近年、日本では地震や土砂崩れなど、自然災害が多発しています。賃貸物件を借りる際も、防災を意識して選びたいものです。
今回は「安心して暮らせるお部屋に住みたい」と考えている方のために、ハザードマップの見方と、災害に強い傾向にある賃貸物件の特徴を紹介します。
ハザードマップとは
ハザードマップとは、土砂災害や洪水などの自然災害の被害状況を予測し、災害リスクがある区域を可視化するための地図です。避難場所や避難経路も記載されており、危険な箇所や被害の度合いをイメージできるため、災害時の被害を最小限に抑えることに役立つものです。
ハザードマップの種類
自然災害と一口にいっても、水害や土砂災害など種類はさまざまです。また、ハザードマップも国土交通省が公開しているものや、各自治体が作成しているものなどがあります。
この章では、国土交通省が公開しているハザードマップポータルサイトの「重ねるハザードマップ」を例に、4つのハザードマップを紹介します。
洪水ハザードマップ
洪水ハザードマップは、河川の氾濫などによって、浸水することが予想される区域に色付けされているマップです。また、洪水になったときの水深(最大規模を想定)が一目で分かるよう、6段階で色分けされています。
たとえば、最大規模の浸水が大人の膝まで浸かる程度(0.0~0.5m)なのか、1階天井まで浸水する程度(0.5~3.0m)なのかなど、イメージできます。
津波ハザードマップ
津波ハザードマップは、地震などにより津波が発生したときに、浸水が予想される区域が色付けされています。洪水ハザードマップと同様に、想定する水深が6段階で色分けされています。
土砂災害ハザードマップ
土砂災害ハザードマップは、急傾斜地の崩壊や土石流、地すべりの危険性がある区域に色付けされています。重ねるハザードマップでは、とくに警戒が必要な区域は特別警戒区域と指定され、警戒区域と区別されています。
高潮ハザードマップ
高潮ハザードマップは、台風などによって高潮となった場合に、浸水が予想される区域が色付けされています。洪水ハザードマップと同様に、6段階で色分けされています。
ハザードマップを確認する主な方法
ハザードマップは、国土交通省が公表しているものや、各自治体が作成しているものなどがあります。この章では、代表的なハザードマップや防災アプリを紹介します。
重ねるハザードマップ【国土交通省提供】
重ねるハザードマップは、洪水・土砂災害・高潮・津波のハザードマップ以外に、道路の防災情報や地形の分類を調べられ、すべてを重ねて見られるのが特徴です。
住所を入力すれば、その地点の災害リスクを調べられ、周囲の特徴も一緒に確認することが可能です。上記の4つのハザードマップについては、次の章で詳しく紹介します。
たとえば、道路防災情報を選ぶと、アンダーパスなど冠水することが想定される箇所を確認できます。道路名や住所、道路管理者の名称や電話番号、管轄警察署や消防署の電話番号も記載されており、災害時に連絡すべき先も確認できるのです。また、道路の写真もチェックできるので、冠水が想定されるポイントをイメージしやすく、便利です。
さらに、地形分類を選ぶと、地形が分かるように色分けされた地図を見られます。台地(段丘)や山地、丘陵(小起伏地)、氾濫平野、凹地(浅い谷)、崖(段丘崖)、自然堤防、旧河道、水部などに分類され、その地形ごとのリスクや土地の成り立ちを調べることが可能です。
わがまちハザードマップ【国土交通省提供】
わがまちハザードマップは、地図から調べたい地域を選ぶことで、その自治体のハザードマップのリンクへ飛べます。
自治体ごとに、ハザードマップの種類や内容が異なるのが特徴です。たとえば、山梨県の富士吉田市には富士山火山広域避難マップ、埼玉県の東村山市にはため池ハザードマップがあるなど、地域によって独自のハザードマップがあります。
また、インターネットでハザードマップを公開していない自治体もありますが、その場合は役所の担当窓口で調査しましょう。紙面のハザードマップを配布していることもあります。
防災アプリ
重ねるハザードマップはスマートフォンでも確認できますが、災害時に避難場所や避難経路をすぐ確認できるように、防災アプリをインストールしておくと安心です。
防災アプリには、災害情報共有システム(Lアラート)を活用しているタイプがあります。Lアラートとは、全国の自治体から得た災害情報を一斉に配信することで、迅速に住民に伝達するためのシステムです。
防災アプリによって得られる情報が異なりますので、事前に比較し、自分にとって使いやすいタイプを選ぶとよいでしょう。
