玄関ドアの防犯性を高めたい!賃貸物件でもできる対策と注意すべきポイント

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「うちのマンションはオートロックだから」「少しの時間だから鍵をかけなくても平気」…そんな油断が、空き巣などの侵入犯罪の引き金になることがあります。他人事だと思われがちな住まいの防犯ですが、実はほんの少しの対策で、玄関ドアのセキュリティは大きく向上させることが可能です。

今回は、賃貸物件にお住まいの方が今日からすぐに実践できる防犯対策から、お部屋探しの際にチェックしたいポイントまで、玄関ドアのセキュリティを高めるための知識と具体的な方法を詳しく解説します。

玄関ドアの防犯対策が必要な理由

まずは、なぜ玄関ドアの防犯が重要なのか、その理由を3つのポイントから見ていきましょう。

玄関から泥棒が入ってくることがあるから

意外に思われるかもしれませんが、泥棒の侵入経路として玄関ドアが狙われるケースは想像以上に多いのです。警察庁の統計を見ると、侵入被害のおよそ4件に1件が玄関から発生していることが分かります。

令和4年の警察庁データによると、3階建て以下の共同住宅(アパートやマンション)で起きた侵入窃盗は3,799件ありました。もっとも多い侵入経路は予想通り「窓」で1,842件(48.5%)でしたが、驚くべきことに2番目に多かったのが「表出入口」、つまり玄関ドアからの侵入で940件(24.7%)にも上っています。

「泥棒は窓から入ってくるもの」と考えがちですが、実際には玄関からの侵入も多いのが現実です。

※出典:警察庁 住まいる防犯110番 「手口で見る侵入犯罪の脅威」

盗難や強盗被害にあったときの被害が大きいから

玄関ドアから侵入されたときの被害は、さまざまな面に影響を及ぼします。

まず、精神的なショックは計り知れません。「自分の場所がおびやかされた」という恐怖心は、その後の日常生活に大きな影響を与えてしまうでしょう。また、金銭的な被害も決して軽視できません。

無理やりこじ開けられた玄関ドアは修理や交換が必要となり、高額な費用がかかります。特に賃貸物件の場合は、この原状回復費用を巡って家主さんとのトラブルに発展する可能性も否定できません。

なお、盗難被害に伴う原状回復費用は、賃貸借契約を締結するときに加入する保険でカバーできることがほとんどです。くれぐれも保険の加入や更新を忘れないようにしましょう。

セキュリティ性の高さで油断して玄関ドアからの侵入を許すことが多いから

「オートロックがあるから絶対に大丈夫」と思い込むのは危険です。オートロックは確かに有効な防犯設備ですが、侵入窃盗の約半数は「鍵のかけ忘れ」から起きているからです。オートロックがあることで安心しすぎて、居住者の警戒心が薄れてしまうことがあります。

実は、オートロックにも弱点があります。居住者が出入りするときに一緒に入ってくる「共連れ」や、宅配業者のふりをしてオートロックを通り抜ける方法もあります。「オートロックがあるから大丈夫」と油断していると、自分の部屋の鍵をかけ忘れてしまうことがあるのです。

この現実は、データでも証明されています。警察庁の調査によると、マンションやアパートで起きた侵入窃盗の中で最も多いのは、特殊な技術を使った手口ではありません。「無締り」、つまり鍵をかけていない状態での侵入が最多でした。

具体的な数字を見ると、4階建て以上のマンションでは46.5%、3階建て以下のアパートでは47.9%が「無締り」による被害で、どちらも約半数を占めています。泥棒は特殊な技術を使わなくても、鍵のかかっていない玄関や窓から簡単に入ってきているのが実情です。

※出典:警察庁 住まいる防犯110番 「手口で見る侵入犯罪の脅威」

しっかりとした防犯対策を考えるなら、オートロックのメリットを活用しながらも、それだけに頼り切らない心構えを常に持っておきましょう。

とはいえ、オートロックは不審者の侵入を最初に防ぐ、基本的で重要な防衛ラインであることに変わりはありません。まずはこの基本的な設備が整った賃貸物件で、さらに個々の防犯意識を高めてみてはいかがでしょうか。

