実感できるので、素敵な趣味になるでしょう。
しかし、実際に料理動画を撮影しようと思っても、何からはじめればよいのかわからない方もたくさんいるかと思います。ここから順番に解説していきますので、1つずつご覧ください。
まずはどんな料理動画を撮るか決めよう
料理動画は、撮影の仕方や企画などさまざまな種類に分類できます。撮影する動画の種類によって必要機材が違ってくるので、まずは自分がどのような料理動画を撮りたいか決めましょう。
以下で、代表的な料理動画の分類を紹介します。「絶対にこれ!」といったものはないので、興味がある料理動画のジャンルにぜひチャレンジしてみてください。
①ASMR動画
ASMR動画は、自律感覚絶頂反応(ASMR)を引き起こすことが目的の動画です。鳥や虫の鳴き声・耳かき音など、特定の音を立体的に聞かせることによって、リラックス感や幸福感といった心地よい感覚が得られます。
料理動画の中では、肉が焼ける音や野菜を切る音など、さまざまな音やシチュエーションで表現が可能です。目で観て・音で楽しむ、一石二鳥のコンテンツといえます。専用のマイクが必要ですが、それさえあれば意外と簡単に撮影できるため、興味がある方はぜひチャレンジしましょう。
②完成までの工程をまとめた料理動画
完成までの工程をまとめた料理動画は、もっともオーソドックスなものとして多くの方が撮影しています。SNSに投稿するのはもちろん、1つの料理ができあがる工程を撮影して見返せば、自分だけのメモ帳として使うことが可能です。自分だけのレシピ帳といった活用方法もできるのも、メリットといえます。
③簡単にできる料理動画(キャンプ飯や時短飯、フライパン1つで作るご飯など)
はじめて料理動画を撮りたい方におすすめなのが、作る工程をなるべくシンプルにした、キャンプ飯や時短飯・フライパン1つで作るご飯などの撮影です。カメラを固定した1アングルのみで撮影できるので、手持ちのスマホではじめて動画を撮影する方におすすめできます。
④面白いパロディ・やってみた系の動画
SNSなどで「いいね」をたくさんもらってバズりたい方は、面白いパロディ・やってみた系の動画を撮影してみてはいかがでしょうか?くじ引きで食材を選んで料理を作ったり、話題の調味料や海外の有名料理にチャレンジしたりなど、企画力が結果に大きく左右されるので、アイデア豊富な方におすすめです。
カメラを大きく動かして撮影するスタイルであれば、アクションカメラを使用するのがよいかもしれませんね。
⑤料理とともにオシャレなキッチンも紹介する動画
料理とともに、オシャレなキッチンを紹介する動画です。少し前に「デスクツアー」といって自分の書斎を紹介する動画が流行っていましたが、そのキッチンバージョンといえます。キッチンは、人それぞれの個性やセンスが凝縮されている場所です。
こだわりの包丁や鍋・小物・調理器具や食器などの収納テクニックなど、ここぞとばかりに紹介しましょう。オシャレなキッチンは、それだけであなたのセンスを多くの人に観てもらえる絶好の機会です。
料理動画を撮るのに必要な道具や機材をそろえよう
ここからは、実際に料理動画を撮るのに必要な道具や機材を紹介します。「意外と多いな…」と思われるかもしれませんが、撮り方に応じて必要なものが変わるため、すべて必要なわけではありません。
まずは自宅にあるものを使い、なければ必要に応じて少しずつそろえていきましょう。
①録画機能付きカメラ
まず、撮影するために録画機能付きカメラは必須です。カメラといっても、スマホカメラから本格的な一眼レフカメラまでさまざまな種類があり、それぞれにメリット・注意点があります。
そこで、料理動画撮影に使える代表的なカメラの種類やメリット・注意点をまとめましたので、ぜひ参考にしてみてください。
おすすめ度 | メリット | 注意点 | |
---|---|---|---|
スマホカメラ | 〇 | 手持ちのスマホが使える | カメラ性能によって差が大きい |
