メールやSNSなどが発達した情報社会の現代においても、毎日の生活の中で郵便物が1つも届かない人は少ないでしょう。しかし、ある日届いた郵便物をふと見ると自分宛てではない郵便物だった、という場合はどう対応すればよいのでしょうか。
今回は賃貸物件に住んでいるとき、前の入居者宛の郵便物が届いたらどうすればよいかについて解説します。
勝手に開けたり捨てたりすると大事に至る可能性があるため、前の入居者宛とはいえ適切に対処することが大切です。
前の入居者の郵便物を勝手に捨てたりしたら犯罪になる?
最初に重要なことをお伝えすると、前の入居者名で郵便物が届いたときに、勝手に捨てたり開封したりすることは犯罪です。絶対におやめください。郵便物の内容にもよりますが、器物損壊罪・信書開封罪・信書隠匿罪・私用文書等毀棄罪などに問われる可能性があります。
郵便法第42条第1項では、以下のように記されています。
第四十二条(誤配達郵便物の処理) 郵便物の誤配達を受けた者は、その郵便物にその旨を表示して郵便差出箱に差し入れ、又はその旨を会社に通知しなければならない。 出典:郵便法 第42条より |
他人宛の郵便物を開封・投棄することは、モラルにも違反した行為です。もし前の入居者名で届いた郵便物があれば、開封したり捨てたりしないようにしましょう。
誤って開封した場合でも捨てないようにしよう
万が一、宛名を確認せずに開封してしまったときは、すぐに郵便局へ連絡をしてください。間違っても捨ててはいけません。
郵便法第42条第2項では、誤開封について以下のように定められています。
② 前項の場合において誤つてその郵便物を開いた者は、これを修補し、かつ、その旨並びに氏名及び住所又は居所を郵便物に表示しなければならない。 出典:郵便法 第42条より |
もし誤って郵便物を開封してしまったときは、以下の手順で対応してください。
①郵便物を補修する
→開けてしまった箇所をテープで塞ぐなどして、封がされている状態に戻します。
②郵便物に誤開封したことと、自分の連絡先を記載したメモを貼る
→郵便物を誤って開封してしまったことと、自分の住所・氏名・電話番号を記載したメモ(付箋などでもOK)を貼ります。
③郵便局へ連絡をする
→最寄りの郵便局へ届ける、郵便ポストへ投函する、郵便局のお客様サポートセンターへ電話して指示を仰ぐ、のいずれかの方法で郵便局へ連絡をします。
郵便物の誤開封を防ぐためにも、郵便物が届いたら宛名を確認するようにしましょう。
前の入居者の郵便物が届いた場合の対応方法
ここからは、前の入居者の郵便物が届いたときの対応方法について解説していきます。やるべきことは以下のいずれかです。
・郵便局に郵便物を届ける
・郵便局のお客様サービスセンターに連絡する
・郵便ポストに投函する
・管理会社や大家さんに連絡する
以下より、各々の対応方法を確認してください。
郵便局に届ける
前の入居者宛に届いた郵便物を郵便局の窓口に届ける方法です。郵便局へ行く手間がありますが、間違いがない方法といえるでしょう。
郵便局の窓口で自分宛ではない郵便物が届いたことを伝えたうえで、郵便物を渡しましょう。なお、郵便局はどこの郵便局であっても問題ありません。
お客様サービスセンターに連絡する
郵便局が運営するお客様サービスセンターに連絡する方法もあります。郵便局ではさまざまな問い合わせに対応するために専用の窓口が設けられていますので、そこに連絡して指示を仰ぐのもよいでしょう。
なお、郵便局のお客様サービスセンターの電話番号は以下のとおりです。
・固定電話から…0120-232-886
・携帯電話から…0570-046-666
電話のほか、問い合わせフォームからの通知も可能です。忙しくてすぐに対応できないときなどは、サービスセンターの活用も検討してください。
郵便ポストに投函する
誤って届いた郵便物を郵便ポストに投函する方法です。誤って届いた郵便物にメモや付箋で「他人宛の郵便物です」と明記したものを郵便ポストに投函するだけで完了します。
実は賃貸管理実務の現場でも、この方法はよく採用されています。誤郵便の連絡を家主さんや管理会社が借主から受けたときは、家主さんや管理会社の担当者が回収したのち、郵便ポストに投函して処理します。
管理会社や大家さんに連絡する