空き巣に玄関ドアを突破される際の代表的な手口

泥棒が使う手口を知ることは、効果的な防犯対策の第一歩です。ここでは、代表的な4つの侵入方法と、それぞれに有効な対策をセットでご紹介します。ご自宅のドアと見比べながら、「うちの場合は、この対策が必要かも」という視点でご覧ください。

ピッキング

鍵穴に特殊な工具を差し込み、内部のピンを操作して不正に解錠する手口です。音も静かで、特に構造が単純な古いタイプの鍵は被害に遭いやすいため注意が必要です。

ピッキングに強い「ディンプルキー」など、構造が複雑な鍵に交換することが効果的です。賃貸物件では、管理会社や家主さんに鍵交換の相談をしてみてください。

サムターン回し

ドアスコープや郵便受けを外側から破壊し、そこから工具を差し込んで室内側にあるサムターンと呼ばれるつまみを直接回して解錠する、少々強引な手口です。

工具が届いても簡単には回せないようにする「防犯サムターン」への交換や、ドアスコープ・郵便受けに内側から取り付ける「目隠しカバー」の設置が有効です。

カム送り解錠

鍵穴の周辺にドリルなどで小さな穴を開け、錠ケース内部の部品を直接動かして解錠する、錠前の弱点を狙った攻撃です。

カム送り対策が施された、現在の防犯基準を満たす錠ケース全体を交換することが根本的な解決策となります。

ドア錠こじ破り

バールのような工具をドアとドア枠の隙間に強引にねじ込み、てこの原理でドア錠を破壊する、いささか原始的で乱暴な手口です。

ドアの隙間をふさぎ、バールなどが入り込むのを防ぐ「ガードプレート」の設置が効果的です。補助錠を追加して、侵入にかかる時間を稼ぐことも効果が見込めるでしょう。

防犯性が低い玄関ドアの特徴・注意点

あなたの玄関ドアは本当に安全でしょうか?防犯性の低いドアには共通した特徴があり、これらに当てはまる場合は侵入のターゲットとして狙われるリスクが高くなります。

以下のポイントをチェックして、自宅の防犯レベルを確認してみてください。

ドアスコープやドアポストがついている

便利な設備として設置されているドアスコープやドアポストですが、実は「サムターン回し」の侵入経路として悪用される危険性があります。特に、防犯カバーがついていない古いタイプのドアスコープは要注意です。

シリンダーが古いタイプやシリンダーが1つだけのタイプ

鍵穴の側面がギザギザしている「ディスクシリンダー」や「ピンシリンダー」は、現在主流の「ディンプルキー」に比べて構造が単純で、ピッキングに弱いとされています。また、鍵穴が1つだけの「シングルロック」は、解錠にかかる時間が半分になるため狙われやすくなります。

ガードプレートなどがない

ドアとドア枠の隙間(デッドボルト周辺)を保護する「ガードプレート」がない場合、バールなどによる「こじ開け」に対して非常に脆弱です。物理的な破壊に対する抵抗力が大幅に低下するため、狙われやすくなることがあります。

玄関ドア周りも要チェック

侵入者は事前に下見を行うことが多く、玄関周辺にも注意が必要です。正体不明のマーキングシール、故意に消された共用廊下の電灯、死角を作る大きな置物などがあれば、すでにターゲットとして狙われている可能性が否定できません。