デジタルカメラ | ◎ | ボケを利用した撮影が可能 | 種類が多く選ぶのが難しい |
一眼レフカメラ | △ | 映像の美しさは最高レベル | 価格が高く、サイズも大きい |
ビデオカメラ | 〇 | 画質もよく長時間撮影も可能 | ボケを利用した撮影に不向き |
アクションカメラ | △ | 小さいため場所を取らない | 広角モデルが多く接写に不向き |
スマホカメラ
一般的な料理動画を撮影する際、手持ちのスマホカメラでも、ある程度クオリティの高い動画撮影は可能です。ただし、スマホによってカメラ性能の差が大きく、場合によっては思うように撮影できないのがデメリットともいえます。また、映像を確認しながら料理を作れない点も注意しましょう。
デジタルカメラ
インフルエンサーといわれる料理動画の投稿者がよく使用しているのが、デジタルカメラです。映像にボケ感を出せるため、臨場感ある動画撮影ができ、映像の美しさも十分といえます。デジタルカメラの液晶にチルト機能やバリアングル機能が付いているものであれば、映像を確認しながら料理も可能です。
ただし、種類が多く価格もピンキリなため、用途に最適なカメラを見つけるのが難しいという問題点もあります。
一眼レフカメラ
映像の美しさはピカ一で、他のカメラよりも一線を画した映像美が可能です。ただ、価格が高くサイズも大きく重いので、置き場所や取り回しに苦労するかもしれません。また、大きなサイズで表示する写真と違い、そもそも料理動画に一眼レフクオリティの映像が必要かどうかを考える必要もありそうです。
ビデオカメラ
長時間撮影に対応でき、ズーム機能も高いことがメリットです。小型のものであれば、置き場所や取り回しも問題ありません。ただ、注意点としては、画質自体はよいものの、デジタルカメラのようなボケ感を出しにくい点が挙げられます。
アクションカメラ
サイズが小さいため、狭い場所でも撮影可能なことがメリットです。やってみた系や面白い系動画で、あえてカメラを動かす撮影スタイルであれば有用な機材といえます。一方、広角モデルが多いため、接写を多用する料理動画撮影では、その特徴を活かしきることが難しいかもしれません。
カメラといっても種類が多く、それぞれに長所・短所があります。はじめて料理動画を撮影する場合、とりあえずは手持ちのスマホではじめて、慣れてきたら目指したい方向性に合わせてカメラを導入するのがいいかもしれませんね。
②三脚やスマホスタンド
もう1つ必要なのが、三脚やスマホスタンドなどのカメラを固定する機材です。料理動画を撮影するには、カメラを固定する必要があります。とくに真上から撮影する場合は、スタンドがなければ撮影ができません。
三脚やスタンドといってもさまざまで、卓上に置ける小型サイズのものであれば100円均一で購入可能です。実際に私も100円均一で購入した卓上三脚やスマホスタンドで、料理動画を撮影していました。形状を自由に変えられるフレキシブルタイプやクリップ式など種類が豊富のため、キッチンの形状などを確認しながら導入しましょう。
③パソコンと動画編集ソフト
続いては、パソコンと動画編集ソフトです。YouTubeなどに投稿する場合は、クオリティを高めるため、テロップの導入や不要な映像を切り取っていくカットといった編集が必要になります。
スマホでも簡単な編集は可能ですが、本格的に編集する場合はパソコンを使った方が圧倒的に作業効率は上がります。ただし、どのようなパソコンでもよいわけではありません。CPUはCore i7やRyzen 7、メモリはできれば16GB以上、グラフィックカードを搭載したものであればストレスなく作業可能です。
動画編集ソフトも、代表的なものとして有料の「Adobe Premiere Pro」「PowerDirector」などがあり、一部の有料のソフトでは機能を抑えた無料版もリリースされています。それぞれの用途に合わせて、使用するソフトを検討しましょう。
④外付けマイク