郵便局への対応やポスト投函などにわずらわしさを感じる人は、管理会社や家主さんへ連絡するのも手です。多くの場合、上述した郵便局側への対応を代行してくれるからです。
郵便物の受け渡しに手間がかかる点はデメリットですが、家主さんや管理会社は前入居者の情報を有しており、その後の処理を安心して任せることができるでしょう。
郵便局では対応できない主な郵便物の種類
郵便局で対応してくれるものはあくまでも「郵便局が配達しているもの」に限られます。そのため、郵便局以外の配達業者により届けられたものは郵便局で対応することはできません。その場合は、配送業者に連絡する必要があります。
ここでは郵便局では対応できない配達物について解説します。誤配送や誤配達があったときは、最初に郵便局が配達したものかそうでないかを判別するとよいでしょう。
「これは郵便物ではありません」の注釈付きのメール便
配達物に「これは郵便物ではありません」と記載されているものは、文字どおり郵便物ではありません。一般的にメール便と言われているもので、カタログやパンフレットなどの配達によく用いられています。
ポスト投函型の宅急便
部屋のポストに投函できる小型サイズの宅急便も郵便局が配達していないため注意が必要です。個人間での商品売買でよく利用されていますので、一度は目にしたことがある人も多いのではないでしょうか。
特にポスト投函型の宅急便では中に商品が入っていることもあり、誤開封するとトラブルに発展することも考えられます。
改めて、郵便物や宅急便は宛名を確認する癖をつけておきましょう。
次の入居者に郵便物が届かない「転居届(転送届)」の提出方法・やり方
自分宛の郵便物が届かないトラブルを防ぐためにも、郵便物の転居届は漏れなく提出しておきたいところです。
そこで、ここでは転居届のシステムや届出の方法について解説します。提出の方法などをしっかりと理解して、郵便物に関するトラブルを防止しましょう。
「転居届」とは
転居届とは、引っ越しをしたときに旧住所宛の郵便物を新住所に1年間無料で転送してくれるサービスのことで、正式な名称を「転居・転送サービス」といいます。転居後も重要な郵便物を確実に受け取るために欠かせない手続きといえるでしょう。
転居届を利用することで引っ越し後も郵便物を引き続き受け取ることができるほか、仕事や生活の拠点が複数にまたがっているとき、郵便物の送付先を一つにまとめるという使い方もあります。
転居届の手続き① 転居届を記入して提出する方法
実際に転居届を記入して提出する方法です。最寄りの郵便局で転居届を入手し、内容を記入して提出、もしくは郵便ポストに投函します。
転居届の提出に必要な情報は以下のようなものです。
・届出年月日
・転送を開始する年月日
・旧住所
・転居者の氏名(家族や同居人がいれば全員分)
・新住所(転送する新しい住所)
・電話番号
・転居者との間柄
なお、転居届の提出には身分証明書が必要になります。郵便ポストに投函するときはコピーを貼付する必要がありますので忘れないようにしましょう。
参考:郵便局 「転居届の書き方について」
転居届の手続き② インターネット(e転居)で提出する方法
転居届はインターネットで手続きをすることも可能です。インターネットでの申請は郵便局に行く必要もありませんので便利ですが、「ゆうID」へ登録する必要があります。
ゆうIDとは、郵便局が独自に提供しているサービスです。郵便物発送時の差出人や宛名ラベルを作成できたり、ゆうパックを安価に利用できたり、再配達の依頼などを簡単に行える便利なサービスです。この機会に登録しておくことをおすすめします。
インターネットでの転居手続きは、郵便局「e転居サービスページ」から進めることができます。
前の入居者の郵便物が届いたら必ず申告しよう
今回は前の入居者の郵便物が届いたときの対応方法と、郵便トラブルを起こさないための転居届の提出方法について解説しました。
他人宛の郵便物は開けず・捨てずに必要な手続きを行ってください。これは法律的な義務でもあり、人として行うべきモラルでもあるからです。
賃貸物件は借主が入れ替わることが常ですので、こういったトラブルはどうしても起こってしまうものです。しかし、引っ越しがわかった段階で転居届を提出すれば防げるトラブルでもあります。
もし他人の郵便物が届いたら、適切に対応できるように押さえておきましょう。