では、これらの特徴に当てはまるとき、どのような対策を取れば良いのでしょうか。次の章で、賃貸物件でもできる具体的な防犯強化方法を見ていきましょう。

賃貸物件でもできる玄関ドアの防犯強化方法

「賃貸だから大掛かりな工事はできない…」と諦める必要はありません。原状回復が可能な範囲で、防犯性を高める方法はたくさんあります。

防犯グッズを活用する

まず手軽に始められるのが、市販の防犯グッズの活用です。

おすすめ防犯グッズ①:補助カギ

メインの鍵に加えて取り付けることで、ワンドア・ツーロックを実現します。泥棒は侵入に時間がかかることを嫌うため、鍵が2つあるだけで大きな抑止力になります。

商品名:ガードロック 留守わからん錠

商品URL:https://www.guardlock.co.jp/product/detail.php?id=30

概要:玄関ドア用の追加補助錠・錠前・鍵です。 取付けは工具不要で簡単に行うことができます。

おすすめ防犯グッズ②:ドアスコープののぞき対策グッズ

サムターン回し対策の第一歩です。外からの覗き見も防ぎ、プライバシー保護にも繋がります。

商品名:ノムラテック のぞき見防止金具

商品URL: https://www.nomuratec.co.jp/product/1266/

概要:既存のドアスコープに室内側から被せるだけの簡単取り付け。来訪者を確認する時だけカバーを上げればOKです。

おすすめ防犯グッズ③:防犯ブザー・センサー

ドアや窓の開閉を検知して大音量のアラームを鳴らす装置です。泥棒は大きな音を嫌うため、侵入をあきらめたり、撤退させたりする効果が見込めます。

商品名:Panasonic 開閉センサ

商品URL:https://panasonic.jp/hns/products/KX-HJS100.html

概要:賃貸物件の一般的なドアならほぼ取り付けが可能。スマートフォンへ通知を連動させることもでき、防犯以外の利用用途も豊富です。

おすすめ防犯グッズ④:センサーライト

人の動きを感知して自動で点灯するライトは、夜間の侵入者に対して強いプレッシャーを与えます。

商品名:エジソンスマート 人感センサー

商品URL:https://shop.edison-led.co.jp/view/item/000000000264

概要: Wi-Fiへの接続が必要ですが、センサーライトとしての機能はもちろん、スマートフォンへの通知も可能な優れものです。

短期間の外出でもかならず施錠をする

警察庁の統計によると、侵入窃盗の手口で最も多いのは、実はピッキングなどの技術的なものではなく「無締り」、つまり鍵のかけ忘れです。

「ゴミ出しだけだから」「すぐ戻るから」といった油断からの被害が後を絶ちません。どんなに短い時間でも、家を離れるときはかならず施錠する習慣を徹底しましょう。

管理会社に相談しスマートロックや防犯カメラを設置してもらう

本格的な対策を望むときは、管理会社や家主さんに相談してみるのも一つの手です。

ピッキングに強いディンプルキーへの交換や、スマートロックの設置、個人で玄関前に設置できる防犯カメラなど、許可が得られれば実現できる対策もあります。費用負担や原状回復の要否などを事前にしっかりと確認しておくことで、あとあとのトラブルも防ぐことができるでしょう。

賃貸物件で玄関ドアの防犯性を高める上での注意点

許可なくドアに穴を開けたり、鍵を交換したりすると、退去時にトラブルになる可能性があります。

原状回復義務の有無の確認

賃貸物件には、退去時に部屋を元の状態に戻す「原状回復義務」というルールがあります。この義務は「防犯グッズだから免責される」ということにはなりません。防犯グッズを取り付けるときは、壁やドアに傷や跡が残らないものを選びましょう。

鍵の交換などを行うときは、かならず事前に管理会社や家主さんに許可を取り、退去時の扱い(元の鍵に戻すか、そのままにするか等)を書面で確認しておくと安心です。

事前相談から施工確認までの対応

玄関ドアの防犯性を高めるために防犯グッズを設置するときなどは、管理会社や家主さんとの連携が重要です。

これは、前述した原状回復の要否のほか、設置箇所の相談・設置後の管理など、共有・連携すべき事由が多数存在するからです。

特に、鍵の交換を行ったとき、管理会社や家主さんに合鍵を預ける必要があるケースがほとんどです。どのような手順で進めるべきか、事前にしっかりとコミュニケーションを取りましょう。

防犯性が気になる人におすすめの賃貸物件条件

これからお部屋探しをする人は、物件そのものの防犯性能に注目して選ぶのが効果的です。内見時にチェックしたいポイントをご紹介します。

セキュリティ設備が充実している物件

建物全体のセキュリティレベルが高い物件は、空き巣に狙われにくい傾向があります。以下のような設備が整っているか確認しましょう。

・オートロック

不審者の侵入を最初に防ぐ設備であり、マンションタイプであればほとんどの物件に設置されています。なかには、エントランス以外にもエレベーターなどに、二重や三重のオートロックが設置されている賃貸物件もあります。