外付けマイクは、クオリティを高めるために必要であるため、料理動画撮影に必須なわけではありません。ただし、YouTubeやSNSなどに投稿する場合、音声の良し悪しが再生数に直結するため、再生数を稼ぎたいという方には導入をおすすめします。
また、ASMR動画を撮りたい場合は専用マイクが必須です。「バイノーラルマイク」で検索すれば、いろいろな専用マイクがヒットします。
注意点として、調理工程などを実況しながら動画撮影する場合、スマホカメラのみだとある程度大きな声でしゃべらなければなりません。換気扇や調理中の音と声が混じるため、実際の映像では音声が聞き取りづらくなるからです。外付けマイクは数千円から購入できるので、必要性があれば目的に合わせて導入を検討しましょう。
⑤照明
最後に紹介するのは、照明機材です。これも外付けマイク同様に必須ではなく、クオリティを高めるために必要なものと理解しておけばよいでしょう。照明を利用することで映像が明るくなり、料理がとても美味しそうに撮影できます。
照明1つで動画の見栄えは一気に向上するといっても過言ではなく、自宅にあるデスクライトなども流用可能です。しかし「照明まで準備するのはちょっと…」という方も多いでしょう。
そのような場合は、自然光を照明代わりに利用することをおすすめします。動画投稿ブームもあり、さまざまな撮影用の照明機材がありますが、暖かい陽当たりを含めた自然光はそれらに勝るとも劣らない天然の照明です。実際にプロの写真家も、自然光を積極的に活用しています。
こだわればキリがないのは事実ですが、照明機材を準備するのが手間な方は撮り方にひと工夫を加え、自然光を積極的に活用しましょう。
料理動画を撮ろう!撮影で使う基本的な3つの画角
準備が整ったら、さっそく料理動画を撮影しましょう。ここでは、撮影で使う基本的な3つの画角について解説します。
用途に合わせた画角があるため、撮り方を工夫しながらいろいろ試してみるのも面白いかもしれませんね。
①真上から撮影
真上からの撮影は、フライパンなどで加熱調理している工程をわかりやすく撮影するのに適している画角です。真上から撮影することでフライパン全体を映せるため、料理を作っている人の目線を再現できるオーソドックスかつ人気の画角といえます。
②手元が映るように斜め後ろから撮影
手元が映るように斜め後ろから撮影する画角は、包丁など手元の作業を見せたいときに活用しましょう。斜め後ろといっても、右側・左側でそれぞれ映像の印象が変わります。正解はありませんが、右利きで切った食材の美しさを際立たせたい場合は、右側から撮影した方がよいかもしれません。
③手元が映るように斜め前から撮影
斜め前からの撮影は、盛り付け作業の際に有効です。真上からでもよいのですが、盛り付けを立体的に見せたい場合、斜め前から撮影した方が立体的に映ります。映像を観ると、カウンター席に座り目の前で盛り付けしてくれているように映るので、おすすめの画角といえるでしょう。
右側・左側は盛り付け作業の場合、そこまで大きな変化はないため、自分の好みで選んでもまったく問題ありません。
料理が美味しくなるシズル感のある動画のポイント
料理動画を撮影するなら、美味しく見えるように撮りたいですよね。ここからは、料理が美味しく見えるよう、シズル感ある撮り方のポイントを解説します。少しの撮り方の工夫で映像の仕上がりが大きく違ってくるので、ぜひ参考にしてみてください。
湯気を撮影する
料理の基本に「温かいものは温かく、冷たいものは冷たく」というものがあります。実際に口に運べない料理動画ですから、温かさを映像で表現するために、あえて湯気を撮影することは非常に重要です。
キムチ鍋でもラーメンでも、湯気が立ち昇る映像を観ただけで「美味しそう!」と誰もが感じます。温かい料理の場合、撮り方を工夫して意図的に湯気を撮影しましょう。
音にこだわる
シズル感ある料理動画の撮り方として、音を聴かせることも大切です。