ハザードマップの見方・使い方
重ねるハザードを参考に、ハザードマップの見方や使い方を紹介します。
STEP1. マップ上 or フォームから地域を選択する
まず、調べたい地点を選択します。たとえば、重ねるハザードマップの場合は、トップページに「住所から探す」「現在地から探す」「地図から探す」「災害の種類から選ぶ」があり、探しやすい方法で地点や災害の種類を選べます。
STEP2. 災害種別を選ぶ【重ねるハザードマップのみ】
重ねるハザードマップの場合は、災害の種類を選択して、それぞれ個別に災害リスクを調べられます。また、すべてを選択して、重ねて表示することも可能です。
STEP3. 確認したい災害リスクを確認する
選んだ地点の災害リスクを確認します。色付けされていない場合は、災害時のリスクが少ないことになりますが、災害が起きないわけではありません。
また、災害リスクがあると表示された場合は、想定する被害の大きさなどを確認し、避難場所や避難経路を確認しておきましょう。事前に確認しておくことで、実際の災害時にスムーズに避難できます。
お部屋を探す際に確認すべきハザードマップの内容
お部屋を探す際には、ハザードマップでどのようなポイントを確認しておいたらよいのでしょうか。この章では、とくに確認しておきたいポイントを3つ紹介します。
災害リスクの大きさ
まず、災害リスクの大きさを確認します。たとえば、海や河川の近くであれば、津波や高潮、洪水など、水害のハザードマップを確認しましょう。また、傾斜地や山間部であれば、水害だけでなく、土砂災害のハザードマップも確認する必要があります。
賃貸物件を見ただけで、標高や地形を把握することは難しいため、ハザードマップで災害の危険性の有無や度合いを調べておくとよいでしょう。
通行規制が発生しそうな道路の有無
周辺や避難経路の道路を確認しておきましょう。緊急輸送道路(緊急車両の通行を確保するための路線)に指定されている道路や、事前通行規制区間(土砂災害の恐れがある区間)、冠水想定箇所などを確認し、避難経路を決めておくことをおすすめします。
浸水の高さ
洪水や津波などによる浸水の高さを確認します。河川から離れていても、標高や地形によっては、台風などの水害によって深く浸水するおそれがあるのです。
0.5ⅿ程度の浸水でも、大人の膝まで水に浸かります。歩くのが難しくなり、避難に時間がかかる可能性もありますので、浸水のリスクがあるエリアではなるべく早めに非難するように心がけましょう。
立地以外に「比較的災害に強い賃貸物件」の特徴とは?
立地についてはハザードマップで災害リスクなどを確認できますが、賃貸物件自体はどのように判断したらよいのでしょうか。最後に、災害に強い傾向にある賃貸物件の特徴を紹介します。
制震・耐震・免震構造の賃貸物件
賃貸物件を選ぶときは、建物の構造も考慮して選ぶようにしましょう。たとえば、地震対策された構造として、制震構造や耐震構造、免震構造があります。ぜひ賃貸物件を選ぶ際の参考にしてみてください。
・制震構造:地震の揺れを吸収することで、家具の転倒やガラスの飛散を抑える構造
・耐震構造:建物に強度を持たせ、地震の揺れに耐える構造
・免震構造:基礎と建物の間の免震装置が、地震の揺れを建物に伝えない構造
2階以上の賃貸物件
水害が起きたときのことを想定し、できれば2階以上のお部屋を選びましょう。ただし、水深の深さによっては、2階でも床上浸水することがあります。洪水ハザードマップなどで、浸水時の水深を確認しておきましょう。
IHコンロがある賃貸物件
大規模な地震後に、長期間ライフラインが使えなくなることがあります。たとえば、首都直下型の地震が起きた場合、電気の復旧は6日、ガスの復旧には55日かかるとのデータがあります。
つまり、ガスよりも電気のほうが復旧までの時間が短い可能性が高いため、防災面を考えるとガスコンロよりもIHコンロのほうがよいでしょう。
1981年の新耐震基準をクリアしている賃貸物件
賃貸物件を借りる際は、建物の築年数を確認しましょう。たとえば、1981年以降の建物は、現行の耐震基準で建てられているため、それ以前の旧耐震基準よりも耐震性が高い建物であると判断できます。
旧耐震基準の建物がすぐに倒壊するわけではありませんが、賃貸物件を選ぶ際の基準とするとよいでしょう。
ハザードマップも確認しながらお部屋を探そう
賃貸物件を探す際は、建物の構造や条件だけでなく、ハザードマップで災害リスクも確認するようにしましょう。災害リスクを想定しておくことで、被害を最小限に抑えられます。立地と賃貸物件の両面から防災し、万が一の災害に備えましょう。