・共用部の防犯カメラ

防犯カメラがあることで、さまざまな犯罪の抑止力に繋がります。入居者の一存で自由に防犯カメラの映像を確認することはできませんが、最近ではエレベーター内の映像をホールで流し続けるなど、防犯に向けて映像を公開している物件も見受けられます。

・モニター付きインターフォン

 訪問者の顔を確認してからドアやオートロックを開けられるため、こちらも防犯には欠かせない設備です。録画機能があるものや、スマートフォンと連動するものもあるため、機能面もチェックしておくとよいでしょう。

・管理人常駐

人の目があることは、何よりの防犯対策となります。ほとんどの賃貸物件では管理人は通勤で清掃作業などを兼任することがほとんどですが、コミュニケーションが取れるようになれば、互いの情報を交換するなどして防犯に役立つ情報を得られることもあるでしょう。

玄関ドア本体の防犯性能が充実している物件

防犯性の高い物件を選ぶときは、玄関ドア本体の性能にも注目してみてください。なぜなら、玄関ドアの防犯性能は、侵入者にとっての作業時間と難易度を大きく左右するからです。防犯性能の高いドアを見た時点で、泥棒は「この部屋に侵入するにはリスクがありそうだな」と思ってくれる可能性が高くなります。

具体的には、「ワンドア・ツーロック」と呼ばれる鍵が2つ設置されたドアが理想的です。鍵が2つあるだけで侵入にかかる時間が倍になり、防犯効果が大幅に高まります。また、構造が複雑でピッキングに強い「ディンプルキー」や鍵が存在していない「スマートロック」、簡単には回せない構造の「防犯サムターン」が採用されている物件は、さらに高い防犯性を期待できるでしょう。

玄関ドアの防犯性能が充実している物件は、侵入犯罪のリスクを大幅に軽減できる可能性が高いと言えます。

防犯性が高い環境の物件

物件選びでは、建物の周辺環境や管理状態も防犯性を大きく左右する重要な要素です。なぜなら、建物の立地や管理状況は、犯罪者が下見の段階で「狙いやすさ」を判断する材料となるからです。管理が行き届いた明るい環境は、犯罪者が避ける傾向があります。

警察庁の統計によると、侵入窃盗は低層階に集中する傾向があるため、4階以上の部屋を選ぶことで物理的なリスクを軽減できます。ただし、屋上からの侵入ルートもあるため、高層階でも完全に安心はできません。

さらに重要なのは管理状態で、共用廊下の照明が適切に維持されているか、ゴミ捨て場が清潔に保たれているかなどは要チェックです。清潔で明るく、管理の行き届いた環境は犯罪者が嫌う条件であり、ひいては防犯性の高い物件選びの重要な基準となります。

古い掲示物がそのままになっていないか、法定点検が適切に実施されているか、夜間や休日の連絡先が明らかになっているか、などは管理状態を知る一つの目安です。管理会社の管理品質がわからないときは、賃貸仲介会社の担当者に聞いてみてください。

万が一に備えて玄関ドアの防犯性を高めよう

玄関ドアの防犯で危険なのは、侵入者の特殊な技術ではありません。「自分だけは大丈夫」という私たちの油断こそが最大の敵です。どんなに優れたオートロックや最新の鍵があっても、最終的にはあなた自身が「鍵をかける」という行動をしなければ意味がありません。

この記事では、空き巣の手口から、賃貸住宅でもすぐにできる対策、さらには安全な物件の選び方まで幅広くご紹介しました。

本当に効果的な防犯対策は、3つの要素を組み合わせることで実現できます。まず、今の住まいの弱点を知ること。次に、補助錠の設置や毎日の施錠を実践すること。そして、セキュリティの高い住まいを選ぶ、もしくは作ること、です。この3つが揃って初めて、強固な防犯体制が完成します。

安全な暮らしを守るために、まずは身近なところから始めてみてください。玄関のドアスコープを覗いてみる、鍵が一つしかないことを改めて確認するなど、「我が家の玄関」を意識して見直すことから始めましょう。