肉を焼く「ジュー」といった音や、油で揚げる「カリカリ」といった音は食欲を掻き立てます。とくにASMR動画では、これらの音が生命線となるため、徹底的にこだわりたい点といえるでしょう。
補正機能を積極的に活用する
最近のカメラには、さまざまな補正機能が搭載されています。料理動画を「盛る」ことによって、美味しそうな動画を撮影することが可能です。
たとえば、色補正機能を使って色温度を上げれば、料理にシズル感が生まれます。あまり多用しすぎると不自然さが目立ちますが、ある程度であれば積極的に利用するのもアリでしょう。
料理動画の撮影時に起こりうるアクシデントと対処法
それでは、実際に料理動画を撮影してきた私が経験した、撮影時に起こりうるアクシデントと対処法を紹介します。おそらく、これを知らずに料理動画を撮りはじめると、私と同じアクシデントに見舞われる方が続出するかもしれません。撮り方を少し変えるだけで回避できるため、ぜひ参考にしてみてください。
真上からの撮影だとカメラが曇ることがある
オーソドックスな画角である真上からの撮影ですが、鍋ものや食材をボイルする際に真上から撮影すると、カメラが湯気で曇り、せっかくの動画が使えないものになってしまうことがあります。
湯気が立ち昇る工程や料理を撮る際は、湯気があたってしまう真上からではなく、撮り方を変えて斜め上から撮影するようにしましょう。
動きが激しすぎるとピントが合いづらくなる
フライパンで炒め物をする場合、基本的にフライパンをゆすったりあおったりして調理するのですが、料理動画撮影の場合はこれがNGとなります。動きにカメラのピントがついてこられず、終始ピンボケした映像になるのです。
YouTubeなどを観ればわかるとおり、炒め物でフライパンはあまり動かさず、具材を混ぜるときはしゃもじやトングなどを使って混ぜています。かっこいいからといって手際よくフライパンを動かしてしまうと、映像が台無しになってしまうため注意してください。
火に近づけすぎるとカメラが故障する可能性がある
カメラの位置が火に近すぎると、高熱によって故障するリスクがあります。迫力のある映像を撮りたいからといって、近づけすぎには注意しましょう。
IHコンロであれば、加熱されるのは鍋やフライパンのみで、周辺温度が上がることはありません。高熱によるカメラ故障の心配がなくなるので、IHコンロを利用するのもいいかもしれませんね。
後片付けが意外と大変かもしれない
実際に料理動画を撮影すると、カメラのセッティングを行い、撮影しながらの料理は神経を使うため、かなり疲れます。私自身、撮影が終わった後の機材や洗い物の片付けにうんざりすることも多々ありました。
面倒な洗い物ですが、自宅に食洗機があればまとめて洗浄できるため、時短や疲労軽減にとても便利です。自宅に食洗機がある方は、ぜひ活用することをおすすめします。
換気扇の音がうるさい
意外と盲点なのが換気扇の音です。加熱調理を真上から撮影すると、必然的にカメラ位置が換気扇に近くなるため、換気扇の「ゴォー」という音を拾ってしまい、シズル感どころではなくなってしまいます。とくにシステムキッチンでは、高性能な換気扇が設置されているため音も大きくなりがちで、注意が必要です。
対策として、外付けマイクの活用をおすすめします。映像は真上から撮り、音声はフライパンや鍋の横から拾うイメージです。これにより、臨場感やシズル感のある音声を録音できます。
実際に料理動画を撮影してみよう
これから料理動画にチャレンジしようと考えている方に向けて、撮り方の全体像や必要機材などを紹介してきました。
料理動画は、最低限スマホやスタンドがあれば、誰でも簡単に撮影可能です。さまざまな機材にこだわり、本格的な動画撮影を行うことで、多くの方から観てもらえるでしょう。撮り方次第で、1人で楽しむ趣味からインフルエンサーといわれる人気者まで、幅広く大きな可能性を秘めています。
今回の記事を参考にしていただき、ぜひあなたも実際に料理動画を撮影してみましょう!